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sapphism_no_gensou:1271

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[Narration] 時間は戻る。

[Narration] ドンドンと、せわしく扉が叩かれる。

[Narration] 必死に呼びかける声が中へと、くぐもって届く。

[Unknown] …………杏里・アンリエットか。

[Alma] …………はぁ…はぁ…はぁ………っ

[Unknown] 服を整えて、扉をあけてやれ……だが……

[Unknown] おかしな真似をすれば、お前も、奴も、二人とも殺す。

[Narration] そう冷酷に告げながら、怪人はアルマの目隠しを外した。

[Narration] 怪人の姿よりも、先にアルマの目に飛び込んできたのは、一振りのナイフだった。

[Unknown] ……いくらものを知らないお前でも、これが何かくらい解るだろう。

[Narration] 湿ったシーツに手をついてぜいぜいと息をする、アルマの目と同じ高さに、カーボンスチール製の黒い刀身のナイフがつきつけられた。

[Narration] 食卓のナイフ以外に、刃物など握ったこともないこの少女の瞳には、全長30センチに満たないナイフが、まるで大剣のように映った。

[Narration] 徹底的に無駄を削ぎ落とされ、人を切り裂くためだけに鍛造された、人類究極の兵器───

[Narration] 今にもそれは、使命を果たさんとする喜びに震え、部屋の空気を変えてしまう、どす黒いオーラを放っていた。

[Unknown] 一突きで、骨の隙間から、肺を突き破る。悲鳴をあげるヒマなどは無い。ただ死ぬだけだ。

[Unknown] この意味がわかるな……

[Alma] ……は……はい……

[Narration] 鈍痛をこらえながら、のろのろとアルマは立ち上がり、スカートをひろいあげる。

[Narration] 怪人は、ドレッサーからコロンをとると、アルマのほつれた髪へとふりかけた。

[Narration] 情事の残り香は、強い人工的な香りに、うち消される。

[Narration] アルマが扉に向かうと、怪人は壁に寄り添い、すぐにアルマに届く場所でナイフを構える。

[Narration] ナイフの尖端を一瞥してからアルマは、震える指で扉の鍵を開いた。

[Alma] いま、あけます。

[Narration] ようやく扉を叩く音が止んだ。

[Narration] 鍵を操作するうちに、アルマはふだんの微笑さえ取り戻し、夜の訪問者をむかえる顔を作っていた。

[Narration] 果たして、息を切らした杏里が顔を出した。

[Anri] ───じゃあ、本当に、何も異常は無いんだね?

[Alma] はい。すいません、これ以上、杏里様とお話ししていると、またウェルズさんが……

[Anri] ああっ、そっかぁ……でも、いい? アルマ。少しでも変わったことがあったら、すぐに連絡してよ?

[Anri] ボクは、このまま張り込みで外に出てしまうけれど、かなえさん……天京院鼎の部屋にかけてくれれば大丈夫。そこにソヨンもいるしね。

[Alma] はい……承知しました。重ね重ね、ご配慮ありがとうございます。ソヨンさんにも、どうぞよろしくお伝えください。

[Anri] うん……それじゃあ……

[Alma] おやすみなさいまし、杏里様。

[Anri] うん、よい夢をね、アルマ……いや、それも変だね……

[Anri] 考えてみたらさ、こんなふうに二人で話せる機会なんて初めてなんだ。ほんとうなら、朝までついていてあげたいんだけど……ボクは、真犯人を捕まえないといけない。

[Anri] まあ、親切にもあのウェルズさんが見張ってくれているわけだし……

[Alma] うふふ……本当に、すぐ戻られますから。

[Anri] そうだね……うん。じゃあ、とにかく、おやすみ。

[Alma] はい。おやすみなさい。

[Narration] 杏里は後ろ髪を引かれるようにして、その場を立ち去った。

[Narration] アルマの張りついた微笑の向こうで、果てしなくゆっくりと扉が閉じられていく。

[Narration] とてつもない恐怖に押しつぶされそうになりながら、アルマは我を忘れて叫び出したい衝動と闘う。

[Narration] 再び扉を叩く音が聞こえるのではないか、そんな、はかない期待を手放せないまま、アルマはぽつぽつとつぶやいた。

[Alma] もう……行ってしまわれ……ました。

[Unknown] 鍵をかけろ。

[Unknown] ウェルズはどうせ船倉賭博に入れ込んで、朝までは戻らない。

[Unknown] ……ふっ……よい夢を……ね。相違ない。

[Narration] 怪人が顎をしゃくると、アルマは示されるまま、よたよたとベッドへ向かった。

[Alma] ……ハァ、ハァ、ハァ……ああっ……

[Narration] 白い脚の合間から、アルマの破瓜の血と混じり合った、薄桃色の、ねっとりとした液体がつたい落ちた。

[Narration] 駆けのぼるあまりの不快さに、アルマはその場にくずおれてしまう。

[Alma] い……っ、いやぁ…………ッ!!!

[Narration] ぷっ、ぷぷっ、と泡だちながら、濃い液体が漏れだし、内股をしたたっていく感触は、なおも続いた。

[Narration] 床の上にうずくまり、顔を両手で覆いながら、少女はわなないた。

[Unknown] そんなところで一休みか?

