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okujou_no_yurirei-san:3123

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あー、なんか学園祭前ってカンジがすんな。

聞こえる音がいつもと違うもんな。人の声とか、なんか作る音とか、いろいろ合わさってガッコー全体が浮かれてる。

こりゃ、負けてらんねぇ。オレは目の前に広げたスコアに集中する。

古場陽香

………………。

教科書どころか本読むのも苦手なのに、スコアだけはなんとか読めるんだから不思議だよなー、我ながら。

有遊愛来

……陽香。

古場陽香

あ……、愛来。

電話越しの先生と親の声の区別もつかねぇのに、声を聞いて愛来だとわかるってのも、不思議だよな。

まあ、こんな腹の底にずんとくる声、他に知らねぇし。

有遊愛来

なんだか忙しそうだな、邪魔をしたか?

古場陽香

ん、全然。

有遊愛来

そうか。……ほら、差し入れだ。

古場陽香

おぉ、サンキュー、愛来! すっげうれしい!

顔をあげれば、缶ジュースを渡しながら微笑む愛来。あー、何度見てもきれーだ。

それなりに付き合いが長くなって見慣れてきたんだけど、それでもドキドキするっつーか、だからこそ超ドキドキするっつーか。

てかさ、さっきの挨拶の流れとかも超よくねぇ? 名前で呼びあって、目と目があって、何年もこうしてきたかのように自然に会話してさ。

告白の前だってのに、もう恋人っぽくね? なんかもうそんなカンジじゃね?

古場陽香

(オレンジジュースかぁ……。甘酸っぱいぜ)

有遊愛来

……これは、学園祭で発表するという曲か?

古場陽香

ん? ……あー、これはそれとは別。そっちはそっちで、こっそり猛練習中だけどさ。

有遊愛来

ああ、サプライズで秘密だもんな。

古場陽香

そうそう、誰かに聞かれたら困るからな。愛来も内緒にしててくれよ?

有遊愛来

ふふ、そうだな。約束する。

小さくうなずく愛来。まー、約束なんかしなくたって、愛来は黙っててくれるよな。そういうヤツだ。

古場陽香

これはさ、うちのバンドの新曲。

有遊愛来

ああ、例の……。ストレンジマグネット?

古場陽香

そう! 今度のライブでオヒロメなんだぜ! これはこれでがんばんねーとな!

有遊愛来

そうか……。

愛来はスコアを見つめながら、オレの脇に腰を下ろす。

有遊愛来

ストレンジマグネットは、どういうバンドなんだ?

古場陽香

へ?

……ちょっとびっくりして、答えるのが遅れちまった。

だって愛来は、マジメだしかっちりしてるし。オレのバンドになんて、興味ねぇと思ってたから。

古場陽香

ロック一筋!

有遊愛来

ふふ、それはそうだろうな。陽香がいるくらいだからな。

古場陽香

そうそう。

古場陽香

……つっても、そういうこと聞くと、マナはぷろぐれ? がいいなーって言うし、ニーニーはテクノよりにしたいとか言うんだよな。

有遊愛来

なんだ、それは。

古場陽香

んー、わかんねぇ。アンジュはアンジュでメタル取り入れたらって言うし……。

古場陽香

そういう話し合いになると、オレ、ロックがいい!って言うんだけどさ。ちゃんとロックだから安心しろって。

有遊愛来

ふぅん……。よくわからんな。

不思議そうに首を傾ける愛来。……そっか、愛来でもわかんねぇか。

有遊愛来

すまないな、あまり詳しくなくて。

有遊愛来

だが、詳しくない分、知りたいと思う。だから、陽香のバンドについて、もっと聞かせてくれないか。

古場陽香

……お……。

どうやら、愛来は本気で知りたいみてぇだ。それがわかって、オレはちょっとだけ言葉を見失った。

古場陽香

(……もしかして、オレのいるバンドだからか?)

そんな風に考えちまったから。

オレが、愛来や愛来が好きなものを知りたいと思ったみたいに、愛来もオレのこと知りたがってるのかなーと……。

古場陽香

(だとしたら、超ハッピーだけどな!)

古場陽香

えっと。バンドのメンバーは四人。さっき言ったヤツらと、オレと。

古場陽香

お、オレはギターやってんだ。

有遊愛来

それは知ってる。陽香のギターは元気がよさそうだな。

古場陽香

そりゃもう! 今握ってんのはすっげー威勢のいいギターでさ。しっかり押さえてねーと、オレの両手揺らしながら飛びそうになるんだ。

有遊愛来

ふふ、どういう表現だそれは。陽香らしいな。

愛来が笑う。楽しそうに聞いてくれているのがうれしくて、自然とオレの語りにも熱が入る。

古場陽香

オレの他は、ベースのマナと、ドラムのアンジュ、ボーカルとギターのニーニー。

有遊愛来

ギターが二人いるのか?

