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sapphism_no_gensou:2193

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[Eliza] まあ、アルマ様。ここにいらしたのですか?

[Narration] いつの間にか背後へ近寄っていたメイドのイライザが、唐突に声をかけた。

[Narration] 杏里は絶妙のタイミングで邪魔され動きが止まり、アルマはそんな杏里に気づかずイライザを振り返った。

[Alma] イライザさん。何か、ありましたか?

[Eliza] お部屋のお掃除を頼まれていたベスが、お洋服のことでご確認したいことがあると捜しておりましたよ。

[Alma] あら──そういえば、クリーニングに出す服を別にしておくのを忘れていましたわ。

[Narration] アルマは杏里とイライザに、丁寧な礼をした。

[Alma] ありがとうイライザさん、すぐ参ります。……杏里様、さっきはありがとうございました。

[Alma] 聞いていただいて、少し気が楽になったみたいです。それでは、失礼します。

[Narration] 笑顔を残してアルマは立ち去った。

[Narration] かける声もなく見送った杏里は、その後ろ姿が見えなくなってから、大きく派手なため息をついた。

[Anri] はあ───っ……。イライザ、ボクは何か神さまを怒らせるような真似でもしたのかな?

[Narration] 恨めしそうにイライザを見る。

[Narration] が、イライザは澄ました顔で答えた。

[Eliza] あら、神さまはいつだって寛大ですわ。杏里様が新しい女の子に声をかけたぐらいで、いちいち怒ったりはいたしませんよ。

[Anri] イライザ、わざとじゃないだろうね……?

[Narration] 情けなさそうに言ってから、ふと真顔になる。

[Anri] ひょっとして、アルマとの話を聞いてた?

[Eliza] 杏里様。

[Narration] あくまで業務用の笑顔を崩さずに、イライザは静かな声で言った。

[Eliza] 私は、杏里様のお困りになるような真似は一切いたしません。……信じていただけるなら、私はここで何も聞きませんでした。

[Narration] 愛情や友情というより、むしろ忠誠とでも呼ぶようなその台詞を聞いて、杏里は思わず苦笑した。

[Anri] うん、ありがとう。

[Anri] でも……さっきのはやっぱり、わざとでしょ?

[Eliza] ──さあ?それでは失礼して、仕事に戻らせていただきます。

[Narration] イライザはきびきびした動作で立ち去った。

[Narration] 杏里も肩を落としながら、購買部通りへ向かおうと歩き始める。

[Narration] その唇から、ため息と共に言葉が洩れた。

[Anri] やっぱり、わざとだな……。

[Narration] ──その夜。

[Girl] キャアアアァァァッ!!!

[Narration] 何事もなかった1週間の平穏をあざ笑うかのように、新たな犠牲者が出た。

[Narration] ファーストクラスのファン・ソヨン。

[Narration] 事件そのものには例のごとく箝口令がしかれたが、船内に情報が広まるのはあっという間だった。

[Narration] 外界より隔離された巨大な学園船は、ざわめきと共に新たな朝を迎えようとしていた──。

sapphism_no_gensou/2193.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)