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okujou_no_yurirei-san:2821

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私と茉莉のケンカは、9月に入っても続いていた。夏合宿のあとからずっと。

今回のケンカ、悪いのは茉莉の方。私は間違ってない、そう思ってる。

確かに、ルールを押し付けすぎてる自分が嫌になることはある。

でも、それは、茉莉と一緒にいつまでもいられるように、今だけはガマンしようって決めたもの。茉莉だって同意したこと。

私たちはまだ、学生。親元に住んでいるんだし、そこから放り出されたら大変なことになる。

せめて、大学に進んで、二人で一緒に暮らせるようになるまでは、女の子同士で付き合ってること、知られたらきっと面倒なことになる。

だから、ルールを決めたのに……。

私だって、多少は茉莉の不満に譲歩はしてきたはず。そんなになんでも、ルールだからって禁止してない。

学校でちょっとさわってくることだって、大目に見てる。その場で怒りはするけど。

それに、ルールを守ってくれるなら、ちゃんと茉莉と恋人らしく付き合ってるのに……。

守ってくれるなら、私だって茉莉の恋人らしくしてるのに……。

なんで、それだけじゃ不満なのかしら……。

とにかく、あの夏合宿でのことは、絶対に茉莉のやりすぎ、ルール違反。

それだけは絶対にやってほしくないことだった。学校で迫ってくるなんて。

だから、あんなに怒ってしまった。茉莉があんまりにも、私と決めたことに不誠実だと思ったから。

少しでも……、比奈みたいなマジメさを持ってくれたらいいのに、そう思って、言ってしまった。

比奈の方がいいって……。

その後は、お互いに売り言葉、買い言葉だったな……。

そして、その後もずっとそう。

比奈を、茉莉と取り合ってる……。どっちが比奈に好かれるかって。

そんなことを始めてから気付いたのは、比奈の手強さ。

なんというか、とにかく手強い。ほんとに手強い。

私だって、茉莉と付き合うようになってから、相手の気持ちを引くってこと、少しはわかってるつもり。

でも、比奈には全然、通用しない。自分のやり方って間違ってるんじゃないかって自信、なくしそうなほど。

でも、比奈って、茉莉に対しても同じ態度で。茉莉の方が私よりこういうケースでは社交的なはずなのに。

おかげで私も、ちょっと安心したんだけど。

とにかく、比奈はどんなにこっちが誘っても乗ってきてくれない。

私も茉莉も、比奈の興味のありそうなことを持ち出して誘っているのに、ちっともOKの返事が出てこない。

茉莉がお昼休みに、学食に誘って、お昼をごちそうしようとしても。

比奈には、結奈ちゃんが作ってきたお弁当があるから、断られる。

私が、それじゃ放課後、どこかに食べに行きましょうかって誘っても。

夕ご飯は結奈ちゃんが作ってくれるからって断られる。

茉莉が、休みの日にどこか遊びに行こうって誘っても、私が同じように、買い物に行こうって誘っても。

休みの日には寝ていたいって断られる。勉強を結奈ちゃんに見てもらう約束だからって断られる。

少しは、先輩から誘われてるんだから、気を遣ってもいいと思うんだけど……。

比奈はそういうの一切、気にしないみたい。こっちがびっくりするほどあっさり断ってくる。

これってもう、どっちが好かれるとかって問題じゃないみたい。二人とも相手にされてないんじゃないかしら。

比奈がそんなだから、私も茉莉もちょっとムキになって、よりいっそう、いろいろ誘いかけることになって。

それでも比奈にかわされ続けて、こうして、一ヶ月以上たっているわけよね……。

そう考えると、ちょっと徒労感……。

でも、茉莉に負けるわけにはいかないし、なんとか比奈を誘いたいんだけど。少しでも、いい先輩ってこと、わかってもらいたいんだけど。

