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okujou_no_yurirei-san:2815

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美夕が一言も口を聞いてくれない。目も合わせてくれない。

昨日はあのまま、部屋に戻って、布団を被って寝てしまった。あたしも美夕も。

それからずっと、こんな感じ。

稲本美夕

………………。

網島茉莉

………………。

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起きてから、部屋の掃除と後片付けしてる時も。今、こうして、部室で合宿の解散式をしてる最中も。

なんだか、まわりのみんなも気付いているみたい。明らかに、あたしたちの雰囲気がちがうこと。

なんだよ、一生懸命隠してきたって、こういうことでバレちゃったりするんだよ、美夕。

だったら、ちょっとずつでも仲のいいとこ、見せておいてさ。みんなにも、言われないけどそういう雰囲気って作っておけばよかったじゃん。

わかってるの、美夕。

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稲本美夕

………………。

網島茉莉

………………。

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でも、言葉がかわせない。美夕は完全に怒ってる。

あたしだって……、今回は、自分からあやまりたくない。あたしの方が悪いかもとは、思ってる、でも。

美夕がわかってくれないって不満はあったんだから。それに……。

あんなふうに比奈を持ち出してきたのは、美夕の方なんだし。今回は、先に美夕にあやまってほしい。

そう、思ったまま。

夏合宿の解散式も終わってしまった。

稲本美夕

………………。

網島茉莉

………………。

ああ、もう、まだ無言のまんま。美夕、一言でいいんだよ?

美夕がごめんって言い出してくれれば、あたしだってちゃんと、ごめんって言えるのに。

どうして言ってくれないのさ。どうして無言のままなのさ。言っとくけど、あたしからはあやまらないよ?

稲本美夕

あ……。

網島茉莉

ん?

解散式が終わった後、先生とコーチとの今後の打ち合わせでも、美夕と一緒だった。

だから、他の子たちとは、ちょっとだけ、帰る時間が遅れてしまって。

そして、帰る方向も一緒、駅までずっと。だから、口をきかなくてもこうして、一緒に歩いてるわけだけど。

美夕がなにかに気付いたみたいな声。ちらっと見たら、美夕の視線は正門の方?

あ、比奈だ。どうしたんだろう、まだ、帰ってなかったのかな?

稲本美夕

比奈!

え? なに? 比奈には声をかけるの、美夕。

狛野比奈

ん?

稲本美夕

比奈、まだ帰ってなかったのね。

狛野比奈

ん。

え、なに、その優しそうな先輩って声。なんでそんな声で、わざわざ比奈に話しかけてるの? ねぇ、あたしに言うこととか、あったりしないの?

あるはずでしょ? そう思ってるのに。

稲本美夕

比奈、この後、ちょっと時間ある? 私と一緒に、たまには駅の方に行ってみない?

な、なにそれ! なんでいきなり、比奈を誘ってるの?

まさか、美夕、ほんとに比奈のこと、彼女にするつもりなの? ちょっと、それだったら、あたしも黙ってられない。

網島茉莉

比奈、比奈! いいとこで会った! これからあたしと、駅前まで付き合わない? もちろん、美夕なんか抜きで。

稲本美夕

な……! ちょっと茉莉! 私が先に比奈に話しかけているのよ?

網島茉莉

知らないよ、そんなこと。あたし、比奈に声、かけてるんだからさ。

網島茉莉

ね、比奈、いいでしょ、打ち上げってことでさ。おいしいタコスのお店、できたんだよ、行ってみよ!

稲本美夕

茉莉のことなんかほっておきなさい。それよりも、駅ビルに新しいスポーツショップ入ったの、知ってる?

稲本美夕

比奈、新しいシューズ、ほしいって言ってなかった? 私がいろいろアドバイスしてあげるわ。

狛野比奈

んー……。

網島茉莉

ねぇ、比奈。美夕なんかほっといてさ、あたしと打ち上げに行こうよ。他にもおいしいお店、知ってるからさ。もちろん、おごりだよ。

稲本美夕

比奈、茉莉についていくことないわよ。私と一緒に帰りましょ。新しいシューズ、一緒に見て回りましょ。

狛野比奈

んー……。

ああもう、美夕が割り込んでくるから、比奈、困ってるじゃん。おとなしく引いてほしいんだけど。それか、あたしにあやまるか。

網島茉莉

ちょっと美夕! あたしが比奈を誘うの、邪魔しないでくれるかなぁ。

稲本美夕

茉莉こそ、食べ物で比奈を誘惑するような真似、やめなさい。

でも、そんなつもりないみたい。あたしだって、今さら引けないし。

狛野比奈

んー……。

もう、どっちか選んでよ、比奈。美夕とこんなことするの、いやだし。

狛野比奈

……あ、結奈ねぇ!

