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sapphism_no_gensou:2251

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[Anri] ……やあ、かなえさん。遊びに来たよー。

[Narration] 珈琲臭の立ちこめる室内に笑顔で飛び込むと、部屋の主はひょいと肩をすくめた。

[Tenkyouin] ……珍しく、落ち込んでいるね。

[Anri] そう見える?

[Tenkyouin] うん。

[Anri] ……実はそうなんだ〜。

[Narration] 杏里はヘナヘナと椅子に座り込んだ。

[Tenkyouin] ファン・ソヨンが襲われたって?

[Anri] うん……まさしく、かなえさんの推理した3人のうちのひとりだよ。

[Anri] ボクがアルマでなく、最初にソヨンを選んでいたら……ひょっとして助けられたんじゃないかと思うと……。

[Tenkyouin] らしくないな。

[Narration] あくまで素っ気なく天京院は言った。

[Tenkyouin] ファン・ソヨンを助けられなかった、ではなくアルマ・ハミルトンを助けることができたと考えたらどうだ?

[Tenkyouin] 少なくとも、いつもの杏里の思考はそうだと思うがね?

[Anri] なんて脳天気な奴だ。今度、杏里・アンリエットに会ったらそう言っておいてくれ。

[Tenkyouin] ……少しは調子を取り戻したかい?

[Anri] ……うん。

[Tenkyouin] そうか……あぁ、そうだ。

[Tenkyouin] アルマが知っているかどうか知らないが、彼女の実家は大変なことになってるようだな。

[Anri] なにそれ?

[Tenkyouin] 大掛かりな環境破壊裁判の係争中でな。環境保護団体を中心に、毎日のように抗議デモが押し寄せているらしいぞ。

[Anri] ……あぁ。

[Narration] 昨日、アルマから聞いた話を思い出して、杏里は眉をしかめた。

[Anri] 毎日のように……って、家まで?

[Tenkyouin] ここ半年は特にひどくて、抗議団体が集まりすぎた結果、ハミルトン家の近所に村がひとつできたそうだ。

[Tenkyouin] 話を聞いて、ますます環境保護活動家が終結しているらしい。

[Tenkyouin] そのまま、環境保護活動のメッカになるかもしれないぞ。

[Anri] (ひょっとして、アルマの父親は彼女を家から遠ざけようとしたのかな?)

[Narration] だとしたら、彼女の自由は皮肉な結果ということになる。

[Anri] ……さて。

[Narration] まだ表情は浮かなげではあったが、杏里は笑みをたたえて立ち上がった。

[Anri] 落ち込んでいられる状況じゃないものね。じゃあ、行くよ。

[Tenkyouin] なんだ、コーヒーぐらい飲んでいけばいいのに。

[Anri] ううん、いいんだ。愚痴をこぼしに来ただけだから。

[Tenkyouin] 杏里、時間は……。

[Anri] わかってる。

[Narration] 立ち去りながら、杏里は背を向けたままで答えた。

[Anri] 大丈夫だよ、かなえさん……。

[Narration] 天京院は言葉を続けず、杏里を見送った。

sapphism_no_gensou/2251.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)