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okujou_no_yurirei-san:3063

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暑い……。

見上げれば、目がくらみそうなくらい鮮烈な真夏の空と太陽。頭に突き刺さるような陽差し。

相原美紀

(帽子、被ってくればよかったかしら)

服装に関しては、そんなにうるさい学校じゃないから、怒られたりはしないと思う。でも、あまり被ってくる人もいないのは確か。

それでも、夏休み中、こうして登校してきた時は、そのくらいしてくればよかったかなとも思う。でも、手伝ってくれている風紀委員の愛来さんは、あまりこたえてないみたい。

まあそれでも、こうやって花壇に水を撒いてるかぎりは、ノズルからのしぶきが涼しげでいいんだけど。

そして愛来さんの方はといえば、変わらず強い陽差しにも一歩も引かないまま、凛とした姿勢で、友達らしい子と話している。

有遊愛来

ほら、さっさと教室に向かえ。遅刻したら承知しないぞ。

古場陽香

お、おう。そんじゃ、今日も一日、ホシューがんばってくるぜ!

有遊愛来

ああ、がんばれ。

ちょっとめずらしい組み合わせ。朝の門番として、学校中に知れ渡っている愛来さんに満面の笑みで手を振っているのは。

あれは軽音楽部あたりの子かしら。服装に関してはゆるめのこの学校でも、輪をかけてゆるんだ恰好の子。

愛来さんとはいかにも対照的と思ったのだけど。意外、かな。愛来さんも、少し楽しそうな笑顔、浮かべている。

めったに見せない、けれど見れたら幸せな気持ちになれそう、そんな貴重な笑顔を向けられているあの子は、本当に誰なのかしら?

相原美紀

あの子は?

有遊愛来

古場陽香って言います。友人です、今のところ。

相原美紀

今のところ?

有遊愛来

そうです。ちょっと……、いやかなり、興味深い友人で。とても、おもしろいんです、見てると。

そう答える愛来さんこそ、おもしろくてたまらないといった顔つきで、これもとってもめずらしい。

いつもこんな笑顔なら、愛来さんも怖がられるだけじゃなくて、もっと人気が出るかもしれないのに。そうは思っても、役割柄それも難しいかしら。

相原美紀

なんだか愛来さん……、楽しそうね。

意外な組み合わせに意外な一面という物珍しさも手伝って、つい口にしてしまったところ、その答えは思わぬ向きを突いてきた。

有遊愛来

ええ、とても。でも相原先輩だって、近ごろはとても楽しそうですよ。

有遊愛来

牧さんでしたっけ? 彼女のおかげですか?

相原美紀

え!

な、なんで、知っているの!?

一体どこまで、わたしとあの子のこと。もしかして、告白されたこととか、キスされたこととかもって動揺しかけたけど、考えてみれば牧ちゃんとは委員会の仕事でいつも一緒。

そのあたりの様子、見られてたって不思議はない。

相原美紀

……ええ、まあ、そういうことになるのかしら。

相原美紀

夏休みに入ってから、一緒に遊びに行ったりしてるの。あ……、でもわたし、一応受験生なのよね。ちょっとゆるみすぎかしら。

有遊愛来

いえ、息抜きは大切だと思います。それに、相原先輩なら遊んでばかりということもないでしょうし。

相原美紀

そう、かしら。

有遊愛来

それに、ええ、彼女といる時の先輩は本当に楽しそうですから。

有遊愛来

相原先輩にそういう顔、させてあげられるんなら、牧さんとの付き合いは、先輩にとっていいことなんでしょうね。

さすがに、一緒に遊びにいく以上のことは言えないけど。曖昧に濁したところへ、思いもかけないおおらかな反応に、かえって戸惑ってしまう。

時間に厳しい人だってことは有名なのに、受験生が後輩と遊ぶ息抜きはいいだなんて。本当に今日は、愛来さんのイメージが変わっていく日みたい。

相原美紀

ところで、愛来さんはどうして今日は、学校に? 二年生でも夏季講習はあったっけ?

有遊愛来

風紀委員として、補習と合宿の監督です。あと、園生先生の手伝いもやってますけど。

相原美紀

園生先生の?

有遊愛来

ええ。先生も合宿の監督と、学園祭実行委員の仕事でお忙しそうなので。

相原美紀

あ……、だったらわたしも、なにかお手伝いできることがあるかしら。

ついついいつもの癖、というか条件反射で、そう申し出たのだけど、とたんに、ぴしゃりと音が鳴りそうな言葉が返ってきた。

有遊愛来

相原先輩は、手伝わせられませんよ。今日だってこの水撒き、夏季講習の合間を縫って来たって言ってたじゃないですか。しかも、急用のできた人の代わりに。

有遊愛来

非常識ですよ、受験生なんですから。先輩に頼んだ方も、引き受けた先輩もです。

え。さっきは受験生でも息抜きならって。確かに彼女の言う通りなんだけれど。

直接言葉でお願いされたわけでもなく、急用ができて、出てこられなくなったからと。

短文のメール一通で頼まれて、どうにか講習の合間に暇をひねり出して水撒きしてるのは事実で。

有遊愛来

私も手伝うので、さっさと終わらせましょう。

言うなり、追加のホースを取りに倉庫へと走っていってしまう愛来さん。

……実のところ、こういうやりとりは初めてじゃない。

委員会同士の会合で何度も顔を合わせたことがある。用事が重なって一緒にそれを片付けた後も、愛来さんはなにかとわたしのことを気遣ってくれている。

こうやって、何度も手を貸してもらったこともある。人の頼み、簡単に聞きすぎです、とのお小言つきで。相手のためにもならないって。

彼女の言葉は、たぶん正しい。

夏休みの人気の少ない校舎は、一種独特の顔を見せていて、なんだか新鮮な気分になる。

なのにわたしは、そんな中でもいつもと同じ、誰かからの頼まれ事をつい引き受けてしまってここに来てる。

だから、愛来さんの言うことはきっと正しい。そうは思うのだけれど……。

相原美紀

わたしから、変わろうとしないと、いけないのよ、ね。

遠ざかる愛来さんの後ろ姿、戻ってくる前にそっとつぶやく。

もしかして愛来さんは、牧ちゃんとの関係が、わたしのきっかけになるって思っているのかも。だから、さっき、牧ちゃんの話をしてきたのかしら。

さっきは聞き流してくれたけど、案外わたしたちのこと、勘づいていたり、とか。それはないかな? 女の子同士なんて、普通は思わないだろうし。

相原美紀

……夏は女の子を変える、だったっけ?

使い古された言葉、本来の意味とはちがうのかもしれないけど、でもそれだけに真実がこもっている言葉。

わたしもこの夏を迎えて、変われるのかな。

相原美紀

でも、愛来さん。「そういう顔」って、言ったけれど。

わたし、牧ちゃんといる時に、一体どんな顔をしているんだろう?

古場さんに向けていた、愛来さんの笑顔みたいな?

だったらいいかなって、そう、ちょっとだけ思った。

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okujou_no_yurirei-san/3063.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)