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okujou_no_yurirei-san:2431

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剣峰桐

あ、あれ、月代ちゃん、集合場所は部室じゃなかった?

いよいよ今日から学園祭。

まぁ、私と月代ちゃんは部活で参加するわけじゃないんだけど。数理部は学園祭の間は、臨時の学園祭実行委員会本部になってしまうので。

でも、これも月代ちゃんと二人っきりの学園祭。まぁ、雑用とかに追い回されるの、目に見えてるんだけど。

いつもよりだいぶ早い時間に、学校に来た。月代ちゃんも一緒で、部室に集合してから、まず、今日一日の進行を確認するってことになってたはずだけど。

園生月代

あ、うん、ちょっとね。もうすぐ来るかなと思って、待ってたの。

月代ちゃんは正門のところに立っていた。嘘、私を待っていてくれたの? そんなに私に会いたかったの?

思わず叫んで抱きつきそうになるけど、自重する。だって、まだ登校時間よりだいぶ早いけど、学園祭当日だけあって、けっこうこの時間でも学校に来てる人、多いしね。

園生月代

ちょっと……。

剣峰桐

ん?

月代ちゃん、キョロキョロってまわりを見回して。

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園生月代

桐に見せたいもの、あってね。

顔を寄せて、ちょっと小声で。

うわっ! まわりを気にしてから! 小声で!名前を呼ぶ攻撃! それはズルい、ヒドい!

剣峰桐

う、うん……。な、なに、見せたいものって。

園生月代

まだ内緒。ちょっとついてきてくれる?

そう言って、月代ちゃんは正門の内側に入っていく。さすがに、手をつないではくれないのかー。

でも、見せたいものって、なんだろう。

月代ちゃんについていくと、行き先は講堂。

さすがに今日から本番ってだけあって、もう来てる人がかなりいる。最後の追い込みなのかな? すごい活気というか。

講堂のまわりの回廊ってあだ名の通路は、片側が出店になっていて、もう片側が文化部とかの展示スペースになっている。

月代ちゃんが連れてきてくれたのは、その展示スペースのいちばん端。もう講堂からはみ出しそうって感じの。

そこは。

園生月代

はい、プレゼントよ。

剣峰桐

え……、数理部……?

確かに。そこには、数理部って名札が置いてあった。

剣峰桐

え、ちょ、ちょっと?

私は慌てて、持っていた学園祭のパンフレットを開く。展示スペースの案内図、そして、出展クラブ・有志一覧のページに目を通す。

そのどちらにも。数理部の名前があって。一覧のページの部長・代表者のところには、しっかり私の名前まであって。

剣峰桐

嘘……、私、ほんとに参加申請出してないのに……。

園生月代

私が出しておいたの。

剣峰桐

月代ちゃんが……?

園生月代

うん。桐は参加しないって言ってたけど、やっぱりせっかくの部活なのに、参加できないのは残念だから。

園生月代

それに、桐、ずっと私の仕事、手伝ってくれたでしょう? だから、少しでもお返ししてあげたかったの。

園生月代

いちばん隅っこで、いちばん小さな展示スペースなんだけど……。

確かに。校舎のある方からいちばん離れてる方の隅っこ。

そして、展示スペースって言っても、壁にパネル一枚分だけ。机も学生用のが一つだけ。まだパネルにはなにも貼られてないし。

園生月代

でも、これだけなら、今からでも準備できるでしょう?

