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okujou_no_yurirei-san:3152

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学生会に提出する月次活動報告書の作成、練習メニューの考案、日々の活動記録など、茉莉と二人っきりでなにかする機会は多い。私の学校での密かな楽しみだ。

……そう、そのはずだったのに。たった今、私のテンションは最低にまで落ち込んだ。

稲本美夕

だから……、そういうことは、いちいち報告してくれなくてもいいのに……。

網島茉莉

でも秘密にしてるのも美夕に悪い気がしてさ。なにも後ろ暗いことしてないのに隠れてコソコソ浮気してるみたいで、あたしもいやだし。

網島茉莉

それに、もしあたしが黙ってたとして。他の子からあたしが告白されてたなんて話、聞いたら美夕、もっといやな気持ちになるでしょ?

稲本美夕

それは……、そうかもしれないけど……。報告されたらされたでやっぱり気になるし……。

このやりとりも何回目になるだろう。茉莉は誰かに告白されるたびに、律儀に私に報告してくれる。

必ず教えてくれるって安心感はあるけど、だからって、ヤキモチやかなくてすむってわけでもない。どうしても、ちょっとは。

網島茉莉

ゴメンゴメン。あたしがモテ過ぎるから美夕に心配かけちゃうんだよねー。

その茉莉の物言いが私を苛立たせる。実際に茉莉はモテるんだけど、そんなふうに自慢げに言われたら、立てなくてもいい腹も立つってものでしょ?

稲本美夕

それにしたって告白されすぎでしょ。今度の子でいったい何人目よ?

網島茉莉

えーっと、確か13人目かな?

心を奪われた一人である私が言うのもなんだけど、茉莉は本当にモテる。明るくて華があるし、いつだってみんなの中心にいる。

それに引き替え自分は……、なんて考えると気が滅入る。茉莉と自分は本当に釣り合っているのかって不安も時々よぎる。

何年も付き合っているのに、そういう私の不安、わかってくれてないんだろうか。

稲本美夕

それって、茉莉が自分も気付かないうちに気のある素振り見せたりしてるんじゃないの?

嫉妬と不安がない交ぜになった感情が、そんな言葉を口走らせていた。言葉に出してしまってから、私は、はっと口を押さえる。

網島茉莉

そんなことないって。あれ……? もしかして美夕、それヤキモチ?

稲本美夕

バ……、バカ。

していないわけがないじゃない! それがわからないはずもないのに、そうやってわざと聞いてくるんだから!

網島茉莉

ごめんごめん。だって、嫉妬してくれる美夕がかわいいもんだから、つい。

頭の中がぐらぐら沸騰してるみたい。嫉妬心を指摘されたことと、かわいいと言われたうれしさが混ざり合って、どうにかなりそう。

顔と耳たぶが、かっと熱くなるのを感じる。夕暮れの日差しの中でも、茉莉の位置から見れば私が赤面してるのが丸わかりだろう。

網島茉莉

大丈夫だって。あたしの心は美夕だけのものなんだから。たとえ100人から告白されたからって心配することないよ。

言いながら茉莉が私の肩に腕をまわしてくる。

稲本美夕

ちょ、ちょっと。ま、茉莉……! 学校ではそういうのなしって約束でしょ?

網島茉莉

誰もいないから大丈夫だって。

稲本美夕

そうことじゃなくて……!

茉莉と触れ合うのは私も好きだけど。正直、こういう時にさわってくるのは、約束以前にデリカシーに欠けると思えてしまう。

甘い言葉とスキンシップで問題を全部有耶無耶にしようとしてるように感じるのは、やっぱり私の今の嫉妬心からだろうか。

そんな心まで見透かされるのが怖くなって、私は茉莉の手を払い席を立っていた。

稲本美夕

もう! わ、私帰るから! あと、よろしくね!

網島茉莉

え? ちょっと、美夕! 報告書、まだ半分も終わってないでしょ!?

稲本美夕

はぁ……。

結局、聞こえないふりをして置いてきてしまった。報告書は、茉莉がやり残していたら明日仕上げて提出しよう。

きっと明日になったら茉莉も、なにもなかったような顔をしているんだろうな。なんだか、それも悔しい気がするけど。

稲本美夕

こういうのって結局、惚れた方の負け……、なのかしらね。茉莉みたいなタイプには、嫉妬させられてる方の気持ちなんて絶対わからないのよね。

そんなことを考えながら、とぼとぼと正門に向かう私に……。

「あの……」

門柱の影から声をかけてきた子がいた。見覚えのない顔だけど、たぶん一年生かな。

稲本美夕

どうしたの? 私になにか用?

