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okujou_no_yurirei-san:3121

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永谷恵

(うーん……)

結奈が、わたしたちに協力してくれるようになってから、ちょっとたったころ。

わたしは屋上で一人、今後の作戦を練っていた。

いくら結奈っていう協力者が増えたっていっても、……ううん、だからこそ、いい作戦が必要だから。

永谷恵

(……とはいっても、なかなか難しいなぁ)

そもそも、女の子に恋する女の子を見つけなくちゃ、作戦もなにもないわけだし……。

「わああああああー!!」

永谷恵

……!?

な、何、今の叫び声。

開いたままのドアの向こう、校舎の中から聞こえてきたみたいだけど……。

振り向いたわたしを脅かすように、声は女の子の形をとって、校内から屋上に飛び出してきた!

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「……っ!!」

髪の色も服装も、突進のスピードも叫び声も、何もかもが派手な女の子。

「あああああああ!!」

永谷恵

きゃあ……!

こっちに向かって突進してくる! やだ、なんなの、怖い!

「ぎゃんっ!」

……す、すごい音した。あんな勢いで走ってきて、柵に激突したんだもん。痛そう……。

「お、ぉ、ぉ……」

その子は一気に静かになって、柵を握りしめたまま、ずるずると崩れ落ちちゃった。

永谷恵

(だ、大丈夫かな?)

さすがに心配になって、顔をのぞき込んでみたんだけど……。

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「……なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ。なんだってんだ……」

うつむいたまま、なにかブツブツ言ってる。……アブない子?

「オ、オレ、……どうなっちまったんだ!?」

永谷恵

(うん、これは……)

永谷恵

(……きっとアレな子ね。かわいそうに)

永谷恵

(見なかったことにしよ)

……と。柵に額をこすりつけて震えていた子は、がばっと顔をあげて、空を見上げた。

「胸が苦しいんだ……。でも、体は軽いんだ」

永谷恵

え………。

心細そうな声になぜか胸をつかれて、わたしはその横顔を見つめた。

「ああ、空だっていつもよりずっとクールだってのに。なのに、なんでかオレ、泣きそうだ」

「こうしているだけでくらくらして、吸い込まれちまいそうだ……」

熱に浮かされたみたいな声、潤んだ目。……わたしには、心当たりがあった。

「なんか、心臓がすっげー音出してて止まんねーし、頭がぼーっとするし、なんか熱いし」

永谷恵

ふむ。その症状は……。

「これ病気か? オレ、イッちまうのか」

永谷恵

病気は病気だし、イッちまうことはイッちまうかもね~。

「……待てよ。もしかして、アレか。噂に聞くアレなのか?」

「これは恋かっ!」

永谷恵

正解っ!

見事なタイミングでたどりついた彼女に、わたしはびしりと指さしながらの正解コールをあげた。

こちらの声が届かない以上、会話になんてなってないけど、いいの。こういうやりとりを楽しめてこそ、一人前の幽霊ってもんよ。

「……っかー。そうかー、これが恋ってやつかぁ。……すっげえな! キョーレツだな!」

その子は、大きく伸びをして、ごろんと床に寝転がる。感慨深そうに、目をキラキラ輝かせながら。

あらあら、恋に落ちちゃったからにはこれからが大変なのに、ずいぶん楽しそうじゃないの。

「はぁ……。にしても、すごい迫力だったな……。そりゃあ恋にも落ちるぜ」

「キレーな顔、ハードな視線、クールな声。あんなにウツクシクにらまれたら、オレ、いくらでも土下座できんな!」

「ヤベェ、マジヤベェ、あんな女がいたなんて」

「あんなロックな瞬間がこの世にあったのか……。すげえぜ、マイワールド」

永谷恵

って、え……。

永谷恵

お相手は女性なのっ?

それを早く言いなさいよ! というか、なにもしていないのに目覚めた子が駆け込んでくるなんて、かなりラッキー。

永谷恵

(これは、早くサチさんに報告しないとね!)

サチさん、喜んでくれるかな。

うん、きっといっぱい喜んで、いっぱい誉めてくれるわ。

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榎木サチ

えらいわね、恵。こんなに早く見つけてくるなんて。あなたはとても、恋に敏感なのね。

永谷恵

すべてはサチさんのためですよぉ。それに、敏感なのは、心だけじゃありません……。

榎木サチ

あら、そうなの? それは、素敵ね……。

永谷恵

(……なーんて見つめあってどちらからともなく手を伸ばしあってそれでそれで! ああ、もう、素敵!)

「……なーんて言われてまたあの目で見られちまったりしたら、オレ、オレ……!! わあああ、ヤベェェ!!」

永谷恵

きゃ……!

その子が急に叫びながら跳ね起きるもんだから、せっかくの甘い妄想が台無し。……なんなのよもう、騒がしいわね!

「うっひゃー! すげぇ! 恋ってヤベェ!空飛べそう!」

柵を握って、身を乗り出しながら叫んでる。って、危ないわよ!

永谷恵

あのね、そこから飛んだらもっとヤバいのよ。……バカなの?

思わず声に出して忠告してから、わたしははっと息を呑んだ。

永谷恵

(……まあ、でも、恋ってそういうものよね)

むしろ、恋の症状の最たるものはバカになる。ことなのかも。

わたしだって、サチさんと出会ってからは、ねぇ……、うん。賢くなんて、なりようがない。

しみじみと我が身を振り返るわたしの隣で、その子はしっかりとうなずいた。

「……よしっ! もっかい、見てこよう」

あら、これからそのお相手に会いに行くつもりね。

わたしにとってもこの子にとっても好都合だわ。相手を確かめたら、全身全霊で応援してあげちゃうんだから。

「あー、またあのナイフみてぇな目でにらまれんのかな。『何の用だ?』とかおカタい声で言われちまうのかな。たまんねぇな……!」

永谷恵

(そんなのがうれしいの? まったく……)

ぶつぶつこぼす彼女の頬が、だらしなく緩んでいるのを見て、わたしも思わず、笑いたくなる。

永谷恵

(でもまあ、そうね。きっとあなた、また惚れなおしちゃうわよ)

永谷恵

(見れば見るほど好きになるのが、恋ってものなんだから)

永谷恵

がんばんなさいな!

一声のエールを送ると、わたしは小走りに去る彼女の背中を追った。

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okujou_no_yurirei-san/3121.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)