User Tools

Site Tools


okujou_no_yurirei-san:2802

Place translations on the >s

狛野比奈

失礼します。

網島茉莉

お、比奈。いらっしゃい。

稲本美夕

あら、どうしたの?

よかった、ぎりぎり。

またいつものようにひっついてきた茉莉をなんとか引きはがしたとこだったから。

二人っきりだった部室に入ってきたのは、一年生の比奈。

小柄で無口……、というか、ちょっと言葉が少ない話し方をするけど、躾がいいのか先輩に対する態度はいい子。

ちょっと懐いてこないけど、咆えたりはしないかわいい子犬みたいな感じ。茉莉のお気に入り。もちろん、私も気に入ってる。走り方がとても気持ちがいいから。

狛野比奈

お弁当、食べにきました。

網島茉莉

あはは、今日も持ってきてたんだ。

稲本美夕

ほんと、比奈はよく食べるわね。

朝練の後の、授業が始まるまでの時間、比奈は時々こうして、持参したお弁当を食べに部室に来る。

もちろん、お昼のお弁当も持ってきてるし、朝ご飯も食べてきているって話だから、単純に食事の回数が多いみたい。

よく食べるなって感心する。ちっちゃな体なのに。でも、無理してるわけでもないし、いつも残さず食べて、いただきますとごちそうさまもしてるし、そこがかわいい。

なにより……。

稲本美夕

教室で食べればいいのに。その方が、時間に余裕出るでしょ?

狛野比奈

教室だと、みんなにつまみ食いされるから。

網島茉莉

あはは。でも、ここで食べても、あたしがつまみ食いしちゃうけどね~。

稲本美夕

こら、茉莉! 一年生のお弁当にたかったりしないの!

網島茉莉

いや、だって比奈のお弁当、本当においしいんだもん。美夕だってこないだ、そう言ってただろ?

稲本美夕

そ、それはそうだけど……。

ほんと、比奈のお弁当っておいしいのよね。味もそうなんだけど、なにより感心するのはちゃんと栄養のバランスがとれてること。

冷めてもおいしいようにできてるし、彩りもいいし。比奈が食べるの好きな理由がわかる。

網島茉莉

隣のお姉ちゃんなんだっけ? 作ってくれてるの。

狛野比奈

ん。

網島茉莉

この学校の二年生って言ってたっけ。

狛野比奈

ん。

比奈は食べるのに夢中になりながらも、うなずいてる。おかずをつまんで持っていく茉莉に、ほんのちょっとだけ顔をしかめながらも。

網島茉莉

ん、でも、ほんとにおいしいな、これ。……ねぇ、美夕。

稲本美夕

なに?

網島茉莉

合宿の食事当番の助っ人なんだけどさ、比奈のお隣さんに頼んでみるの、どうかな?

稲本美夕

え?

いきなりなにを言い出すの、茉莉。そう言おうとしたけど、思わず考えちゃった。

比奈のお弁当はおいしい。味は文句ないし、ちゃんと考えて作ってある。料理がうまい子なのは間違いない。

稲本美夕

でも……、20人以上いるのよ、陸上部員って。比奈の一人分のお弁当とは勝手が違うわ。

網島茉莉

んー、そうだよねぇ……。ねぇ、比奈。

狛野比奈

ん、はい。

網島茉莉

そのお姉さん、20人分の合宿の食事とか、できそう?

狛野比奈

ん……。

稲本美夕

普通の料理が趣味で得意ってだけじゃ、無理だと思うんだけど……。

狛野比奈

結奈ねぇなら、大丈夫、だと、思う。

網島茉莉

え、ほんと!?

狛野比奈

聞いてみないとわからない、ですけど。

網島茉莉

それじゃ、聞いてみてもいい?

稲本美夕

ちょ、ちょっと茉莉! 相手の都合も考えないでそんな!

網島茉莉

だから、聞いてみるんだってば。もし、引き受けてくれたら悩んでた問題、解決するじゃん。

稲本美夕

そ、そうだけど……。比奈、いいの? 聞いてみても。

狛野比奈

ん。

網島茉莉

よし! じゃ、早速今日の昼休み! 聞きにいってみよっか。

稲本美夕

え、今日!?

網島茉莉

早い方がいいでしょ? ダメだったらまた考えなきゃいけないし、引き受けてくれたら、人数の申請し直さなきゃいけないんだし。

稲本美夕

そ、そうね……。

真似できないな、こういう決断力って。確かに早い方がいい。

網島茉莉

オッケ! それじゃ、今日の昼休み、案内してくれる? 比奈。

狛野比奈

ん。はい。

網島茉莉

えっと、結奈ねぇ? 結奈ちゃんって言うの?その子。

狛野比奈

ん。

網島茉莉

もういっこ、聞いていい? その子、かわいい?

稲本美夕

こら、茉莉!

なんてこと聞くのよ、まったく! ほんとに、かわいい女の子、好きなんだから……。

変なこと聞いて、答えにくくないかな、比奈。そんな心配したけど。

狛野比奈

ん。

比奈は短くうなずいた。あからさまに喜んだ茉莉の足を、私は思いっきり踏みつけたくなった。

網島茉莉

比奈、どの子?

