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okujou_no_yurirei-san:2801

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お昼休み。いつもの部室で、いつものようにお弁当。いつもと一緒、茉莉と二人で。

そして、いつも通りの茉莉。

稲本美夕

やっぱり、仁科ちゃんのお母さん、都合つかないんだって。

網島茉莉

ありゃぁ~。

稲本美夕

今年は、田舎に行かれるんですって。仁科ちゃんは合宿終わってからだけど、お母さんは先に行くんだって。

網島茉莉

あー、そうなんだぁ。残念だなぁ、仁科ママ、すっごいきれいだから、今年も会うの、楽しみにしてたのに。

稲本美夕

そこじゃないでしょ、なに言ってるのよ、もう……。

ほんとに、茉莉はいつも通り。こっちは真剣に困ってるっていうのに。

昼休みを利用した、陸上部の部長と副部長の打ち合わせ。もうちょっとまじめにやってほしいんだけど。

目下の悩みは、夏休みの合宿の食事について。

ここ二年、お世話になっていた部員の仁科ちゃんのお母さんが、今年は参加できないということだった。

夏休み、8月の8日から15日まで、学校での夏合宿。陸上部も全日、学校に泊まり込み。それは毎年のことなんだけど。

問題は、合宿中の食事。学食は当然、閉まっているから、食事は自分たちでなんとかしなくちゃいけない。

料理が得意な仁科ちゃんのお母さんが参加できないとなると、部員でなんとかしなくちゃいけないんだけど……。

稲本美夕

20人分でしょ。さすがに、ある程度、料理が上手じゃないと、大変だと思うのよね。

私も、一年の時は食事当番として、手伝ったけど、あれは大変だった。

稲本美夕

部員の中で、自信のある子、いないみたいだし……。

運動部だからっていうわけじゃないけど、立候補してくれる子がいなかったのは事実。

網島茉莉

んー、それじゃ、みんなで割り振っちゃう?

稲本美夕

そんな適当なこと、できないわよ。予算だってあるし、いい加減なメニューで作られても困るし。

網島茉莉

いいじゃん、合宿なんだからさ。キャンプみたいなもんだと思えば。下手や失敗も愛嬌でしょ。

稲本美夕

あのねぇ、ちゃんとバランスのとれた食事にしないと、強化につながらないでしょ? 食事だって記録の向上につながるのよ?

網島茉莉

んー、あたし、あんまり気にしたこと、ないからなぁ。

稲本美夕

ほんと、体までいい加減なんだから、あなたは……。

網島茉莉

美夕はちゃんと考えてるの?

稲本美夕

当たり前でしょ。

網島茉莉

ふーん、バランスのいい食事、かぁ。それで、この体が作られてるんだ。

稲本美夕

ちょっと、ひっついてこないでよ。

さっきから、私の背中にぴったりとくっついて……。もう、メモがとりにくいでしょ。

網島茉莉

美夕、肌、きれいだもんね。日焼けもあんまりしてないしさ。手もすべすべだし。

稲本美夕

さわらないでってば。

ちょっと二人きりになると、すぐ、これなんだから……。

網島茉莉

左利きっていいよね、なんかかっこいいし。

稲本美夕

好きで左利きやってるわけじゃないの。

もう、手をさわってきたり、肩に腕回してきたり……。ひっついてこないでってば!

網島茉莉

あれ? 最近ちょっと、大きくなった……?

稲本美夕

茉莉!

ホック、外そうとしないで!

稲本美夕

いい加減にして! 誰か来たらどうするつもり!?

網島茉莉

誰も来ないって。いつもそうでしょ?

稲本美夕

いつもそうでも、なにがあるかわからないでしょ!? 学校でこういうことしないって決めたじゃない! 二人で決めたルールでしょ!?

