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okujou_no_yurirei-san:2822

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とうとう、学園祭の二日目が来た。

今日は、昨日とちがい、土曜日で秋分の日の休日。

学園祭も、今日は学生の家族も入場可で、昨日よりも人も増えてにぎやかになる。

あたしと美夕、二人で今は、もうすぐ、その二日目の開場を迎える正門の前に立っている。

まだ、お互い、口も聞けずに。

二人して待っているのは、今日のデートの相手をつとめてもらう比奈。

あたしと美夕のケンカは、比奈の思いの外の手強さもあって、決着がなかなかつかなくて。

とうとう、今日、二人で順番に比奈と学園祭でデートして、最後にどっちとのデートが楽しかったかを比奈に決めてもらうことになった。

勝った方が、比奈と付き合うって条件までついて。

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……なんで、こんなことになっちゃったのかなぁ。

確かに、ケンカの原因はあたしが美夕に対する欲求不満を抑えられなかったことにあるけど。

でも、美夕にだって悪いところはある。それに、比奈のことを先に持ち出してきたのも美夕の方だし。

だから、あたしも引っ込みがつかなくて。美夕があやまってくるまで、絶対にこっちからはあやまるもんかって思って。

今日まで、ずっと。この一ヶ月間、ロクに話もできないまま。

学園祭で比奈とデートか……。

それはそれで、ちょっと楽しみではある。比奈はかわいいし、素直ないい子だからね。美夕にも見習ってほしいくらい。

だから、比奈とデートするのは問題ないんだけど……。

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稲本美夕

………………。

美夕、ずっとさっきから黙ったまま。二人してちょっと早く来ちゃったから、こうして比奈のこと、待ってるんだけど。

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美夕は、どう思ってるのかな、この、デートのこと。

一昨年、去年と、忙しくて学園祭を二人で見て回ることはできなかった。

なぜって、出店として参加していたから。クラスの友達と一緒に、有志参加で。もちろん、美夕も一緒に。

楽しかったけど、とにかく忙しくて、学園祭を見て回るどころじゃなかった。

だから、去年、学園祭が終わった時に、来年は出店の参加はしないから、一緒に学園祭を見て回ろうって約束をした。

来年は、学園祭デートをしようねって。そう、約束してたのに……。

まさか、デートはデートでも、デート勝負になるなんて。ケンカをしたままで。

楽しそうに正門を通っていく他の子たちを見てたら、その約束を思い出しちゃった……。

どうしたらいいのかな。今まで、その約束、すっかり忘れてたわけじゃないんだけど。

美夕からこのデート勝負の提案を受けた時には、飛んでいっちゃってて。

それを、今になって思い出すなんて。

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稲本美夕

………………。

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ねぇ、美夕……。

あのさ、もし、今からでも、あたしがあやまったら許してくれるのかな? 比奈にあやまって、あたしと美夕の二人で、学園祭デート、できるのかな。

それができるなら……。

いっそのこと、あやまっちゃった方がいいのかな。ちょっと、悔しいけど……。

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網島茉莉

あのさ、美夕……。

稲本美夕

あ、来たわね。

もうちょっとで、ごめんって言葉が口から出る寸前だった。

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美夕の視線の先、椿小路の方から。

比奈と結奈ちゃんが並んで歩いてきた。そして。

完全にあたしはタイミング、逃しちゃって。もう、勝負するしかなくなって。

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稲本美夕

それじゃ、私が先攻でいいわね?

網島茉莉

わかってるよ。

……やるしか、ないか。もういいや、腹括ろう。今日は比奈を楽しませてやるんだから。

比奈がいったん、教室にカバンを置いてきたあと。

学園祭の出店、展示が並んでる講堂の前。あたしと美夕が並んで待ってるそのちょっと向こうで、比奈が結奈ちゃんと話してる。

なんだか、結奈ちゃん、比奈にあれこれ注意というか、心配して世話を焼いてるみたい。ほんと、仲のいい姉妹みたい。

ワガママ言っちゃダメとか、お小遣い足りてるとか、そんな言葉が聞こえてくる。姉妹と言うより、結奈ちゃん、お母さんだよね、あれ。

網島茉莉

結奈ちゃん、そんなに心配しなくていいよ?ちゃんとエスコートするからさ。

稲本美夕

今日一日、お借りするだけだから。ちゃんと返してあげるわよ?

そんな声、かけてみるけど、なんだか浮かない顔してる。どうにも比奈が心配みたい。

遠見結奈

はぁ……。

狛野比奈

結奈ねぇ? どしたの、ため息ついて。

遠見結奈

ん、なんでもない。えっと、それじゃ行ってらっしゃい。

狛野比奈

ん、行ってきます。

結奈ちゃんにそう言って、比奈がこっちに向かって走ってくる。

網島茉莉

おし、来たか、比奈。

狛野比奈

ん。

稲本美夕

準備いい?

