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sapphism_no_gensou:1341

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[Narration] ポーラースター少女探偵団による、レイチェル・フォックス尾行作戦は失敗に終わった。

[Narration] こうしている間にも、杏里の退学タイムリミットは刻一刻と近づいている。

[Clare] ……とりあえず、杏里先輩はいっそ退学になっちゃった方がいいんじゃないかな?

[Mirriela] あの壊れっぷりを見ているとねぇ。

[Narration] 教員室を見張る3人の後ろで、杏里は画用紙にクレヨンで「ソヨン」と題した絵を描いていた。

[Narration] できあがるたび、その絵に向かって「ボクが悪かった」だの「まだ愛してるんだ」などと呼びかけている。

[Mirriela] でも、それもソヨンちゃんに嫌われたのが、本当にショックだったんだと思えば……。

[Coe] でも、嫌われるようなことしたからいけないんだよ?

[Eliza] ほらほら杏里様、制服にクレヨンがついてしまいますよ?

[Narration] イライザにクレヨンを取り上げられてめそめそしている杏里は、見ていてかなりやばかった。

[Narration] ……というより、人間として見ていて辛かった。

[Clare] ソヨンちゃんも相変わらずだし、やっぱりわたし達が頑張るしか道はないのよ!

[Coe] ……でも、こうして見張ってるだけで証拠が見つけられるのかなぁ?

[Narration] クレアとミリエラも、それは痛切に感じていた。

[Narration] 打開策が必要なのは確かだ。

[Narration] 何かを考えていたミリエラが、ふたりを誘う。

[Mirriela] ……ちょっといいか?

[Narration] 3人は、コーの部屋に集まって作戦会議を開いていた。

[Clare] ……強襲作戦!?

[Narration] その大胆なアイデアに、クレアが目を丸くした。

[Mirriela] ……といっても、腕力でケリをつけようと言ってんじゃないぜ?

[Mirriela] ただ尾行するんじゃなく、尻尾を出しそうな状況を、こっちから作ろうって計画なんだ。

[Coe] そーだね、このままじゃ、ずーっとかわんないもんね。

[Narration] ただ見張りを続けるだけの単調な行動に退屈していたコーは、即座に賛成した。

[Mirriela] クレアはどう思う?

[Clare] 危険はないかしら?

[Mirriela] それは、これから作戦を決めるときに考えることさ。

[Mirriela] まずは、やるか、やらないかだ。

[Clare] うん……。

[Narration] クレアは慎重に考えるふりをしていたが、状況打破の計画に賛成なのは見たところ間違いない。

[Clare] わかった、やりましょう。

[Clare] でもリーダーとして、危険なことは許可できないわ。作戦はあくまで慎重に、よ?

[Mirriela] ……いつからクレアがリーダーに?

[Clare] え? ……最初からそうじゃない。

[Coe] ほへ?そうなってたの?

[Mirriela] 異議があるぞ。選挙をやってない。

[Clare] 3人で選挙はないでしょ?

[Coe] でもそれは民衆にあたえられた権利なんだよ。

[Clare] ……だって、わたし以外の誰がリーダーをできるのよ!?

[Mirriela] いや、ちょっと、ちょっと待て……!

[Narration] ミリエラは全員の発言を手で制した。

[Mirriela] 異議はあるけど、この問題については後でまた話し合おう。

[Mirriela] いまは、あの先生をどういう罠にかけるか、それを話し合うべきだ。

[Clare] ……そうね、時間もないし。

[Coe] それでいいよ。

[Mirriela] さて、そうと決まったものの、どういった作戦を展開したもんかな──。

[Coe] あ、いいことかんがえた!

[Narration] 手を挙げたコーに視線が集まる。

[Coe] お洋服を着換えるようにさせて、それを覗けばいいよ。

[Clare] 着換え……?

[Mirriela] 悪くないけど……どうやって?

[Coe] ん〜、ジュースを引っかけちゃうのは?

[Clare] そうねぇ……でも、上着をかえるぐらいの汚れじゃ意味がないわよ?

[Mirriela] そうだ。できれば裸にならないといけないぐらいのがいい。

[Coe] じゃあ……10リットルぐらい?

[Clare] ……どういう状況で、10リットルもジュースを引っかけられるのよ……。

[Clare] 他の方法を考えるべきじゃない?

[Narration] 3人はしばらく押し黙り、うーん、と考え込んだ。

[Narration] やがて、ミリエラがポンと手を打つ。

[Mirriela] ──プールに誘い出そう!

[Tenkyouin] ……なるほど、大胆なことを考えたな。

[Narration] 3人の作戦を聞いた天京院は、素早く内容をシミュレートした。

[Tenkyouin] 成功すれば効果的なうえに、失敗した時のリスクも低めだ。

[Tenkyouin] 証拠を掴んだ場合、即座に逃げる準備をしておかないとまずいが……。

[Mirriela] じゃあ、いいですね?

[Narration] 意気込むミリエラを、ちょっと待てと制する。

[Tenkyouin] ソフィア教授の屋外授業を見てみたい──そう言って、レイチェル教員にプールまで案内させるのはわかった。

[Tenkyouin] そこからプールに、彼女を突き落とすのは?

