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okujou_no_yurirei-san:2602

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その日から、オレはステージでカマすための、ラブロックの詞を、考えることに没頭した。

今日も、朝からずっと、考え通し。うっかり遅刻するのも忘れてたくらいだぜ。余裕でセーフだったね。

……ギリギリじゃなきゃ、有遊サマと話せねーじゃん……。

まぁ、それはともかく、学校も終わっての帰り道。椿小路を歩いていた時だった。

古場陽香

!!

キた! 急にキやがった! 降ってきた! 降りてきた!

不意に、これ以上ないってくらい、クールなフレーズが日本語で降りてきた! いつもとちがう! これなら読める!

古場陽香

うわ、わ、わわわ、ヤベ、メモ、メモにとっておかなきゃ!

オレは、慌ててカバンをかき回す。このため用に買ったばっかのノートを取り出し、ペンを取り出す。

そして、降ってきたコトバを、書き殴っていく!

古場陽香

うわ……、ヤベぇ、これ、ぜってー、キてる……!

一通り、頭の中を写し終わって、ノートの字を見る。うん、これならきっと、サイコーのステージになる!

と、そこで。

オレは、目の前、すぐ前、よけようもないくらいのとこに、ガードレールがあることに気付いた。

ドカーン!

古場陽香

いってぇ!!

おおお、膝、膝、ヒザ!

膝打った! いてええええええええ!

とんでもねぇ痛みに、膝を抱えていると。

「ちょっと、大丈夫?」

と、声がかかってきた。

大丈夫じゃない。だが、こんなことでギャーギャーわめいてもらんない。

「え、えと……」

心配そうな声。あー、なんかみっともねぇ……。でも、ここはガマンだ!

古場陽香

あ~、オーケイオーケイ、大丈夫。ちょっと膝ぶつけただけだから。

膝、押さえたまま立てないけど、とりあえず、そう答える。

「大丈夫? どこかケガしてない?」

古場陽香

へーきへーき、これくらいじゃロッカーはへこたれない。うぅ、いてぇ……。

古場陽香

ちょっとすりむいてるけど、たいしたことねぇべ。わり、ありがと。

ようやく、ガンガンする痛みがジンジンに変わったんで、オレは顔を上げた。

古場陽香

って。

そこに立っていたのは、声をかけてくれたのは、知ってる顔だった。思わず、その顔、マジマジと見ちまった。

「え、な、なに……?」

古場陽香

あれ? お前、遠見?

遠見結奈

え? そ、そうだけど……。

遠見結奈だった。中学の時、一緒のクラスだったこともある。同じ八津岸団地に住んでる。

古場陽香

おー、遠見じゃん! 久しぶり!

おー、懐かしい! ってオレは思ったのに、遠見のヤツは。

遠見結奈

え、え? その、ごめん、あなた、誰? 思い出せないんだけど……。

ときた。

古場陽香

えー!? なんだそりゃ、ガックシ。つれねぇなぁ~。

思わず、肩が落ちる、首が折れる。そりゃねーだろ、久しぶりの再会なのに。

古場陽香

オレだよ、オレ。あ、そか。城女に入ってから、話したこと、ないもんな。

古場陽香

前、クラス一緒だったろ、古場だよ、コバヨーカ。

遠見、オレの名前を聞いて、一瞬、キョトンとして。

目、まん丸にした。

遠見結奈

古場さん!?

古場陽香

そーそー。わかんねーかなぁ、もう。

遠見結奈

う、うん、わかんなかった……。

ほんと、ハクジョーだな。まぁ、ほんと、学校じゃ話したことなかったもんな。それに。

遠見結奈

あなた、そんな恰好した人だったっけ……?

古場陽香

キッついなーもう! まぁ、ナットクだけどさぁ。

だよなー。シロジョに入る前のオレは、とてつもなく地味だった。どうしようもなく、魂が入ってなかった。まだ、なにも知らなかった。

古場陽香

まぁ、たしかに? 前のオレはちょっと目立つとこ、なかったけどさぁ。

古場陽香

でも、城女に入ってから、生まれ変わったんだぜ? 思ったんだ、前のまんまじゃダメだって! なんせ、であっちまったからさ!

古場陽香

ロックにな!

遠見結奈

………………。

……おい、なに、その絶句。

遠見結奈

あの、えっと、古場さん……?

古場陽香

おーいおい、なんだよ、水くせぇなぁ! なに、コバサンって! 陽香でいいよ! な、結奈! ご近所仲間だべ!