狛野比奈

ん。

先攻はジャンケンの結果、美夕から。だから、午前中は美夕、午後からがあたしとのデート。

いよいよ美夕と比奈から、勝負の始まり、なんだけど。

狛野比奈

あ、結奈ねぇ!

比奈、いきなり振り返って、結奈ちゃんに大きな声で。

狛野比奈

終わったら、一緒に帰ろ!

と、きたか。まったく、ほんとに手強そうだな、比奈は。デートじゃなくて、遊びに行く感じ。

きっと、美夕も苦労するんじゃないかな。

稲本美夕

それじゃ、私からね。

狛野比奈

ん。よろしくお願いします。

稲本美夕

ええ、行きましょう。

そうして、美夕は比奈を連れて、講堂の方へ行ってしまった。

あーあ、とりあえず、お昼までどうやって時間つぶそう……。

デート中の二人に鉢合わせるわけにもいかないから、講堂のまわりはうろつけないし……。

部室で居眠りでもしてこようかな。

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ここまでは順調。私は、事前に立てておいたプラン通りに、比奈とのデートが進んだことに、軽く満足感を覚えていた。

比奈との学園祭デート。茉莉とのジャンケンに勝って、先攻が取れたのはよかった。

だって、茉莉がどんなデートを比奈とするのか関係無しに、計画を立てられるから。

それに、先手を打って、比奈が楽しめそうなところ、全部、回ることだってできる。

だから、茉莉とのデートの時より、綿密に私はデートプランを立てた。学園祭のパンフを読み込んで、出店や展示の内容を把握して、どういう順番で回ればいいかまで。

そして、今日、ここまでは本当に順調。比奈と一緒にプラン通りに学園祭を見て回ることができた。

最後に寄ったバーベキューまで、完璧に。ちょっと予想外だったのは、比奈の注文した量くらい。

2本くらいだと思ったんだけど、3本とは。比奈がお肉が好きだっていうの、ほんとだったのね。

あと、その食欲にもちょっとびっくり。あっという間に、3本とも食べちゃったんだもの。

私は、2本頼んで、ちょっと後悔してるのに。けっこう、このお肉、お腹にずっしり来るのね。

そうしてお昼を食べた後は、ゆっくり話でもして、茉莉との交代まで時間を潰せばいい。

話……、比奈との話、ね。どうしても話題は、陸上や部活のことになってしまうんだけど。

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稲本美夕

やっぱり、いちばんちがうなって思ったのは、緊張感かしらね。あと、プレッシャー。

狛野比奈

そう、ですか。

今は、比奈からの質問に答えてる。全国大会の本選ってどんな雰囲気なんですかって聞かれて。

稲本美夕

自分で感じるものもそうだけど、まわりの選手、みんなから感じる緊張感ね。みんな、すごい真剣だから。

狛野比奈

ん……。

稲本美夕

それが、プレッシャーとして感じられるの。こんな人たちの中で、自分はどれだけやれるのかって。

稲本美夕

そういう中で、自分の実力を出せる人が、強いアスリートだと思うわ。

狛野比奈

そうですか……。

比奈もやっぱり、陸上をやっているんだから、全国大会本選を目標にしてはいるんだろう。だから、聞いてきたんだろうし。

私、うまく伝えられてるかしら。比奈、真剣な目で聞いているので、ちょっとプレッシャーに感じる。まぁ、今話したのとは別の種類のものだけど。

狛野比奈

でも、どうやって、実力、出すんです?

狛野比奈

プレッシャーって、実力が、出せなくなるんですよね?

稲本美夕

そうね……。

私は、なるべく、自分がどうやってそれに対処してるかを、うまく頭の中で説明用に構成してみる。

稲本美夕

私の場合……、まずは自分の現状を把握すること、かしら。その日の体調や、天気、相手の情報とか。

稲本美夕

いろんな情報を入れて、できる限り、対処法を考えておくこと。どうすればいいか、理解しておけば安心できるでしょ?

狛野比奈

ん? んー……。

うーん、これはちょっと比奈向けの説明じゃなかったかもしれない。となると……。

稲本美夕

人それぞれだからね。茉莉の場合、とにかく、楽しむことって言ってたわ。楽しんじゃえば、プレッシャーなんて忘れるって。

狛野比奈

ふむ。

やっぱり、ちょっと悔しいけど、こっちの方が比奈には合ってるみたい。

比奈って、アスリートとしては、茉莉に似たタイプなのかも。まぁ、茉莉よりずっとマジメだけど。

狛野比奈

あの、美夕先輩。

稲本美夕

なに?