園生月代

去年、企画だけしてできなかったクイズの問題貼って、答えを書く紙を置いておいて、それを入れてもらう箱、置いておけばあとはここに桐がいなくても大丈夫だと思うの。

園生月代

これなら、私と桐が忙しくても、学園祭に数理部として参加できるかなって思って……。

確かに……。去年はこの倍以上のスペースを申請してたけど、忙しい月代ちゃんの手伝い、私一人しかいない部員、そんな理由があって、結局、なにも展示できなかった。

でも、これなら。月代ちゃんの言う通り、今から準備しても間に合うかも。ここにいなくていいなら、学園祭中も、部室で月代ちゃんの手伝いができる。

園生月代

今から、貼り出すもの、用意しなきゃいけないから、ちょっと忙しくなっちゃうけど……。

園生月代

どう、かな? 勝手にやっちゃったことだけど、喜んでくれたら、うれしいな。

剣峰桐

………………。

やだ、すぐに言葉が出ない。ちょっと胸が詰まってる。

剣峰桐

う、うん……。

それでも、なんとかうなずいて。

剣峰桐

うん、うれしい。ありがと、月代ちゃん……。

園生月代

よかった。ふふ、こっそり準備したかいがあったかな。

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月代ちゃんだってあんなに忙しかったのに。

9月に入ってから、放課後は毎日、実行委員会の仕事ばっかりだった。人もたくさん増えたけど、その分、仕事もたくさん増えて。

特に直前の一週間は、今、思い出すとうんざりしたくなるくらい忙しくて、ただひたすらテンション上げて乗り切ったくらいで。

昨日だって、私は家に帰らされたけど、月代ちゃんは学校に泊まったらしいし。

そんなに、忙しかったのに。

月代ちゃん、私のために、こんな素敵なこと、用意してくれたんだ……。

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園生月代

今日、早く来てもらったのは、このためだったの。今から、クイズの問題とか、準備できるよね?

剣峰桐

うん……。

どうしよう。今からクイズの問題、考えるのはさすがに大変だけど。

でも、一問くらいは、自分で考えたのを出してみたい。

園生月代

印刷室は、いつでも使えるようにしてあるわ。問題、作ってくれたら、貼り出せる形で印刷するわね。回答用紙は私が作るから。

剣峰桐

うん……。

園生月代

今から学園祭が始まるまでは、数理部としてがんばろう?

剣峰桐

うん。

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あ、本当に胸が詰まりそう。うなずくのが精一杯。

こんなにちっちゃくてかわいいのに、月代ちゃんってやっぱり、大人で先生なんだ。私なんて、体が大きいだけで、まだまだ子供なんだ。

私は、月代ちゃんのためって思いながら、できたのは仕事の手伝いだけ。私でもできる手伝いだけ。

でも、月代ちゃんは私のために、こんな素敵なものをプレゼントしてくれた。自分だって大変だったのに。

私、本当に数理部として学園祭に参加できなくても別にいいと思ってた。残念とか、思ってなかった。それより、月代ちゃんの手伝いができる方がいいって思ってた。

でも、今、うれしい。やっぱり、月代ちゃんが顧問で、私が部長の数理部が、こういう形で学園祭に参加できるってことが、うれしい。

ほしかったものじゃなくても、うれしいって思えるプレゼントってあるんだ……。

それを私にくれた月代ちゃん、やっぱり大好き、愛してる。そして、先生として、大人として、尊敬できる。

私、やっぱり、月代ちゃんを好きになってよかった。

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園生月代

さ、部室に行こっか。実行委員の仕事が入ってくる前に、すませちゃおうね。

剣峰桐

うん。

何度も考え直して、それでも好きだってわかってよかった。

園生月代

一日目はどうしても、忙しくなるからね。今日もお手伝い、お願いね?

剣峰桐

うん。

勘違いだなんて思わなくて……、よかった。

いよいよ、学園祭が始まった。

学園祭自体は、講堂のまわりだけを使うから、にぎやかなのはそこだけなんだけど。

講堂の中ではステージを使った発表とか公演とか。そのまわりは出店が出て、展示があって。

みんな、講堂とそのまわりに集中してるんだけど。

仕事は全部、この数理部の部室に集中していた。いやもう、ここって完全に学園祭実行本部になってるし。

まぁ、月代ちゃんがいて、仕事してるのここだし。

ほんとは空き教室とかを使うはずだったんだけど、夏休み中からずっとここで仕事してたからって理由で、今年はここにしちゃったらしい。

勝手につかってごめんね、なんて言ってたけど、なにを今さら。部長の私も月代ちゃんの手伝いをしてるんだし。

剣峰桐

月代ちゃーん、明日用の追加のパンフレット、届いたって。今からこっちに運んできてくれるって!

