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sapphism_no_gensou:2032

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[Narration] 予想通りというべきか、アルマの個室は簡素に飾り付けられていた。

[Narration] むろん贅をつくした品であるのは間違いないだろうが、下品さを感じさせない内装に杏里は密かに満足する。

[Alma] ……誰、ウェルズさん?

[Narration] まったく警戒心というものを感じさせない声が流れた。

[Alma] わたし、出来れば図書室へ出かけたいのですけれど

……

あら?

[Alma] あら……あの、杏里様?

[Anri] いかにも。うるわしき姫君。

[Narration] 大げさに一礼して杏里は図々しくも室内に踏み込んだ。

[Narration] アルマの方は気にした風もなく、どうぞ……とイスを進める。

[Anri] 驚いた……というか、ちょっと拍子抜けかな。

[Alma] え……、なにがでしょう?

[Anri] もっと警戒されるかと思った。ボクとふたりきりになって怖くない?

[Narration] できるだけ不安を感じさせないよう優しく問いかける。

[Narration] アルマは無邪気に微笑みかえした。

[Alma] いえ、そんなことありません。

[Alma] 杏里様、犯罪者でいらっしゃいますのに、あまり悪い方に見えませんのね。

[Anri] ……あーうん。

[Narration] 皮肉でもなんでもない一言に、杏里は反応に困って苦笑いを浮かべた。

[Anri] わざわざキミに会いに来た理由のひとつは、その誤解を解きたいと思ったからなんだけれど。

[Alma] まあ、誤解?

[Anri] うん。ボクはね、あの暴行事件の犯人じゃないよ。

[Alma] あら……まあ。

[Alma] けれど、クラスの方達もウェルズさんも、犯人は杏里様で間違いないと……。

[Anri] ひどい言いがかりだ。だいたいアルマ、ボクがそんなことのできる人間に見えるかい!?

[Alma] それは、まあ……。あまり、見えません。

[Anri] だろう。

[Anri] これはボクの名誉のためにも言っておきたい。

[Anri] ボクは女の子に暴力をふるったり、無理強いすることはしない。

[Anri] いま騒ぎになってる事件だって、怒りを覚えこそすれ、自分でそんなことをしたいなんて、これっぽっちも思うものか。

[Alma] はあ……。

[Narration] 杏里の言葉を信じているのかいないのか、アルマの態度からはどうも見えてこない。

[Anri] ……アルマ、信じてくれるかい?

[Alma] ええ、それはもちろん。

[Narration] アルマは笑顔で答えた。

[Narration] 杏里は何となく納得のいかない表情をしていたが、嘆息しつつあきらめた。

[Narration] ウェルズから買い取った時間は、たった二十分しかないのだ。

[Anri] 信じてくれるなら……まあいいや。

[Anri] アルマ、キミに会いに来た目的なんだけど、もうひとつあるんだ。

[Alma] ……?

[Anri] ボクは、自分の無実を晴らすためにこの事件を自分で調べることにした。

[Anri] 女の子たちのためにも、本当の犯人をこの手で捕まえてやろうと思ってる。

[Alma] ご立派ですわ、杏里様。

[Anri] どうも調子が狂うな………………。

[Anri] ……それで、犯人を捜しているんだけど、同時に……。

[Anri] 次の犠牲者になりそうな子に、注意するよう警告している。

[Alma] なるほど。

[Anri] ……キミだよ。

[Alma] はい?

[Anri] だから、キミが次の犠牲者になるかもしれない……そう言ってるんだ。

[Alma] ………………。

[Anri] ………………。

[Alma] わたしが

……

ですか?

[Anri] そう。かなえさん……知ってるかな、天京院鼎。サードクラスの天才。

[Alma] ああ、存じております。ミキサーから生まれた不思議な方だとか。

[Anri] いや……いくらかなえさんでも、ミキサーからは生まれないだろ。

[Alma] でもクラスの方が、きっとそうに違いないと……。

[Anri] ……それは悪口じゃないだろうか?