一年生はこくりと俯いて。なにか言いたげにもじもじしている。なのに一向に話を切り出して来ない。なんなのかしら、この子は。

稲本美夕

えっと。用がないなら私帰るから……。

私が足を進めようとすると、彼女は思い切ったように顔を上げて。

「あ、あの。わたし……、稲本先輩のことが……」

稲本美夕

…………えっ?

次の日の部活の後。案の定、手付かずだった報告書の続きを二人で片づけることにした。

やっぱり茉莉、昨日のことなんて憶えていないって調子で、いつも通りに明るく振る舞っていて。

稲本美夕

そういえば……、ね。

網島茉莉

ん? どしたの?

茉莉が手を止めて目を上げた。私がなかなか話し出さないのできょとんとしている。

稲本美夕

あのね、私もされちゃった……。

網島茉莉

されちゃったって……、なにを?

いつも余裕ぶっている茉莉がこう言う時どんな顔をするのかじっくり見たくて、私は焦らしてから本題を切り出した。

稲本美夕

告白よ。

網島茉莉

!?

網島茉莉

こここここ、こくはくって……、え……、ええええええええっ!?

予想外の反応だった。顔面から血の気が失せた真っ青な顔で目を白黒させた茉莉には、普段のあの余裕の欠片も見当たらない。

そのうろたえ振りがちょっとおかしく思えて、私にも少しイタズラ心が湧いてきた。

稲本美夕

(いつも茉莉が私にしてることだもの。少しくらい仕返ししてもいいわよね?)

稲本美夕

あら。私が告白されたら、おかしい?

網島茉莉

そ、そんなことないけどさ! 美夕はとっても素敵だし、あ、あたし以外の誰が好きになってもおかしくないよ? でででででも……。

網島茉莉

そそそそそれで、どどどどどうしたの?

稲本美夕

どうしたって?

網島茉莉

そ、それは……、へ、へ、返事に決まってるじゃん。ま、まさか……、OKなんて……。

死刑宣告を待つ被告ってこんな顔なのかしら……、と思わず想像してしまうくらい、土気色をした茉莉の顔だった。

稲本美夕

してないわよ。あんまり突然の話で驚いちゃって……。はっきり断れなかったのよね。

網島茉莉

そ、そうなんだ……。

稲本美夕

ねぇ、茉莉はどうしてほしい?

網島茉莉

そりゃ断ってほしいに決まってるじゃん!で、でもそんなことあたしに聞くってことは……、ももも、もしかして悩んでたりするわけ?

稲本美夕

んー、そうねぇ……。ちょっとだけ。

網島茉莉

ダメっ! 絶っ対にっ、ダメだって!!

競技会の応援でも聞いたことないくらいの大声で茉莉が叫んだ。

網島茉莉

美夕がいなかったらあたし、おかしくなっちゃうよ! 美夕がいないとあたしはあたしでいられないんだってば!

叫ぶ茉莉の目尻から涙があふれているのに、そこで初めて気付いて、私は、はっとした。

いつも私が感じてる不安を、少しだけでも、わかってもらおうとしただけなのに。こんなに苦しめようだなんてつもりはなかったのに……。

稲本美夕

……ごめん、冗談。その子には昨日、ちゃんと断っておいたから。だから、お願いだからそんな顔しないで。

そんな捨てられた子犬のような顔で見られたら、これ以上、からかうなんて、できるはずないじゃない。

網島茉莉

……ほ、本当に?

稲本美夕

本当に。

網島茉莉

本当の本当の本当に?

稲本美夕

もう、しつこいってば。本当の本当よ。だって……、私も茉莉がいないとダメなんだもの。

網島茉莉

美夕~!!

感極まって泣き出した茉莉をなだめたころには、すっかり日も暮れていて。とても報告書の続きに手をつけるという時間じゃなくなっていた。

ちょっと仕返しするだけのつもりだったのに。どうして自分がこんな必死に茉莉をなだめているんだろう? これって、どう考えてもイーブンじゃない。そうは思うけど。

稲本美夕

(はぁ……、結局どっちに転んでも振り回されるのは私なのね……)

それでも。昨日あれだけ悩まされた不安が、嘘のように消えてなくなるのを感じていた。

私も茉莉を必要としているけど、茉莉もこんなに私を必要としてくれてるって確認できたから。

稲本美夕

(でもこんな簡単に機嫌、直っちゃうなんて……。私もけっこう、チョロくできてるのかしら……?)

稲本美夕

(でも、それも相手があなただからよ、茉莉)

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okujou_no_yurirei-san/3152.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)