狛野比奈

前の、話、ですけど。転向の。

稲本美夕

ああ……。どう? 考えてみた?

狛野比奈

ん……。中長距離、やってみたいです。

稲本美夕

そう……。

記録がちょっと伸びていない比奈に対して薦めた、中長距離への転向。

考えておいてと言ってはいたけど、今の比奈の性格や資質から考えると、中長距離の方が合っていると私は思ってる。

そっか、決めたんだ。

狛野比奈

短距離、好きだけど、美夕先輩、いっぱい中長距離のこと、教えてくれたし。

狛野比奈

走るのが好きなら、向いてるって、言ってくれたでしょ。走るの好きだから、やってみようかなって。

稲本美夕

ええ、そうね。比奈のそういうとこは、確かに中長距離に向いてるのよ。

稲本美夕

だって、長距離だったら、1時間以上、走り続けることもあるんだし。走るのが好きじゃなきゃ、やってられないと思うわ。

稲本美夕

それに、比奈、ガマン強いとこ、あるしね。

狛野比奈

んー、そうですか?

稲本美夕

ええ。……茉莉とは大違いね。

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確かに茉莉は、比奈よりマジメさが足りないところがある。辛抱が足りないというか、ガマンがきかないというか。

でも、そこが茉莉の爆発力や行動力につながってるってことも、知ってる。

例えば、私がデートの計画を立てていても、思いつきだけでそれを壊してしまうことがある。

怒りたくなることもあるけど、それで新しい発見があったり、予想以上に楽しいデートになったりすることがある。

私が思いつかなかったことを、ポンと出してくる。それを茉莉は楽しんでるし、私を楽しませてくれる。

今日のデート、比奈はずっと、私についてきてくれた。比奈を楽しませてあげた自信はある。

でも、比奈から、こういうのを楽しみたいって言ってきてはくれなかった。それを、なんの文句もなかったからとは自惚れられない。

だって、私は茉莉のこと、知ってるから。私の考えてることがベストじゃないってことを、いつも教えてくれる茉莉を。

……そんなこと、今考えてもしょうがないか。

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狛野比奈

走るの好きで、ガマン強い……。

稲本美夕

それも立派な資質だと思うわ。自信持っていいわよ、比奈。

狛野比奈

1時間とか2時間とか、走れるほど、好きかな?

稲本美夕

そうね、茉莉に聞いてみたら? 走るのが好きってことなら、いちばんだと思うから。まぁ、茉莉はスプリンターなんだけど。

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どんな競技でも、それが本当に好きかどうかって、すごい大事なことだと思う。

茉莉は、走ることが本当に好きで。そして、走ることの才能もある。

きっと、どちらも、私よりも上。

二年の途中から、私はだんだん、茉莉との差を感じ始めていた。それが、タイムになって表れた時、やっぱりショックを受けた。

私は茉莉よりも、技術を身につけている自信がある。でも、茉莉はその私をあっさり超えていってしまう。それってもう、どうしようもない。

陸上競技に関しては、私は茉莉に、嫉妬さえ覚えてしまう。でも、かなわない、そう、あきらめてしまうことはできなかった。必死にすがりついていこうと思った。

だって、走ってる時の茉莉は、本当に素敵だから。前を走る背中からも、それはわかる。アスリートとして、憧れたくなる。

でも、いつか、追いつけなくなる日が来るかもしれない。

その時、私はどうすればいいのかな……。

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狛野比奈

美夕先輩?

稲本美夕

え? ああ、ごめんなさい。ちょっとぼーっとしてたわ。

狛野比奈

ん。

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いろんな不安が、私の中には渦巻いてる。こんなだからきっと、茉莉のことも、許せなくなってしまったんだろう。

いちばん、ほしい将来が、崩れてしまう、そう思ってしまって。

私は、もう少し、安心がほしかっただけ。茉莉に、それを保証してもらいたかっただけ。

でも、茉莉は時々、私の安心できる範囲を飛び出してこようとする。それは茉莉の魅力なんだけど。私もひかれている魅力なんだけど。

あの時は、胸の不安をただ、かき回すだけに思えてしまった。もっと……。

素直に、茉莉を受け止めてあげればよかったのかな。飛び出そうとするなら、今はダメって、そのくらいで。

それができなかったから、じっとガマンできそうな比奈を引き合いに出してしまったんだ。

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稲本美夕

ごめんね、比奈。

狛野比奈

ん?

稲本美夕

ううん、なんでもない。さ、そろそろ戻りましょうか。

狛野比奈

ん。

交代のための待ち合わせ場所に戻って、比奈を茉莉に預ける。

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網島茉莉

そんじゃ、行こっか、比奈!

