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sapphism_no_gensou:2141

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[Narration] イライザの姿を捜して船内をうろついていた杏里は、ようやく目当ての相手を見つけて笑顔を見せた。

[Narration] 近づくと、向こうもすぐに杏里と気づき、さっと周囲を警戒する。

[Narration] 誰も居ないと見て、ようやくイライザは杏里に声をかけてきた。

[Eliza] 杏里様、忙しい身なので、こんな格好で失礼いたします。

[Anri] いや、とんでもない。

[Narration] 杏里も笑顔で請け負って、

[Anri] 忙しいなら簡潔に──。例の件、どうだい?

[Narration] 囁くように訊ねたのは、別に人目を気にしてのものではない。

[Narration] ただ、イライザの耳元に顔を寄せたかっただけである。

[Narration] ふっ、とついでに吐息も吹きかけられて、イライザはくすぐったそうに身をよじった。

[Eliza] アルマ様ご本人については、特にございません。

[Eliza] けれど、ウェルズ様については面白い噂を聞きました。

[Anri] へえ、どんな?

[Eliza] なんでもウェルズ様が、ニコル様を苦手にしていらっしゃるようですわ。

[Eliza] 彼女の姿を見ると、そそくさと隠れておしまいになるとか。

[Anri] へえ、ニコルを!?

[Narration] 思わず杏里の声は大きくなった。

[Anri] 妙な話だね。その逆──ニコルがウェルズさんを苦手にしてるというなら、まだわかるけど。

[Eliza] ええ、ですから……。

[Narration] イライザも小首を傾げる。

[Eliza] ニコル様の方が、なにか弱みでも握っていらっしゃるのではないでしょうか?

[Eliza] 彼女、そういうところは抜け目がありませんから。

[Anri] ふーん。

[Narration] なるほど、自分が彼女に出会ったときの事を思い出して、杏里はそんなこともあるだろうと納得した。

[Anri] それならニコルに聞いてみよう。弱みをつくのなんて気が引けるけど、これもアルマのためと思えば……。

[Eliza] アルマ様のため?

[Anri] いや、なんでもない。

[Narration] 別に秘密にする理由もなかったが、杏里はあえて説明しなかった。

[Narration] アルマが襲われるかもしれない──という天京院の予想も、まだ確実とは限らないのだから。

[Narration] イライザはしばし杏里を見つめたが、教える気がないことを見て取ると、あっさり興味のない顔つきにかわった。

[Narration] イライザの方とて、杏里がアルマに興味をもつ理由など、知りたくもなかろう。

[Eliza] それでは杏里様、あまりサボっている訳にも参りませんので。

[Anri] ああ、そうだね。すまない、助かったよ、イライザ。

[Narration] 杏里は素早くイライザの頬にキスした。

[Narration] イライザはまったく動じず、笑顔のまま礼をして、杏里を見送った。

sapphism_no_gensou/2141.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)