[Clare] ジャンケンで負けたコーがやります。

[Coe] がんばるー。

[Tenkyouin] じゃれつくふりをして突き落とす。更衣室で着換えるように誘導する。それを覗く。

[Tenkyouin] 万が一のときは、ソフィア教授の授業に出ている学生に助けを求めるんだな?

[Mirriela] そういう事態にはなりたくないけどさ。

[Tenkyouin] そうだな。どっちにしろ気づかれた場合は、逃走を最優先にしたまえ。

[Tenkyouin] ……焚き付けたのはあたしだが、君らに何かあれば杏里にもソヨンにも顔向けができない。

[Tenkyouin] ……本当なら、こういう強引な作戦の時こそ杏里に頼みたいところだが……。

[Clare] いえ、わたし達がやります。だって、わたし達の作戦だから!

[Narration] 顔を輝かせて宣言する少女たちに、天京院はただ笑顔だけを向けた。

[Tenkyouin] そうか──健闘を祈る!

[Narration] 明かに元気なく、とぼとぼと歩いていたソヨンは、背後からかけられた明るい呼び声に振り向いた。

[Soyeon] あ……み、みんな?

[Clare] ソヨンちゃん、元気出してね?

[Mirriela] あたしたちも、頑張るからさ!

[Coe] じゃあ、急いでるからまたねー!

[Soyeon] あっ、ちょっと……。

[Soyeon] ……頑張るって……?

[Narration] ギリシア建築風に造られた、どこか異世界のような風景のプールは、その見た目から、水泳以外の目的に使用されることも多々あった。

[Narration] 本日の役目は──陰謀である。

[Narration] もうすぐ、クレアがレイチェルを連れてくるはずだ。

[Narration] コーは頭の中で、何度も何度も行動計画を繰り返していた。

[Coe] (……この作戦を成功させて……)

[Coe] (ソヨンちゃんからの信頼あーっぷ。さらに3人の中でのリーダー資質をしめして、うまくいけば学園のえーゆーにもなれるかもしんない……)

[Coe] (ふっふっふっ、ちょろいもんよー)

[Narration] ──と、コーが取らぬ狸の何とやらを妄想していると、クレアとレイチェルの声が聞こえてきた。

[Coe] きたきた……。

[Narration] 計画はばっちりだ。飛び出すタイミングはクレアが台詞で教えてくれる。

[Narration] そうしたら、全力で突っ込むだけだ。

[Coe] (おちつけおちつけおちつけ……)

[Narration] クレアの声が、柱の向こうにハッキリ聞こえるようになってきた。

[Clare] すいません、先生。わざわざ案内してもらっちゃって……。

[Rachel] いいのよ、大事な教え子だもの。

[Clare] 先生って、話しやすいから……。つい、お願いしちゃうんです。

[Rachel] あらー、嬉しいわね。

[Coe] (もーすぐだ……)

[Clare] でも、今日も暑いですね。

[Narration] クレアの口から、準備せよ──のメッセージが放たれた。

[Clare] でも、明日は雨かな?

[Coe] (ここだーっ!)

[Narration] 柱の影から、思いっきりコーは飛び出した。

[Coe] わーい、わーい、レイチェルせんせーっ!

[Rachel] ──えっ?

[Rachel] きゃあっ!?

[Narration] スピード、タイミング、すべてが計画どおりの、完璧な体当たりだった。

[Narration] しかし、誤算がひとつだけ。決定的なものがあった。

[Narration] ……コーの体重は軽かったのである……。

[Narration] ばっしゃーんっ!!!

[Clare] あーっ、コー!?

[Rachel] た、たいへんっ!

[Narration] 体格の差に跳ね返されて、自分がプールの中に沈んでいったコーは、意識の片隅で冷静に考えていた。

[Coe] あー、そりゃそーだよねー。

[Narration] 後の祭であった。

[Narration] プールに落ちたコーはすぐに助けられたものの、とうぜんびしょぬれだった。

[Narration] レイチェルはすぐさまコーを抱きかかえると、更衣室に走った。

[Narration] 濡れたままでいると風邪をひく──と、言いながら。

[Clare] ……それで、さっき、更衣室に入っていったんだけど……。

[Mirriela] 体重差は考えてなかったな。……けど、そうすると見かけより重いのかな、あの先生?

[Clare] ……それより、コーはどうする?

[Mirriela] どうするって……どうにもならないだろ?

[Coe] ああんっ、せんせー、自分でできるよー!

[Narration] 先ほどから、更衣室の中ではコーとレイチェルの会話が聞こえてくるのだが、どうやらコーが不利である。

[Rachel] だーめ。ほら、こんなにビショビショ。はしたない子ねぇ……ほら逃げないの。

[Coe] そこはいーよぉ。自分でできるー、さわんないでー!

[Rachel] はーい全部ぬぎぬぎしましょうねー。

[Clare] ……コー、かわいそう。

[Mirriela] 戦いに犠牲はつきもんだからさ……。

[Rachel] ほら、こんな濡れちゃったパンツは先生がもらって、じゃなくて処分してあげるから。

[Rachel] かわりにこのシルク100%のパンツをあげましょう!

[Coe] やだー、パンツ返してー!

[Narration] ……作戦は失敗した。

sapphism_no_gensou/1341.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)