[Narration] 杏里はしばし悩んだが、本当にそう信じている学生が居たとしても不思議はない、と思い直した。

[Anri] ええっと、どこまで話したっけ?そうだ、かなえさん、天京院鼎さんがボクに協力してくれてさ。

[Anri] かなえさんの推理と計算によると、次に狙われそうな女の子の中に、キミが入ってるんだよ。

[Alma] わたしが……ですか。

[Narration] 恐れというより困惑した表情でアルマは首を傾げた。

[Alma] 何故わたしなんかを……。

[Anri] そりゃあ、キミが可愛いからだろう。

[Alma] はあ……。

[Anri] とにかく、かなえさんの推理とか計算ってやつは、なんでだか当たるんだ。

[Anri] ボクにはどうにも理解できないし、かなえさんも「どうせ杏里には分からないよ」と言って教えてくれないんだけど……。

[Anri] 本当によく当たるってことだけは、ボクの経験からも間違いない。

[Anri] アルマ、信じられないかもしれないけど、どうかしばらくの間──ボクが真犯人を見つけるまでは、警戒しておくれ。

[Alma] いえ、そんな。信じますわ、杏里様がそんなに真剣に案じてくださるんですもの。ただ……。

[Anri] ただ?

[Alma] あのう、杏里様……?

[Anri] なんだい。

[Alma] 妙なことをお尋ねしてよろしいでしょうか?

[Anri] ──?ボクにわかることだったら。

[Alma] ええ、実はずっと気になっていたのですけど……。

[Alma] あの、いま杏里様がおっしゃられた暴行事件……というのは、具体的に何をどうされるのでしょう?

[Anri] えっ?

[Alma] ………………。

[Anri] いや、ボクもそう詳しくは……とりあえず縛りとスパンキングは有りで、あと言葉責めとかしたのかな?

[Anri] ムチとかロウとかはどうだろう?そのー、スカトロとかは、ないと思うんだけど……。

[Alma] ………………。

[Alma] ……あの、申し訳ありません。わたし、語彙が乏しいもので、今のお話はよく理解できなかったのですけれど……。

[Alma] お友達に聞いたところによりますと、その、犯人に捕まると、セックスをさせられるとか……。

[Anri] はい?

[Alma] けれど、セックスというのはつまり、おしべからめしべへ受粉させるということですよね?

[Alma] でもこの船には男の方はいませんし、そうすると、どういうことなんでしょう?

[Anri] いや、どういう……って……。

[Alma] あらかじめ男性のおしべから花粉を集めておいて、受粉させるということなんでしょうか?

[Anri] ま、待ってくれアルマ!

[Anri] うわ……想像してしまった。そりゃ生々しすぎるよ、いくらなんでも。

[Alma] え、ええ。わたし、そういうところの恥じらいが足らないらしくて。

[Alma] 友達にもよく言われるのですけれど……。

[Anri] まあそんな、男の精を取ってきてなんて、手の込んだ真似はしてない

……

と思うよ。

[Anri] あくまで女同士だろうね。

[Alma] 女性どうしで、どうやってセックスをするのでしょうか?

[Anri] ……いや、そんな真面目な顔して訊かれても困るな。

[Alma] だって女性にはおしべがないのですよね?それではセックスにならないと思うのですけど。

[Anri] ……まさかこーいう話をする事になるとは思わなかった。

[Anri] あー、まあ、おしべの代わりは色々とあると思うよ。道具とかも使うだろうし、それこそ指だけでも充分に……。

[Alma] ゆ、指がおしべのかわりになるのですか!?

[Anri] ボクは自信あるけどね。これだけで、どんな子だって満足させられると思う。

[Alma] で、では……杏里様と握手したりすると、そのう……子供ができてしまう

……

のですか?

[Anri] …………

は?

[Alma] そうしますと、手袋をしないで出歩くのは、よろしくないのではありませんか?

[Alma] わ、わたしもまだ、お母さんになるには若すぎると思いますし……。

[Anri] ………………。

[Alma] あ、それとも今はそういう時期ではないので大丈夫だとか……。

[Anri] あの、アルマ?

[Alma] あ、はい。なんでしょう?

[Anri] ひょっとして、キミの言ってるおしべとかめしべとかは、その、比喩とかではなくて……。

[Alma] ……

[Anri] キミはもしかすると、セックスというもののやり方を、よく知らないのでは?

[Alma] え……ですから、おしべとめしべが……。

[Anri] 夫婦が子造りをする過程を正確に述べよ。

[Alma] ですから、夫婦で同じベッドに寝ると、夜中に殿方のおしべの花粉が風や虫に運ばれて……。

[Anri] ──風や虫が運ぶかっ!!

[Alma] ──えぇっ!?

[Anri] アルマ、もし冗談でないのなら──いや、おそらく本気だろうとボクの直感は断じているのだけど──キミの知識は間違っている!

[Alma] そ、そうなんですか!?

[Anri] キミには一刻も早く正しい知識が必要だ!とにかくいますぐ服を脱ぎたまえ!

[Alma] えええっ!?

[Anri] 大丈夫、何も怖くないから、身も心もすべてボクに任せて──

[Wells] ──時間です。

sapphism_no_gensou/2032.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)