少なくとも、茉莉よりは。

そんなことを思いつつ、次はどんな方法で比奈を誘おうかと考えていた時。

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ケータイがポケットの中で震えた。短く、3回。

メールが来たのね。ケータイを取り出して、開く。ディスプレイには、茉莉の名前。

ちょっとだけ、なにか期待して、私はメールを開いた。

茉莉にメールで呼び出されてきた、お昼休みの部室。そう言えばここ、ケンカの発端だったのよね。

もしかしたら、茉莉、とうとうあやまってくれる気になったのかしら。そんな期待もしてた。

もし、茉莉からあやまってきてくれたなら、すぐにでも私も許すつもりだった。私にも反省するとこあったって言うつもりだった。

でも、部室には、茉莉と……。

稲本美夕

比奈……?

なぜか、比奈もいた。

稲本美夕

どういうこと、茉莉。私だけじゃなくて、比奈まで呼んだの?

網島茉莉

うん、そう。

茉莉の言葉も声も、そっけない。それだけでわかる。そう、まだあやまる気は全然ないんだ。

狛野比奈

………………。

比奈は黙ったまま、私と茉莉を交互に見てる。

もう今さら、私と茉莉がケンカしてることは部活中に広まってる。まぁ、ほとんど口を聞かないまま、一ヶ月以上だもの。

理由はともかくとして、ケンカ自体は友達同士でもするはず。ちょっと腹立たしいけど、悪いのは茉莉なんだし、私は別に取り繕わなかったし。

比奈も、それはわかってるはず。それに、巻き込まれてる当事者だものね。

稲本美夕

それで? なんの用?

手早くすませてほしい。茉莉と一緒にいると、とてもいやな気持ちになる。

いつまでも怒っている茉莉が、いつまでも怒っている自分が、いやになる。

網島茉莉

うん、あのさ。

網島茉莉

もう、こんなの止めない? 毎日毎日、比奈を誘って断られてなんてさ。

稲本美夕

え……。

止める? まぁ、確かにこんなの、いつまでも繰り返してるの、バカらしいと私も思う。

でも、止めるってことは、茉莉、あなたが私にあやまってくれるってことなの?

だったら、私も……。

網島茉莉

だからさ。もう、今日、ここではっきり比奈に決めてもらおうよ。

稲本美夕

……え?

網島茉莉

ここで、比奈に決めてもらお。あたしと美夕、どっちが比奈にとっていい先輩かってこと。

網島茉莉

どっちが好きか、比奈に聞こうよ。そう思って、比奈を呼んだんだよ。

稲本美夕

そう……。

そう、どうあっても茉莉からあやまるつもりはないわけ。

稲本美夕

わかったわ。

私も、あやまるつもりはない。比奈に聞こうじゃない、私と茉莉、どっちが好きか。

稲本美夕

比奈が選ばなかった方は、大人しく手をひくってことでいいわね?

網島茉莉

そういうこと。だから美夕、これ以上、比奈にしつこくしちゃダメだよ。

稲本美夕

茉莉がなんで、そんな勝った気になってるのか、理解できないわ。比奈は私を選ぶのに。

網島茉莉

なにそれ。あとでショック受けるから、いい気にならない方がいいよ。

稲本美夕

言ったわね、後悔しないでね。

網島茉莉

そっちこそ。

狛野比奈

あの。

私と茉莉、言葉の応酬とにらみ合いで火花を散らしてるさなか、比奈の声が割り込んできた。

稲本美夕

あ、なに、比奈。

狛野比奈

おなか、空いた。あの、早くお弁当、食べたいんです、けど。

稲本美夕

え? あ、ああ……。

網島茉莉

ご、ごめん、まだお昼食べてないんだっけ。

そうだとしても……、この雰囲気の中でお腹空いたって。ほんとに、いい神経してるっていうか。

ストレートでかわいいくらいだわ。それでいて、素直なとこあるし。

ほんとに、こんな子が恋人だったらよかったのに……。

網島茉莉

それじゃ、比奈、聞かせてくれる?