狛野比奈

ん。

そう言って、茉莉はわざわざ、比奈の肩に手を回して歩き出した。

そんな仕草も、なんだか茉莉に見せつけられてるみたいで。今日の朝くらいの私だったら、腹を立てていたんだろうけど。

今はちょっと、胸が痛んだ。

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や、さすがにちょっとハメを外しすぎたかも。

比奈と遊ぶの楽しいから、つい、おもしろそうなもの全部、突撃しちゃった。

うーん、どのくらい回ったんだろう。10ヶ所くらい? もっとかな?

おかげで、この有様なんだけど。比奈と二人して、両手にいろんな荷物、抱えてる。

お昼だって食べたはずなのに、お菓子とか食べ物、いろいろ買っちゃったし。

まぁ、比奈、食欲魔人だし、たぶん、食べきれると思うけど。

ちょっと悪いクセが出ちゃったかな。おもしろそうって思うと、後先、考えるのめんどくさくなって、とりあえず行動しちゃうってのが。

比奈も、素直についてきてくれるしさ。これじゃ、止まりようがない。

美夕だったら、どこかでブレーキ、かけてくれるんだよね。その、時には怒られたりもするんだけどさ。

美夕の場合、とにかく、デートの前にしっかりプラン考えてきてくれるから。

そして、美夕がたてたプラン通りなら、だいたいそのままでもおもしろい。あたしの趣味もちゃんと考えてくれるし。

そのデートの途中で、もっとおもしろそうなことがあると、そこに突撃するのがあたしの役目で。

ブレーキかけてくれたり、やれやれって付き合ってくれるのが、美夕の役目で。

ああもう、やっぱり美夕のこと、考えちゃうなぁ。比奈とのデートの最中なのに。

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網島茉莉

はい、比奈、飲み物買ってきてあげたよ。ご注文のポカリ。

狛野比奈

ん。ありがとう、ございます。

網島茉莉

はいはい、落ち着いて食べてていいから。

さすがに、買ってきたものを食べるのに飲み物もほしいだろうと思ったんだけどね。

戻ってきたら、もう食べ始めているとは思わなかった。やっぱり比奈はズ太い、手強い。

網島茉莉

先輩に飲み物、パシらせて先にいただきます、か。うーん、いい後輩が入ってきたもんだね。

狛野比奈

んぐ。ごめんなさい。

網島茉莉

冗談だよ、冗談。飲み物買ってくるって言ったのは、あたしなんだし。

網島茉莉

それに、いい後輩が入ってきたって思ってるのはほんと。先輩として幸せなことだよね、これって。

狛野比奈

ども、です。……んぐ。

あたしも、比奈の隣に腰をおろして、賞品で取ってきた菓子パンの詰め合わせから一個、拾い上げて、袋を破る。

しばらくは、そうして、食べることに集中してたんだけど。

狛野比奈

ね、茉莉先輩。

網島茉莉

ん、なに?

狛野比奈

あたし、中長距離、始めることに、しました。

網島茉莉

あ……、そうだったんだ。

前に美夕からちょっと聞いた、比奈の転向の話。そっか、比奈も納得したのかな?

狛野比奈

美夕先輩も、中長距離に向いてると、思うって。

網島茉莉

そっか。美夕が言うなら、間違いないと思うんだけどね。

でも、それを決めるのは比奈自身。正直、よく決断できたと思う。あたしは、そんな話、出たこともないからわからないんだけど……。

やってきたことをあきらめるって言うのかな?そして、新しい種目にチャレンジするのって、勇気、いることだよね。

狛野比奈

走るのが好きで、ガマン強いから、向いてるって。

網島茉莉

なるほどね。そう言われると、比奈には向いてるかなって思うよ。

狛野比奈

ね、先輩。

網島茉莉

うん。

狛野比奈

先輩って、走るの好きって、どういうことだと、思います?

網島茉莉

え、ええ?

狛野比奈

美夕先輩が、茉莉先輩に聞いてみろって。

網島茉莉

美夕が? あたしに? う、うーん……。

走るの好きってどういうことだって? どういうこともなにも。いや、どう答えればいいんだろう。

網島茉莉

えっと、走るのが楽しいってこと? うーん、その、とにかく、走っていたいってことで、えっと……。

網島茉莉

ビューンってなるのがよくってさ。シュバって足が振れていくのが気持ちよくて? あれ?あたし、なにを言ってるんだろ。

網島茉莉

えっと、比奈はこれから、中長距離、始めるわけでしょ?

