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okujou_no_yurirei-san:3104

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帰っていくその子を送り出して、扉を閉じた後で、思わず溜息が漏れる。

肩が、横隔膜がふっと脱力して下がるのがわかる。つまりそれくらい、さっきまで緊張してたってことなんだよね。

剣峰桐

はぁぁ~。

椅子にへたりこんだ私の肩、いたわるように優しく置かれた手、月代ちゃんの。

園生月代

お疲れさま、桐。いろいろ気疲れしたんじゃない?

剣峰桐

うん……。

いつもの私だったら、月代ちゃんにそんなふうにさわってもらったなら、すぐに元気を取り戻せたんだろうけど。

今はほんとに脱力してて。でも、その分、月代ちゃんの手のあったかさがうれしい。ほっとする。

剣峰桐

でも、今の子、次の時もちゃんと来てくれるかな……。部活、続けてくれるかな。

園生月代

きっと、大丈夫よ。あ、桐を安心させたいから、耳当たりのいいこと、言うんじゃないのよ?

園生月代

私にもね、彼女がちゃんと興味をもってくれてるって、わかったわ。ちゃんと展示を見て、それで入部したいって言ってきてくれたんだしね。

剣峰桐

そうだといいなぁ。

今日、部室に来てくれた子、やっぱり、学園祭の時の子だった。

数理部のパネル展示で出したクイズの問題の解答用紙に、部員募集してますかって書いてきてくれた子。

学園祭からちょっとたってるけど、別にいい。こんな時期はずれに部活に入りたいって言ってくるのって、なかなか勇気いることかもしれないんだし。

まだ今日は挨拶だけ。そして、しばらくは仮入部で様子見たいって。正式に入部するかどうかは、その後。まだ、本当に入ってくれるかどうかはわからないんだけど。

もし、あの子が入部してくれたなら、数理部、どうなっちゃうんだろう。

正直、不安がないって言うのは嘘になる。

これまでは、私と月代ちゃんだけ。

それをいいことに、私は数理部のこと、ほっぽって、月代ちゃんの仕事を手伝ったりしてた。つまり、いまいち数理部っていうには実態がなかった。

けれど、部員が増えるとなると、そうもいかなくなってくるんだ……。

園生月代

これまでは、私と桐だけでなんとなくやってきたけど、これからは、数理部としてちゃんと活動しないと、ね。

剣峰桐

うん……。

園生月代

まずは、活動の内容と、毎週のスケジュール、決めないとね。

園生月代

でも、あの子と相談しながら決めてもいいかもね。

剣峰桐

そう、だよね……。

そういった、部活をやっていく上での不安、自分があの子の先輩になること。いろいろ複雑な気持ち、でもそれ以上に。

私が今ひとつしゃっきりしきれないでいるのはきっと。

今まで、月代ちゃんと二人きりでいられたこの部室が、別のものになってしまうから、なんだろうなあ……。

園生月代

……大丈夫よ。

でも月代ちゃんは、そんな胸のもやもやを見抜いたみたいに、柔らかく私の手を取って、手のひらの中に包みこむ。

あったかい、優しい、やわらかい。

なんだかこれだけで、そこから体が溶け出してしまいそう。

剣峰桐

月代ちゃん……?

園生月代

あの子が来て、部活が今までとはどう変わっていったとしても、桐、これは変わらないの。

月代ちゃんと、繋いだ、手と手。それは、変わらないって。そう告げた声に、私は。

剣峰桐

ぅ……。

月代ちゃん、それね、反則だよ。不覚にも、ちょっと泣きそうになっちゃうじゃん……。

園生月代

桐と、私。卒業するまで? 卒業してからもずっと? 先のことはわからないけれど。

園生月代

それでも私が、桐と今、こうしているのは、なによりも本当のことなのだし。

園生月代

そして私はと言えば、それを変えるつもりはね、もうないのよ、桐。

剣峰桐

つ、月代ちゃん……。う……、まずいよ、そんなの……、そんなふうに今、言われたら……。

剣峰桐

うぁ……、や、やだ、変な声になっちゃう。だって、私だって、月代ちゃんと、ずっと……。

園生月代

別に、いいのよ、桐。今は、気持ちをそのまま、あふれさせたっていいの。見ていてあげる、私が。そばにいて、あげるから。

いつもは、かわいい月代ちゃんについ暴走しがちになるこの心が、今は。

私は、月代ちゃんがいいって言ってくれたから、その手を額に押し当てて、少しだけ、泣くことにした。

園生月代

あなたがいてくれたことが、この学校で会えたことが、こんなにもうれしい。

園生月代

かわいい……、桐。

月代ちゃんが私のことを、なにか言っている。これまで私が心の底から憧れていた言葉。

そうしてようやくわかったんだ。

うん、私はそういう女の子に、かわいい女の子になりたいなりたいってずっと願っていたわけなんだけど。

本当はちょっとちがったんだね。

誰か一人に。その人だけでいいって、そう心から思える一人の人に、そう言ってもらえるなら、それでよかったんだ……。

今まで二人きりの数理部が、もうすぐおしまいになるかもしれないけど、今日、月代ちゃんに言ってもらったから、うん、大丈夫。

また明日から、改めてよろしくね、月代ちゃん。

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okujou_no_yurirei-san/3104.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)