User Tools

Site Tools


sapphism_no_gensou:1153

Place translations on the >s

[Narration] さらに迷路のような機関部をめぐり、人々の集まる場所を順にたずねながら、ようやく二人は学園施設のある、上部デッキへと戻ってきた。

[Anri] 正確には……這いずり登ってきた……かな……

[Anri] ハァ……しんど……今度からはエレベーターで登ろうよ〜、ソヨン。

[Soyeon] 私たちの持っているカードじゃ、下まで運んでくれません。やっぱり、階段を使うしか───

[Anri] そうか……そうだけど、昇ってくることは出来たんじゃないかなあ……

[Soyeon] あ……っ!

[Narration] と口を押さえるソヨン。二人とも汗びっしょりだ。

[Anri] おやぁ……ソヨン?服、透けてるよ!

[Soyeon] ええ、ひゃあっ。

[Anri] う、そ、さ───

[Anri] いつものチョゴリだったら透けてたかなァ? ザンネンザンネン。

[Soyeon] 杏里さぁんっ!

[Anri] アハハ、怒った。

[Anri] ああでもさ、今日はすっごく働いた気分だよ。熱いやら、やかましいやら、煙たいやら、お城は大騒ぎです。

[Soyeon] ご苦労様でした。

[Soyeon] あまりめぼしい情報はありませんでしたけれど、皆さん何か思い出したら教えてくださると、約束してくださいましたし。

[Anri] ソヨンもよくやったよ。ボクなんかついつい、相手に流されそうになっちゃう。偉い偉い。

偉い偉い!

アメ!

[Anri] アメ!

[Soyeon] あめ?

[Anri] 偉いソヨンさんには、鼎さん印のコーヒーキャンデーをあげましょう。

[Anri] ハイ、あーん。

[Soyeon] え? え?

[Soyeon] あ……あーん……はぷっ。

[Anri] ボクももーらお……もごもご。

[Soyeon] ……もごもごもご。

[Anri] ほいひいへひょ?

[Soyeon] はひ。ほいひいれふ。

[Anri] ひょっひょ大ひいへほへ〜

[Soyeon] へんひょふひんへんはいはふふっはんへふは?

[Anri] ほふはんは……もごもごもご。

[Narration] ───30分後。

[Anri] うはあ、やっと舐めおわった!あ、アゴが……

[Soyeon] 最後に想像を絶する渋さのパウダーが……ううう……頭がクラクラします……

[Anri] そういえば、くれる前にニヤニヤしながらミキサーで何か挽いてた……やられたよ……

[Anri] それじゃあ、口直しというわけでもないけれど。

のどをくすぐる

[Soyeon] ひゃっ!

[Narration] 喉を指先でくすぐる杏里。ソヨンは困り顔ながら、されるがままにしている。

[Soyeon] あの……杏里さんのお国では、誉める時に喉をくすぐるんですか?

[Anri] ふつうは頭をなでるね。これはアンリエット式さ。

[Soyeon] そうですか……

[Soyeon] ご……ゴロゴロゴロ……

[Narration] ソヨンはそう言いながら赤くなる。

[Anri] そうそう、よく知ってるね?やっぱり猫が好きなんだね、ソヨン。

[Soyeon] あ……っ……えっと、その……ゴロゴロゴロ……

[Anri] ……?

[Anri] ……ねえ、ソヨン?よかったら、いっしょにおフロにしよう。うん、我ながらグッドアイデア!

[Anri] きっと、いまごろ大浴場は夕日が射し込んで、すっごく綺麗だよ!

[Soyeon] あ……ごめんなさい……その、あたし……

[Anri] そうだった。ボクこそごめん。どうしてこう忘れやすいんだろう。

[Anri] だったらサウナなんてどうだい?

[Anri] おフロにはかなわないけど、あれはあれでなかなかイイものだよ。

[Soyeon] ハイ! サウナなら得意ですよ!

[Anri] アハハ、得意? 

【00:00:00】

[Narration] 全身の毛穴からじんわりと染み込んでくるような熱気。

[Narration] 杏里たちは、一番大きなサウナルームの一角へと陣取った。

[Narration] 今日は、また一段と設定温度が高い。

[Anri] ……くふ……くふふ。

[Soyeon] あ、杏里さん。なぜそんなに嬉しそうなんです?

[Anri] 甘いよソヨン。スゥィート。ベリベリベリスゥィートだね?

[Anri] このボクに、サウナで勝負を挑もうだなんて。ヘレナ・ブルリューカさん(仮名・ロシア出身)の敗北譚を知らないようだね。ふふ。

[Soyeon] のぼせてしまったんですか?

