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sapphism_no_gensou:2351

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[Narration] あまり人目につかないように──というのは、本当に杏里の苦手とするところだが、とにかくこっそりと教室にやってきた彼女は、前と同じように室内を見回した。

[Narration] 今度も杏里より先に、ヘレナの方がこちらを見つけ、しかめ面で近づいてくる。

[Narration] 杏里は笑顔で迎え、小声で挨拶した。

[Anri] おう、ヘレナ!君の方から来てくれるとは光栄の至り。

[Helena] だから杏里、少しは自重しなさいな!

[Narration] 声をひそめたヘレナが、きつい調子で注意する。

[Anri] けどねえ、ヘレナ。

[Narration] 杏里は肩をすくめた。

[Anri] このまま何もせずにいたら、どうせボクは退学だ。ここで少しばかり無茶をして立場が悪くなっても、状況は変わらないよ。

[Helena] まあ……それは、そうなんでしょうけど。

[Anri] それで、何か新しい手がかりにつながりそうな話とか、ある?

[Helena] そうねぇ……。

[Narration] ヘレナは眉根を寄せて、しばし考え込んだ。

[Helena] おそらく杏里のためだと思うのだけど……ジラルドさんが、近ごろPSの人と仲良くしてるのは、知ってる?

[Anri] ああ、ニコルからは、もう話を聞いたよ。

[Helena] そう……だったら、ごめんなさい。いま、特に助けになるような話はないわ。

[Anri] そうか……ありがとう、ヘレナ。

[Narration] 手を振って、杏里はこそこそと教室を後にした。

[Narration] ヘレナはその様子を見送って、ため息をついた。

[Anri] ニコルが、PSの職員に?

[Helena] ええ。……彼女みたいなのが、どうして知り合ったのかわからないけれど。

[Helena] なんだか弱みを握ったような話もしていたし……大丈夫なのかしら。

[Anri] まあ、ニコルは裏事情には詳しいし……。

[Anri] けど、そうか。ニコルだね。ありがとう、ヘレナ。

[Helena] ええ、気をつけてね、杏里。

[Narration] 手を振って、杏里はこそこそと教室を後にした。

[Narration] ヘレナはその様子を見送って、そっとため息をついた。

sapphism_no_gensou/2351.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)