古場陽香

ダブルギターってやつ。ボーカルやってっと、やっぱ一曲まるまる熱いリフってのはキツいからさ。

有遊愛来

そうだろうな。というか、弾き語りは想像するだに難しそうだ。

古場陽香

あー、うん。オレもちょっとやってみたんだけど、かなりムズくて、これが……。

古場陽香

どっちかひとつでも難しいってのに、両方はなー。すげぇよニーニー。

オレは両手を目の前にあげて、指を動かしてみる。……なんかなぁ、まだ動きが固いんだよな。

だけど、これがうまくできなきゃ、学園祭のステージ、うまくいくわけねーしな。

古場陽香

ニーニーのギターテク、すごいんだぜ。ソロの時とか、めちゃくちゃ指動いてる。虫みたいにグニャグニャって。

有遊愛来

ほう、すごいな。

古場陽香

うん、つーか全員古いメンバーで、オレひとりがメン募で加わった新顔でさ。ひとりだけうまくねぇから、まだレギュラーじゃねぇんだ。

有遊愛来

レギュラーじゃない、というのは……。

古場陽香

全部の曲に出してもらえるわけじゃねぇってこと。3人で完璧にいけちまう曲だってあるし。まぁ、あいつらが昔っからヤってる曲とかさ。

古場陽香

……オレ、親父の影響でわりと小さいころからギターは弾いてたんだけどさ。ロックに目覚めるのが遅すぎたんだよなぁ。

親父のギターはアコースティックで、鳴く時も絶唱じゃなくてすすり泣きってカンジだからなぁ……。

有遊愛来

早く、レギュラーになれるといいな。

愛来の呟きが耳に入って、オレはハッとした。

愛来の話し方はいつだって落ち着いていて、センセイみたいだけど、それでもどんな気持ちが込められているのか、少しずつわかるようになってきたんだ。

愛来は、本気でオレのこと応援してくれてる。

古場陽香

愛来……。

有遊愛来

とても楽しそうに語っていたから、わかるよ。よほど大事なバンドなんだな。

有遊愛来

陽香はルーズなところもあるけど、本気になったら誰より一生懸命だ。だから、きっとレギュラーになれるさ。

もちろん、誰になにを言われても、言われなくても、がんばるつもりだったけどさ。

やっぱり毎日の地道な練習ってのは、それなりに面倒で、不安で、結構削られるもんで……。

でも、愛来にこんなこと言われたら、オレがんばるしかねーじゃんか。つーか、がんばる。

古場陽香

……うん。あんがと、愛来。

有遊愛来

というか、私のためでもあるんだ。陽香が出ているライブを一度見てみたいな。

古場陽香

ま、マジで?

有遊愛来

ああ。

わお、なんだそれ。愛来がオレのライブ見に来るって? ……うわ、すっげぇうれしい!

やっぱオレが一番オレらしくなるのって、ロックやってる時だし。やっぱ愛来には、オレが一番オレらしく輝いてるとこ、見せてやりたいし。

古場陽香

ちょ……、そういうことは早く言えよー、愛来ぃ。

古場陽香

誰より真っ先に招待してやるって! オレ、すげークールにキメてやるからさ!

有遊愛来

こら、痛い。

浮かれて愛来の背中をバンバン叩くオレを、愛来は笑いながら軽くニラむ。

……あー、なんかめっちゃいいカンジ。なんかもう、友達のダンカイも過ぎてるよな、きっと。

愛来が風紀委員の仕事に戻っていってからも、オレはまだ浮かれていた。

だって、そうだろ。オレが愛来に惚れたころ、愛来のことなんてほとんど知らなくて、怖カッコイイ女神サマみたいに思ってたのに。

今はもう、そうじゃないことを知ってる。オレがしゃべることを真剣に聞いたり、バカやっても苦笑ひとつで許してくれるって知ってる。

その距離感が、すっげー嬉しくて。

きっと、愛来だってそうだろう。……そうだといいな。

オレの中にある大事なもの、ロックな部分、ちゃんと受け止めてくれてたらいいな。

古場陽香

(……よっし)

オレは気合いを入れて譜読みに戻った。

次のライブには愛来を招待して、ステージの上からクールに決めてやるんだ。

そうだ、その前にラブロックでのサプライズ告白もあったし。オレ、すっげーがんばんねーと。

古場陽香

(……できんのかな。オレに)

……おお、やべぇ。一瞬なんか寒いこと考えちまって、ブルッときたぜ。

む、むしゃぶるいってヤツだよな。うん。でっけーステージに備えた、むしゃぶるいだ。

オレはいろんな考えを振り切るように、ただひたすら目の前の音符を追った。

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okujou_no_yurirei-san/3123.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)