狛野比奈

あそこ、です。

grpo_bu0

比奈がそう言って、教室の真ん中の方を差す。あの、髪をポニテにまとめた、立ってる子かな?

ん、確かにかわいいかも。ちょっとクールなとこもありそう。茉莉の好みかも。

grpo_bu1

grpo_bu0

網島茉莉

んじゃ、ちょっと呼んできてくれる? 比奈。

狛野比奈

はい。

grpo_bu0

比奈が二年生の教室の中に歩いていく。顔見知りの子もいるのかな? 何人かに声をかけられてる。あ、うちの部の子もいるんだっけ、ここ。

やっぱり、あの立ってるポニテの子が、結奈さんみたい。比奈が、話しかけている。

比奈がこっちの方を見て、ちょっと指でさして。結奈さんの顔がこっち向いて。

grpo_bu1

grpo_bu1

稲本美夕

あ、やっぱり。

網島茉莉

ん?

稲本美夕

いや、怪訝な顔してるなって。いきなり陸上部の先輩に呼び出されたら、何事かって思うわよね。

網島茉莉

あ、それもそっか。うわ、でもほんと、かわいいな、あの子。

稲本美夕

手を振らないの!

網島茉莉

ヤキモチ?

稲本美夕

ちがうわよ!

網島茉莉

ちぇ、ちょっとくらいヤキモチしてよ。ま、さっさと話すませちゃおうか。

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu0

網島茉莉

遠見さーん、ちょっといいかなー?

あーあ、止める間もなかった。あっという間に、私と茉莉、そして結奈さんに教室中の視線が集まってくる。

自分が、この学校じゃけっこう有名人だってわかってるのかしら、茉莉ってば。

網島茉莉

そんな手間とらせないからさー!

遠見結奈

は、はい!

ちょっと結奈さんがかわいそう。それでも、無視できるわけないよね。

こっちの方に歩いてきてくれる。比奈がその後ろをちょこちょこ歩いてついてるのがちょっとかわいかった。

網島茉莉

へぇ、君が結奈ちゃん? 比奈の幼なじみなんだって? あ、あたしは陸上部の部長の網島茉莉。よろしくね。

稲本美夕

私は副部長の稲本美夕よ。急に押しかけてごめんね?

遠見結奈

あ、いえ……。

緊張……、は、あまりしてないかな、結奈さん。やっぱり、呼び出されたことの方が気になってるみたい。警戒してる感じ?

網島茉莉

結奈ちゃんってさ。

遠見結奈

あ、はい。

網島茉莉

いつも比奈のお弁当作ってるって、ほんと?

……その話の入り方ってどうなのかしら。まぁ、茉莉にまかせてみようかな。

遠見結奈

はい、そうですけど……。

網島茉莉

あ、ほんとなんだ。うん、いつも比奈の、つまみ食いさせてもらうんだけどさ、ほんとにおいしいんだよね。

網島茉莉

冷めてもおいしいし、詰め方も工夫してあるし、見た目もきれいだし。

網島茉莉

いつもごちそうさまです。いや、結奈ちゃん、いいお嫁さんになれるよ?

遠見結奈

え? あ、どうも……。

やっぱダメか。本題に入る前にそんなこと言ってどうするのよ、まったく。

このくらいのことじゃ、今さらヤキモチ焼いたりしないけど、話を明後日の方向に持っていってどうするのよ。結奈さん、困ってるじゃない。

遠見結奈

あの、私が呼ばれたのって、そのことですか……?

網島茉莉

え? あ、ごめんごめん、本題は別にあるんだった。

稲本美夕

茉莉、あなたね……、いきなり脱線した話の持っていき方、しないでよ。

網島茉莉

いや、だってさ、関係あることでしょ? それに、一度、ちゃんとお礼言いたかったんだよね。あたし、結奈ちゃんのお弁当のファンだから。

遠見結奈

は、はぁ……。

うん、ダメね。さっさと用件切り出さないと。

稲本美夕

ああもう、茉莉にまかせてたら話が進まないわ。ごめんなさい、結奈さん。

遠見結奈

あ、いえ……。

稲本美夕

実はね、ちょっとお願いがあるの。もうすぐ夏休みでしょう?