[Anri] そうなんだ。もちろんこのボクが心ゆくまで介抱してあげた。

[Soyeon] 心ゆくまで?

[Anri] タオル一枚きりで、意識を失ってしまうだなんて……それはもうボクを全権委任大使に任命したようなものさ!

[Soyeon] 大丈夫ですよ。あたし、のぼせたりしません。このくらいの熱さだったら全然───

[Anri] ふふ、強がりを言ってられるのも今のうちさ! くふふ。

[Narration] 杏里たちは、丸みをおびた二人がけのベンチを選んで腰かけた。

[Narration] 観葉植物の葉が、音もなくゆらめく。ぽたりぽたりと二人の顔を水滴が流れ落ちるく。

[Narration] 時折、新しい顔がやってくるが、みな5分ももたずその場を離れてしまう。

[Anri] なかなか頑張るね、ソヨン。

[Soyeon] ほんとに平気ですよ?

[Anri] またまた。

[Anri] ……ねえ、ソヨン。

[Soyeon] はい?

くふふふ……

もっとくっついてもイイ?

[Anri] もうすこしそばに座ってもいい?

[Soyeon] はい。

[Narration] 杏里が腰をずらしてぴったりと寄り添っても、ソヨンはなんら抵抗を示さなかった。

[Narration] それどころか、偶然触れた杏里の指に、自分の指を重ねてくる。

[Anri] (う、嬉しいよソヨン……ッ)

[Narration] にこやかに微笑むソヨン。

[Soyeon] 韓国には、ハンジュンマクという窯を使ったサウナがあるんです。

[Soyeon] あたしも母さまに付き添って、もう何度もそこに通っていますから、サウナには慣れてます。

[Anri] そうだったんだ? アカスリは?

[Soyeon] テミリのことですね?ええ、アカスリマッサージも一緒にしてもらいますよ。

[Soyeon] あと、人参の入ったお風呂ですとか、牛乳マッサージとか。キュウリパックなんてのもあります。

[Anri] 美容にいいのかな。

[Soyeon] そうですね。あと、いいお母さんになるためというか……

[Soyeon] とにかく、血行がよくなりますから。あたしもスポーツセンターのあとに行ったりすると、力が抜けて眠くなっちゃいます。

[Anri] ………………へぇ…………

[Soyeon] よかったら、かるく試してみます……?

[Anri] わっ! 読まれた!?……ぜ、ぜひ!

[Soyeon] えっと……これがアカスリ用の手袋。これがうぶ毛抜き用の絹糸。マッサージ用のオイルいろいろ。

[Anri] いつの間にそんな七つ道具を……

[Soyeon] 当然のたしなみですよ。……というのは冗談ですけれど。

[Soyeon] はい、うつぶせで寝そべってください。お湯をかけまーす。

[Anri] みなさん、いまボクはまな板の上の鯉です……

[Soyeon] いきますよ〜〜

[Narration] わきわきと手袋を握るソヨン。

[Anri] ……うわ、うわわわっ

[Anri] ……ハァ……はぁぁ……っ

[Anri] ああっ……アアン……ウンっ……すごいよ……ソヨン………

[Soyeon] へ、変な声出さないでください!

[Anri] そんなこと言われても……

[Anri] では、ちゃんと本場っぽく。韓国語で気持ちいいって、何て言うのかな?

[Soyeon] チョアヨとか、キブニチョアヨですね。

[Anri] 了解……続けて?

[Anri] ああっ……ソヨン……キブニチョアヨ……

[Anri] チョアヨ〜 チョアヨ〜〜〜!

[Soyeon] もうっ……杏里さんはっ!可笑しくって力が入りません!

[Soyeon] あたしちっちゃいから、力いっぱいやらないと……

[Anri] ごめん。もう邪魔しないから、続けて。

[Soyeon] じゃあ今度は仰向けになってください。

[Anri] あ。タオルも取る気?

[Soyeon] 取らないとテミリできませんよ。女同士ですから、別に恥ずかしくありませんよ。

[Anri] ウ、ウィ。

[Anri] ボクもあとでソヨンにしてあげるからね。

[Soyeon] ええっ、杏里さんがあたしに……?は、恥ずかしいからいいです! 遠慮します!

[Anri] そんなの不公平じゃないか!

[Anri] ボクだってソヨンをスリスリしたいよ!ああっそんな奥まで……チョアヨ、チョアヨ〜!