園生月代

はーい、それじゃ、どっかに積んでおいてくれる?

剣峰桐

わかった! 誰か、パンフ置き場作るの、手伝ってー!

そんな感じ。

学園祭が始まったって、仕事なんて減るわけない。今日と明日で出展する部活が変わったりもするし、ステージのプログラムだってちがうんだし。

あちこちから連絡が入って、ここからもいろんなとこに連絡したり。

明日用のステージの機材や道具とか、ステージの脇の荷物置き場には入らないから、一時的に預かることになって、隣の空き教室に運び込んだりしたり。

忙しいけど、なんかテンション上がって楽しい。お祭りってこういう裏方も楽しいもんなんだな。

そんなことを思ってたら。

一木羽美

こんにちはー! 放送部です!

え、なに!? いきなり、ドアが開いたと思ったら、えーと、三人、部室に入ってきて。

一木羽美

ただ今、キュウセイラジオ、学園祭特別番組を放送中です!

ほ、放送部? あ、そう言えば、夏休み前に、インタビュー受けたことあったっけ。お昼の放送に使う、部長のインタビューだとかで。

一木さんっていつも元気いいなぁ。で、なに?学園祭特別番組?

一木羽美

学園祭実行委員本部にお邪魔しておりまーす!

園生月代

一木さん? なに、どうしたの?

一木羽美

あ、月代ちゃん、じゃなかった、園生先生! えっとですね、今、キュウセイラジオの特別番組を収録中なんですよ。

一木羽美

なんと、学園祭真っ最中の校内をあちこち取材する、海賊ゲリラ版!

双野沙紗

羽美、海賊とゲリラとどっちなんだよ。

キュウセイラジオって一木さんたちのやってるお昼の放送だよね。へぇ、それの特別版の取材に来たんだ。

一木羽美

というわけで、園生先生! 実行委員会顧問として、インタビューいいですか?

園生月代

え、インタビュー? き、聞いてないんだけど……。

一木羽美

海賊ゲリラですから!

あ、そのフレーズ気に入ったっぽい。

一木羽美

学生からの人気も校内で一、二を争う上に、実行委員会の顧問でしょ、園生先生。これはぜひ、学園祭を楽しんでるみんなに向かって、お言葉を頂戴いたしたく!

園生月代

え? え?

一木羽美

なんでもいいですから! 学校のみんなに向かって! さぁ!

園生月代

え、えっと……。

双野沙紗

せんせ、もうマイク入ってるからね。

園生月代

えええ!?

うわ、真っ赤になって慌てる月代ちゃん、かわいい。

部室の中にいる他の実行委員の人からも、「つくよちゃーん」なんて声が飛んでるし。ほんと、人気あるなぁ。

まぁ、いちばんのファンは私だけどね! ファンどころじゃないけどね!

園生月代

え、えっと、その……。

一木羽美

さぁ、どうぞ!

園生月代

あ、あの、み、みんな、楽しんでますか? その……。

園生月代

は、恥ずかしい言葉だけど、こういう青春を思いっきり感じられる機会って、ありそうでないと思います。だから……。

園生月代

今日は思いっきり、がんばって、楽しんでください!

一木羽美

はい、ありがとうございましたー! うわぁ、なんかすごい月代ちゃんっぽいというか。

双野沙紗

青春ときたかー。うわっ、先生、言ってて恥ずかしくない?

園生月代

恥ずかしい言葉だってちゃんと断ったでしょ!

一木羽美

いやいや、いいお言葉でしたよー。

園生月代

うう、もう……。

放送部、ナイス。いいもの見れた! 月代ちゃんをいじっていいのは私だけと思いたいけど、今日だけは許す!

一木羽美

おっと、こんなとこに数理部部長の剣峰桐さんが!

剣峰桐

え?

なに、私? というか、今、マイクのランプ、点いてない? 一木さん?

一木羽美

ついでだから、インタビューしてみましょう!

