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sapphism_no_gensou:1396

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[Narration] 船首に置かれたデッキチェアに寝そべる杏里。

[Anri] ぼぉ──────

[Tenkyouin] どうした杏里、コーヒーが切れたみたいな顔をして。

[Anri] ぼぉ──────

[Narration] ようやく事件が落ち着いた後───ファン・ソヨンは突然帰国する、と言い出した。

[Narration] 軍につとめる父親が定年に達し、退任式があるということだった。

[Soyeon] ごめんなさい杏里さん……あたし、式へ出席するだけじゃなくて、父様とじっくりお話ししたいことができたんです。

[Soyeon] 杏里さん、あたしが頂いた数々のご好意。本当にありがとうございました!

[Soyeon] 杏里さんと一緒に過ごした、この三週間は、あたしの一生の思い出にします!

[Soyeon] どうかお元気で。さようなら杏里さん……杏里さん……杏里さん……

[Narration] そうしてすでに一月が過ぎた。

[Anri] ソヨン…………

[Anri] チョゴリ……おでこ……キムチ……猫さんパンツ……ぺったん胸…………………………

[Anri] ソヨン…………

[Tenkyouin] ふう……まるで抜け殻だな。どうしたらいいと思う。ヤーン。

[Narration] (ニャー)

[Tenkyouin] ニャアじゃわからん。もうすこし建設的な意見を。

[Tenkyouin] やれやれ……。ドジなソヨンも、かしましいビジターズもいなくなって、静かに研究に没頭できるようになったはいいが……これではな。

[Anri] かなえさん……

[Tenkyouin] なんだ、杏里。

[Anri] かなえさんは、一緒にいてくれるよね?ボクと……ずっと一緒に……

[Tenkyouin] 杏里……あのさ。きみは、あたしが今年で学園を卒業するという事実を忘れていないか?

[Anri] ……いてくれるよね?ボクは……ボク……は……

[Tenkyouin] ふぅぅ………………さあな。

[Tenkyouin] 運命はどうなるかわからんさ。このポーラースターにしたって、いったいどこへ向かおうとしているのか、皆目わからん。

[Teacher] ここが我々の職場、大教室です───

[Teacher] なにぶん広いですから。以前は液晶プロジェクターや、レーザーポインターを使用して授業を行っていましたが、今では……

[Narration] 案内役の女性教師が、パチンと指先を鳴らすと、黒板と思っていた場所は、スクリーンに変わり、大写しで教材の映像が現れた。

[Narration] 手話に似た簡単な動作をするだけで、映像は早回しされたり、拡大されたりする。

[Teacher] ───こんなふうに、身振りに連動して、AIが働きまして、自在に教材を閲覧することができます。

[New teacher] 素晴らしいです。けれど……この最先端の設備が、私に使いこなせるか、すこし不安です。

[Teacher] もちろん、昔ながらの黒板とチョークが現役の方もいらっしゃいます。

[Teacher] まあ、今も昔も、変わらないのは、どんなに教材や設備が進歩しようとも、退屈な教師には見向きもしてくれない、ということですかね。ハハ……

[Teacher] 結局、人間が人間を教えるのですよ。

[Narration] 手元の資料に目をやった教師は、はたと立ち止まり、目をしばたかせた。

[Teacher] ……おや? ファン先生は、この学園の卒業生でいらっしゃった?や、これは失礼しました。それでは、わたしなどよりよほど詳しいでしょう。

[New teacher] いえ……船内もずいぶん改装されて、見違えてしまいました。

[Teacher] ええ。順風満帆の航海ばかり、というわけでもありませんでしたから。狂った発明家の起こした、爆発とか大爆発とか大々爆発とか……

[New teacher] ふふ、そうですね……私が好きだった場所も、もう……

[Unknown] …………変わらないものもあるさ?

[Unknown] 教師と学生。先輩と後輩。人と人。そして、自由な恋人たち───

[New teacher] ……?

[Teacher] 学園長!? そこにいらしたんですか?

[Unknown] うん……ここが一番寝ごこちがいい。

[Narration] そのよく通る声の人物は、最後部の席を立つと、あくびをかみ殺しながら、大教室の中央通路をしなやかな足どりで降りてきた。

[Narration] 案内役の教師が頭を垂れる。その横で、若い新任教師は、じっと学園長を見つめていた。

[Teacher] こちら、本日付けで着任いたしました、医学博士で、身体運動学などを担当される、ファン・ソヨンさんです。

[Principal] ふぁ……おはよう、ファン・ソヨン。調子はいかが?