[Eliza] こんばんは、ソヨン様。

[Soyeon] イライザさん! こんばんは!

[Eliza] あら、杏里様も?まあ。全身ツルツル。ゆであがったタマゴのようですのね。

[Anri] ふふ……イライザ……ボカァもう、全身をくまなく征服されてしまったのさ……

[Eliza] はあ。左様ですか。

[Anri] 嫌がる相手を押さえつけ穴という穴を……

[Soyeon] 垢をお流ししただけです!

[Soyeon] さっきから杏里さんたら、変なことばかり言ってるんですよ?

[Eliza] 杏里様の狂言綺語は、今日にはじまったことではございません。

[Eliza] 適当に割り引きして聞くのが吉ですわ。

[Anri] ボクはいつでも本気さ……ああ、力いっぱい否定したいけど……力が入らない……眠い……

[Soyeon] 杏里さん、眠ったら杏里さんの負けですよ!? 肩を貸しますから、起きてください!

[Anri] 起きます……起きますとも……うーん、これもソヨンの作戦だったか……

あの時、何て言っていたの?

[Anri] ボクがさ、PSにつかまった時、心配して来てくれたよね……ありがとう。

[Soyeon] お礼だなんて。結局あたし、杏里さんに何にもしてあげられなくって……恥ずかしいんです。探偵助手失格ですよね。

[Anri] ……ううん、とても嬉しかったよソヨン。

[Anri] ただ、気になってさ。

[Anri] あの時、ガラスの向こうがわで、何て言ってたのかな?こんなふうに口をパクパクさせて───

[Soyeon] あ、あれは……その……ケンチャナ……って。

[Anri] ケン……チャナ?きみの国の言葉かい。

[Soyeon] はい、伝えたかったんです。ケンチャナですよって……

[Anri] どういう意味なの?

[Soyeon] えっと……“なんとかなるさ”かな?本当は微妙にニュアンスが違います。もっと楽天的っていうのかな……

[Soyeon] ああ、それなのに、よりによってあんな時にあたし……

[Anri] ふむ、なんとかなるさ……か。

[Anri] ノープロブレム……? いやスペインのケ・セラセラのが近いかな? セ・ラヴィは悲観的だし……マイペンライじゃ悟りすぎているね……

[Anri] うん、ケンチャナはケンチャナだ。気に入った。

[Anri] これって、今のボクにこそ必要な言葉だよ。また使ってみてもいいかな?

[Soyeon] え、ええ! もちろん!

[Anri] ケンチャナ……ケンチャナ……発音、合ってる?

[Soyeon] はい……クスッ。

[Anri] あれ、まだおかしいかい?

[Soyeon] いえ、違います。ケンチャナは、本当は笑顔で言う言葉なんです。杏里さん、真顔でおっしゃるから。

[Anri] あはは、ソヨンだって、こないだは泣きそうな顔してたよ。

[Soyeon] ええ、あたしったらちぐはぐで、ヘンですね。

[Anri] ううん。ありがとう、ソヨン。素敵なプレゼントだよ。

[Soyeon] ど、どういたしまして……

[Soyeon] あ、そだ。じゃあ杏里さんも何か教えてください。

[Anri] ウィ、そうだね……じゃあ、

[Anri] ジュテーム。

[Soyeon] じゅてーむ……?

[Soyeon] えっと……どんな意味ですか?

[Anri] こんにちは。こんばんは。おはよう。おやすみ。ぜんぶかな?

[Anri] ・・・・・ボクにとっては。

[Soyeon] とっても便利な言葉なんですね!?ええと───

[Soyeon] じゅてーむ!……こうですか?

[Anri] だめだめ、発音がなってない。もっと甘く。耳元で囁くようにね。

[Soyeon] じゅて〜む。じゅてぇ〜む?

[Anri] ああ、もっと。もっと言っておくれ、ソヨン。ゾクゾクするよ。

[Soyeon] じゅて〜む……じゅってぇ〜〜む……む、難しいです!

[Anri] 練習あるのみさ!

[Eliza] ジュテーム、杏里様。

[Anri] わあっ!

[Anri] ……イライザ。

[Eliza] わたしの発音はいかがです、杏里様。

[Narration] イライザの瞳に、冷ややかな光がともっている。

[Anri] か、カンペキ。

[Soyeon] じゅて〜む、イライザさん!

[Eliza] ジュテーム、ソヨン様。

[Soyeon] これでいいんですよね!? 杏里さん!

[Anri] ウ……ウィ……ケンチャナ……

sapphism_no_gensou/1153.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)