User Tools

Site Tools


okujou_no_yurirei-san:3102

Place translations on the >s

眼鏡を外して、鼻パッドのところを眼鏡拭きでぬぐう。

夏の間はどうしても汗ですべりやすいってのもあったけど、表とにらめっこしていて目が疲れてて、その気分を変えたいってのがあった。

各部活の、合宿のスケジュールやら必要な備品とか消耗品とかでびっちり埋まった、表。

確かに、私が夏合宿に参加してる名目って、数理部なんだけど、もちろんそんなのはほんとにただの名目で。

私は最初っから、月代ちゃんの仕事を手伝うために、合宿に参加してる。月代ちゃんの合宿監督教師と、学園祭実行委員顧問としての仕事。

だから、こんなことだって、どんと来いだ。

これなら、去年もやってたし。去年に比べれば楽になってるかなあって、慣れちゃってる自分もいたりする。

ただ、ない、これはない。私が一人で留守番ってのは、ちょっとないでしょ、これ。

私だって一応は合宿中なのに。顧問の月代ちゃんはちゃんと私を見てくれてないとだめでしょ。なのに月代ちゃんと来たら、調整とやらの仕事でお出かけ中……。

出かけるなら、どうして一緒に連れていってくれないかなぁ……。いけない、ダメ、フラストレーション溜まって、なんかもう、ああああってしてしまいそう……。

……深呼吸。落ち着こう、なにをどう、ああああってするつもりよ私。

少し空気、入れ換えよ。月代ちゃんの匂いがまだ部屋に残っているみたいな気がするからいけないんだこれ。禁断症状を誘発する。

窓を開けて、真夏の焼けた空気を吸いこむ。と……。

窓の下に見知った顔が、通りかかってた。あれ、遠見さんと比奈ちゃんだ。

遠見さんって、ポニーテールに結った髪がかっこいい。時々ふっと遠くを見るような目をするのも印象的。

学年は同じだけど、クラスは同じになったことはなくて、接点もなくって、6月に会った時とか、阿野の友達って程度の印象しかなかった。

や、だって、私の一番は月代ちゃんだし。

それでもこのところ、なにかと会う機会も増えてる人。

今日だって、忙しくてテンパっていたとこに現れて、仕事を手伝ってくれた。めんどくさそうなことを引き受けて、ささっとそれを片付けてくれた。

陸上部の食事当番のついでって言ってたけど、やっぱお礼くらい言った方がいいかな。

剣峰桐

遠見さー……。

声をかけようとして、途中で途切れちゃったのは、おしゃべりしながら遠見さんが、隣の比奈ちゃんの頭、くしゃ、と軽くかき回したのが見えたせい。

とっても自然で、気取りのない親しみが遠目にもわかる仕草。

あれ、なんかすごく、いーなぁ……。

遠見さんの幼馴染みだっていう比奈ちゃん。ワイルドな言動で要チェックの強カワイイ一年生。まあ、城女最強カワイイは月代ちゃんだけど。

そして私は、その月代ちゃんと恋人になれたわけだけど。下の2人の近しい様子に、今さらながらにそれ、意識しちゃう。

私も、あんなふうに月代ちゃんと……。いや、まだそこまで自然にはできないんだけどさ。

教師と学生って表向きの立場もあるけどさ、私のこの性格がまずいんだよなー……、とはわかっちゃいるんだけど。

月代ちゃんがかわいすぎるせいで、どうしても2人きりになるとテンションがムダにあがっちゃう。

そのくせ、月代ちゃんにさわれるチャンスができると、なんだか急に怖くなっちゃう。月代ちゃんが取扱注意の壊れ物に思えちゃって。

今までさんざん、抱き締めたりしてきたのに、いざ、恋人になったら、急に意識しちゃって。だって、私、でかいし。月代ちゃん、ちっちゃいし。

私も月代ちゃんと同じくらいかわいかったら、もう少し、自然にできるのかなぁ……。

でも私のカワイイの理想と私自身は、あんまりにも、ちがいすぎるもの。

まず名前。剣に桐って、どこの戦国武将かって感じ。それにこの身長もだ。

こないだ計ったとき、少し、ううん、かなりがっくりした。伸びてしまってた。月代ちゃんと初めて会ったときから、さらに2センチも。

ついに170の大台が間近。しかもまだ止まらない勢いだし。

こんなムダにひょろひょろ伸びちゃっては、どう考えても「かわいい」の範囲からは外れてる。コンプレックス気味になってしまう。

でも考えてみれば、このコンプレックスがあったから、かわいいものが好きになって、それが月代ちゃんと付き合うことになった始まりとも言えるわけだけど。

でも、でも……。

剣峰桐

それでも私、もうちょっとかわいかったらなあ……。

そう、見た目だけじゃなくって、しゃべりかたとか。そんな想いがついつい口に出て。

剣峰桐

うん。かわいくなりたかった、……ぴょん。

語尾や口ぐせでキャラ立てをするっていうのも、あんまりに安易なやり方だと思ったけど。それになにより。

剣峰桐

……うわ。似っ合わねぇ……。

口から出た響きがあんまりにもあれで、自分で言ってみてげんなりものだよ、これ……。

よかった、誰もいないときで。特に月代ちゃんが出ているときで。

うええと顔をしかめながら、なんとなく振り返る。

有遊愛来

ああ、ちょっといいかな。

剣峰桐

うあ!? あ、有遊さ……、ん……?

剣峰桐

な……、そっ、ちょ、ば……!

剣峰桐

いつから、そこに……?

有遊愛来

ついさっきだ。ちょっと確認しておきたいことがあって。

有遊さんも、月代ちゃんの仕事を手伝ってくれた人。もともと、風紀委員の合宿の担当者だし。だからここに顔を出すのも不思議じゃない。それはいい。問題は……。

剣峰桐

や。あの。その、なんだろ……、ええと。

剣峰桐

……聞いてた?

有遊愛来

なにを?

よかった、聞かれてないみたい。

有遊愛来

でも、まあ、そんなに気にすることでもないと思うが。

剣峰桐

あああ、やっぱり聞かれてたああああ!

瞬間、顔がかっと熱くなる。夏の暑さのせいじゃない、とんでもない恥ずかしさで、きっといま私、顔、真っ赤に。

有遊愛来

うん。気にしないで、そのまま続けてくれ……、ニャン。

……は?

私、今、なにを聞いた?

有遊愛来

園生先生もいらっしゃらないようだし、私は戻ろう……、ニャン。

で、有遊さんは、くるりと背を向けて、さっさと廊下へと戻っていって、すたすたすたと。

後に残ったのは、恥ずかしさと戸惑いと混乱でごちゃごちゃになった、なんとも言いづらい空気ばかり。

剣峰桐

……なんぞ、今の……?

剣峰桐

あれ、これ、もしかしてギャグ? 有遊さんの? うわマジで? 超めずらしいもの見て聞いた。てか、あの人冗談とか言うんだ、うわー、うわー。

慣れないことをやらかしたせいで、めずらしいものを聞けたと思えばこれはこれであり?

いやいや。やっぱり似合わないことはするもんじゃないよ。思い出しただけで、数分前の自分の首、締めてやりたいところ。

自分もかわいくなりたいだなんて大それたこと、考えないほうがいいって思い知った。

私はかわいいものが好き、それだけでいいよ。そしてだから、月代ちゃんのことを好き。もうそれだけで充分。

自分までそうなろうだなんて、そんなのは高望みっていうやつよね。

grpo

grpo_ef

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

okujou_no_yurirei-san/3102.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)