[Narration] 新任教師は瞼を伏せて、深々とお辞儀をした。振りあげた顔には、さわやかな笑顔を浮かべていた。

[New teacher] はい、いたって好調です。これからお世話になります。

[Principal] うん。わがまま放題のお嬢様たちのお相手は、なかなか気をつかう大変な仕事だよ。

[Principal] でも、肩の力は抜いて、キミのやりかたで頑張ってみて。

[Principal] きっとキミは、彼女たちに心から慕われる、いい教師になれると思うから。

[New teacher] はい。ありがとうございます。

[Teacher] いや、まったく。毎日、ノイローゼになりそうな事ばかりで……

[Principal] キミは働きすぎだ。人生にアクシデントはつきものなんだから、それを楽しむ気持ちがなくっちゃ。

[Teacher] はぁ……

[Narration] 学園長は、自分のこめかみを指でとんとんと叩いた。

[Principal] そうだな……午後の会議の準備でキミ、忙しいだろ。なんなら、案内はボクが代わるよ。

[Teacher] はっ……よろしいのですか? では、お言葉に甘えるといたします。あとは、よろしくお願いします。

[Principal] ウィ。お願いされた。

[Soyeon] …………

[Anri] …………行ったかな?

[Narration] 案内の教師が教室から姿を消すやいなや、ファン・ソヨンは目前に立つ相手の胸のなかに飛び込んだ。

[Soyeon] 杏里さん!

[Anri] やぁソヨン、また一段と美しく、んんっ……

[Narration] 唐突に唇をふさがれ、虚をつかれた杏里は、そのまま長机の上へと倒れ込んだ。

[Soyeon] ん……んんっ……ん……ん……

[Narration] 熱烈に舌をからめとろうとするキスに、杏里は体を開き、身をまかせた。

[Soyeon] …………っはあ……杏里さ……ぁん……

[Anri] すごいな……ハーバードはこんなキスも教えてくれるんだ? 

[Soyeon] 杏里さんのバカ……あたし、寂しかったんですよ? 何度も何度もメールを出したのに……

[Anri] ちゃんとぜんぶ目を通していたよ。キミがどんどん成長している様子がわかって、嬉しかった。自分をふりかえって、すこし、焦りもしたけどね。

[Soyeon] 勉強は楽しかったけど、杏里さんのいない毎日が、どれだけ辛かったか……

[Anri] ん……ごめんよ……

[Narration] 杏里はソヨンを両頬をはさみこんでじっと見つめると、額に口づけた。

[Soyeon] 返事をくれなかったのは、許してあげます……でも、まさかまた、新しい恋人を作ったりはしていないでしょうね?

[Anri] …………えーと。

[Soyeon] …………やっぱり……!

[Narration] ソヨンは、杏里の胸に頭を乗せて、深いためいきをついた。そんなソヨンの頭を、杏里は優しくなでおろす。

[Soyeon] 本当にしょうがない人……でも嘘がつけない性格は変わっていないのですね。

[Narration] それでも、杏里の腕にくるまれ、ソヨンは安堵したようだった。

[Anri] きみは? 浮気した? ハーバードには、きっと優秀で可愛い子がいっぱい……

[Soyeon] バカ。

[Soyeon] わたしは、杏里・アンリエットだけになつく、一匹の子猫です。

[Anri] ん……

[Soyeon] ……そういえば、ヤーンはどうしています?

[Anri] とっても元気さ。もうすっかり、かなえさんの使い魔だよ。そのうち、ミキサー猫に改造されちゃうかもしれないな。

[Soyeon] あら……天京院さん、あんなに嫌がってらしたのに……杏里さんがつれなくするから、きっと寂しいんですよ?

[Anri] んー。毎日、顔は会わせてるけどなあ。

[Soyeon] そ、れ、で、も。

[Soyeon] 杏里さん、まだわかっていないんですね?本当に……いつまでも子供のような人。

[Soyeon] いいです。今、この時は、あたしだけの杏里・アンリエットですよ……

[Anri] ああ、ソヨン……

[Narration] ソヨンは杏里の襟元をあけてキスマークを残しながら、バックルをゆるめ、スラックスを脱がしてしまう。

[Narration] 負けじと脱がせようとする杏里の手も、そのひたむきな攻勢に、押されぎみだ。

[Anri] ……ソヨン。そんなに急がないで、ボクらの時間は、また始まったばかりじゃないか……

[Soyeon] ダメですよ……ハァ……ハァ……あたし……ずっと……ずうっと、杏里さんが欲しくてたまらなかったんです。

[Soyeon] 杏里さんのここだって……ほら……もうこんなにぬるぬるして……

[Anri] んっ……ボクだって、どんなに今日が待ち遠しかったか……昨夜からずっとドキドキしていたんだ……

[Soyeon] 本当に……? それで、こんな場所で居眠りしていたんですか……くすっ……杏里さんらしい……

[Anri] ん……あっ……ああっ……とっても……上手だよソヨン……すごい……

[Soyeon] はい……習った先生が良かったですから……

[Anri] そんなキミも、今や一人の教師か……

[Soyeon] ええ。ファン・ソヨンはもう、学生ではありません。だから、こんなことを教えてあげたりも……できます……

[Anri] うン……っ……ハっ、あっ、ああっ……いいよ……うっ……ううンっ……すごく感じる……ソヨン……た、たまらないや……

[Soyeon] 杏里さん……いえ……学園長……?

[Anri] ハァッ……ハァッ……な、なに……?あらたまって……うンっ…!