狛野比奈

ん。

網島茉莉

それってつまり、ランニングよりずっとキツい状態で走らなきゃいけないわけだよね。練習とかでもさ。

狛野比奈

ん。

網島茉莉

そんなキツい時でもさ、走るのが好きなら、それがちょっと楽になったりするんじゃない?

網島茉莉

もっと走りたい、速く走りたいって、気持ち?それがあれば、キツくても乗り越えられる……。そういうことなのかな?

狛野比奈

んー……。

網島茉莉

……うん、ごめん、うまく説明できなくて。

狛野比奈

ん、そんなこと、ないです。

網島茉莉

あー、美夕ならこういうこと、ちゃんとうまく説明できるんだけどなぁ。

網島茉莉

ほら、練習メニューの説明とか、美夕がよくやるでしょ?

狛野比奈

ん。

網島茉莉

あれ、けっこうわかりやすいよね。どんな理由でこういう練習方法なのか、とか、このメニューだと、どんな効果があるのかって。

狛野比奈

ん、そですね。美夕先輩の、わかりやすい。ん。

網島茉莉

だよね。ほんと、あたしが説明しても、きっとうまくいかないと思うんだよね。でも、美夕はうまくできちゃうんだ。

網島茉莉

下手すると、コーチよりうまいしさ。あのね、比奈。美夕の走るフォームって、すごいきれいなんだよ。知ってる?

狛野比奈

ん……。

網島茉莉

あれはさ、美夕が自分の体にあった走り方を研究して、ちゃんとそれを身につけてるからなんだよね。

それは、あたしには到底、真似できないこと。だって、あたしはほんと、そういうの考えながら走ること、できないから。

美夕はタイプがちがうからって言ってくれる。その通りだと思うことはあるけど。

でも、あたしは美夕のフォームが、きれいですごく好き。努力して、どんどんきれいになっていくところとか。

網島茉莉

フォームだけじゃないんだよ、知ってるでしょ、比奈も。美夕が練習のこととか、いろいろ考えてるの。

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練習方法やメニューについてだって、いつもコーチと相談してるし、勉強してきたアイデアを提案したりしてる。

今の陸上部のメニューの中で、美夕が考えたもの、けっこうあるしね。

合宿の時だって、あたしの代わりに、いろいろやってくれたし。みんなへの指導とか、食事のバランスを考えるとか。

そして、それが美夕の将来の目標の一つになってるって、知ってる。

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網島茉莉

美夕ってさ、いつもちゃんと、将来のこととか考えてるんだよ。指導者になりたいとか、そういうことまで。

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でも、そのことで美夕は気にしてる。指導者になるって考えることを、競技者からの逃げなんじゃないかって。

ちょうど、タイムが出てない時だったからかな。記録から目を背けてるんじゃないかって気にしてた。

でも、そんなことないよ、美夕。それ、別に逃げてるとかじゃないよ。

ちゃんと、前を向いた美夕の考え方だと思う。そういうこと考えてたって、競技者としての美夕のきれいなとこも、きっと変わらない。

……もっとちゃんと言ってあげればよかったかな。うまく言えないなんて、あたしも考えずに。

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網島茉莉

そんな美夕がいてくれたから、あたしもなんとかやってこれたんだよね。……部長とか、いろいろ。

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あたしと美夕、性格とか割と、正反対のところはある。

でも、そこがピタッとはまってるんじゃないかなって思ってた。あの時までは。

ケンカしてて、そうじゃなかったって気付いた。でも、ケンカする前はどうだったんだろう。

あの時だけ、はまってなかったのかな? それとも、もっと前から?

どっちがずらしちゃったんだろう。あたし? それとも、美夕?

どっちにしろ、このまんまじゃ困るよね。だって、さ。

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網島茉莉

美夕がいなかったら、きっとあたし、どっかですっ転んじゃってたんじゃないかな。

狛野比奈

………………。

網島茉莉

だからさ、あたし、やっぱり美夕が好きなんだ。ま、この勝負は負けたくないんだけどね。

網島茉莉

でも、そろそろどうでもよくなってきたかなぁ……。なんてね。

狛野比奈

………………。

網島茉莉

比奈?

なんか、みょうに静かなんで、比奈の方見たら、食べるのも止めて、じっとしてる。これ、なにか考え事中?

狛野比奈

んー……。

どうしたもんだろ。邪魔するのも悪い気がするし。あたしももうちょっと、美夕のこと考えてみようかなって思って、何気なくケータイを見たら。

網島茉莉

あれ? もうこんな時間!?

あたしのデート時間、ほとんど残ってなかった。

網島茉莉

比奈! もうちょっとで時間になっちゃう!残ってるの、すぐに食べちゃおう!

狛野比奈

ん、んぐ!

