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okujou_no_yurirei-san:3024

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古場陽香

うーん……。

永谷恵

…………。

シャーペンを手に、難しい顔でノートに向かう陽香さん。

たまに手を動かしてなにか書いたかと思うと、それをがーっと塗りつぶして、ガリガリ頭をかきながら首をひねってる。

古場陽香

あー、うー……。

お昼休みの屋上で歌詞を考える姿は何度も見てるけど、今日は特に集中しているみたい。

前は、なにかブツブツつぶやいたり、呻いたり、ぼやいたり、空に向かって叫んだりしてたんだけど。

今日の陽香さんは、すごく静か。目を逸らさずにノートの表面だけをじっと見つめていて、歌詞の世界に深く入り込んでる感じ。

永谷恵

…………。

永谷恵

(学園祭まで、あと数日だものね……)

がんばって!と声をかけたくなるところを、わたしはぐっと飲み込む。

聞こえないとはわかっていても、よけいな音はたてちゃいけないって思って。

古場陽香

1、2、3……、ん、あってる……。

古場陽香

…………。

古場陽香

……できた……。

永谷恵

(え?)

見ると、陽香さんは芯をしまったシャーペンを置いたところだった。

永谷恵

(できた? できたって、完成したってこと?)

ほんとに? やっと? でも、こんなにあっさりと? もっとすごい大騒ぎすると思ったのに。

古場陽香

った……!

陽香さんは小さい声でつぶやくと、右手を握って突き上げる。

潤んだ目で、まっすぐに大空を見上げて。……力の入りすぎた腕が、少し震えてる。

……ああ、ほんとにできたのね。陽香さんがいつも言ってた、クールで熱くてグッとくるやつが。

永谷恵

おめでとう、陽香さん!

わたしはねぎらいながら、ほうっと息をつく。なんだか、自分のことみたいにうれしいな。

それは、陽香さんが、恋していることに気付いてから、ずっと見守ってたからってのもあるだろうし。

見守るうちに、バカだけど明るくて素直な陽香さんが、それなりにカッコよく見えてきたってのもあるのかも。

永谷恵

(まっすぐで一途で、どこかおかしくって。ほんと、応援しがいがあるな)

陽香さんのまっすぐなとこって、意固地なわたしとは、正反対といってもいいくらい。

永谷恵

(そういうとこ、わたし、陽香さんに憧れてるのかも。こんなふうになりたかったなって……)

古場陽香

よし、すぐにメールで送るべ。もう日がないからなー、イチビョウでも早くって言われたしなー。

陽香さんは、携帯電話に歌詞を打ち込み始める。バンドメンバーに送って、曲を仕上げてもらうのね。

永谷恵

ちょっと失礼。

わたしはその手元をのぞき見る。さっきまでは、なんだか集中を乱しそうでのぞけなかったのよね。

永谷恵

(どれどれ……)

永谷恵

ふぅん……。

永谷恵

(うん、なるほど。なるほどね……)

ずらずらと並んでいる歌詞に、自然と頬がゆるんじゃう。

いい歌詞ね、陽香さんらしくて。わたしはすっごく好きだわ。

古場陽香

よっ、と。……うん、おっけ。

送信が終わったみたい。

お疲れ様、と声をかけたかったけど、陽香さんはまだ難しい顔をして、携帯をいじってる。

どうやら、さっき送ったばかりのメールを読み返してるみたい。

古場陽香

うーん……。ちとバカっぽくねーか?

あらら、不安そうな顔してる。まあ、気持ちはわかるけど。

永谷恵

なに言ってるの、告白なんてバカっぽいくらいでちょうどいいんだって!

陽香さんの背中を叩きながら、思わずそんなことを言ってしまう。

でも、ほんとにそう思うのよ。恥ずかしげもなくバカやれるのは、恋する人の特権よね。

わたしも、サチさんに一目惚れしてからはバカの標本みたいなもんだったもの。脇目もふらず、前へ、ただ前へ。

他にはなにも考えられなくて、世界はそれだけでよくって、……気が付いたら、こんなことになっていて。

いちばんバカなのは、それでも後悔なんてしてないってこと。

生命を懸けた恋なんて、言葉は綺麗だけど、我ながらバカだなぁって思うけど、満足してるし。しちゃってるのよね。

永谷恵

そんな恋するバカの大先輩であるわたしが、太鼓判押したげるわ。この歌詞は最高! 陽香さん最高!

永谷恵

ね、だから自信持ちなさいよ、陽香さん。好きな人に想いを告げる時は、バカになっちゃったほうがいいのよ。

古場陽香

……いや、弱気じゃいけねーな。うん。だいじょぶだいじょぶ。

わたしの声が聞こえたわけじゃないんだろうけど、陽香さんは気を取り直したみたい。

携帯を握りしめたまま、陽香さんは力強く立ち上がる。

古場陽香

ここにオレのロックが全部詰まってんだ。あとはもう、カマしてやるしかねぇ!

永谷恵

そうよ、ぶち当たれ!

古場陽香

いぇあ! まかせとけ!

携帯を握った手を、グッと天に向かって突き出して、陽香さんは元気よく屋上から走り去っていった。

永谷恵

(うん、そうよ、その調子よ。いつもの陽香さんで……)

永谷恵

(……って、アレ?)

今、ちょっと会話になってた気が。

永谷恵

(気のせい、かしら……?)

……………………。

永谷恵

(ま、まあいいわ)

それより、他の子も気になるし、いろいろ学校の中、歩き回ってみよ。

……と、屋上から降りていったところで見つけたのは、見慣れた顔。

永谷恵

結奈っ! あのさ……!

遠見結奈

……?

永谷恵

(……やっぱ、結奈に報せるのはやめとこっと)

結奈には、陽香さんも自分で報告したいだろうし。

永谷恵

(それに、今、実は結奈も大変だしね~。比奈ちゃんが茉莉さんと美夕さんのケンカに巻き込まれちゃってるから、心配だろうし)

今だって、わたしへの反応、結奈にしては遅かったし。

なんというか、普段よくできる子が気もそぞろな状態って、かわいそうというか……。そっとしといてあげたい。

永谷恵

(うん? わたし、今気を遣ってる? 気遣いってやつができてるんじゃない?)

永谷恵

(うわぁ、さすが先輩だわー。我ながらおっとなー!)

遠見結奈

なに、どうしたの。

永谷恵

ふふ、なんでもなーい。

遠見結奈

え?

永谷恵

なんでもないのよ、気にしないでね。じゃね!

遠見結奈

な……。なんなの……。

遠見結奈

……かえって気になっちゃうじゃない。

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okujou_no_yurirei-san/3024.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)