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sapphism_no_gensou:1252

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[Narration] イランイランの香りの充満した部屋で、二人はこれまで幾度かしてきたように、ほんのわずかな装身具を残して、裸になった。

[Narration] 杏里の前にさらされた白い裸身は、意外なほどにグラマラスで、普段のつんつるてんの制服姿からは想像もつかぬ発育ぶりを見せつける。

[Anri] いいかい、ニキ……ボクらは自由だ……同時に、愛という鎖で結ばれている。

[Anri] 今ここにいるのは、みんなの杏里・アンリエットじゃない……ニキだけの杏里・アンリエットなんだ。

[Niki] わたし…だけ……の……?

[Anri] ……うん。そしてキミも───

[Niki] 杏里……だけの……ニキ……バルト……レッティ……

[Niki] 本当……?……今夜だけ……でも……嬉しい……

[Anri] さあ心を解き放って、なんでも望むようにしていいよ。……言ってごらん……ニキ……

[Niki] あ……わた……し…

[Niki] わたし……杏里に愛され……たい…………今……すぐっ!

[Anri] ウィ、もちろん、喜んで!

[Anri] ボクはね……ふふっ……ボクは、きみの弾くピアノが聞きたいな……今すぐ……

[Niki] え……っ……そ……んな……さき……に言わ……せて……ずる……い……杏里……

[Anri] それは言いっこなし。

[Narration] 二人はベッドではなく、二人でひとつの椅子の上へと腰掛けた。

[Anri] ほら……もっと脚を開かないと、鍵盤に届かないよ……

[Niki] あ……だって……アっ……

[Narration] 杏里が椅子を寄せると、ニキの膝は、張り出した鍵盤台にぶつかって、いやおうなく押し広げられた。

[Narration] もちろん、少女の大事な部分もすべて、杏里の視線の前へとさらけだされる。

[Niki] ペダルに……届か……ない……

[Anri] ボクがしてあげるから……キミの一番好きな曲を弾いて……

[Niki] え……う……うん……杏里が聞きたいの……なら……

[Narration] ニキは杏里の言うとおりに、素直に鍵盤に指を立てた。

[Narration] もの悲しい、ゆるやかなメロディに、杏里は心地よさそうに耳を傾けた。

[Narration] 初めて聞く曲ではない。ことあるごとに、ニキに演奏をせがんだ曲だった。

[Narration] それは、ニキが父親に手ずから教わった曲だった。まだ指が広がりきらないニキが、うまく弾けるようになるまで、一緒に母親が歌ってくれた曲だった。

[Narration] やがて、両親は事実上の別離を迎え、最初は争奪の種となっていたニキが、いつまでも沈黙したままでいると、やがてうとまれるようにさえなった。

[Narration] 二度と弾くまいと思っていた曲を、なぜか杏里の前では弾いた。そして、杏里のための曲となっていった。

[Narration] 今また、杏里も、父のように、また母のように、ハミングの伴奏をニキに送る。

[Narration] 今この時が、哀しいのか、幸せなのか、ニキには判らない。おそらくは、どちらもなのだ。

[Narration] ただ、今は杏里の存在だけが、大きく膨らみニキの心を占めていた。

[Narration] そして、単音の余韻だけを残して、さびしげに曲は終わりを告げる。

[Anri] ……やめないで、ニキ……もっとキミの音色を聞かせて……もっと……もっと……

[Narration] そう耳元でささやく杏里は、奔放気ままにニキの体を奏でた。キスを求め、胸を大きくこねまわし、秘裂へと指を忍ばせる。

[Narration] ニキは即興曲を奏ではじめた。

[Narration] 曲の調子にあわせて杏里の指は踊りだす。そして、曲が止まれば、杏里の指もまた止まった。

[Niki] ……あ……ァン……杏里っ……

[Narration] 不満そうな吐息をニキは漏らした。否応なしにニキの指は早くなる。

[Anri] そう、クレッシェンド……(だんだん強く)アッチェレランド……(だんだん速く)

[Narration] 演奏が激しさを増していくその一方で、ニキのもどかしさは募りゆく。

[Narration] 透明な少女の肌に、じっとり汗の玉が浮かんだ。両手で和音を押さえるたびに、それはキャンドルの光を集めて輝き散った。

[Anri] 甘く……やさしく……

[Niki] あっ……ハァ……アッ……アア……杏里……ああっ……

[Narration] 少女の乳首は固く隆起し、スタッカートに合わせて、強くはじかれた。

[Niki] ゥンッ……ンッ……あっ……

[Anri] ……こびるように……

[Niki] ゥンッ……ンッ……あっ……あああン……ああ……いっ……ァアア……ああっ……

[Narration] 熱くうずく蜜壺の中を、リズミカルな抑揚をつけて指がかき乱す。その動きを自らも追いかけるように、少女の腰はひくつき、はねあがった。

[Narration] こぼれ落ちた蜜は、ぱたぱたと垂れ落ちて、杏里のふとももをぬらしていく。

[Anri] そう……感情のおもむくまま…………大胆に……燃えるようにッ!