二人して慌てて、残っていたものを口の中に詰め込んでいく。

これが今日、比奈と遊んだ中で、いちばんハードだった気がする……。

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講堂から少し離れた、グラウンドの端っこ、私と茉莉が待っているとこへと、比奈が駆け寄ってくる。

茉莉とのデートが終わってから、一度、比奈に勝負の判定を聞こうとしたんだけど、そのタイミングで。

比奈は玄関ホールから出てきた結奈ちゃんを見つけて、声をかけに行ってしまった。

その大胆な行動には、ちょっと呆気にとられてしまったけど、話も終わったのか、比奈はまた、こうして戻って来た。

さて、今度こそ、決着をつけてもらわないと。

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稲本美夕

それじゃ、比奈、改めてだけど。

網島茉莉

どっちとのデートが楽しかったか、聞かせてくれる?

狛野比奈

んー……。

そして、比奈はさっきと同じように、一度、考え込む。

でも、今度はわりと早く、その顔を上げてきた。

狛野比奈

えっと、茉莉先輩も、美夕先輩も……。

茉莉の名前が先に出たから、一瞬、ドキッとしたけど、すぐに私の名前も続いて。

狛野比奈

どっちも、あたし、好きです。

そして結んだのは、こんな言葉で。

狛野比奈

おんなじくらい、好きです。二人とも、尊敬してます。今日のデート、楽しかったです。

稲本美夕

あ……。

どこまでも、比奈の中では、私と茉莉はイーブンなのかしら。差がつかない、同着なのかしら。

網島茉莉

んー、また引き分けってのもなぁ。

なにか、胸の中がもやもやとする。ほっとしたような、残念なような。

狛野比奈

ん。でも……。

そんな私の気持ちをよそに、まだ、比奈の言葉は続いていた。

狛野比奈

茉莉先輩も、美夕先輩も……。

狛野比奈

茉莉先輩は、美夕先輩のこと、美夕先輩は、茉莉先輩のこと。

狛野比奈

あたしとのデートの間、何回も、話してました、よね?

狛野比奈

なのに、どうして、ケンカしてるんですか?

網島茉莉

え、えっと……。

稲本美夕

どうしてって聞かれても……。

答えに困る。ケンカの原因ははっきりしてるけど、それは比奈に話せることではないし。

ううん、比奈が聞いてるのは原因なんかじゃない気がする。

狛野比奈

なんで? だって、二人とも、お互い、好きみたいなのに。

そう。

狛野比奈

なんか、恋人同士、みたい、なのに。んー……、なんか、変。

そういうこと。でも、やっぱりそれは比奈には答えられない……。

網島茉莉

えー、あ、いや。確かにあたしと美夕、恋人同士だけどさぁ。

狛野比奈

え!?

答えられないってのに! 私は耳を疑ったけど、茉莉の言葉は止まらなくて。

網島茉莉

みたいじゃなくて、恋人同士なの。付き合ってるの。もうずっと。

稲本美夕

ちょっと茉莉! なに話してるのよ!

網島茉莉

ごめん、美夕! あたし、もう、比奈に隠すことできないよ。こんなに迷惑かけたのにさぁ。

稲本美夕

う、まぁ、そうだけど……。

網島茉莉

こんな、あたしたちのバカなケンカに付き合ってくれたんだよ? それなのに、ウソ、つけないってば。

稲本美夕

もう……。

ため息が出る。確かに、今、比奈に嘘をつくのはすごく心苦しい。それは私も一緒。

狛野比奈

こ、恋人? ほ、ほんと?

だから、私もあきらめた。茉莉が話してしまった以上、私だけ嘘をつくわけにもいかないし。

稲本美夕

ええ、ほんとよ。でも、内緒にしておいてね、比奈。

狛野比奈

は、はい。え、でも、なんで? 先輩たち、女の子同士、なのに、なんで?

網島茉莉

なんでって言われても……、好きなものは好きだし。

稲本美夕

改めて聞かれると困るけど……。茉莉以外に、好きな人はいないから。

狛野比奈

お……、おぉ?

比奈の目が大きく丸くなってる。カルチャーショック受けた時ってこういう顔になるのね、人間って。

狛野比奈

こ、恋人……。先輩たち、二人が……、二人で……。

網島茉莉

いや、そんなに驚かなくてもさ。

狛野比奈

んー、んんー……。

あら、今度はなにか考え込みだした。ちょっと今の比奈、おもしろいわね。

狛野比奈

んんー……。ん。あ、あの。

あら、なにか考えがまとまったのかしら。もしかして、今さら、デート勝負の判定とか言い出したりしないわよね?

稲本美夕

なに、比奈。

狛野比奈

あの、先輩たちって、その。

狛野比奈

お互いに話してる時、とか、会った時、とか……。

狛野比奈

相手のこと、考えてる時って、その。……なんか、胸のとこ、ムズムズしたり、する?