網島茉莉

あー、まぁ、そうだけどさぁ……。

そう、それがルール。二人で決めた、二人のためのルール。

私と美夕は、付き合ってる。友達としてではなく、恋人として。

茉莉と始めて会ったのは、中学の時。二人ともそのころから陸上部で、それなりの記録を残していた。

学校は別だったけど、大会や、県の強化合宿で顔を何度か顔をあわせるうち、名前を憶え、顔を憶え、言葉をかわすようになった。

茉莉はそのころから、県の中では誰よりも速く、勝てない悔しさはあっても、その走る姿に私は憧れた。

少しずつ仲良くなっていくうちに、私にはない、前向きさ、走ることへの純粋な楽しさを持っているところに惹かれてもいった。

だから、5年前、茉莉から告白された時、付き合ってほしいと言われた時、驚きながらも、OKしたのだ。

女の子同士なのにとか、そういうことはあまり深刻に考えなかった。

ちょっとは悩んだけど、それ以上に茉莉が好きなんだという気持ちに気付かされたのが大きかった。

あるいは……、そのうち、二人とも普通の恋愛へと目が覚めるかもしれない。そう考えていたのかも。友達の延長くらいに考えていたのかも。

こんなに長い付き合いになるなんて、想像していなかったのかも。

それでも、私と茉莉は、ずっと付き合い続けている。すごい仲のいい友達なんて考えていたのは私だけで、茉莉は本気で、そして積極的で。

最初のデートですぐに手をつないで歩いた。そして、当たり前のようにキスされた。

あんまりにもあっさりとファーストキスを奪われたから、茉莉の方は慣れてるのかなって思ったけど、後から聞いたら茉莉も初めてだって言ってた。

そして。

付き合っている時間が長くなるにつれて、キス以上のことにも興味が湧いてきて、積極的な茉莉に流されるように、そういうことも経験していって。

同じ学校を選んで、陸上部に入って走ることを続けて、茉莉とどんどん深く付き合っていくようになって。

ああ、私、このままずっと、茉莉と一緒に過ごしていくんだなって思うようになっていった。茉莉も、私とずっと一緒にいたいと言ってくれて。

だから、私たちはルールを決めた。

ずっと一緒にいるために。

茉莉のご両親はけっこう寛容な方たちだったけど、うちはちがう。お父さんもお母さんも、私をちゃんと愛してくれているけど、躾とかそういうのは厳しい。

茉莉が私の恋人だと知ったら、どんな反応するだろう。きっと、反対する。それが当たり前。常識的な人たちだから。ちゃんとした意味で。

だから、私たち二人が恋人同士であることを知られるわけにはいかない。知られたらきっと、一緒にはいられない。

そのための、ルール。

二人で同じ大学に行くことを決めている。まだ進学先を決定はしていないけど、同じとこに行こうって。

そして、大学に進んだら、一緒に暮らそうって決めている。それはお互いの両親からも了解してもらっている。

私たちにとっては同棲だけど、一人暮らしよりも安全だからルームシェアするって言ったら納得してもらえた。

その未来図を守るため、茉莉とは三つ、約束をしてある。

「デートは学校の近くとお互いの家のそばは避ける」

誰に見られるかわからないから。見られても友達同士なら別に不審に思われないかもしれないけど、念のため。

「メールみたいな後に残る形で、好きとか愛してるとか言わない」

家での電話でもそう。ケータイを使ってても。

「学校ではキス以上のことは絶対にしない」

当たり前。誰かに見られたらどうするの? もし先生に見られて家に連絡されたら一巻の終わり。

どれも茉莉は不満みたいだけど、説得して約束させた。だって、私は守りたいもの。

茉莉との、この関係を。

家を出て、ちゃんと自活できるようになって、誰にも文句を言わせない形で暮らしていけるようになるまで。まだ、私たちは子供なんだから。世間的には。

それでも……。

時々、茉莉はこうして、ルールを破ろうとする。

私のこと好きだからって言うけど、だったらちゃんと守ってほしい。私だって茉莉のことは好き、愛してる。

ずっと一緒にいたい。だから、決めたんだから。このルールを。

同じ学校、この城女への進学を決め、陸上部に入って、アスリートとしてステップアップし、今、茉莉は部長、私は副部長になっている。

夏が終われば、部活も引退する。大きな大会はあと二つ、全国大会と国体。それで、この学校での部活は終わり。いよいよ本当に進路を決めなきゃいけない。

茉莉はきっと、どこの大学でもスポーツ推薦で入れるだろう。でも、私はどうだろう。もしかしたら、茉莉と一緒の大学に進むためには一般受験も考えないといけない。

考えなきゃいけない。自分のこの先のことを。自分たちのことを。

ずっと一緒にいられる道を。

なのに……。

稲本美夕

もう、いつまでくっついてるのよ!

網島茉莉

ええ!? だって、こうしないと美夕のノート見れないじゃん。

稲本美夕

横に座ればいいでしょう!

網島茉莉

えー、こっちの方がいい。

稲本美夕

それがダメだって言ってるのよ!

ほんとに、茉莉ってば脳天気なんだから!

こんなことでイライラしたくない。茉莉のこと、怒鳴ったりしたくない。でも。

悩んでいるのが、いろいろ考えているのが自分だけなんじゃないかとか考え始めると、どうしても……。

網島茉莉

そう怒鳴ることないじゃん……。

稲本美夕

……ごめん。でも、二人で決めたことでしょ?ルールはちゃんと守って。

網島茉莉

わかってるんだけどさぁ……。最近、スキンシップが足りてないなぁって思って。

稲本美夕

今がいちばん、大切な時でしょ。がまんして。

網島茉莉

はいはい……。

はぁ……、ようやく離れてくれた。ほっとするけど、同時に寂しさもある。私だって、茉莉にさわられるのはきらいじゃない。むしろ、好き。だけど。

私は茉莉とずっと一緒にいたいの。今だけじゃなく、この先、ずっと。

だから、ルールを守って、茉莉。お願いだから。

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okujou_no_yurirei-san/2801.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)