遠見結奈

は、はい。

稲本美夕

陸上部もね、夏合宿をするんだけど、毎年、問題になるのが食事なのよ。

稲本美夕

一応、毎年、マネージャーや部員が交代で料理を担当するんだけどね、今年はその……、腕に自信のある子がいなくって。

稲本美夕

部員のお母さんとかに手伝ってもらったりもするんだけど、都合がつきそうにないの。

稲本美夕

作ろうと思えばなんとかなるとは思うんだけど、やっぱり私としては、カロリーや栄養バランスにも気を遣いたいのよね。

稲本美夕

でも、そういうこと考えると、やっぱり料理の上手な人に、食事の支度を担当してほしいのよ。

遠見結奈

は、はぁ……。

稲本美夕

私もね、比奈のお弁当には毎日、感心してたのよ。よく考えて作ってくれてるなって。もちろん、おいしいしね。

網島茉莉

美夕も、つまみ食い仲間だもんね。

稲本美夕

ちょっと黙ってて、茉莉。そ、それでね。

稲本美夕

比奈にも聞いたんだけど、結奈さん、ほんとに料理が上手なんだってね。よかったら、陸上部のお手伝いしてくれないかしら。

稲本美夕

料理担当者として、うちの合宿に参加してほしいのよ。そのお願いに来たの。

網島茉莉

ね、結奈ちゃん、お願い! ぜひやってくんないかなぁ。あたし、結奈ちゃんの料理が食べれるなら、かなり気合いの入り方、変わるんだよね。

ようやく、結奈さんの顔からも怪訝そうな感じが消えた。よかった、ちゃんと伝わったみたい。

でも、引き受けてくれるかな。

遠見結奈

あの、すみません。陸上部って人数、何人いるんですか?

稲本美夕

ああ、えっと、合宿の参加者は、20人くらいよ。確か、22だったかな?

ちょっと意外。いきなり人数の確認してくるなんて。けっこう頭のいい子なのかな。いちばん大事なことを確認してきてる。

稲本美夕

もちろん、結奈さん一人にやらせたりしないから。手伝いを何人か、つけるからね?

結奈さんは、少し考え込んだ感じ。できるかどうかの見通しつけてるのかしら。

比奈のあのお弁当を作るくらいだから、料理が得意なのは間違いないと思う。人数の確認してきたってことは、それなりにやれる自信もあるっぽい?

だったら、引き受けてほしいな。手が足りないところは、一、二年生をフォローに回せばいい。

稲本美夕

どうかしら、結奈さん。

網島茉莉

お願い、結奈ちゃん、頼むよ!

遠見結奈

はい、わかりました。どこまでお役に立てるかわからないですけど……、がんばります。

網島茉莉

ほんと!? ありがと!

稲本美夕

よかった、引き受けてくれて。それじゃ、合宿の申請は陸上部の方から出しておくわね。全日参加で大丈夫?

遠見結奈

はい、大丈夫です。

稲本美夕

ありがとう、よろしくね。

遠見結奈

はい。こちらこそ、よろしくお願いします。

うん、この子、けっこうしっかりした子みたい。できるかどうかも見当つかないのに引き受けるタイプじゃなさそう。

ほっとしたのは茉莉も一緒みたい。

網島茉莉

あー、よかった。断られたら、かなりガックリするとこだった。

稲本美夕

そうね。茉莉がつまみ食いとかファンだとか変なこと言い出すんだもの。

網島茉莉

あのね、美夕、あたしは引き受けてもらいやすいように、楽しい話題から入っていったの。美夕の方こそ、かったいことばっか言ってさ。

網島茉莉

難しいことだと思って、結奈ちゃんに断られたらどうするのさ。

稲本美夕

こういうことはちゃんと説明しなきゃダメなのよ。責任感を持ってもらった方がちゃんとやってもらえるもの。

網島茉莉

ほんと、茉莉はかったいなぁ。ねぇ、結奈ちゃん。楽しくやれた方がいいよね?

稲本美夕

ダメよ、茉莉の言うこと、気軽に信じちゃ。基本、いい加減なんだから。

網島茉莉

え、なにそれ。ねぇ、結奈ちゃん、あたしの方がいいよね? どう? どっちの先輩の方が、結奈ちゃんには素敵に思える?

遠見結奈

………………。

……また、意地悪な質問を。でも、私もちょっと興味ある。結奈さんがどう答えるか、聞いてみたい。

稲本美夕

そうね、ちょっと聞かせてくれない? 参考までに。

ちょっと考え込んで、結奈さんの答えは。なんというか期待通り。

そりゃ、今日会っていきなりこんなこと聞かれて、どっちなんて言えるわけないものね。

ほんと、この子、しっかりしてる。これならきちんと、食事当番もやってくれそう。

稲本美夕

ごめんね、結奈さん、くだらないこと聞いて。それじゃ、合宿のこと、よろしくね。詳しいことはまた、後で。

遠見結奈

あ、はい。

網島茉莉

じゃあね、合宿、楽しみにしててね。

稲本美夕

それじゃ、失礼するわね。比奈はまた、放課後ね。

狛野比奈

はい。

網島茉莉

じゃあね、比奈、結奈ちゃん。

茉莉にあわせて、私も結奈さんと、その隣にぴったりとくっついていた比奈に手を振る。

稲本美夕

よかったわ、引き受けてくれて。

網島茉莉

ん、あの比奈のお弁当の料理、合宿中毎日食べれるんだよね。

稲本美夕

そういうことね。

網島茉莉

うわ、すっごい合宿、楽しみになってきた。

稲本美夕

ほんと現金ね、茉莉って。

そうは言ってみたものの。

私も、合宿が楽しみになってきていたのは確かだった。

grpo

grpo_ef

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

okujou_no_yurirei-san/2802.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)