ん……? これって、もしかして。

網島茉莉

……ははぁ。

あら、茉莉も同じことに考えついたみたい。

一瞬、茉莉と目が合う。それだけで、比奈の言うことの邪魔をしないで、ここは黙って聞いていようって了解ができる。

狛野比奈

顔が、熱くなりそうだったり、する? す、すごいこと考えて、頭、わわわわって、なったり、する?

なに、これ。今の比奈、おもしろい。そして。

すごく、かわいい。こういう時の女の子って、こんなにも。

狛野比奈

茉莉先輩は、そういうこと、ありますか? 美夕先輩と。

網島茉莉

……うん、あるよ。

茉莉が、ちょっと笑いをこらえながら、でも、はっきりとした声で答えてくれた。それは比奈に対してだけど、私の胸にも響いてきて。

狛野比奈

美夕先輩、は?

だから、私も答えなきゃ。ちゃんとね。

稲本美夕

ええ。最近、ちょっと忘れていたけど。

網島茉莉

お、言うね、美夕。

稲本美夕

言うわよ。だって、ケンカしてたんだもの。

稲本美夕

でも、今はちゃんとそんな気持ちになってるわよ。

網島茉莉

うん、あたしも。今はそんな気持ち。ね、比奈、そんじゃさ。

狛野比奈

ん。

網島茉莉

今、あたしと美夕に対して、そんな気持ちになってるの?

狛野比奈

んー? 全然。

網島茉莉

はは、やっぱり?

それ、愚問よね。わかっていたけど。

狛野比奈

んー……。

比奈はまた、考え込んでいる。さて、比奈は気付くのかしら。

気付いてほしい。今のその気持ちって、気のせいとかそんなんじゃないってこと。

次に、考え込んだその状態から顔を上げた時、教えてくれないかしら。比奈の答えを。それは、今日のデートの勝敗なんかじゃなくて。

比奈が、自分の気持ちに気付いたってこと。

狛野比奈

んー……。あの、茉莉先輩、美夕先輩。

網島茉莉

え?

稲本美夕

なに?

狛野比奈

えっと、今日のデート勝負、引き分けでいいですか?

網島茉莉

え、う、うん……。

稲本美夕

別にいいけど……。

そうね、今さら、白黒つけられても困るし。勝った方は比奈と付き合わなきゃいけないなんて、そんなこと、できそうにないし。

狛野比奈

ん。あたし、二人とも、好きです。だから、引き分けで。

狛野比奈

それに、どっちかと付き合うってこと、できない、です、から。

網島茉莉

……うん、そうだね。それでいいよ。

稲本美夕

私も、引き分けでいいわ。

だってもう、私も茉莉も、そんなこと気にしてないもの。

そんなことより、気になってることがあるもの。それが、次の比奈の言葉で。

狛野比奈

ごめんなさい。あたし、好きな人、いたから。だから、ごめんなさい。

はい、よくできましたって言ってあげたい。言う代わりに、茉莉は噴き出しちゃったけど。

網島茉莉

くっ……、はは、わかった、わかったってば。

稲本美夕

悪かったわ、比奈。今まで変なことに巻き込んで。

狛野比奈

ん。

稲本美夕

今日はありがとう。もう帰っていいわよ。

網島茉莉

うん、急ぎなよ。結奈ちゃん、待たせてるんでしょ?

狛野比奈

ん。はい!

いい返事だこと。私と茉莉のお気に入りの比奈は、その声と一緒に、かわいい笑顔を満面に浮かべて。

狛野比奈

さよなら!

元気のいい声で。素直で、マジメな声で。

比奈は勢いよく頭を下げて、そして同じくらい勢いよく上げて。

回れ右して、私たちの前から、走り出す。

まっすぐに、正門へと。結奈さんの待つ方へと。

網島茉莉

………………。

稲本美夕

………………。

私たちは二人とも、なにも言えず、同時にかすかなため息をついた。

網島茉莉

は、はは……、あはは……。

稲本美夕

ふふ……、ふ、あはは……。……はぁ。

走っていく比奈の背中が小さくなって、見えなくなったくらいで。

私と茉莉、二人同時に、口から笑いが漏れた。力の抜けた、ため息も混じったような。

網島茉莉

うわ……、すっごい久しぶりにフラれちゃったよ……。美夕と付き合う前以来。

稲本美夕

私は初めてだわ。けっこう、堪えるものなのね。

比奈を見送っているうちに、いつの間にか。比奈を挟んで向かい合うように立っていたはずなのに、私の隣には、茉莉が。

手も、自然に重ね合わせていた。久しぶりの茉莉の手の感触。

網島茉莉

ねぇ、美夕。

稲本美夕

なに?

