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sapphism_no_gensou:2081

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[Helena] あ、杏里!?

[Narration] 授業が終わったばかりの教室へひょいと顔を出した杏里を見て、ヘレナはびっくりして声をひそめた。

[Helena] 駄目じゃない、こんな、まだ他の人もたくさん居るところに……あなた自分が謹慎中だということを忘れてしまったの?

[Anri] ……あ、忘れてた。

[Helena] 杏里っ!?

[Rachel] ──どうかしたの、ヘレナさん?

[Helena] フォ、フォックス先生、これは……。

[Rachel] まあ、杏里さん!こんなところで何をしているの!?

[Narration] 驚くレイチェルを見て、杏里はしばらく額に手をあてて考え込んだ。

[Narration] やがて、ぽんと手を叩く。

[Anri] ああ、レイチェル先生!そうそう、ボクの担任でしたよねぇ。

[Rachel] ……杏里さん……。

[Narration] レイチェルはがっくり肩をおとした。

[Rachel] あなたが授業中いつも上の空なのは知っていたけれど、担任の顔ぐらい覚えてちょうだい。

[Anri] もう覚えました、ご安心ください。

[Narration] 実はこれまで三回も同じ会話をかわしているとは露とも思わず、杏里は力強く請け合った。

[Rachel] ……もういいです。

[Rachel] ところで、杏里さんは謹慎処分に決まったはずよ。こんなところを出歩いて、ダメじゃないの。

[Helena] あ、あの、先生……。

[Anri] いや、先生、それが。

[Narration] ヘレナが何か言うより早く、杏里はこそこそとレイチェルに耳打ちした。

[Anri] 大きな声では言えないんですが……ボクの謹慎処分というのは仮の姿でして。

[Rachel] ──まあ!

[Anri] 実は今回の連続暴行事件の真犯人を突き止めるべく、学園長から秘密裏に捜査を進めるよう命じられているのです。

[Rachel] そ、そんなドラマみたいなことが!?

[Anri] なにしろあの学園長のことですから。お疑いなら、学園長に尋ねてみてください。

[Rachel] いえ……そうね、あの学園長ならやりそうなことだわ。

[Helena] ………………。

[Anri] この話は先生だけにしておきます。他の人には、どうか……。

[Rachel] ええ、ナイショにしておきましょう。

[Rachel] じゃあ、頑張ってね。杏里さん。

[Narration] 励ますように小さくガッツポーズを見せてレイチェルが立ち去る。

[Narration] ヘレナはすっかり呆れた顔になっていた。

[Helena] 学園長の密命ですって?よくもそんな出鱈目を……。

[Anri] まったく嘘ってわけでもないよ。学園長がそうしろって言ったのは本当のことだしさ。

[Helena] あなたって、時々妙に口がうまいのよね。

[Anri] やだなヘレナ!それじゃまるで、ボクが嘘つきみたいじゃないか。

[Anri] いつもキミに囁いてるボクの愛の詩まで疑うのかい?

[Helena] も、もとから信じていないもの!

[Anri] なんてことだ!

[Anri] では信じてくれるまで何度でも、何百回でも繰り返すよ! ボクがキミを愛する心がどれだけのものか!

[Helena] い、いい、いらない。

この場は……

自分の意志を尊重する

[Anri] ううん、ヘレナ。キミにわかってもらわなくちゃ。

[Helena] ちょっ、杏里……引っ張らないで!

[Helena] ど、どこへ連れていくつもり!?

[Anri] この時間なら、空き教室のひとつやふたつ、すぐ見つかるさ。

[Helena] えっ、えっ?それって……待って、待ってよ!

[Anri] ううん。待たない。

ヘレナの意志を尊重する

[Anri] そう?

[Narration] 心底残念そうに訊ねる杏里に、ヘレナはホッとした表情を見せた。

[Helena] さ、杏里も遊んでいるヒマはないんでしょう?

[Anri] そうだね、不本意だけど。

[Narration] ようやく自分の立場を思い出したのか、肩を落として頷く。

[Helena] ……なんていうか……頑張ってね、杏里。

[Anri] ありがと、ヘレナ。じゃあ、もう行くよ。

sapphism_no_gensou/2081.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)