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sapphism_no_gensou:2301

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[Alma] ──杏里様。

[Anri] やあ、アルマ、今日も──。

[Narration] 振り返った杏里の眼前に立ちはだかっていたのは、お目付役のウェルズだった。

[Anri] 今日も……眉間のシワがチャーミングですね、ウェルズさん。

[Wells] 余計なお世話です。

[Narration] ふん、と鼻を鳴らせて居丈高に杏里を睨み付ける。

[Wells] 近ごろ、お嬢様がわたくしに断りなく、ひとりでお出かけになることが時々あるのですが……。

[Wells] よもや、杏里様の手引きでは御座いますまいね?

[Anri] それは誤解ですよ。

[Anri] ボクは、アルマが事件の被害者になるのを誰より怖れているんですから。

[Anri] 部屋から抜け出す手伝いなんて、まさか!

[Narration] ウェルズは「信じないぞ」と言いたげな目で、杏里をジロジロと見た。

[Anri] ──ところで、アルマとちょっと話をさせてもらっていいですか?

[Wells] 丁重に、そして厳重に、お断りします。

[Anri] そこを何とか──。

[Alma] ウェルズさん、わたしからもお願いです。

[Alma] 少し、杏里様とお話させてください。

[Wells] お嬢様、しかし!?

[Alma] 次の予定まで時間はありますよね?十分ほどで構いませんから。

[Narration] 静かだが、断固とした口調にウェルズは黙った。

[Narration] すっ、と身を引くが、すぐにも割って入れる位置に影のように立つ。

[Alma] 杏里様、こんにちは。真犯人捜しはどうですか?

[Anri] 特に進展なしだね。まだ、容疑者も絞り込めないよ。

[Alma] そうですか……。

[Narration] 近くを通り過ぎた学生が、ふたりを見てひそひそと会話を交わす。

[Narration] 杏里がそちらにウインクをとばすと、ハッとしたように逃げていった。

[Alma] やはり、皆さん、杏里様が犯人だと思っておられるのですね。

[Anri] だからこそ、自分で真犯人捜しをする羽目になったんだけどね。

[Alma] そうですね……。

[Rachel] あら……?

[Rachel] アルマさん、何かあった?

[Alma] あ、フォックス先生……。

[Anri] ただ親好を深めていただけですよ。

[Rachel] 杏里は、他人と親好を深めていい立場じゃないでしょう?

[Narration] 怒るというより呆れた口調でレイチェルは言った。

[Anri] そんなことはないですよ。

[Anri] 本当の犯人を見つけるために、少しでもみんなの話を聞きたいですからね。

[Alma] ええ、わたしも杏里様のお役にたてればと……。

[Rachel] うーん……。

[Rachel] 杏里の言い分もわかるけれど……やっぱり、こんな場所で堂々と話していい立場とは思えないわ。

[Rachel] こんな事を言ったら気を悪くするかもしれないけれど……。

[Rachel] アルマさんにも、良くない噂が立つことだってあり得るでしょう。

[Anri] ……そうか……。

[Alma] まあ、わたしは噂なんか気にしません。

[Alma] どちらにせよ、杏里様が犯人を捕まえるまでの誤解ですわ。

[Rachel] あら、まあ。

[Narration] レイチェルは横目で杏里を見た。

[Rachel] 杏里ったらいつの間に、これほどアルマさんの信頼を勝ち得たのかしら?

[Anri] ……うーん、愛と人徳ですね。

[Wells] 邪なる誘惑と策略でしょうとも。

[Narration] ぼそっ、というウェルズのツッコミを3人はほがらかに受け流した。

[Alma] フォックス先生は、事件について何かご存じないのですか?

[Rachel] ……え、私?

[Alma] はい。杏里様の手助けになるような、新しい手がかりを教えていただけたらとても助かるのですけれど。

[Anri] そうだね、先生なら学生の知らない事情に通じているかもしれない。

[Rachel] ……だからって、軽々しく口に出したりはしませんよ?

[Rachel] 面白半分に話題にしてよい事件ではありませんからね。

[Alma] もちろんです。ですから、真面目に犯人捜しをしている杏里様のためにぜひ!

[Anri] アルマもこう言っていますし、ぜひ!

[Rachel] あ、あのねぇ……。

[Narration] レイチェルは何か言いかけて、肩を落とした。

[Rachel] ……やっぱり、学生のプライバシーに関係するようなことは言えないわ。

[Rachel] ただ、そうね……襲われた子が言っていたそうだけど……。

[Rachel] なんだか、犯人の行動にすごい憎しみみたいなものを感じた……って。

[Rachel] イタズラが目的ではなくて、まるで暴力が目的であるように……。

[Anri] 無理矢理なら、どちらも同じ事だと思うけど……。

[Anri] そうか、じゃあ性欲にまかせて暴走したというわけじゃないのか?

[Alma] 性欲というのは、いやらしいことをしたいという本能のことですよね?

[Anri] そう言ってしまってもいいかな。……ああ、S趣味なら、性欲と暴力を同じと考えてもいいかも。

[Alma] S趣味とは……?

[Anri] うーん、言葉では難しいな。そのうち実践して教えてあげよう。

[Alma] はい、お願いします!

[Anri] ……どうしました、レイチェル先生。お腹でも痛いんですか?

[Rachel] い、いえ、そうね……そうかもしれない……あはは。

[Rachel] 先生、これでちょっと……じゃあ、またね。

[Alma] ……どうなさったのでしょう?

[Anri] さあ?

[Wells] お嬢様、そろそろ時間です。

[Narration] ウェルズが冷酷に告げた。アルマがハッとして時計を見る。

[Alma] まあ……杏里様、申し訳ありませんが、わたしはこれで失礼いたします。

[Alma] 杏里様の未来と捜査に幸運がありますように。

[Anri] ありがとう、アルマ。それじゃ、また。

[Narration] ご機嫌よう、と去っていくアルマを見送ってから、杏里は表情を曇らせた。

[Anri] 憎んでいるように……か……。

sapphism_no_gensou/2301.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)