網島茉莉

比奈の好きな人ってさぁ……。

稲本美夕

言っちゃダメ。わかりすぎてるけど、ね。

網島茉莉

……だよね。

うん、言わない方がいい。どんなにはっきりしてることでも。

やっとわかったって、比奈は言ってた。自分のこの気持ちがわかったって。

だったら、それは真っ先に伝えてあげてほしい。その人に。

だから、言わない。たとえ、ここに比奈はもういなくても。比奈のその人が、ここにいなくても。

その名前を呼ぶのは、比奈にやらせてあげたい。ここで軽々しく出したら、なにか、もったいない気がして。おまじないみたいなものかしら。

網島茉莉

はぁ……。

稲本美夕

なに? まだショック、受けてるの? 比奈にフラれて。

網島茉莉

そうじゃないよ。なんて言うか、さ。

網島茉莉

ここ一ヶ月以上、比奈を巻き込んでケンカした結果、二人そろってフラれるなんて、なにやってんだかって。そう考えたら、ヘコんだ。

稲本美夕

そうね、同感だわ。……バカみたいね、私たち。

網島茉莉

うん、まったく。はぁ……。

稲本美夕

はぁ……。

同時に、ため息。それがみょうにぴったりだったから。

網島茉莉

くく……、なに今の、あはははは……。

稲本美夕

そ、そうね……。くく、ふ、ふふふ……。

笑うしかなかった。それもまた、二人同時に。こみ上げたおかしさがひいて、笑いがおさまったのも、また、一緒。

網島茉莉

ねぇ、美夕。

網島茉莉

その、ごめん。確かにあたし、辛抱が足りませんでした。反省してる。

稲本美夕

私も、ごめんね……。いろんなことが不安になって、茉莉に八つ当たりしてたわ。

長く付き合っていた分だけ、勘違いしてしまったんだ、私も、茉莉も。

相手は必ず、自分のことをわかってくれるって。でも、それはちがう。そのままでは、少しちがう。

私も茉莉も、同じ将来を夢見ている。いつまでも一緒にいようって、約束している。

でも、そのためのアプローチの仕方は、ちがう。茉莉は私よりも、気持ちを確かめあいたかったんだと思う。私は、茉莉よりも慎重に、その将来へと進みたかった。

そのちがいに、気づけなかった。ううん、わかっていたけど、お互い、自分を押し付けていた。

それじゃ、だめ。相手のことをわかろうとしないのに、自分のこと、わかってもらうなんてできない。

今、こうしているみたいに。手をつないでいるみたいに。私の気持ち、茉莉の気持ち、重ねていかなきゃいけなかったのね。

稲本美夕

茉莉とは、ずっと付き合ってきたのにね……。

網島茉莉

ん、けっこうずれちゃうもんだね。気をつけないと。

こんなに長く付き合ってきたのに、一緒にいたのに。まだまだ、いろいろ努力が必要なんだ、私たちは。

でも、それも一緒にできるよね、茉莉。

網島茉莉

まぁ、ほんと、比奈には悪いことしたよね。巻き込んじゃってさ。

稲本美夕

ええ、ほんとだわ。これでもし、比奈の恋がうまくいかなかったら、申し訳ないわ。

網島茉莉

それは……、大丈夫じゃない?

稲本美夕

そう、ね。比奈ならきっと、ね。

小さいけど、強い子だから。揺らがない子だから。時間がかかるかもしれないけど、きっと、実らせることができると思う。

網島茉莉

うまくいかないようだったら、手伝ってあげようかな。

稲本美夕

余計なお世話かもしれないわよ?

網島茉莉

でもさ、先輩として、アドバイスしてあげたいじゃない?

稲本美夕

さっきまでの体たらくで?

網島茉莉

説得力ないよね~。

そう言って、二人でまた、笑う。

網島茉莉

はは……。……あのさ、もう、あんまり時間残ってないけどさ。

網島茉莉

学園祭、見て回ろう。もっかい、デートのやり直しでさ。

稲本美夕

そうね。まだ屋台になにか残ってるかしら。気が抜けたから、ちょっとお腹すいてきたわ。

網島茉莉

いいね。なんか食べよっか。

そう言って、茉莉は私の手をひいて、歩き出す。

網島茉莉

行こ、美夕。

稲本美夕

ええ。

その茉莉にすぐに並んで、私も歩き出す。

ちょっとだけ、茉莉は私よりスタートが早い。でも、ちょっとだけ。

私はすぐに、茉莉に追いつける。並んで歩いていける。

こうやって、手を離さなければ。

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okujou_no_yurirei-san/2822.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)