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sapphism_no_gensou:2281

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[Narration] 天京院の部屋を訪ねるとき、杏里は時に訪問も告げずにずかずか踏み込むことがある。

[Narration] 他人のプライバシーに対して、それなりに気を使っている彼女だが、天京院に対しては、それを忘れてしまうことがあるのだ。

[Narration] 天京院の方も、何故か杏里の来ることは大抵予想していて、いちいち驚いたりすることは少ない……のだが。

[Narration] その日は、ちょっと様子が違っていた。

[Narration] いつもの調子で部屋に入ってきた杏里は、見慣れない天京院の表情にぎょっとした。

[Anri] かなえさん……どうしたの?

[Tenkyouin] えっ……あぁ、杏里か……。

[Tenkyouin] どうしたんだい?

[Narration] 向き直った天京院は、すぐいつもの様子に戻った。

[Narration] が、杏里はどことなく違和感を感じ、黙り込んでしまった。

[Tenkyouin] どうした、黙ってる杏里なんて、気味が悪いぞ?

[Anri] あ……そうだね。

[Narration] 杏里は返答してからも、しばし迷い、思い切って尋ねてみた。

[Anri] かなえさん……何か、ショックな事でもあった?

[Tenkyouin] ……なぜ?

[Anri] そう見えたんだよ、さっき。

[Tenkyouin] ふぅ……別にそんなことはないさ。

[Tenkyouin] 少し、疲れてるんだろう。

[Anri] けど……。

[Tenkyouin] 杏里、もし用事がないなら、ひとりにしてくれないか?

[Tenkyouin] しばらく休もうかと思うんだ。

[Anri] そう……ごめん。

[Tenkyouin] いや……。

[Narration] 天京院に追い出されるように退室した杏里は、しばらく首をかしげていた。

[Narration] ──が、気を取り直してそこを後にする。

[Narration] なんとなく、後ろ髪を引かれる思いを残しながら……。

sapphism_no_gensou/2281.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)