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sapphism_no_gensou:1331

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[Coe] ねぇねぇ杏里さん、ソヨンちゃんに嫌われたってほんとー?

[Narration] 容赦ないコーの質問が聞こえているのかいないのか。

[Narration] 杏里は水平線の彼方を眺めながら口笛で、真っ赤なスカーフを吹いていた。

[Eliza] ……本当です。

[Narration] 代わりに答えたのは影のように付き従うメイドのイライザであった。

[Eliza] 詳しいことは杏里様の名誉のため伏せますが──。

[Clare] ソヨンちゃんを眠らせて、エッチなことしたって聞いたけど?

[Eliza] ……伏せますが、とにかくファン・ソヨン様は現在、杏里様を避けておられます。

[Eliza] 杏里様は精神的ショックで行動がおかしくなられて……。

[Mirriela] もともと普通じゃなかったけど。

[Eliza] ……おかしくなられて、いまはあの有り様です。

[Narration] イライザの視線の先で、杏里は「い〜い〜じゃないか〜」と壊れたレコードのように繰り返していた。

[Eliza] 今朝もパンに皿を挟もうとするし、紅茶に醤油を混ぜるし、とても目が離せません。

[Eliza] どうやら目先の衝撃に何もかも吹き飛んでしまったようで、退学回避の努力も犯人捜索の意欲もすっかり抜け落ちてしまいました。

[Eliza] いまの杏里様は、ただのふぬけですわ。

[Clare] じゃあ、どうなるの?

[Mirriela] このままじゃ杏里先輩は退学。ソヨンちゃんの、これまでの努力も水の泡……。

[Coe] 杏里さんはじごーじとくだけど、ソヨンちゃんかわいそうね……。

[Narration] とうとうカモメに語りかけ始めた杏里は放っておいて、3人娘はスクラムを組んだ。

[Clare] 今度襲われたのって、アルマ先輩だったんでしょう?

[Mirriela] ソヨンちゃんも仲が良かったみたいだから、ショックだろうな。

[Coe] コーたちにも会いにきてくれないの、それでかなぁ……。

[Narration] 3人はいったん、ショボンとなりかけ、お互いの顔を見合わせた。

[Mirriela] ……このまま放っておいていいのかよ?

[Clare] よくない。ソヨンちゃんのために、わたし達にできることをやろうよ!

[Coe] できることって?

[Narration] ミリエラが力強く断言した。

[Mirriela] 犯人を、あたし達が捕まえるんだ。

[Narration] 3人の視線はイライザに向けられた。

[Mirriela] イライザさん、これまで杏里先輩たちのやってきた捜査って、どうなってたかわかりますか?

[Eliza] ……いえ、私は捜査の経過までは聞いておりません。

[Eliza] 杏里様がこの状態ですと、わかるのはソヨン様と天京院様だけでしょうね。

[Mirriela] 天京院先輩か。……訪ねていって、教えてくれるかな?

[Coe] ぶちあたって玉砕してみよー。

[Clare] ソヨンちゃんが会いにきてくれないなら、天京院先輩に頼るしかないんでしょう?

[Clare] ダメでもともと、やってみようよ!

[Coe] わあ、コーたち探偵になるんだね?

[Mirriela] まあ、そうなるかな?

[Clare] ポーラースター少女探偵団の結成よ!

[Narration] そしてリーダーは自分……と3人同時に考えながら、彼女たちは壊れた杏里にかわって真理に挑む、探偵となる道を選んだのだった。

[Anri] い〜い〜じゃないか〜……

[Tenkyouin] なるほど、杏里の壊れっぷりも相当なものだな……。

[Narration] 意外にも3人をこころよく迎えてくれた天京院は、杏里の様子を聞いてさすがにため息をついた。

[Clare] ふらふらしているんだけど、自分ではエレベーターにも乗れなくて。

[Clare] イライザさんが、ずっとついてます。

[Tenkyouin] そうか。彼女がついているなら、最悪の事態は避けてくれるだろう。

[Tenkyouin] 餓死の心配もあるまい。

[Mirriela] 餓死……って、そんな。

[Tenkyouin] 良くも悪くも杏里はバカがつくほど純粋だ。──というより純粋なバカだ。

[Tenkyouin] 感情の起伏も激しいし、受けるショックも大きい。

[Tenkyouin] しばらく使い物にならんだろうな。

[Narration] 至極冷静に言いきって、天京院はコーヒーカップを口に運んだ。

[Mirriela] ……なんだか冷たいんですね。

[Tenkyouin] そうかな。

[Mirriela] だって杏里先輩の友達なんでしょう?それなのに、あまり気にしてないみたいだし。

[Tenkyouin] あんなことで完全にダメになるような杏里じゃないさ。

[Tenkyouin] それよりも、問題は退学までのタイムリミットだ。

[Tenkyouin] いまは1分1秒が惜しい。杏里の復活を待っている余裕はないんだが……。

[Narration] 3人は顔をあわせ、頷いた。

[Clare] わたし達に、やらせてください!

[Narration] 天京院はこの言葉を予期していたらしく、あまり驚かなかった。

[Tenkyouin] 君たちが?ビジターズクラスの君たちに、何ができるというのかね?

[Clare] それは……。

[Tenkyouin] それは?

[Clare] い、言い訳が得意です!

[Tenkyouin] ──ほう。

[Clare] これでも、遅刻の罰当番を6回も免除してもらったことがあります!

[Clare] 嘘泣きも、ソフィア先生の他には、見破られたことがありません。

[Mirriela] あたしは、度胸には自信がある。

[Mirriela] みんながパニックになっても、冷静に対処できるさ。

[Coe] コーはねぇ、かわいいもん!

[Narration] 天京院は若く未経験な勇者を見まわして感動したように手を広げた。

[Tenkyouin] ──素晴らしい! なんと役立たずだ!

[Tenkyouin] 杏里も探偵に不向きという点では人後に落ちない人物だったが、君らはそれを超えられるかもしれないぞ。

[Mirriela] でも、いまの杏里先輩よりはマシです。

[Narration] クレアらが反論する前に、ミリエラの鋭い声が通った。

[Mirriela] そうですよね、天京院先輩。

[Tenkyouin] ……その通りだ。

[Narration] そう答えた天京院の声音が、どこか面白そうに聞こえるのは気のせいだろうか?

[Tenkyouin] 正直、君たちが犯人の尻尾を捉まえられるとは思っていない。

[Tenkyouin] しかし、相手にプレッシャーを与え、時間を稼ぐことはできるかもしれない。

[Tenkyouin] 杏里があの調子でいるうちに、駄目押しをされてはオシマイだからな。

[Clare] ……じゃあ?

[Tenkyouin] おそらく正気に戻ったら、杏里は怒るだろうな。

[Tenkyouin] ファン・ソヨンにも怒られるのは確実か。だが……。

[Tenkyouin] ここまで事態を複雑にしたのは彼女たちだ。これもまた責任だと思ってもらうしかない。

[Narration] 天京院の言うことを理解できず、3人は怪訝な顔をして、唯一知りたいことだけを質問した。

[Clare] 杏里先輩とソヨンちゃんは、誰が怪しいと疑っていたんですか?

[Tenkyouin] ──あぁ、教えよう。レイチェル・フォックスだよ。

sapphism_no_gensou/1331.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)