オレ、結奈のこと、けっこう気に入ってんだぜ? ヨソヨソしーの、やめよーぜ。だって。

遠見結奈

じゃ、陽香、でいい?

古場陽香

オーケイ、それでいい! さすが結奈、同じイメチェン仲間だよな!

シロジョに入って、オレは驚いた。結奈の変わりように。

古場陽香

城女に入って、結奈を見かけた時、びっくりしたぜ? なんだか、急にクールになっちまってさぁ!

古場陽香

前みたいな、ヨクデキマシタ、な優等生っぷりがすっかりなくなっちまってさ! なんか、すっげぇカッコよくなったじゃん!

遠見結奈

………………。

古場陽香

そうそう、その雰囲気! カッコいいよな、ソレ! ロックだよな!

遠見結奈

……はぁ。

古場陽香

そのタメイキ、いいよな!

すげーカッコいい。有遊サマとはちがうけど。お前も見つけたんだよな、オレにとってのロックと同じものを。

古場陽香

オレもさ! まえのまんまじゃダメだって思って、すっげーがんばったんだぜ? カッコから入るなんてアレかもしんないけど、変えてかなきゃ始まんないべ?

遠見結奈

それはいいけど、その話し方、なんなのよ……。

古場陽香

あ、これ? なんか、バンドのメンバーの言葉が移っちゃって。けっこー、気に入ってんだけど。ロックで。

遠見結奈

そう……。

古場陽香

もうちっともなおんねーの、これが。まいった、ハハハ。

遠見結奈

はぁ、まぁいいわ。

遠見結奈

で? ケガは平気なの? すりむいただけ?

古場陽香

ん? ああ、ああ、へーきへーき。こんなのほっときゃ直るべ。

いつの間にか、痛みもほとんどなくなったしな。

遠見結奈

まったく、なんでこんな、なんにもない道で、ガードレールにぶつかれるのよ……。

古場陽香

いや、それがさ、聞いてくれよ!

……よく聞いてくれた!

古場陽香

いきなり、スゲーのがオリてきてさ! あ、こりゃすぐにメモとんなきゃ、絶対あとじゃ思い出せないって感じのでさ!

古場陽香

それで、頭の中、オリてきたフレーズをメモしてたら、いつの間にか、ガードレールが目の前にあってさ!

古場陽香

ガツーン!

遠見結奈

……そう。ちゃんと前見て歩きなさい。それじゃね。

ええ!? ちょ、ちょっと待った! そんだけ!?

オレのあの時の興奮と感動を、そんなにあっさり受け流すわけ!?

古場陽香

おいおい、ちょっと待ってくれよ! ほんとにクールだな、結奈は!

ここで会ったのもなにかの縁! ロックのカミサマのお導きだべ?

古場陽香

待てってば。ほら、オレの会心のロックナンバー、聞いてみたくない?

オレの受け取ったスゲぇ歌詞、見てくれ! そして、その愛の深さに感動してれよ!

古場陽香

聞いてみたいべ?

あれぇ!? マジでいっちゃうの!? いや、ちょっと待ってってば!

古場陽香

あ、待って、マジで。ゴメンナサイ、聞いてください。ほんとに! お願いします!

遠見結奈

……なによ。

はぁ、結奈、足を止めてくれた。どうにか、話を聞いてくれる気になったらしい。

古場陽香

サンキュ! あの、その、さ。

遠見結奈

なに? 早く見せるなり歌うなりしてよ。

待ってくれ、まだ、前置きがあるんだってば。

その、なんでオレがこんな詞を思いついたのか、ちゃんと説明しないと、こいつのスゴさが伝わらない気がしてさ。

たまたま通りかかった昔のクラスメイト。でも、同じシロジョに入って自分を変えたオレと結奈。

きっと結奈なら、わかってくれると思うんだ。コンキョ、ないけど。

古場陽香

オレ、さ、ついこないだ、その、好きな人ができてさ。

遠見結奈

はぁ?

古場陽香

その、どうしたらいいか、わかんなくてさ。なんてーか、その、好きになっちまったら、なんか、まともに話もできなくなっちまってさ。

なんか、こうしてコトバにすると。

古場陽香

そいつにさ、その、愛をコクハクしたいんだ。恋人に、なりたいんだけどさ。その、どーにも頭がかたまっちまってさ。

自分の弱っちいとこがハッキリとわかる。

遠見結奈

そ、そう……。

古場陽香

今まで以上に、なんにも話せなくなっちまってさ! もー、こんなんじゃコクハクなんて絶対無理って感じでさ!