[Soyeon] あたし……レイチェル先生の記録を更新して、ポーラースターの最年少講師となったそうですね……

[Anri] へ、へえ……そう……っ……?

[Soyeon] 確かにあたしも必死になって頑張りましたけれど……まさか、学園長が教師試験に手心を加えたりなんてことは……?

[Anri] ……さ、さあ……別に……

[Soyeon] ……本当……ですか?

[Anri] ひゃっ……うくっ……し、してない……はぁっ……してないったら……

[Soyeon] ………………

[Anri] ……あっ……そ、そんな……一緒に耳を噛んだりしたら……だめだよ……あっ……ああっ……ごめん……実は……した……しました……

[Soyeon] ……やっぱり……

[Anri] で、でも……結局、駄目だったんだ……船長にバレちゃってさ……

[Soyeon] え……っ?

[Anri] ほうぼうの有名教授に書かせた推薦文、ぜんぶ破り捨てられたよ……だから、きみが実力で試験に受かった時は……本当に嬉しかった……

[Soyeon] さすが船長……まだまだ健在ですね。

[Anri] おかげでこっちは毎日大変さ。PSと指導部と船長、そんなこわもてに囲まれて……まさに中間管理職さ……

[Soyeon] ふふ……お仕事ご苦労さまです……で、も……そんなズルをした杏里さんは、おしおきです……

[Anri] そんなぁ……堪忍しておくれよソヨン……

[Soyeon] ……この船で杏里さんと過ごしたあいだに、あたし……何回イかされたでしょうね……?覚えています?

[Anri] そんな……か、数え切れないよ……二人きりの時は……さ……いつもだったから……

[Soyeon] ええ……そうです。あたしがいくら、もう寝ましょうって言っても、やめてくれませんでしたよね……風邪をひかれた時だって、添い寝してほしいだなんて言って……

[Soyeon] そうして、あたしばかり何度も何度もイかされて……ひどい人……

[Anri] だって……きみが可愛くて仕方なかったんだ……

[Soyeon] じゃあ杏里さん……? 今度はあたしが杏里さんをイかせてあげます……足腰が立たなくなるまで……数え切れないくらい、たっぷり……

[Anri] ええ……数え切れないって……一体?……数えられないくらいか……だね……そっか……

[Soyeon] いいですか、杏里さん……子猫はね、いつかメス猫になるんですよ……?

[Anri] 今だって、ソヨンはボクの子猫ちゃんだよ。

[Soyeon] ……はい……嬉しい……

[Narration] 突然カリヨンの調べが教室に響きわたった。二人はびくりと、身を硬くする。

[Anri] あっ……大変だ。午後の授業が。ごめんソヨン、この続きはまた夜に……

[Soyeon] ……杏里さんは、あたしが授業がある時でも、ベッドから離してくれませんでしたよ……?

[Anri] そ、それとこれとは───

[Soyeon] だぁめ……さあ、イッてください……杏里さん……天国をお見せしましょうか……? それとも地獄がお好きですか……?

[Narration] そうするうちにも、学生たちの笑いさざめく声が教室に近づいてきた。

[Anri] ソ、ソヨンっ頼むよっ……そ、そうだ、扉に鍵を……施錠ッ!

[Narration] 杏里が指を鳴らすと、大教室のすべての扉が勢いよく開かれた。

[Anri] 違うっ! 閉めるんだってのに!このポンコツ! 施錠、施錠、施錠ッ!

[Narration] ムキになり杏里が何度も指を鳴らすと、今度は黒板のスクリーンに光が灯った。

[Narration] 室内カメラがパンし、二人の寝そべる長机がスクリーンに大写しになる。

[Anri] うわあっ

[Narration] 少女たちは、物音にいぶかりながらも続々と教室に入室してきた。二人はガヤガヤとした賑わいに取り囲まれた。

[Narration] 広大な黒板いっぱいに投影された、学園長と教師の痴態に、少女たちは息を呑み、頬を赤らめながらも、くいいるように見いった。

[Anri] ソヨン……ねえっ……みんなに見られてるよ……っ!?

[Soyeon] そう……みんな、熱心なんですね……

[Soyeon] いいじゃないですか、杏里さん……?恥ずかしいけど、いい機会ですし……お嬢様たちに、愛について教えてあげましょう……?

[Anri] ちょっとソヨンッ……本当にまずいよっ……あっ……あっ、ああっ……また……すごいっ……どこでこんな事……じゃなくて……ううっ……ハッ……ハァ……ッ!

[Soyeon] うふ……ふふ……どうです……こういうの? 体がフワって浮きません……? 杏里さんも知らなかったでしょう? こんな感じ……

[Soyeon] ふぅっ……ふふっ……あたし、人間の体のこと、いっぱい勉強したんです……博士号はね……ダテじゃないんです……

[Anri] あっ……ソヨン……だめだったら……また船長に怒られちゃうから……あっ、ああっ……いけないよソヨン……ソ……!

[Anri] ………あっ……あああああああ……ッ!!

sapphism_no_gensou/1396.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)