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sapphism_no_gensou:1391

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[Narration] ───ガラパーティの当日。

[Narration] 杏里と天京院は二人揃って、パーティ会場に現れた。

[Narration] 学園長による挨拶は

[Narration] 「食え、飲め、騒げ!───以上!」

[Narration] ……と例によって10秒かからず終わり、会場はたちまち賑々しい雰囲気に包まれた。

[Narration] パーティは制服での参加が基本だが、中にはきらびやかなドレスに身を包んだ少女たちが、チラホラと混じっている。

[Tenkyouin] ミス・ポーラースター・コンテストか……

[Tenkyouin] ファーストレディになれるジンクスがあるという、アレだな。

[Tenkyouin] 杏里、今夜はよそ見している余裕はないからな。

[Anri] …………

[Narration] 言われずとも、杏里はソヨンの姿を会場に求めてきょろきょろと目を凝らしている。

[Narration] 小一時間ほど前に、クローエから直接連絡があり、パーティには出席する、一緒に会場へ向かうということだった。

[Narration] しかし、今この場にクローエの姿も無いということは、なかなかソヨンのふんぎりがつかず、まだ部屋を出られていないのではないか───

[Narration] そんな不安が杏里の胸中に満ちた。

[Anri] …………ソヨン…………

[Narration] 天京院はそんな杏里の横顔を、無表情で見つめていた。

[Narration] そんな二人の前に、一人の少女が現れた。

[Unknown] おふたりとも。マティーニはいかがですか?

[Narration] 黒いドレスの少女は、優雅な身のこなしで二人にグラスを差し出した。

[Tenkyouin] ふむ。景気づけに一杯いただこう。

[Unknown] そちらの方も、どうぞ?

[Anri] ありがとう。マドモアゼル。

[Narration] 少女は、天京院の横に立つと、上から下まで、値踏みするようにしげしげと観察した。

[Tenkyouin] ……何?

[Unknown] たいそう変わったドレスですのね?長い黒髪との組み合わせが、エキゾチックでお人形のよう……

[Tenkyouin] あ?

[Unknown] それでも、わたくし優勝はお譲りしませんことよ?

[Tenkyouin] いや、これはあたしの普段着で別にコンテストに出るわけじゃない。

[Unknown] まあ、ご冗談を?うふふっ、うふふふっ。

[Unknown] さっ、おふたりとも、そんなしんみりとした顔をなさらずに乾杯しましょう?

[Anri] ……そうだよね。せっかくのパーティなんだもの。

[Tenkyouin] やれやれ……杏里は杏里か。何に乾杯するんだい?

[Unknown] そうですわね。では……それぞれの信じるものに。

[Anri] うん、いいよ。じゃあボクは……

[Anri] ───少女の美を司る女神に。

[Tenkyouin] ───科学に。

[Unknown] ───出会いと、別れに。

[Narration] 三人はグラスを重ね会わせると、一気にあおった。

[Narration] ついでに、杏里とドレスの少女は、グラスをあけるなり、揃って床に叩きつける。

[Narration] パシャーン!

[Tenkyouin] お、おい?

[Anri] あはははははっ!

[Unknown] アハッ、アッハハハハッ

[Anri] ありがとう、ニコル。着てくれたんだね……とっても似合ってる!

[Nicolle] プレゼントはもらったらすぐリボンをほどくもんさね。

[Anri] とっても似合ってるよ?ニコル。

[Tenkyouin] に……ににっ、ニコルぅ!?

[Narration] 髪を編み上げた少女は、目を白黒させている天京院を見てニヤリとした。

[Anri] なんだかなえさん、気づいてなかったのかい?

[Nicolle] 眼鏡変えたほうがよくない?

[Tenkyouin] 気づくかっ?

[Collone] ウォンッ

[Anri] やあ、コローネもおめかしだ。

[Anri] うん。ドレスをまとったきみを見ると、初めて出逢った晩のことを思い出すよ。

[Nicolle] あたしも、めらめらと怒りが湧いてくる。あんなくやしい晩は無かった!

[Anri] あははっそれで、出会いと別れかい?

[Nicolle] まあね〜。

[Nicolle] ふふん、このぶんなら、優勝も貰ったかな?

[Narration] 少女の変貌ぶりに天京院がまだ目をパチクリしているところへ、クローエが現れた。

[Chloe] 杏里!

[Narration] ちょうど、ミスコンテストの実行委員らしき学生が、エントリーの締め切りが迫った旨を呼びかけている

[Nicolle] まあ、エントリーしそびれてしまいます。皆さんも、お賭けになるなら今のうちですことよ。

[Nicolle] それでは、ごめんあそばせ?

[Anri] うん、幸運をね。

[Nicolle] アンリエットさんこそ。最後の大逆転を期待しておりますわ。

[Narration] 少女はドレスの裾をつまんで挨拶して、その場を去っていった。

[Chloe] コローネ……?

