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okujou_no_yurirei-san:3084

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一木羽美

………………。

三山音七

………………。

双野沙紗

………………。

双野沙紗

(……ん)

なんとなしに、ふと時計を見て、びっくりした。

双野沙紗

(あれからもう30分も過ぎてるのか……)

放送室を見回せば、だるそうにタウン誌をぺらぺらめくってる羽美と、寝ているのか起きているのか目を瞑っている音七。

それは、30分前とまったく同じ風景だった。

双野沙紗

(……ほんと、ムダな時間の過ごし方だよな)

それは、爪の手入れをしてるあたしだって、大差ない。

もちろん、あたしたちが放送室に集まったのは、思い思いにぼうっと過ごす為じゃない。

本来は、次の放送の内容について話し合う予定だったんだけど、ぽつぽつ言葉を交わしていても、なんとなくそんな雰囲気にならなくて。

結局、有意義な発言のひとつもないままに思い思いのことをやり始め、いつの間にかただまったりと時間を浪費するモードになってしまってた。

一木羽美

………………。

双野沙紗

(羽美……。抜け殻ってやつだな)

羽美はけだるく頬杖をついて、何度も読んだはずの雑誌のページを、機械的にめくってる。

学園祭が終わった直後から、羽美はこんな感じになってしまった。

すごく忙しかったし、がんばっていたから、燃え尽きてしまったんだろう。それはそれで、すごく羽美らしいけど。

双野沙紗

(……結局、あたしたちを動かしてるのは羽美なんだよな)

密かに痛感する。

今年に入って、羽美と恋人になったり、音七と話し合ったり、いろいろあったけど、最終的なところは変わってないんだな。

双野沙紗

(今日はこのままお開きかも。……まぁ、それはそれでいいか)

秒針の音を聞きながら、こんな時間も嫌いじゃない、と思う。

30分間も黙りこくって好き好きに過ごしているのに、ちっとも苦にならない関係なんて、そうはないしね。

気の置けない仲ってやつ。悪くない。

双野沙紗

(それに、こんなのはきっと、そんなに長く続かない)

だって羽美だから。

今は魂が抜けたような無気力そのものの顔をしてるけど、きっとすぐに慌ただしくて騒々しくて落ち着きのない……。

……誰よりもまぶしい笑顔で、あたしたちを引っ張りまわすに違いない。

一木羽美

……沙紗って色白いよね。雪女みたい。

双野沙紗

は……?

やっと喋ったと思ったら、何を言い出すんだか。

双野沙紗

(でも、これって)

あの腑抜けようじゃ、さすがにもう少し時間がかかると思ってたけど……。

双野沙紗

いきなり人を妖怪扱いすんな。

一木羽美

きれいってことだよ。雪女って、だいたい美人じゃん。……雪、雪かぁ。

相変わらず飛び飛びの思考回路。でもやっぱり、なにかが巡り始めているらしい。

三山音七

…………。

音七もそれを感じたみたい。薄目を明けて羽美をうかがう、その口元が「あーあ」って形に動いた。

気持ちはわかる。こうなったらこうなったで、もう少しまったり過ごしたかったと思ってしまう……。

双野沙紗

スキー行こう、ってのは無し。修学旅行、北海道なんだから。

機先を制して言ってみる。まあでも、こんなのは足止めにもならない、脆い脆い障害物なんだろう。

ほら、羽美の目がぱっちり開いた。その瞳に渦巻きだすのは、「楽しいこと」を一直線に目指す、前進しか知らない純粋なエネルギー。

一木羽美

物産展! そうだ今度、北海道物産展があるの!

ガバッと起きあがるや否や携帯を開き、なにかせわしなく検索しはじめる。

双野沙紗

北海道に行くってのに、なんで物産展なんだよ。

一木羽美

物産展で北海道リサーチしておけば、修学旅行用の情報が放送できるじゃん!

三山音七

あ~……。

音七の呻きは納得でもなんでもなく、停滞への未練と、面倒な日々へのあきらめがない交ぜになったもの。

双野沙紗

(これで、次の週末は物産展か……)

あたしもなんとなく疲れた気分になる。お帰り、騒々しい毎日。

一木羽美

ほらほら、蟹弁当だって。

双野沙紗

蟹そんなに好きじゃない。

一木羽美

えー、それ人生の四割くらい損だよ。

双野沙紗

どうでもいいよ、そんなの。

一木羽美

あ、メロンある。メロン好きだよね、沙紗。

双野沙紗

そんなこと言った憶えない。というか、メロンは前ので懲りた。

三山音七

あー、結奈とかにも声かけていい?

一木羽美

いいよ。みんなで行こう! まだ教室いるかな? 見てこようよ。

言葉の途中から立ち上がり、言い終える前にはもうドアを開いて飛び出してしまってる。

双野沙紗

(やれやれ……)

あたしもため息をつきながら、その後を追った。音七もノロノロと立ち上がる。

双野沙紗

(まあ、でも、羽美はああじゃなきゃな)

静かな時をだらだら過ごすのもいいものだったけど、やっぱりああいうふうに笑う羽美が一番だ。

双野沙紗

(そう思えば、騒々しいのだって、悪くないかな……)

三山音七

落ち着かない彼女さんだねぇ。

双野沙紗

そこがかわいいんだけどね。

三山音七

………………。

双野沙紗

………………。

双野沙紗

(な、なに言ってんだ、あたし)

音七の不意打ちに応えて、思わず口をついてでた言葉に、驚きのあまり固まるあたし。

同じく意表を突かれて固まってる音七と、しばらくの間見つめあってしまう。

三山音七

うわぁ~……、ついに沙紗が、ノロケを……。

双野沙紗

だ、誰にも言うなよ? 羽美にも!

うわ、なんだこれ。本気で恥ずかしい。今さら熱くなってきた頬を扇ぎながら、あたしは羽美の後を追う。

さらっとあんなこと漏らしちまうなんて、あたしもだいぶヤキが回ったかな……。

音七を戸惑わせるのも悪いし、気をつけないと。

双野沙紗

(……いくら本当のことだってさ)

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okujou_no_yurirei-san/3084.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)