古場陽香

どーしたらいいか、わかんなくなっちまってさ。でも……。

でも、だからこそ。

古場陽香

その時、閃いたんだ、オレ!

古場陽香

まともに話せねーんなら、歌で伝えればいいんだって! オレ、ロッカーだし! 他に方法はねーじゃんって!

オレは、ステージの上から、伝えたいんだ。

遠見結奈

………………。

アイシテルって。

遠見結奈

わかった。そ、それはわかったんだけど……。

古場陽香

やっぱ!? わかってくれるか、結奈! さすが!

遠見結奈

う、うん、それで、私に聞いてほしいってのは、その歌、なの……?

古場陽香

イエス!

オレはさっきまで、痛みをこらえるために、ちょっと握りつぶしていたノートを広げる。

メモをとったとこで開いて、折り返す。

古場陽香

頼む! ちょっとここのとこ、読んでくれ! オレのありったけのロックが詰まったラブソングだから!

古場陽香

そんで、キタンのない意見を聞かせてくれ! お願いします、結奈!

そう言って、ノートを差し出した。ついでに、頭も下げる。このとーり!

遠見結奈

わ、わかった……。

結奈はオレからノートを受け取った。

そして、おれがアリッタケを詰め込んでブチまけたページに目を落とす。

遠見結奈

………………。

結奈の目が、少しずつ、オレの字を追って、動いていく。

『お前のこと好きィ 恋って緊縛プレイだな がんじがらめでお前のほうだけ見てる』

『ずっと見てる マジガン見さ おー おー 見てるんだー』

『ハートが熱くて どうしよう やべー どうしょう 好きだー とまんねー』

『ひざまずきてぇ その足にキスしてぇ すがりつきてぇ どうかオレを愛してくれ』

さぁ、どうだ! ……って。

遠見結奈

………………。

あれ? ショーサンがないぞ? 結奈、ちょっと目がどんよりしてないか? 眼精疲労か?

古場陽香

ど、どうかな……? セイイッパイの気持ち、叩きつけてみたんだけどさ。

古場陽香

あ、曲はバンドのメンバーに頼むつもりでさ。すっげークールなの、入れてもらうつもりなんだけどさ。

古場陽香

これなら、イケるよな?

遠見結奈

……ねぇ、陽香、あなた、バンドやってるのよね?

古場陽香

お、おう。学校の外のヤツらだけどさ。

ロックに目覚めてからすぐ、新町のスタジオに張り出されてたメン募に飛びついて、三つ目くらいだったかな? ようやく入れてもらえたの。

ゴキゲンなヤツらだぜ!

遠見結奈

その人たちは、陽香の作詞のこと、なんて言ってるの?

古場陽香

ああ? いや、この詞は誰にも見せてねーよ。結奈が初めてだけど?

遠見結奈

これじゃなくて、他のヤツでいいから。

古場陽香

んー……。ほめてくれるぜ? オレのはすげぇ早スギルって。

遠見結奈

うん、それ、ほめてない。

古場陽香

ええ!?

遠見結奈

いや、なにこれ。忌憚のない意見がほしいんでしょ? だから言わせてもらうけど、これはない! こんな歌で告白されたら、怖い! ヒく! 絶対に断られる!

古場陽香

えええ!? オレのロック全否定!?

遠見結奈

肯定するとこ、一個もない!

古場陽香

ええええ!? マジでか!?

遠見結奈

マジで!

古場陽香

うわあああっ! あ、あぁ……。あああ……。

な、なんだよおおお、それえええ……。

遠見結奈

だってこれ、一方的にあなたのことしか書いてないじゃない。しかも、ちょっと、ううん、かなりストーカーみたいよ?

古場陽香

うええええ……。

遠見結奈

その、もうちょっと、相手のどこが好きなのか、なんで好きになったのか、とか……、そういうのがいるんじゃないの? ラブソングなんでしょ?

古場陽香

うーん、そう言われれば……、そうなのかなぁ……。

そんな気も、してきた……。でもさぁ、わかんないじゃん、そんなの。オレ、初めてなんだからさぁ。

遠見結奈

はぁ……。だいたい、その、陽香の好きな人って、どれくらい親しい人なの? バンドの人?

古場陽香

いや? だってバンドのメンバー、全員女だぜ? ありえねーだろ。

あいつらと有遊サマとじゃ、全然ちがうって!