[Chloe] 今のだれ?

[Tenkyouin] ……あいつ、まさかこの日のためにわざと……

[Anri] 倍率高そうだものね。

[Chloe] ……?

[Chloe] それより、杏里あなた、こんなところで何を?

[Anri] ……えっ?きみたちを待っていたんだけれど……ソヨンは? 一緒じゃないの?

[Chloe] ソヨンは……杏里、あなたに呼ばれて……

[Chloe] ……しまった!

[Narration] 緊迫した空気が流れる。

[Tenkyouin] ソヨンはどこへ呼び出された?

[Narration] 天京院がすかさず訊ねる。

[Chloe] 杏里の部屋よ!そう行って出ていったわ!

[Chloe] 杏里、あなた自身が電話してきたんじゃないの!

[Anri] ボク、そんなことしてないよ!

[Tenkyouin] だろうな。杏里、きみの声、どこかでサンプリングされたぞ。

[Anri] なんだって!?

[Tenkyouin] クローエ、杏里、今すぐ部屋に急行して……

[Narration] さらに、その場に小さな顔ぶれが揃う───

[Clare] あれっ、杏里先輩?ソヨンちゃんはーっ?

[Narration] ビジターズの3人は、素っ頓狂な声をあげる。

[Chloe] ソヨンと会ったの?どこで?

[Mirriela] 杏里先輩の部屋の近くです。でも、場所が変わったからって……

[Coe] ソヨンちゃん、手にメモを持っていたみたいだよ?

[Chloe] じゃあ……ソヨンがどこへ行ったか、誰も知らないのね?

[Tenkyouin] 線が切れた。

[Chloe] どうする杏里。

[Anri] もちろん、ソヨンを捜す!

[Anri] 手分けして行こう!ボクとクローエは───

[Tenkyouin] ……いや、待った。

[Anri] えっ!?

[Narration] 彼女たちの凝視する視線を受けながら、一人の教師が近づく。

[Rachel] ごきげんよう、みなさん。楽しんでいらっしゃるかしら?

[Tenkyouin] …………

[Narration] 思わず身構えるクローエや、ビジターズをよそに、杏里は平然とその教師を迎えた。

[Rachel] こんばんは、杏里さん?

[Anri] こんばんは、先生。

[Anri] それがあまり、楽しくないんです。たった一人の笑顔が足りないだけで。

[Rachel] あら、そうなの?私じゃ駄目かしら?

[Anri] えっ?ん〜、じゃあ特別に。

[Chloe] 馬鹿。

[Narration] 一段から、天京院が進み出た。

[Tenkyouin] ───レイチェル。話がある。

[Rachel] なにかしら? 天京院さん?

[Tenkyouin] 大事な話だ。

[Narration] 対峙する二人を、彼女らが鋭い視線で取り囲むと、その異質な空気は、たちまちパーティ会場に伝播した。

[Narration] かしましい声をあげていた少女たちも、なにごとかと声を潜める。

[Narration] 静まり返った、パーティ会場。何か勘違いしたらしい照明係が、スポットライトを二人になげかける。

[Tenkyouin] ちょうどいい!会場にお集まりの皆さんにも聴いていただきたい!

[Tenkyouin] ポーラースター号・連続婦女暴行事件の顛末を耳に入れたくはないか!?

[Helena] 天京院さん?

[Nicolle] 来た来た来た!

[Nicolle] ……でもどーせなら、コンテストのあとでさあ……

[Eliza] 杏里様……

[Niki] …………

[Sophia] クライマックスね?

[Anne Shirley] 痛快ロックンロール通りってあったわ?

[Rachel] …………

[Narration] レイチェルはニコニコしながら、事の成り行きを見比べている。

[Tenkyouin] 杏里・アンリエットと、ファン・ソヨン、そしてあたし、天京院鼎にて結成したあー……

[Anri] 杏里&ソヨン探偵社っ

[Anri] ASR、ASRっ

[Anri] ポーラースター調査委員会?

[Anri] アソカだーんっ

[Tenkyouin] 「杏里&ソヨン探偵社」の調査結果を報告しよう!

[Tenkyouin] 「ASR」の調査結果を報告しよう!

[Tenkyouin] 「ポーラースター調査委員会」の調査結果を報告しよう!

[Tenkyouin] 「アソカ団」の調査結果を報告しよう!

[Tenkyouin] 実に6人の被害者を出し、学園の少女たちを恐怖のどん底につき落とした、その真犯人を紹介する───!

[Tenkyouin] 真犯人は───ん?

[Anri] (……もういいの? かなえさんっ?)

[Tenkyouin] (今はとにかく 足止めするっ)

[Anri] (じゃ、じゃあ、 あれやらせてよ!)

