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okujou_no_yurirei-san:3002

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噂がある、らしい。

三階東側のトイレに出るという話。そう、どの学校にも必ず七つとまで言わないまでもいくつかはあるっていう話の類。この城女にだって、当然あるわけで。

あまりそういう類の話は気にしたことなかった。小学生のころにはちょっと流行していたこともあって、確かめに行ったこともあった気もするけど。

遠見結奈

……よし、と。

星館校舎の三階東側のトイレ。一番奥の誰も入ってない個室へ私は入る。ドアは閉めない。鍵も、かけない。

こうして入った個室の鍵を勝手にロックしてしまう、寂しがり屋の『あれ』の噂を確かめるために。

本当に。こんなことするのは小学生ぶりだと思う。

お化けの噂を確かめるために、なんて。

寂しがり屋の花子さん。そうっと鍵をロックして「一緒にいて」と背中から囁いてくるとか、そういう噂。

阿野から聞いた話だった。あの子はそういう類の噂が好きみたいで、聞いてもいないのに花子さんの話をしてきた。それが今朝のこと。

三階東側のトイレ。一番奥の個室。ここに花子さんは出るという。

遠見結奈

まさかね。今時、学校の妖怪なんて。

そう思っていても、やっぱり気にかかる。なんで、この年にもなって、こんなこと、気になるんだろう。

やっぱり、サチさんと恵、二人の本物の幽霊に会っちゃったからかな。それだけに、この噂にもちょっと気になるところがある。

阿野の話を思い出す。呼びかけると鍵がかかるって話だった。呼びかける、ね。

遠見結奈

……花子さん。

カチリ。

遠見結奈

え。

私の目の前でそれは起こった。私以外に誰も入っていない個室のドアが、音もなく閉まって、鍵がカチリ。

もちろんひとりでに。私には少なくともそういう風に見えていた。

誰もいないのに。

まるで、誰かが、そうしたみたいに……。

遠見結奈

………………。

遠見結奈

……恵?

永谷恵

あら、バレてた?

トイレのドアをすり抜けて、私のすぐ目の前に、恵が姿を現す。

両手を胸の前に垂らしてるところ、お化けらしい仕草を真似しているつもりなのかしら。

遠見結奈

妖怪だの幽霊だのって話なら、恵だろうなって思っただけ。トイレの花子さん。

確信したのは、鍵がかかった瞬間だったけど。一瞬だけ、ドアをすり抜けて鍵をかける指が見えてたし。

永谷恵

花子なんかじゃないわ。そんな昔っぽい名前じゃないわよ?

永谷恵

トイレのっていうのもなんかイヤ~。

遠見結奈

花子さんぶってるんだから花子さんでしょ。やっぱり恵のイタズラだったんだ。

永谷恵

なによ、ビックリもしないし、怖がりもしないなんて、結奈も冷めてるのね。

永谷恵

退屈な学園生活の潤いにちょっと遊んでるだけよ。でも、変な噂になってて、びっくりしちゃったわ。妖怪なんているわけないのにね。

幽霊のあなたが、なにを言ってるのやら。

遠見結奈

潤い、ねえ。

永谷恵

そう。やっぱりみんな、退屈な日常には退屈してると思うの。

遠見結奈

日本語が変よ。

永谷恵

たまにはこういう刺激も必要ってことなのね、うんうん。だから、時々、こういうふうに、あんまり怖くない程度に遊んであげてるのよ。

永谷恵

それが、だいたい、妖怪の仕業って話になっちゃうのが不思議なのよね。なんで、幽霊ってことにならないのかしら……?

永谷恵

妖怪なんているわけないじゃない。ね?

だから、なんで幽霊が妖怪を全否定するのかしら。

遠見結奈

……ん。

そこで、ちょっと思いついたことがあった。

永谷恵

うん?

遠見結奈

時々って言ってたけど、まさかサチさんも?

この学校には、もう一人。目の前の恵よりもっと年季の入った幽霊さんがいるでしょう?

榎木サチ

ええ、昔はね。ちょっと、いろいろと。

恵と一緒に屋上に行って、サチさんにこのことを話してみたら、やっぱりだった。

榎木サチ

昔は、そうね。コックリさんが流行っていた時は色々やったこともあったかしら。

永谷恵

サチさんはすごいのよ。こっくりさんをやってる子の心をちょっと読んで、十円玉、動かしてたんだから。

永谷恵

つまり、少なくともこの学校のコックリさんは全部本物だったってことね! サチさん、すごい!

榎木サチ

あら、そんなに褒められたら恥ずかしいわ。

それって、褒めてるのかしら。

榎木サチ

でも、ね。ある時を境に、あまりそういうことはしなくなったの。

遠見結奈

ある時?

榎木サチ

迷信は人を幸せにしないってことよ。占いっていうのは、あくまで心を軽くするためのものじゃないかって思ったの。

榎木サチ

コックリさんも、そうだと思うわ。ちょっとした先行きの示し程度。そう、儚くも遠いユリトピアも同じことなのかしらね……。

永谷恵

ユリトピアはちがいますよ、サチさん!ユリトピアは必ず実現します! 来ますよ!

榎木サチ

ええ、そうね。

うなずきながらも、遠い目をするサチさん。なんだろう、この変な雰囲気。なにかあったのかとは思うけど、微妙に口を挟みにくい。

まあ、でも。言うことは言っておかなきゃ。

遠見結奈

まぁ、ともかく、あんまりイタズラして噂になってもよくないと思うから。ほどほどにね。

永谷恵

は~い。

榎木サチ

ええ、そうね。そうするわ。今は、結奈さんがいるから退屈してないし。

遠見結奈

……やっぱり退屈しのぎなんだ。

永谷恵

え?

榎木サチ

なぁに?

遠見結奈

ううん、なんでも。

確かに、長いこと幽霊やっていると、退屈はするのかも。

退屈な日常って恵は言っていたけど、誰よりも退屈してたのは、この二人なのかも。

だからって……。私を退屈しのぎ扱いするのも、どうかと思うんだけど。

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okujou_no_yurirei-san/3002.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)