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okujou_no_yurirei-san:3041

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遠見結奈

………………。

……ん?

阿野藤

(んん?)

あたしは首をかしげてしまう。廊下の先、放送室前あたりで結奈を見かけた。

結奈、さっきまで教室にいたと思ったけど、こんなとこまで来てたんだ。バイト行かなきゃだけど、声くらいかけておこうかなって思って。

で、気付いた。結奈、それと。

そのそばの、オレンジ色した、光の柱っぽいもの。人影、みたい?

ぼんやりとしたオレンジの光。眼鏡に反射しない光だから、すぐに、アレなんだっていうことはわかってしまう。

眼鏡をかけていると世界の見え方がちがうってよく言うよね。レンズは光を全部とは言わないまでも反射するから、結晶みたいに、光は独特のかたちになって見える。

ダイアモンドみたいって言う人もいるね。ロマンチックだとは思うけど。星空を見れば、宝石がいっぱいなのかな。

でも、そういう、普通の、自然の光じゃ、ない。

結奈の近くに立つ光の柱。アレがなにかを、あたしはわかってる。わかってしまうんだな、これが。それで苦労したことも何度かある。

阿野藤

(地縛霊かな、アレ)

それもけっこう年季の入ったものみたい。たぶん、女性だと思う。光の色で性別が決まってるわけじゃないけど、そんな感じ。カンだけど。

色や気配、波長や波動ってことになるのかな。光の強さはその霊の強さを示すみたい。それが、あたしの長年の経験からの実感。

オレンジの光の柱。小さな玉じゃないってことは、けっこう強い力があるってこと。そう、感じるし。

阿野藤

(でも)

阿野藤

(あんまりヤな感じじゃないかな)

阿野藤

(やわらかい感じ……)

やわらかくて、害のなさそうな波動を感じる。波長でも波動でもオーラでもなんでもいいけどさ。あ、なんかこういう言葉、ちゃんと使うと恥ずかしいな! ラノベの主人公かっ!

でも、ま、眼鏡の女の子が主人公のラノベもあんまりないか。そういう、なんでもうまくいく感じの人生でもないしね、あたしは。

こういうのってやっぱり邪魔なんだよね。見えてもいいことなんてほとんどないし。思い出すのは苦労したことばっかり。

大人に言っても笑われるし、友達に言おうものならやっぱり笑われる。

あたしの見えてるものと同じものが見えてしまう子が、おんなじように笑われたり、からかわれたりするの見てて、あんまり言わない方がいいのかな~って思うようになって。

あたしが同じようにからかわれたりせず、不思議ちゃんにもならずにすんだのは、あたしが、こー……。

……恥ずかしがり屋だったせい、かな。ちっちゃいころは、ほんとに引っ込み思案で、人とまともに話せないくらいだったから。このあたしがですよ。

物心ついて、これが霊感だとか霊能力だとかというものと理解してからは、あたしはますます、誰にも話そうとしなくなった。話せないんじゃなくて話さない。

慎重に、隠してきた。ゲームみたいに隠された力がきっかけで仲間ができたり、使命が降って湧いたりなんてありえないって、あたしはわかってたから。

それに。やっぱりあたしは目立つのは好きじゃないし。

今はちゃんと人と話せるようになったけど。というか、反動的に明るいユルカワ系(自称)キャラになってますけど。

実のとこ赤面症がちだし、注目されるとかホントありえない。耐えられん!

だからあたしは、なにも言わない。友達にも。結奈にも言ってこなかった。

阿野藤

(……それが)

阿野藤

(裏目に出たとかじゃないといいけど)

秘かに、結奈のこと、心配してた。結奈、お昼は毎日、屋上でお弁当を食べていたから。だって、ここの屋上、いるんだよね、幽霊さん。入学してすぐに気付いた。

一度、結奈に屋上に誘われたこと、あったけど、高所恐怖症だからって嘘をついて断っちゃった。

あのオレンジさん、屋上から感じたのと、似てるな。あれが屋上の幽霊さんなのかな? 結奈、やっぱり見ちゃったのかな?

そう言えば、こないだ、教室で結奈がちょっと騒いだ時も、感じたっけ。教室の中も、なんか変な感じしたし。

あの日、結奈、屋上から戻ってきた時から、様子が変だったっけ……。

やっぱり、結奈、屋上で見ちゃったのかな……? それがあの、オレンジさんなのかな?

あのオレンジさん、ほんとに悪い方の霊じゃないといいんだけど。

ちょっと隠れながらあたしは結奈とオレンジさんを観察する。ん~……。

遠見結奈

……。

遠見結奈

…………。

遠見結奈

……も、ちょっと気になったから、様子を見に来たのよ。

阿野藤

(なにか話してる? みたい?)

