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okujou_no_yurirei-san:3051

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お腹はしっかり空いているはずなのに、お弁当はいつもと同じにおいしいはずなのに。なんだか、食べるのに集中できない。

牧聖苗

(雲見櫓の二階……、空き部室のいくつか……。ううんだめ。お昼も放課後も、人の出入りはいつもあるし)

牧聖苗

(それなら、奥校舎の裏あたり……。……も、だめか。だってこれから雨続きの季節なんだし。それにあっちだと相原先輩の知り合いに会いそうで)

牧聖苗

(うーん……)

お昼休み。

みんなはそれぞれに、友達とおしゃべりしながらだったり、雑誌を読みながらだったりと、お昼ご飯の時間。

長い長い午前中の授業の後の、待ちかねていたお昼の時間。なのにわたしの気分はどうにも曇りがち。

牧聖苗

(こうしてみると、学校って、広くていろんな隙間があるようだけど)

牧聖苗

(誰の目にもつかないで、二人っきりになれるような場所って、なかなかないんだ)

二人だけになれる場所。相原先輩と。

校舎の中じゃ、なにかと人から声をかけられて、あれこれ忙しい先輩。

そうなると、わたしも先輩も、頼まれ事に気を取られてしまって、二人で一緒に過ごす、って感じじゃなくなっちゃう。

それに先輩は、わたしと帰り道も正反対で。だったらせめて学校にいる間だけでも、二人で、二人だけでゆっくりできるような、そんな場所がほしいって思ったんだけど。

狛野比奈

牧さん。

これがいざ探し始めてみると、ぴったり条件に合うような場所がなかなか見つからない。見つかってくれない。

それとも、こんなに人目を気にしすぎる方がおかしいのかな……。いっそのことオープンにしちゃって、人前だろうとなんだろうと相原先輩と……。

……なんて、できたら、始めから苦労はないよね……。それに、先輩とは友達からって付き合いなんだし。

狛野比奈

牧さん?

牧聖苗

はい。

狛野比奈

どうかした?

牧聖苗

はい。

狛野比奈

………………。

牧聖苗

………………。

かなり間の抜けたやりとりをした後で、隣の狛野さんから呼びかけられていたことに気が付く有り様で。

牧聖苗

あ。わたし!? ごめんなさい。ちょっと考えごとしてて。

牧聖苗

えっと、なんか用? なんか、話しかけてくれてた……?

狛野比奈

んーん。まだなにも言ってない。

狛野比奈

ただ、さっきから、牧さん、ぼうっとしてたから。

狛野比奈

お弁当、ぜんぜん食べてないし。具合、悪い?

……狛野さんに言われた通り、お弁当も半分くらいで止まっている。これ、よっぽど変に思われてたんじゃないかな。

上の空の顔でもぐもぐしてて、それも途中で止まっていて。

牧聖苗

う、ううん。そんなことないんだけどね。

どういう顔をしていいかわからなかったから、ちょっと笑ってごまかした。

狛野さんはじっと、わたしの真ん中を見通すような目でじっと見てきていて、ちょっと怒っているかもって感じ。

でも怒ってたりするわけじゃないと思う。そういう人じゃないってわかるくらいには、お話するようにもなったし。

今だって、わたしの様子を見かねて心配してくれたんだろうし。

牧聖苗

ほんとに、ちょっとぼーっとしてただけなの。あ、狛野さんのお弁当、なんていうのかな、いつもきれいだよね。栄養のバランスとかもしっかり取れてそうで。

ちょっとわざとらしいかもって話のそらし方だったけど、それは本当。

狛野さんのお弁当は、いつ見ても、色とりどりって言うのかな、見た目にもきれいだし、運動部の子らしく量だってたっぷり。でも、おいしそう。

牧聖苗

もしかして、自分で作ってたりするの?

狛野比奈

んーん、ちがう。いつも作ってもらってるの。

牧聖苗

お母さん?

狛野比奈

んー、ちがう。

聞けば、狛野さんのそのお弁当は。なんでも、二年生に隣に住んでる幼馴染みの人がいて。その先輩がいつも作ってくれているんだって。

……なにそれ。素敵。

わたしも、狛野さんのその人みたいに、相原先輩にお弁当とか作ってあげられたら、どんなだろう。

わたし自身は、いつもお母さんにまかせっきりだけど、それでも……。

そんなお弁当を、二人でゆっくりできる場所で一緒に食べることができたら……。やっぱり、場所、秘密の場所!

