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sapphism_no_gensou:1261

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[Anri] かなえさん、開けてよ!かなえさーん!

[Anri] 確かに中に気配がするのになァ……

[Narration] 杏里は不安顔で、天京院の部屋の前に立ち尽くしている。

[Eliza] きっと、お顔を見られたくないんです。

[Anri] イライザ……

[Eliza] 天京院様は、杏里様にはお逢いになりたくないと。

[Narration] イライザは、手の中にある退船勧告状を、なかなか杏里に見せることが出来ないでいた。

[Narration] PSのお偉方と、ソフィアをのぞく全教員の名前が連名でならぶ書類に対して、しぶしぶ学園長が判を押したものだ。

[Narration] それは成果を示すことの出来ない杏里への絶望を示した、学園長自身の決別状だった。

[Anri] かなえさんが……このボクに、そんな事を言うはずが……

[Eliza] ……杏里様……。

[Eliza] 荷物の用意をお手伝いいたします。誠心誠意、最後のご奉仕をさせていただきますわ。

[Anri] …………

[Narration] がっくりと、杏里は肩を落とす。

[Anri] せめて……子猫にボクの名前をつけて可愛がってあげておくれ……

[Anri] そう伝えてくれないか、イライザ。

[Eliza] はい……

[Eliza] ……ですが、杏里様の代わりは何者にも務まることはないでしょうね。

[Eliza] まいりましょう、杏里様。

[Anri] うん……さよなら、ポーラースター。

[Anri] さよなら……かなえさん……

[Narration] 天京院は杏里が撮影してきたデジカメの画像を見て、眉をひそめた。

[Anri] どう……かなえさん?

[Tenkyouin] どう……って……杏里、これは……ウェットスーツではない。

[Anri] うん、クローエもそう言っていたよ。何か特殊な用途に使うものじゃないか……って。手がかりになるかな?

[Narration] 得意気な杏里を、天京院はけげん顔で見つめている。

[Tenkyouin] 手がかりになるも何も、これはただの競泳用の水着だ。

[Anri] えっ……?

[Tenkyouin] プールのそばに水着が落ちていて、何か不思議があるか?

[Anri] …………犯人は露出狂??

[Narration] 天京院はめずらしく杏里のボケにもとりあわず、無表情のまま言った。

[Tenkyouin] すりかえられたな。

[Anri] えっ……

[Tenkyouin] ……言っただろ、杏里。相手はこちらを意識しているって。

[Tenkyouin] もっと相手に肉薄して、プレッシャーをかけるべきだ。ぐいぐいゆさぶって、冷静な判断力を失わせるべきだ。

[Tenkyouin] ……べきだった……

[Tenkyouin] すまんが、もうこれ以上力になってやることは出来ない。あたしの中ではもうケリが着いたよ。

[Tenkyouin] …………

[Anri] …………そんな。

[Tenkyouin] ……コーヒー……飲むかい?

[Anri] うん……うんと渋いやつを……

[Nicolle] …………

[Narration] 天京院の部屋の前で、扉に寄り添い、ニコルがこっそりと聞き耳を立てている。

[Narration] 杏里とソヨンが入っていった直後に、スススと廊下に姿を現したのだ。

[Nicolle] ………………

[Anne Shirley] ……聞こえるかしら?

[Nicolle] ………………

[Anne Shirley] 迎えに来るのね?

[Nicolle] ………………しっ。

[Anne Shirley] 連れていくのね?

[Nicolle] …………もうっ、邪魔するなってば。ただでさえミキサーがうるさくて、よく聞こえないんだから。

[Anne Shirley] そんなにいいところなの?

[Nicolle] なんか知らないけど、口論しているみたいだな……捜査がうまくいってないらしい。

[Nicolle] 決め手に欠けるとか何とか……

[Anne Shirley] まあっ!

[Nicolle] 静かにしろって。バレちゃうだろ?

[Anne Shirley] 昏き炎のボゲードンは感じているわ。流れ込む、この暗い感情は何?

[Anne Shirley] 人の心の奥底に眠る、悲しみ、絶望、嫉妬、虚栄、そして……茶渋は塩をひとつまみ入れて洗うとよく落ちるの!

[Nicolle] あ、カナエが、杏里を平手でなぐったっぽい! なんだか痴話喧嘩じみてきたぞ……

[Anne Shirley] ええっ! 人生は無意味、真実は虚空の中に、魂に刺さる痛みこそ価値ある賜り物である、そして……ツモ! メンタンピンドラドラ!? いいから脱げったら脱げ!

[Nicolle] やかましってーのっ───うひゃっ!

[Narration] 扉が突然開いて、杏里が飛び出した。

[Anri] わぁぁっ!嘘だと言ってよぉ! かなえさん!

[Narration] 杏里は泣きながら、走っていった。

[Soyeon] ふぇ……ひっくひっく…!嘘と言ってください!天京院先輩……っ!

[Narration] ソヨンも泣きながら走っていった。

[Nicolle] おい、ソヨ……あっ転んだ。……おお、起きた起きた。走った走った。

[Nicolle] 杏里、ソヨン……あーあ……

[Anne Shirley] ええっ!K−1は足を狙えば勝利間違いなし?

sapphism_no_gensou/1261.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)