[Tenkyouin] (なにぃ? しょうがない奴だな)

[Narration] こそこそ話をしていた杏里が一歩前に出る。

[Narration] 心地よさげにスポットライトを浴びて、杏里は声高に叫んだ。

[Anri] 真犯人を紹介する!

[Anri] 幾多の少女たちをその毒牙にかけた真犯人は……あなただっ!

[Narration] 杏里はずびしっと相手の胸先を指さす!

[Anri] ───レイチェル・フォックス!

[Narration] 一瞬の沈黙の後、驚きの声、歓声、そして杏里への非難、さまざまな声が一斉に降り注いだ。

[Narration] レイチェルは悲しげな顔で、抗弁した。

[Rachel] あ、杏里さん?ご冗談はよして?

[Anri] いいえ、冗談などではありません。ボクらの三週間の捜査の成果です!

[Tenkyouin] ───杏里、まずい!

[Narration] パーティ会場の外に詰めていたPSたちが、騒ぎを聞きつけてぞろぞろやってきた。

[Chloe] 杏里!

[Narration] とっさに杏里は叫ぶ。

[Anri] 学園長、聞いてらっしゃいますよね!?

[Narration] テーブルにあぐらをかいて一升瓶を抱えていた学園長は、彼女らに背を向けたまま手を振った。

[Principal] んー、聞いてるよん。

[Principal] 言わせてやりな。今日は無礼講のはずだよ。何を言っても不敬にはあたらない。

[Narration] そう言って、学園長は手の中の杯に酒をつぎ足した。

[Anri] さすが、学園長!ありがとうございます!それじゃ遠慮なく。

[Narration] 歯噛みするPSを尻目に、杏里はレイチェルへの告発を続けた。

[Rachel] 証拠はあるのかしら?

[Anri] そう来ると思いましたよ!かなえさん、タッチ!

[Tenkyouin] ほんとにいいとこ取りな奴だ。

[Tenkyouin] それじゃあ、レイチェル、

[Tenkyouin] あたしは、あなたの動機にはもともと興味が無い。

[Tenkyouin] それでも、あなたが、いつどうやって、この犯行に及んだか、状況証拠だけで、じゅうぶん立証は可能なんだ。

[Tenkyouin] それをここにいる方々にも、わかりやすく説明しようじゃないか。

[Rachel] ……それはどうかしら?

[Tenkyouin] まず、第一の重要なヒントは───

[Narration] ドゴ───ン……ッ………

[Narration] 床から伝わるかすかな振動、さらに遠くから響いてくる轟音。大窓はびりびりと震えた。

[Tenkyouin] ……今のは!

[Narration] 色めき立つPSに、学園長が杯をふりまわし、きびきびと指示を出している。

[Rachel] ウフフ?今のは、ほんの威嚇なの。

[Narration] 船内に火災を報せるサイレンが鳴り響きだす。

[Tenkyouin] レイチェルッ、あなただったのか!

[Anri] どういうこと?

[Narration] 背後からじりじりと近づいてクローエをレイチェルはさっと一瞥する。

[Rachel] おっと……いけない、杏里さんやクローエさん?もちろんPSの方たちも動かないでね?

[Rachel] 次は杏里さんの大切な恋人が、自分の頭を捜して、さまよう羽目になるわよ?

[Anri] ソ……ソヨン……ッ!?

[Rachel] それとも、みんな一緒に粉々になりたいかしら?あとくされなく。

[Anri] 答えてよ、レイチェル先生っ!ソヨンのことなの?

[Narration] レイチェルは杏里の焦りようをニヤニヤしながら眺めている。

[Rachel] ハイ、みなさん、ご注目くださーい?

[Rachel] 発表します。なんと私、レイチェル・フォックスは船内の八ヶ所に爆弾を仕掛けちゃいました。

[Rachel] そのうちの一つは、中央制御室のすぐそば!

[Rachel] しかもたった今、大爆発しました!

[Rachel] キャーッ!

[Rachel] きっと、大騒ぎになっているでしょうねえ……

[Tenkyouin] おいっ! 寝ずにあんたを追いつめる推理を考えた、あたしの立場は!?

[Rachel] ごめんなさい、天京院さん。だって、私にとっては全てわかりきった事で、聞くだけ退屈なんですもの。

[Rachel] 爆弾はあと7ヶ所に残っていまーす。起爆装置を握っているのはもちろん、わ・た・し。

[Rachel] 嘘じゃないのよ?それを判っていただくためにも、30分後から5分ごとに1個ずつ爆発しまぁーす。

[Rachel] 特に最後のはすごいわよ。ポーラースターが沈んじゃうかもしれないわね?

[Rachel] じゃ、先生はこれでサヨナラしますけれど、追いかけようだなんて、考えないでね? 皆さんの為にならないから。

[Rachel] この大講堂でじっとしているかぎりは、安全よ? た・ぶ・ん。

[Rachel] じゃあね、バイバーイ!

sapphism_no_gensou/1391.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)