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sapphism_no_gensou:2341

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[Narration] あまり人目につかないように──というのは、実に杏里の苦手とするところだが、とにかくこっそりと教室にやってきた彼女は室内を見回した。

[Narration] 杏里より先に、目当ての相手がこちらを見つけ、しかめ面で近づいてくる。

[Narration] 杏里は笑顔で迎え、小声で挨拶した。

[Anri] おう、ヘレナ!君の方から来てくれるとは光栄の至り。

[Helena] もう、また出歩いてる!

[Helena] ファンさんの事件のせいで、みんなのあなたへの不信感は増してるのよ?

[Helena] 少しは気をつけなさいよ、杏里。

[Anri] キミがそんなに心配してくれるというのは望外の喜びだけど、ヘレナ。

[Narration] 杏里は少し真面目な口調になった。

[Anri] ソヨンの事件があったからこそ、ボクにも時間がない。何でもいいから、手がかりになるような情報が欲しいんだ。

[Helena] そう言われても……。

[Narration] ヘレナはしばらく考え込んだ。

[Helena] そうね……ランカスターさんが、妙なことを言っていたわ。

[Helena] あの事件は、単なる乱暴が目的じゃないかもしれないって……。

[Anri] うん……それは、たぶんアレのことだな。

[Narration] 苦々しげに杏里は呟いた。

[Anri] 他には?

[Helena] うーん、今は特に……。

[Anri] そうか。じゃあ、行くよ。また何かあったら、よろしく。

[Helena] えっ、もう行くの!?

[Anri] うん、あんまりここに居るのもまずいだろうからね。

[Helena] そ、そう……。

[Narration] ちょっと寂しそうにするヘレナを置いて、杏里はこそこそと教室を後にした。

[Helena] 杏里……よけい怪しいわよ……。

[Anri] ……どういうこと?

[Helena] よくは知らないのよ。何だか、とても厳しい顔をしていたけど。

[Anri] イライザが?

[Narration] 常に営業スマイルを崩さない彼女の顔を思い浮かべ、杏里は首を捻った。

[Anri] ふうん、気になるな……。

[Helena] いまはこれぐらいかしら……。

[Anri] そうか、じゃあ何かあったら、また頼むよ。

[Narration] 杏里はこそこそと教室を後にした。

[Helena] 杏里……よけい怪しいわよ……。

sapphism_no_gensou/2341.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)