[Niki] ウ……ンッ……ハァッ……ハァッ……ハァッ……杏里っ……杏里……アン……ッ……

[Narration] ニキの両指は猛烈な勢いで鍵盤を跳躍し、乱暴に叩きつけられた。

[Narration] 椅子から飛び出しそうになるニキに、杏里はぴったりと追随していく。二人は、寄り添い泳ぐ、二匹の魚のようだった。

[Anri] もっと、もっと乱れてっ!吹き荒れる嵐のように!

[Narration] 叫びたてる杏里にしたがって、ニキは髪を振り乱し、交差した両腕は一気に鍵盤をかけあがる。

[Niki] ハァッ……ハァッ……ハァッ……!杏里っ……わたしッ……わたし……!

[Anri] がんばって、ニキッ……もうすぐっ……すぐに……ッ

[Niki] ……ッッ…………!!!!!!

[Narration] もっとも高いキーに、指先を真っ白になるほど強く押しつけ、少女は大きく弓なりにのけぞった。

[Narration] 少女の声なき絶頂を、体全体で受けとめ、杏里は勢いよくダンパーペダルを踏み込んだ。

[Narration] すべての弦が開放され、部屋中に共鳴音が鳴り渡った。

[Niki] ……ハァ……ハァ……ハァ……

[Niki] ……わた…し……の……お……と……聞い……て……くれ……た……?

[Anri] ……素敵だったよ……ニキ……きみはこんなにも美しい……意志を表現する、ゆたかな力を持ってる。

[Anri] 自信を持って?

[Narration] 荒く息づきながら、杏里とニキは舌をからめあわせ、長い長いキスを交わした。

[Narration] ……杏里とニキが、激しく心を通い合わせていたのと同じ頃。

[Narration] とうの昔に闇夜に沈んだ電算室で、静かに時を待つ少女の影がひとつ──。

[Narration] 影はごそごそとデスクの下で身もだえすると、やがて耐え切れなくなったように這い出した。

[Soyeon] ……遅いなぁ、杏里さん。

[Soyeon] もう3時間も待ってるのに……。

[Narration] 天京院に頼まれた物理的ハッキングのため、杏里は今晩、ソヨンとここに忍び込む予定だった。

[Narration] しかし約束の時間はとうに過ぎたというのに、杏里がやって来る気配はまったくない。

[Soyeon] ……まさか、やっぱり日曜日のこと怒ってるのかなぁ?

[Soyeon] うぅん、だからって仕返しするような人じゃない。

[Soyeon] なにか、約束を守れなくなるような、大変なことが起きたのかもしれない。

[Soyeon] なにか、大変な……。

[Soyeon] なにか……。

[Soyeon] ……。

[Soyeon] ……かー

[Soyeon] かー……かー……

[Narration] 深夜零時の訪れとともに、ソヨンはスイッチが切れたかのように夢の世界へ落ちた。

[Narration] もう何が起こっても目を覚ますまい。

[Narration] それを見てとって、電算室の入り口から様子を伺っていた人影が、部屋の中に入ってきた。

[Unknown] ………………。

[Narration] ソヨンは気がついていなかったが、ずっと彼女を見張っていたのだ。

[Narration] 気がつかないソヨンを前に、しばらく何か考え込む。

[Narration] いかなる結論を出したのか、それは無造作にソヨンへ近づき、邪な手を伸ばそうとした。

[Narration] ──廊下に人の気配がしたのは、まさにそのときだった。

[Narration] ハッとしたように、人影は手を引っ込めて闇の中へ消え去る。

[Narration] 入れ替わりにやって来たのはアンシャーリーだった。

[Narration] 徘徊中の彼女は、ひょいと電算室を覗いてソヨンの姿を見つけると、驚いたように頭の上へ話しかけた。

[Anne Shirley] すごいわボゲードン、どんぴしゃ!

[Anne Shirley] でも、ソヨンはすっかり夢の中なのね。……いいわ、部屋まで連れていってあげて。

[Narration] アンシャーリーはどこかへ向かって手を振った。

[Narration] 翌日、ソヨンは自分の部屋で目を覚ました。

[Narration] どうして部屋にいるのかよくわからなかったが、おそらく杏里が運んでくれたのだろう。

[Narration] たぶん。

sapphism_no_gensou/1252.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)