遠見結奈

……聞けたらなって思ってたんだけど。

阿野藤

(憑かれてるって感じの顔でもない、か。ちゃんと自分の意識があるよね、あれは)

遠見結奈

……なにかできることがあるかと思ったのよ。

残念ながら地縛霊さんの方が、なにを話しているかはよく聞こえない。集中すればいいかも知れないけど、そういうのは極力したくないし。

したこともないし、してどうなるかもよくわからない。そしたら、誰かに気付かれるかもしれないし。

それに、見る限り、とりあえず悪い霊ではなさそうだと思う。

阿野藤

(結奈は会話をしてるし、視線もちゃんと光の方に向いてる)

阿野藤

(なら、相手の姿が見えてるってことかな?)

霊は普通の人には見えない。地縛霊なんて特にその性質が強い。なのに、ああして見えて、なおかつ言葉も聞かせてるのなら。

地縛霊が会話と交流をしようとしてるってこと。凶暴な霊ってのは、たいてい、自我なんて吹き飛んでるからまともに会話なんてできないし。

見せて聞かせる時には、脅かそうとしたり、悪いことしてこようとするのが大半。なのに今の結奈みたいに普通に会話ができているってことは……。

阿野藤

(悪い霊じゃない)

阿野藤

(よね?)

阿野藤

(それに……)

それに、なによりも。

知らない人が見たんじゃなにもわからないだろうけど、結奈、ちょっといつもとちがうみたい。悪い意味じゃなくってさ。

なんていうか、よくしゃべってる。あたしと話してる時ともちょっとちがう感じ。

ちょっと怒ってるというか、不満そう? でも、あんなにしゃべってる。それだけ、気が許せる相手ってことなのかな。そんな感じで。

阿野藤

(なんだか……、結奈……)

阿野藤

(そっか)

それならそれでいいのかも知れない。少し考えて、あたしは小さくうなずいていた。

結奈の、あたし以外の人への態度、物静かなところは好きだけど、どこか、ガマンしてるような雰囲気もあるから……。

あたしも、さんざん迷惑かけて、結奈が根負けしたみたいに、世話を焼いてくれてるわけだし。

なんで結奈が、あたしや比奈ちゃん以外には、そんな態度取ってるのか、知らない。どうしてなのかなって思うけど、そんなこと、聞けないし。

なにもせずに、なにもできずに、ただ隣にいただけ。あたしはさ。

言わないことは言いたくないこと。あたしの恥ずかしぃなとことか、見えちゃうとことか。

それは自分自身でよくわかってるから、結奈がなにかに耐えていることに気付いても、なにもしなかった。

なにもできなかった。ちょっとつらそうだなって、ずっと隣で感じていたのにね。

でも、今の結奈は……。

あたしの面倒見る時とは、ちょっとちがうけど、それでも生き生きとしてる感じ? 状況は、もう、全然よく読めないけど……。

阿野藤

(なにかできることがあるかと思った。そう言ってた)

阿野藤

(一緒になにかしてるの? 霊さんと?)

阿野藤

(ほんとに、取り憑かれてそう言ってるって感じじゃない。操られてる感じもしないし。なら、結奈、自分からそうしてるってこと?)

阿野藤

(霊の、手伝い……?)

状況は読めないまま。一体、結奈がなにをしようとしているのかもわからない。

でも。あたしは、結奈をちょっと離れたとこからこうして、見つめながら思う。とりあえず今のあたしにできることはなに?

結奈に声をかけて、なにと話しているのか聞いてみる? それで、あの霊をどうにかして祓ってみる? いや、そんなことしたことないし。

ううん。そうじゃないと思う。ぴんと来ない。霊が見えるだけじゃない。あたしは、昔から、カンもよかったし。

それがダメなら、なにをしたらいいんだろう。

結奈と友達になってから、一年ちょっと。なにもできないでいた、あたしなんかに、なにができるのかな。

阿野藤

……とりあえず。

阿野藤

手伝ってみよっか。あたしも。

どうしようもないぐらい消極的で、どうしようもなくズルい考え方をあたしはしているんだと思う。そうだよ。ズルいよ。

あたしの知ってることは結奈には言わないで、勝手に手伝うだけなんだもん。言い出せないのに、勝手に。

でも、あたし。結奈がなにかをしようとしてるなら。そんなふうに、見せたことない顔で、結奈がなにか、しようとしてるなら。

……結奈を手伝いたいと思う。

それで、あたしも、なにもできずにいたあたしも、少しくらい、役に立てるなら。

それが、たとえ、霊からの頼み事だったとしても。

阿野藤

……ごめんね。結奈。

阿野藤

ちゃんとできないけど、あ、あたしもがんばるから。それで許してくれないかな?

阿野藤

ちゃんと言える時が来たら、あやまるからさ。ね、結奈。

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okujou_no_yurirei-san/3041.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)