狛野比奈

……また、考えごとしてる?

牧聖苗

あ。ううん。えっと、うん、ほんとは、ちょっとね。考えてるっていうか、困っているっていうか……。

狛野比奈

ん? 困ってる?

牧聖苗

……この学校の中で、人目につかない場所、人気のない場所って、どこかにないかなぁって。

牧聖苗

探しているのだけど。なかなか見つからなくって。

……後から思ったら、ずいぶんと人聞きの悪いこと言ったような気がする。いきなりそんなこと、言われたら普通は驚くというか……、変に思うよね?

けれどその時のわたしは、もう何日もずっとそればかり考えてて、なのにピンとくるようなアイデアや場所、見つけられていなかったから。

藁にもすがる想いだったのかも。隣の席の狛野さんに話しちゃうなんて。相談しちゃうなんて。

なんとなく、狛野さん、ちょっと言葉が少なくて取っつきにくいかなって思うけど、不思議と話がしやすいし。

狛野比奈

人気のない場所……。

狛野さんは、わたしから少し視線を外して、ちょっと考え込んでるような感じ。そうしてると、ちょっと美少女に見えるなぁ。

ただ、次に出てきた言葉が、直前のイメージからちょっと不釣り合いというか、突拍子もなくって。

狛野比奈

木の上、とか?

牧聖苗

え、木って……。

狛野比奈

この季節だと、ヤブ蚊、多いけど。でも20mも登れば、いなくなるし。

牧聖苗

20mて……。

狛野比奈

ほら、あそことか。あの、校舎のそばの榎の木とか。

狛野比奈

それか、雲見櫓の屋根の上とか。星館の反対側とかなら、死角になってるかも。んー、でも、これからは、すごい暑くなるかも。

牧聖苗

ご、ごめん、わたし、そういうとこまで登るのは、ちょっと無理。

狛野比奈

ん、そう? じゃ、奥校舎、生け垣の中は?

狛野比奈

けっこう、広くなってるとこ、あるよ? きっと、外からは、ぜんぜん見えない。

牧聖苗

生け垣の中ってそんな。もしかして、潜り込んだこととかあるの!?

狛野比奈

ん。ただやっぱり、ヤブ蚊が多い。あと、クモの巣が髪につくと、大変。

狛野さんが次々に並べ上げていく「場所」は、あんまりにもあんまりで、初めは、からかわれてるのかなって思ったけどそうじゃないみたい。

狛野さん、あまり表情が変わらなくてわかりづらいけど、冗談を言ってる感じもしないから。

もしかしたら、狛野さんなりにマジメに答えてくれてるんだろうって。

でも、木の上とか薮の中とか、ちょっと難易度高すぎ。わたしはなんとか行けるかもしれないけど、相原先輩は絶対無理そう。

狛野さんって、豆柴とか甲斐犬とか、日本犬タイプのきりってしたイメージだけど、これじゃどっちかっていうと。……猫?

牧聖苗

(もしかして、狛野さんがいつもジャージなのは、そういうとこ、あちこち動きまわりやすいように? って、さすがにないよね、そこまでは)

狛野比奈

んー、あとは……。ごめん。すぐ、思いつかない。

牧聖苗

あ、いいよ、いいの! わたしも変なこと聞いちゃったし。あんまり気にしないで。

狛野比奈

他にも、よさそうなとこ、見つけたら教えるね。

牧聖苗

あ、ありがとう。でもほんと、そんなに気にしないでね。

考えてみれば、お互い新入生なんだし。この学校の中のこと、そこまで詳しくなくっても当たり前。

うん、まだまだわたしは城女、この学校のことを知らないもの。きっとどこか、いい場所だってあるはず。

もっとよく探してみよう。

でも、狛野さんに話を聞いてもらって、一緒に考えてもらって、少しだけ気が楽になれた……、かな?

わたしの知らない場所もあるってこと、わかっただけでも収穫かも。うん、狛野さんとお話しできて、よかった。

……そう思うことにしよっと。

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okujou_no_yurirei-san/3051.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)