[Narration] おどけたような仕草で、怪人がのぞき込み、嗚咽するアルマの腕を強引に掴みあげる。

[Alma] うっ……ううっ……っ……うっ……

[Narration] 目隠しをはずされて初めて、アルマは相手の姿をまじまじと見つめた。

[Narration] それはアルマ自身もよく知る、女性───

[Alma] フォ……フォックス先生……っ……?

[Narration] 怪人、いや、凶悪なレイプ犯、レイチェル・フォックスは、少女の脚の合間から、絨毯の中へと染みこんでいく液だまりを見おろし微笑んだ。

[Rachel] ハハッ! 俺の出したものをこぼさないよう、ずっとこらえていたのか?

[Rachel] 奴に異変をさとられないよう、命がけで?奴をかばって?

[Rachel] すばらしい、アルマ! たいへんな精神力だ! 心から賞賛しよう!

[Narration] レイチェルは、ぱっと離した手を握り拳に変えて、アルマの顔を思い切りなぐりつけた。

[Alma] あがっ……ひっ……ひぃっ……!

[Narration] どさり、と床に投げ出され、血の味が口の中へと広がった。

[Narration] レイチェルは少女の顎を押さえつけて、馬乗りになった。

[Unknown] ……そんなに杏里・アンリエットがいいのか? ええっ!? どうなんだ! お前もあいつに犯されたいのか!?

[Alma] うぐっ……ひっ…ううっ……

[Narration] 答えにならないうめきをあげるアルマに、今度は、鋭い平手が飛んだ。

[Narration] もう一度。さらに、もう一度。

[Narration] 腫れあがり、血や涙でぐしゃぐしゃになった少女の顔面に、レイチェルは頬を寄せた。

[Narration] 愛おしむようにてのひらで包み込み、自分の顔を寄せる。

[Rachel] こんなに汚れて……痛かったでしょう……? ごめんなさい……ごめんなさいね……ハミルトンさん……

[Narration] レイチェルは、アルマの顔の汚れを丁寧になめとっていく。熱く燃える頬に、ひんやりとした感触が残った。

[Alma] ひっ……ひぐっ……ど……どうして……、どうして、こんなことをなさるのです……

[Narration] 傷ついた舌をもつれさせながら、アルマはうめいた。

[Rachel] ……あなたが……とてもとても可愛いくって……仕方がないのよ…………

[Rachel] 可憐で……あどけなくて……この世の煉獄で這いずっている者たちのことなど……何も知らない……無垢そのもののフェアリィ……

[Rachel] だから……

[Rachel] どろどろに……汚してやりたくなる……!

[Narration] 柔和なレイチェルの顔つきは、見る間に別人へと変貌していく。

[Alma] ア……アイーシャさんや、ほかの方々に、乱暴をしたのも、あ、あなただったのです……ね……

[Narration] アルマの問いには直接答えぬまま、レイチェルはうっすらと笑みを浮かべた。

[Rachel] 乱暴……?…………確かに、おだやかとは言い難かったがな……

[Rachel] 教えてやろうか、アルマ。

[Rachel] 世の中には、ゆがんだ形でしか、おのれの愛情を現すことの出来ない者もいる───

[Narration] そう言うと、女教師は立ち上がり、下着の合間から、だらん、と半立ちになった肉茎を、誇示するように剥き出した。

[Narration] アルマは息を呑んだ。

[Alma] ……こ、これはまさか……殿方の……?

[Rachel] 殿方の……?アッ……ハハハハハッ……!

[Rachel] 「殿方の……?」はよかったわね。そうよ。ほんの5分ばかり前まで、あなたの一番奥の奥まで、処女膜をぶち破って、出入りしていたものよ。

[Narration] めまぐるしく入れ替わる、レイチェルの人格に、くらくらとアルマはめまいを覚えた。

[Alma] あなたは……いったい……男性なのですか……?

[Rachel] 男じゃない、しかし……女でもない。この胸も、ペニスも、自前のものさ。

[Alma] ……ヘルマ……フロディトス……

[Rachel] そう……ご存じとはね。または、アンドロギュノス(両性具有)とも言うけど……要は“ふたなり”さ。

[Rachel] 彫刻や神話の世界だけの存在じゃないの。いるのよ。どこにでも。ひっそりと、目立たないように隠れているだけ……迫害や、好奇の目を避けて。

[Rachel] ……物心ついた時からずっと、私の心は男であると叫んでいたわ……だから、こうして女として喋っているのは、作りものの私。

[Rachel] 私の両親はね、生まれたばかりの私に、よぶんな器官があるとわかった時、手術で切除して血を流すことを許さなかったのよ……

[Rachel] 神が望まないのだと、頑なに拒んでね……私の神じゃないわ、彼らの神がよ?笑わせるわ……

[Rachel] そして……ただ彼らがそうであってほしいという思いこみだけで、女として育てられた……

[Alma] ……おかわいそうに……

[Rachel] アハハハハハ……ッ!「おかわいそうに」?アハ、アッハハハハハッ……クックッ……

[Narration] レイチェルは腹を折って、けたたましい笑い声をあげた。アルマはびくりと体をふるわせた。

sapphism_no_gensou/1271.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)