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sapphism_no_gensou:2311

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[Narration] いつものように小金を握らせてウェルズを排除し、杏里はアルマの部屋に入室した。

[Narration] 小金とはいえ、杏里の金銭感覚からすれば決して安くない金額だ。1度アルマに会うたびに、100ドルから200ドルの出費である。

[Anri] あぁ、我が身を切られるわびしさよ。これも恋のゆえか……。

[Alma] どうなさいました?

[Anri] いや、購買部通りのベーカーでもパンの耳だけ売ってくれないかという話をね。

[Alma] ……何に使うのですか?

[Anri] 恋に狂ったハトのえさだよ。グルッポゥ!

[Alma] ……?

[Narration] すでにアルマは、ずいぶん杏里にうち解けていた。

[Narration] 杏里の方も相手の好意に遠慮するようなタイプではまったくなかったので、彼女がアルマの部屋を訪ねた時の雰囲気は、ずいぶん親しげな様子になっていた。

[Alma] 杏里様が訪ねてきてくださるのは嬉しいのですけれど……よろしいのですか、お忙しいでしょうに。

[Anri] いや、息抜きもかねて、たまにはアルマの様子を確認しておかないと、心配でね。

[Alma] そうですね……わたしも、襲われるかもしれないのですね……。

[Alma] ソヨンさんのように……。

[Narration] 杏里はアルマの打ちひしがれた姿を見ると、そっと近づいて手を握った。

[Anri] 心配いらない、アルマ。ボクがついているから。

[Alma] ええ……そうですね。

[Narration] ふっきるように笑顔を見せると、アルマは「そうだ」と手を叩いた。

[Alma] 聞いてください、杏里様。わたし、近ごろ勉強しているのです。

[Anri] キミの勉強熱心は、もう知っているとも。

[Alma] いえ、それだけではなくて……。

[Alma] その……以前、杏里様に呆れられてしまった、セックスのことなど……。

[Anri] ──ほぅ。

[Narration] 杏里の瞳が妖しく光ったが、アルマは気がつかなかった。

[Alma] その……クラスのお友達に聞いたんです。

[Alma] わたし、何も知らないから……教えてくださいって……。

[Anri] そんな、水くさいじゃないか!何故ボクに相談してくれなかったんだ!?

[Alma] だって、杏里様はただでさえお忙しい身ですのに……。

[Alma] このようなことで、煩わせたくなかったのですわ。

[Anri] このようなこと、なんて言わないでおくれ、アルマ。

[Anri] それは愛であり、人生であり、幸せそのものでもあるんだよ!

[Narration] 大仰な身振りで語る杏里を、アルマは感心したように眺めた。

[Alma] まあ……そのような……。

[Anri] 本当のことさ。……けど、どんな話を聞いたんだい?

[Alma] はい、つまりセックスというのは、男女が互いの性器を結合させて行うということですとか……

[Narration] 子供向け性教育のような内容を、アルマは誇らしげに語った。

[Alma] 行為のあと逆立ちすると子供を授かりやすいとか、できるだけ時間をかけると男の子が産まれやすいとか……。

[Anri] えらく胡乱な内容に聞こえるのだけど……。

[Anri] まあ、ボクも子供の作り方なんて、そんなに気にしてなかったしなぁ。

[Alma] それと、殿方は穴を見ると本能的に性器を入れてしまいたくなるというお話で……。

[Alma] 「穴が空いていれば五円玉でもよい」と言われている通り、穴の空いたものを見つけると、すぐセックスを始めてしまうのだそうですよ。

[Anri] それはどっかの昆虫のオスの生態か何かじゃないの?

[Anri] いや、でも、人間もたいして変わらないのかもしれない……。

[Anri] よく知らないけど。

[Narration] アルマはその後も誇らしげに自分の学習結果を披露したが、故意か過失かは知らず、彼女の教わったという内容はどれも胡散臭かった。

[Anri] ……アルマ、どうもキミの覚え習った知識は偏りがあるようだよ。

[Narration] もっともらしい表情で杏里が指摘する。

[Alma] そうなのですか?

[Anri] 特に知識が男との絡みに限定されているあたりが不健康だ。もっとひとりとか、女同士とか、覚えるべきことは多い。

[Alma] 殿方同士というのは聞いたのですけど。

[Anri] ……あまり深みにはまらないでね。

[Anri] とにかく、やはりアルマにはボクが色々と教えてあげなければいけないな。

[Alma] でも、杏里様はお忙しいですし……。

[Anri] ボクが教えてあげたいんだ。

[Narration] 杏里の瞳が正面からアルマを射抜く。

[Alma] ……ぇ……。

[Anri] アルマに知って欲しいんだ……。

[Narration] 杏里の手が、そっと肩に置かれた。アルマが緊張に身を固くする。

[Narration] そのまま、杏里が更に身を寄せようとすると──。

[Wells] お嬢様、お勉強の時間です!

[Wells] さ、杏里様。お嬢様にはこの後の予定がございます。

[Wells] 今日はお引き取りを。

[Anri] ……殺生な……せめてあと2時間。

[Wells] 却下いたします。

[Narration] 杏里は早々に部屋から追い出された。

[Anri] アルマ、それじゃあね。

[Alma] はい、杏里様もお気をつけて……。

[Wells] ………………。

[Anri] ……え〜と……ウェルズさんも、それでは、ご機嫌よう。

[Wells] はい、さようなら。

[Narration] 慇懃に踵を返す後ろ姿に、杏里は疑わしげな眼差しを向けた。

[Anri] あの人……立ち去ったふりして、ボクらのことちゃんと見張ってるんじゃないか?

sapphism_no_gensou/2311.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)