え? 結奈ちゃん? あ、ほんとだ。まだ学校に残ってたんだ。

網島茉莉

あ……。

稲本美夕

結奈ちゃん……。

そっか、比奈、結奈ちゃんのこと、待ってたんだ。はぁ、それなのにあたしたち、ムキになって比奈のこと、誘い出そうとしてたんだ。

狛野比奈

茉莉先輩、美夕先輩。

網島茉莉

あ、うん。

稲本美夕

な、なに、比奈。

狛野比奈

結奈ねぇ、来たから帰ります。

なんとなく、わかってたけど。やっぱり、こんなふうに空振りさせられるのって、ちょっとショック。

網島茉莉

え? ちょっと比奈?

稲本美夕

あの、私との話は?

狛野比奈

誘ってくれて、ありがとうございます。でも、結奈ねぇと家に帰ります。

狛野比奈

お疲れさまでした!

比奈、勢いよくお辞儀すると、すぐに顔をあげて、結奈ちゃんの方へ走ってく。

狛野比奈

結奈ねぇ、帰ろ!

遠見結奈

え、ええ……。でもいいの? 先輩たちのこと……。

……やっぱり、結奈ちゃんにも聞こえてたかな。こっちを気にしてる声。

狛野比奈

ん、平気。結奈ねぇと帰るから。

遠見結奈

あ、あの……。網島先輩、稲本先輩、お疲れさまでした……。

網島茉莉

あ、う、うん。結奈ちゃんもお疲れさま。

稲本美夕

え、ええ。今日までありがとうね、結奈ちゃん。

遠見結奈

は、はい。それでは、失礼します……。

狛野比奈

先輩、さよなら。

網島茉莉

うん、じゃあね。

稲本美夕

また、来週ね。

そして、比奈、結奈ちゃんにぴったりくっついて、手をつないで帰っていっちゃった。

ああ、すごい仲良さそう。すごいうらやましい……。

ああ、もう、なんかもう……。

網島茉莉

あーあ……、また結奈ちゃんに持っていかれちゃった……。

稲本美夕

はぁ……。茉莉が邪魔しなければ、比奈もすんなり、私についてきてくれたかもしれないのに。

網島茉莉

え? なにそれ。美夕があたしの邪魔してきたんでしょ? あたしがせっかく、比奈においしいもの、食べさせてあげようと思ってたのにさ。

稲本美夕

食べ物で釣ろうなんて浅はかなのよ、茉莉は!比奈のこと、ちゃんと考えてあげなさいよ。

稲本美夕

だいたい、私が先に比奈に声をかけたのよ。茉莉が後から割り込んできたんでしょう!?

網島茉莉

美夕が比奈を連れてこうとしたからだよ! そんなの見過ごせないだろ!

稲本美夕

なんでよ! 茉莉なんかに比奈をまかせられるわけないでしょ!

網島茉莉

ちょっとなにそれ!

稲本美夕

比奈は絶対に渡さないわよ。それで、茉莉は少し、自分の軽はずみなところを反省するといいわ!

網島茉莉

美夕の方こそ! 比奈があたしを選ぶのを見て、頑固すぎるとこ、直した方がいいと思うね!

稲本美夕

なによ!

網島茉莉

なんだよ!

……ほんとは、美夕が一言でもあやまってくれればそれでよかったんだ。それで、あたしもあやまること、できたんだろうし。

でも、もう、お互い一歩も引けないってことがわかってしまった。

美夕にわかってもらうには、もう、比奈をこっちに引き込むしかない。そんな結論。

こんなふうにケンカしたまま……。

最後の夏合宿は終わってしまった。

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okujou_no_yurirei-san/2815.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)