稲本美夕

私と茉莉、比奈はどっちが好き? どっちが比奈にとって素敵な先輩かしら?

網島茉莉

あたしだよね?

稲本美夕

私でしょ、比奈?

狛野比奈

んー……。

比奈、詰め寄る私と茉莉、両方を見比べて……。

しばらく、なにも言わず、考え込むような感じ、見せて……。

狛野比奈

どっちでも。

網島茉莉

え!?

稲本美夕

どっちでも!?

そ、それって、ほんとに私たち、比奈の眼中に入ってなかったってこと?

狛野比奈

んー……、どっちも、いい先輩。

稲本美夕

あ、ああ……。

網島茉莉

そういうこと……。

つまり、比奈にとってはまだ、どっちがいいって差はないってことかしら。

私と茉莉、まったくのイーブン? それもちょっと残念。この一ヶ月、がんばったことを考えると。

でも、今の比奈の答えじゃ……。

網島茉莉

うーん、決着がつかないなぁ。

稲本美夕

ええ、そうね。

比奈が、茉莉を選ばなかったことに、ちょっと私、ほっとしてる。そうじゃなくてよかった。

だって、いやだもの。比奈が茉莉を選ぶのも、茉莉が比奈と一緒になるのも……。

でも、このままじゃいつまでも、この状況、変わらない。なんとか決着をつけたいのは、私も一緒。

稲本美夕

うーん、それじゃ……。

なんとかしたい。こんなこと、いつまでも続けていられない。

そう考えていた私の頭に、もう、すぐそこに迫っていた学園祭のことが思い出された。

稲本美夕

それじゃ、こうしましょう。今週末、学園祭があるでしょう?

狛野比奈

ん。

網島茉莉

そうだね。

稲本美夕

その学園祭で、私と茉莉、それぞれ、比奈をつれてデートしましょう。

網島茉莉

え? デート?

稲本美夕

そう。同じ時間だけ、比奈と一緒に学園祭を回るの。その時、より比奈を楽しませた方が勝ち。

網島茉莉

なるほど、デート勝負か。

稲本美夕

ええ、私と比奈、茉莉と比奈で、学園祭を回って、最後に比奈に、どっちが楽しかったか答えてもらいましょう。

網島茉莉

ふーん……。うん、いいね、それ。

網島茉莉

勝った方が、比奈と付き合えるってことだね。

網島茉莉

ええ、そういうこと。

網島茉莉

わかったよ、それで勝負しよう。いいよね、比奈。

狛野比奈

んー……。

稲本美夕

比奈は、難しいこと考えなくていいわよ。私と茉莉、それぞれとデートしてくれれば。最後にどっちが楽しかったか、教えてくれればいいの。

網島茉莉

で、比奈が楽しかった方と、付き合う。いいよね、比奈。

狛野比奈

んー……、はい。

狛野比奈

別に、それでいいです。

別にって……、ほんとに素直に言っちゃう子。ほんとに比奈、わかっているのかしら。デートはともかく、付き合うってこと。

網島茉莉

じゃ、それで決まり。学園祭、二日あるけど、どっちにする?

稲本美夕

そうね……、比奈、どっちがいい?

狛野比奈

ん、一日目は、結奈ねぇと一緒に遊ぶって、約束してるから、ダメです。

稲本美夕

そう。じゃ、二日目ね。

網島茉莉

オッケ。それじゃ、比奈、二日目、よろしくね。

狛野比奈

ん。

網島茉莉

思いっきり楽しませてあげるからね。

稲本美夕

私もよ。楽しみにしててね。

狛野比奈

ん。

最後まで、比奈の言葉、その意味がちょっとわからなかった。納得してるのか、してないのか、わかってるのかどうか。

でも、とりあえず、茉莉との決着のつけ方は決まった。

学園祭で、比奈とデート、か……。

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okujou_no_yurirei-san/2821.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)