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okujou_no_yurirei-san:3082

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一木羽美

沙紗、ほんとにやらないの? どうして?

双野沙紗

だって、向いてないし。羽美のほうがいいだろ。

一木羽美

沙紗のほうが絶対いいって! 向いてないなんてことないよ。

一木羽美

音七、音七もそう思うよね?

三山音七

………………。

一木羽美

音七ってばぁ! ほら、起きてよ!

今に限っては、音七が寝てしまうのも無理はないと思う。

さっきからずっとこの繰り返しだし。ジャンケンやアミダで決められるってもんでもないし。

双野沙紗

(やれやれ……)

頬杖ついたまま室内を見回せば、小さなホワイトボードに書かれた文字が目を引く。

「夏合宿に向けて! 学園祭に向けて!」

その題の通り、合宿の詳細や、持ち物を含めた準備については、あっさりと話がまとまった。

羽美が積極的に提案して、あたしがツッコんで、音七が抜けたところをフォローするといういつもの流れで。

問題は、学園祭で展示するラジオドラマの脚本。誰が受け持つかの話になってから、長々と停滞しだした。

まず、音七は除外。本人にやる気ないし、音七の書く難解で固い文章はラジオドラマ向きじゃない。文体変えて書かせようとしたって、器用に調整が利くタイプじゃないし。

そんなわけで、あたしか羽美かの二択になる。

で、あたしはごく自然に羽美がやると思ってた。ノリノリで引き受けて、羽美らしい脚本を書いてくるんだろうと。

そのつもりだったのに……。

一木羽美

ええー……。沙紗、ほんとにやる気ないの?

双野沙紗

しつこいってば。

こんな感じで、ぐるぐるとあたしと羽美との譲り合い。

なんでこんなに羽美が食い下がるのか、本当に不思議。よく考えなくたって、あたしに向いてるわけないだろうに。

双野沙紗

……なんでそんなに、あたしにやらせようとするのさ?

一木羽美

え、だって。

業を煮やして聞いたあたしに、羽美はきょとんとした顔で言う。

一木羽美

沙紗って想像力が豊かだから。

双野沙紗

…………はぁ?

なんだって? ……完全に予想外。

双野沙紗

(んなわけないだろ。ちょっとしたことから、あれこれ話をふくらませるのは、羽美の方が得意だろ)

双野沙紗

あたしが?

一木羽美

うん。だって昔、いろんなことやってたじゃん。

双野沙紗

はぁ?

身に憶えはない。ないんだけど……。

双野沙紗

(……いやな予感がする)

一木羽美

ほら、中学生の時とかさ。書いてたじゃん、黒ポエム。「十字架とメメント・モリ」だっけ?

双野沙紗

……!?

双野沙紗

(わあああああああああ!!)

……と叫んだのは内心での話。実際は凍りついて口も動かせないあたしに、羽美は次々と畳みかけてくる。

一木羽美

魔法陣の研究ノートもあったよね。沙紗オリジナルのとか。

双野沙紗

(や……)

一木羽美

タロットカードも持ち歩いてたよね。満月の夜じゃないとだめって言われて、結局占ってもらえなかったけど……。

双野沙紗

(やめて! やめてええええっ!)

一木羽美

あとなんだっけ。秘密のマジカルネーム?えーっと、シュ……、シェアー? シェリアー?

双野沙紗

(な、なんで知ってるの?)

確かにあたしにはそんな時期があった。あるファンタジー小説に出会って、どっぷりと溺れてしまったのがきっかけで……。

正直に言うと、そのころだけは楽しかった。でも、目が覚めた今となっては、人生から消したい期間でしかない。

双野沙紗

(羽美に見せたことあったっけ、あたし!)

双野沙紗

よ、よく、憶えてるな……。

一木羽美

当たり前でしょ、わたしたち、友達なんだから!

身を乗り出して、満面の笑みで言い放つ羽美。

いつもならまぶしい大好きな仕草だけど、今はとてつもなく邪悪に思える……。

一木羽美

あの時の沙紗、ほんとにおもしろかったよ。きっと見てる世界が違うんだろうなって思ってたの。

一木羽美

ラジオドラマなら、その想像力を活かせるじゃん? 沙紗ならきっと、みんながびっくりするような脚本、書けると思うんだよね!

……根拠さえ知らなければ、その言葉、うれしかったのかもしれないけど、なんかもう、刺さる刺さる。

百歩譲って、中二病の黒歴史を「想像力が豊か」って捉えるポジティブなところは許しても、それをラジオドラマに活かせって、なに!?

高校生にもなって、どんな羞恥プレイだよ、それは!?

双野沙紗

(ああ、人生巻き戻したい。あのころのあたしに会えるならぶん殴って目を覚まさせてやりたいのに……)

双野沙紗

(死ねっ、過去の自分!! というか、羽美も忘れろ! 今すぐ忘れろ!)

三山音七

……ていうかさぁ。

赤くなったり青くなったり、嘆いたり怒ったりと内心で忙しいあたしの様子に、音七はなにかを感じ取ったのかもしれない。

三山音七

二人でやればいいじゃん。

そんな助け船を出してくれた。

一木羽美

二人で?

三山音七

そ。ラジオドラマでやりたいことが、いちばん見えてるのって、やっぱり羽美でしょ?

三山音七

だったら、羽美がメイン書いて、沙紗が膨らませるのはどう? それならどっちも活かせるしさぁ~。

助け船としても、実際の提案としても、悪くない。……いや、むしろすごくいい選択かも?

一木羽美

あー、なるほどねぇ……。うーん、そうだなぁ……。

双野沙紗

……いい提案だと思うけど。あたしにはちょっと、羽美のやりたいことの方向性、わかんないしさ。

一木羽美

それでいいの、沙紗?

双野沙紗

ベストだろ?

一木羽美

うーん……。そだね、わかった。じゃ、これで決定!

三山音七

はい、決まり~。よかったじゃん、いい方向で決まってさ。

一木羽美

うん、よかった。がんばろうね、沙紗!

双野沙紗

あ、ああ。

ホワイトボードの項目に、あたしたち二人の名前を書き入れる羽美。あたしは内心、ほっと胸をなで下ろす。

双野沙紗

(はぁ……。付き合いが長いのも、考えものだな)

過去の自分がそうとは知らずに仕掛けた爆弾が、何年かごしに爆発するなんて。

羽美風にいうなら「友情のあかし」ってやつなのかもしれないけど、いくらなんでもここまで恥ずかしいのはごめんだ。

双野沙紗

(……これからは、慎重に行動しよう)

次の議題に移ってやりとりを交わす二人を見ながら、あたしは密かに決意する。

羽美と付き合いだしたってこともあるし、そうでなくたって、この二人とはずっと一緒にいるつもりだから。

これまでの付き合いだって、長いといえば長いけど、比較にならないくらいの年月、付き合っていくつもりだからさ。

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okujou_no_yurirei-san/3082.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)