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sapphism_no_gensou:2371

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[Narration] ニコル・ジラルドという人物は結構船内をうろちょろしていて、捜そうとすれば苦労することが多い。

[Narration] ことに現在の杏里のような、本来なら自由に歩き回ることを禁じられた立場なら、尚更である。

[Narration] 人づての目撃情報を追いながら、杏里がようやくニコルと接触したのは、大廊下のはじっこだった。

[Anri] ようやく見つけた、ニコル。

[Nicolle] おいおい、そりゃこっちもだよ!

[Narration] いつものように愛犬コローネを連れた彼女は、杏里の顔を見るなりそう言った。

[Nicolle] 杏里に会いに行っても、ちっとも部屋にいやがらない。1日中、あっちこっち、すっ飛んでるだろう?

[Anri] そりゃあ、部屋に居られるほど暇じゃないもの。

[Anri] ……ああ、そう言われてみれば、いつも以上に部屋を空っぽにしてるかも。

[Nicolle] やれやれ、せっかく、とっておきのネタを仕入れてきたってのに。

[Nicolle] 杏里と連絡がつかないんで、このまま腐っちまうかと思ったよ。

[Anri] 素晴らしいよニコル!ああ、キミの背中に天使の愛の羽根が見えるとも!

[Nicolle] ──調子のいい。

[Nicolle] そっちは、うまくいってるのかよ?

[Anri] まあ、それなり……かな。

[Anri] まだ容疑者の見当がついていなくて、動機と方法が不明だけど。

[Nicolle] ……そりゃ素晴らしい……。

[Anri] で、ニコルのネタって?

[Nicolle] いまの話を聞いたら、余計に混乱させるんじゃないかって気がしてきたけどな。

[Nicolle] ……実は、このところ、PSの職員とお近づきになってね。

[Anri] ──天使を誘惑する蛇のごとく。相手はイブかい、それとも仏陀?

[Nicolle] 船倉賭博で知り合ったんだ。んなもの、始めから堕天使だよ。

[Nicolle] で、そいつに事件の話を聞いたんだけど。

[Narration] ニコルは周囲を気にして、やや声を小さくした。

[Nicolle] 最初の事件のあと、PSもメンツがあるからな、かなり警らを強化したらしいんだ。

[Nicolle] ところが第2の事件、第3の事件と続けてやられちまった。

[Nicolle] そのたび、職員の休憩時間まで削って巡回場所と時間を増やしてるそうなんだが……。

[Nicolle] 1度として、巡回範囲内で事件が起きたことがないんだってよ。

[Anri] ……PSの巡回って、そんなに穴だらけなのか?

[Nicolle] いや──この間の事件の時なんざ、蜘蛛の巣の隙間をぬうように事件を起こされたらしい。

[Nicolle] つまり、PS側の情報は漏れまくりってことだな。

[Nicolle] おかげであいつら疑心暗鬼になって、PSの中に犯人か裏切り者がいるんじゃないかと疑ってるらしいぜ。

PSの中に犯人か……

いるかもしれない

[Anri] 考えてみれば、学生だけでなくこの船にはたくさんの職員が乗ってるわけだ。

[Anri] そう考えたら、容疑者候補の数はハンパじゃないや……。

[Nicolle] まあ、普段は上の甲板にぜんぜん出てこない船員もけっこう居るからな。

[Nicolle] せまい船に見えるけど──生活空間が区切られてるから、3年間まったく顔をあわせない相手だっているだろう。

[Anri] うーん……目眩が……。

[Nicolle] この状況で怪しい奴の目星もついてないのかよ?

[Anri] そうだねぇ……。

いや、いないだろう

[Nicolle] どうして、そう思うんだ?

[Anri] いや……勘、かな?

[Anri] PSの裏をかきすぎてるってのも、ちょっとね……。

[Nicolle] 疑われるのが分かってるのに……か。そんなに犯人は頭がいい奴かね?

[Anri] そう……思う。

[Anri] なんというか、頭の良さを誇示してるような気がするんだよ、ボクには。

[Nicolle] ……知能犯気取りの奴が、名探偵に挑戦してるってのかい?

[Anri] そういうんじゃないけど……。

[Nicolle] まあ、いーや。もうちょっと杏里と遊びたいとこだけど、あたしも先約があってね。

[Nicolle] また今度……な?

[Anri] ありがとう、ニコル。愛してるよ。

[Nicolle] ちぇ、そんな台詞がすぐに出てくるのがさ……まあ、いいや。

[Nicolle] じゃ、な。杏里。

[Narration] ニコルとコローネを見送った杏里は、珍しく難しい顔をした。

[Anri] そう……まだ、何もわかっていないんだよな。

sapphism_no_gensou/2371.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)