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okujou_no_yurirei-san:3122

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恋をしてからというもの、オレは毎日ゼッコーチョーだ。

体がやけに軽くて、階段なんて一段どころか二段抜かしで昇っちまう。

短い休み時間だって、忙しい有遊サンを捜し出すためのハイパースピードだ。三段だってよゆーだぜ!

古場陽香

(……って、そうだ! もう有遊サンなんてタニンギョーギな呼び方はやめなきゃな)

朝の別れ際に、有遊サン、こう言ったんだ。

有遊愛来

「有遊さん」か。そんなに堅苦しく呼ぶ必要はないよ。

有遊愛来

友達なんだから、「愛来」でいい。

トモダチってすげぇな! こないだまで有遊サマだった有遊サンが、一気に愛来になっちまうんだから。

古場陽香

(へへ……。アキ、かあ。愛来……)

古場陽香

(おはよう、愛来。よう、愛来。一緒に帰ろうぜ、愛来)

……うおおおおおお!! なんかイイ、すっげえイイな、それ!

頭ン中で呼んでみるだけで、心臓ブッ飛びそうだぜ!

古場陽香

(愛来。愛来。愛来……)

うん、愛来って、いい名前だよな。

なんたってラブがカムって書くんだもんな。アキって音も、キリッとしてるし、呼びやすいし。

そうそう、アリウ・アキって、イニシャルがAAになるのもイカしてるよな。並び立つ最初のアルファベット。最高にロックだぜ!

古場陽香

ヒュウウッッ!

体中にみなぎるロックなパワーを感じながら、オレは階段の途中で飛び上がり、空中でエアギターをかき鳴らす。

ギュイーン! 四段飛ばし!

古場陽香

うぎゃっ。

……いってぇ。華麗に踊り場に着地する予定だったのに、最後の段に引っかかってコケちまった……。

古場陽香

(ま、でも、おかげで頭が冷えたってもんだ)

古場陽香

(……ちょっと練習してから行くべ、うん)

これから初めて名前を呼ぶわけだかんな。最高にクールな「愛来」のために、オレは努力を惜しまないぜ!

よし。目を閉じて、姿を思い浮かべて……。

古場陽香

(ああクソ、いつ見ても凛々しくってかっこいいぜ。なのに笑うとすげえかわいいなんて、ハンソクだよなあ……)

や、見とれてる場合じゃねえ。そこに居ると思って、呼びかけてみるんだ、がんばれオレ!

古場陽香

……、あ……。

古場陽香

…………。

……おいおい。どういうことだ。

言えねぇ。言えねぇぞ、おい。たったの一言なのに。本番でもねぇのに。

どうしたオレの喉! ヘイ、マイ喉! このチキン野郎! 愛来って名前のクールさに凍りついちまったのか?

声が出ないだなんて、ロックもクソもねーじゃねーか。歌えねぇロッカーなんざ、ただのアレだ! ただの……、ええと……。

「あ、陽香。こんなところで、なにぼーっとしてんの?」

いきなり声をかけられて、オレはハッと我に返った。見れば、桐が階段を昇ってくるところだ。

古場陽香

ああ、キリ……。

桐のことはキリって呼べんのになぁ。しかも、名前で呼ぼうなんて思ったこともねぇのに、気が付いたら呼んでたカンジ。

ならどうして、有遊サンに限っては、あんなにつっかえちまうんだろう。

……と、桐が去った後に考え込んでいたら、そこに通りかかったのは放送部の三人組だ。

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一木羽美

あっ、古場ちゃん。やっほー。

そういや、こいつらはまだ名前で呼んだことがねぇ。一木サンに双野サンに三山サン、だ。

古場陽香

(……んー、ちょっとこいつらで練習してみっか。どんなステージだってリハは欠かせねぇもんだし)

古場陽香

(えーと、こいつらの名前はと。……ああ、三山サンのは憶えてんぜ。音が七つなんてぜーたくな名前だよな)

古場陽香

……よう、音七。

三山音七

え。なに~、いきなり。

古場陽香

(で、確か一木サンは……)

古場陽香

羽美、だよな。

一木羽美

なぁに?