古場陽香

えっと、そうだな……。

古場陽香

うーん、毎日、ちょっとだけ、話するくらい、かな?

遠見結奈

それでいきなり、こんな歌聞かされたら、絶対にストーカー認定されるわよ?

古場陽香

うああああっ!

古場陽香

うう、ストーカーはマズいよなぁ……。それはちょっとロックじゃねぇ……。

ロッカーは反社会的だけど、犯罪者じゃねぇ。そして、ストーカーは犯罪だよな……。

遠見結奈

でしょう? まずは段階、踏んだ方がいいわよ。

古場陽香

ダンカイ?

遠見結奈

そう。まず、あなたのこと、もっとよく知ってもらったら? あなたも、相手のこと、ちゃんと知って。

古場陽香

お、おう……。

遠見結奈

その、友達になるとか、そこから始めること、できないの?

遠見結奈

お互いのこと、よく知ってから、歌詞作って、歌った方がいいんじゃないの?

古場陽香

友達……、うーん、友達かぁ……。

友達、かぁ。有遊サマと? 考えたこともなかった。

だって、オレ、有遊サマのこと、好きなんだぜ? ライクじゃなくて、ラヴ!

だったら、コイビトにならないとダメだよな?

でも、コイビトの前に、友達になるのは……。

古場陽香

うーん……。

アリか? アリなのか、それって。

古場陽香

………………。

恋人の前に友達ってのはアリなのか? ライクはラヴになってくれるのか?

でも確かに、結奈の言う通り、今のまんまじゃ、有遊サマに近づくこともできねー。よく知ることもできやしねー。

なら、ライクで友達になれば、オレは有遊サマのこと、もっとよく知ることできるのか?

今の気持ち、ライクにしたら、どうなるんだ?考えろ、オレ。ライクなら、有遊サマの前に立てるか? 話しかけられるか?

そして、サイコーの歌が出来た瞬間、それをラヴにできるか?

それってアリか?

古場陽香

(アリだな!)

古場陽香

友達……、うん、そうだな!

古場陽香

いきなり、恋人になってほしいなんて考えたから、うまくいかなかったんだな! そう、友達からなら、イケる! うん、だいじょぶ!オッケーだべ!

古場陽香

サンキュー、結奈! ダンカイなんてもの、すっかり忘れてたぜ!

遠見結奈

あ、う、うん……。どういたしまして……。

おいおい、なにをボーゼンとしてるんだ、結奈! オレ、こんなに感謝してるんだぜ?

古場陽香

すげーな、結奈! あんた、サイコーだ!

古場陽香

どうしていいか、わかんなかったオレに、イッパツで答えだしてくれたじゃん!

遠見結奈

う、うん……。

古場陽香

すげー! サイコー! メシア! ジーザス!

遠見結奈

ちょっと、ほめすぎじゃない?

古場陽香

ナニ言ってんだ、ほめたりねーぜ! トモダチだぜ、トモダチ!

古場陽香

オレ、あいつと友達になれるんだぜ!?

イケる、友達なら、イケる! 有遊サマと友達だ!

古場陽香

よーし、ぜってー友達になってやる! そして、あいつのこと、もっと知って、オレのこと、もっと知ってもらうんだ!

古場陽香

そして、もっとサイコーにロックな詞を作ってやるぜ! でもって!

古場陽香

それをアイツの前でブチかましてやった時、オレたち、恋人になれるんだぜ、きっと! ヒャッハー!

うわ、見える。サイコーのステージが!

有遊サマが最前列で拳を突き上げながら、オレの歌を聞いてくれている!

オレのコクハクを受け止めてくれている!

そして、最後まで歌いきった時、二人は……!

おおおおおおおおおっ!

古場陽香

よーっし、すっげーヤル気出てきた! なぁ、結奈!

遠見結奈

はいはい、がんばんなさい。

古場陽香

おう! きっと、今度はすっげー詞になるぜ!

古場陽香

出来たら、また、結奈に見せるからな! ヨロシク頼むぜ!

遠見結奈

はぁ!? また私が見るの!?

古場陽香

おう、当たり前だべ!?

確信してんだ。オレの詞は、結奈がいないと完成しないってな! 結奈、スゲーって、マスター導師だ、あんた!

古場陽香

よーし、待ってろよぉ!

有遊サマ!

ヤベえ、どんどん足が前に出て行く。

勝手に前に進んでく!

古場陽香

オレの未来、今、すっげーロックなことになってるぜ!

待ってろよ、有遊サマ!

まずは、お友達から始めようぜ!

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