双野沙紗

……なに? いきなり名前で呼び出して。しかもいきなり呼び捨て?

古場陽香

(わ、双野サン、怒った? 怖ぇ! てか、なんで本人じゃなくて双野サンが怒るんだ?)

古場陽香

(で、そんな双野サンの名前は、ええっと……)

古場陽香

さ……。

双野沙紗

あ?

古場陽香

(そ、そんなににらむなよ)

有遊サンの迫力は背骨にビリビリきて好きだけど、双野サンのはなんかこう、ジトッとしてゾーッとして、ヤな感じだな。

古場陽香

(く、くっそ。負けるな! 有遊サンが愛来になるんだぜ、有遊サンがオレの愛来に!!)

古場陽香

さ、……さささん! よう、沙紗さん!

双野沙紗

だから。なんなの、さっきから。

古場陽香

い、いや別に……。

一木羽美

沙紗、そんなに凄まないの。古場ちゃんはアーティストなんだからさ、色々あるんだよ、きっと。

双野沙紗

だって、羽美のこと、いきなり名前で呼び捨てに……。

一木羽美

気にしないよ、そんなこと。それより、ほら、早く行こうよ。

三山音七

んー、そだね~。

双野沙紗

…………。

双野サンは、オレの横をすり抜けながら、最後にギロリとヒトニラミしてきた。うわ、おっかねぇ。

……ま、でもこれで少しは心の準備ができたぜ。双野サンに比べたら、有遊サンの方が気が楽だし。……うん。

古場陽香

(おっと、休み時間が終わっちまう)

やべやべ、早く有遊サンを捜さないと。せっかくのリハが無駄になっちまう。

と、オレが改めて階段を昇りかけた時。

有遊愛来

ここにいたのか、陽香。

古場陽香

……!?

古場陽香

(え……、今)

古場陽香

(有遊サン、オレの名前……)

それハンソクだよ、有遊サン! そんな、いきなりヨーカ、だなんて、その声で。

オレの鼓動がズダンと鳴り響く。クソッ、このやかましいのはだめだ、ロックじゃなくてメタルの領域だ。

あまりの衝撃に、オレの足下がぐらりと揺らぐ。そのまま、踊り場から落ちそうになる……。

古場陽香

おわっ!

有遊愛来

陽香!

そんなオレの手をしっかりつかみ、踊り場に留まらせてくれたのは、有遊サンの手だった。

もっと冷たくて固い感触だと思ってたのに。

あったかくって、柔らかい……。

有遊愛来

……大丈夫か?

古場陽香

……ん。

古場陽香

助かった、あんがと、アキ。

それは、オレの口からするりと漏れていた。

不思議なもんだよな。ちょっと前まで、喉に引っかかってた言葉なのに。

有遊愛来

陽香の元気なところはいいが、気をつけるんだな。階段は危ないから。

古場陽香

う、うん。……へへ。

……休み時間終了のチャイムが鳴り響く。

いつもなら、せっかくのオウセを邪魔すんなって毒づくところだけど、なんでかな、今は全然気になんねぇ。

オレ自身が口にした「アキ」って響きが、オレの胸の中で膨らんでいくような。

そこからふわっとあったかさが広がって、指先までぽかぽかするような……。

……なんだろうな、これ。不思議だな。

古場陽香

じゃ、じゃあ……、またな。愛来。

有遊愛来

ああ。……廊下は走らないように。

次の授業は苦手な科目だったのに、それもどうでもいい。

信じられないくらい足が軽い。階段何段飛ばしなんてのじゃなくて、このままどこまでも飛んでいっちまえそう。

古場陽香

(名前を呼んだだけで、こんな……)

古場陽香

(……やっぱすげぇな、トモダチって)

……トモダチになることを薦めてくれた結奈は、ダンカイを踏まなきゃって言ってたけど。

うん、これがそれか。今、オレ、ひとつ上がったんだわ。

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okujou_no_yurirei-san/3122.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)