剣峰桐

ええ!? ちょ、ちょっと!

なんで? なんでそんな流れになってるの?

一木羽美

途中でみかけた部長さんとかには、みんな、声かけてるんだよね。

そ、そうなんだ? なんでそんな迷惑なこと、してるんだってば!

剣峰桐

わ、私、ちょっと用が……。

逃げよう、そんな公開処刑みたいなことに参加したくない。部室から慌てて出て行こうとしたんだけど。

園生月代

だーめ。

がっしりと月代ちゃんに腕をつかまれてしまった。

園生月代

私もインタビュー受けたんだから、剣峰さんも受けていきなさい。他の部には協力してあげないとね。

それって、死なばもろともってヤツじゃない!? 月代ちゃん、もしかして、さっき私がニヤニヤ笑って見てたの、気付いてた!?

というか、せっかくの月代ちゃんと最初の腕組みがこんな時だなんて……。

一木羽美

そんじゃ、剣峰さん、なにか一言!

マスコミの横暴を訴えてやろうかとも思ったけど、すぐに言葉が出てこなくて。

剣峰桐

え、えっと、その、数理部では、展示場のいちばん端っこで、パズルとクイズの展示をやってます……。

剣峰桐

ちょ、ちょっと時間があったら、気軽に挑戦してみてください。答えは、置いてある紙に書いて、箱の中に入れてくれればいいから……。

剣峰桐

よ、よろしくお願いします。

一木羽美

はい、ありがとうございましたぁ! もうちょっとおもしろいこと、言ってもいいのよ? 剣峰さん。

無茶言わないでよ!

確かに、ただ、展示場所の告知をしただけ。それだけなのに、すっごい緊張した。放送部め、無茶振りにもほどがあるでしょ。

三山音七

羽美、そろそろ移動するよ~。

一木羽美

はい、それじゃ学園祭実行委員本部でしたぁ!お邪魔しました!

双野沙紗

撤収~。あ、この放送、戻って編集してから流すんで。

一木羽美

だいたい、30分後にオンエアしますね! お楽しみに!

嵐のような人たちだった……。入ってきた時と同じような勢いで、出て行っちゃった……。

そしてようやく、月代ちゃんが腕をほどいてくれた。

園生月代

お疲れさま。

剣峰桐

カンベンしてよ、月代ちゃん~。もう、なにしゃべっていいか、全然、わからなかった……。

園生月代

ちゃんと宣伝できてたわよ、剣峰さん。でも、ただ今部員募集中、くらい付け加えてもよかったかもね。

剣峰桐

そんなこと、全然、思いつきもしなかったってば……。

部員、かぁ。

ほんとに、思いつかなかった。別に、増えてほしいって思ったこともなかったし。月代ちゃんと二人で部活の時間を過ごせるのが目的で入った部なんだし。

でも、来年は私も三年生で。来年も部員が入らなかったら、私が卒業したら、数理部ってどうなっちゃうんだろう。

部員、か。来年、一年生が入ってきたりするのかな……?

剣峰桐

これで終わり? 月代ちゃん。

園生月代

うん、終わりー!

剣峰桐

やったー! やっと終わったー!

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うわぁ、もう、外、真っ暗だ。

学園祭の一日目。

講堂でのステージと、雲見櫓を使った展示は、4時には終わりになって、それで一日目終了ってことになってるんだけど。

明日に備えた実行委員会の仕事は全然、むしろそれからが本番って感じ。

明日のステージの進行表を見ながら、ステージ使用者の搬入の段取りを確認しに行ったり、機材をチェックしたり。

雲見櫓の方も、今日と明日で入れ替えがあるから、撤収とか、ここでも搬入とかで、それに立ち会ったりとか。

さらに、正門の受付で配るパンフレットを運び込んだり、来賓用のスリッパとか用意したり。

そんなこんな、夕方からずっと、月代ちゃんと二人で、学校中を歩き回っていた。で、やっとここに帰ってこれたと思ったら。

今度はその書類のまとめ直しとか。ノートPC持ち込んで、いろんなファイルをひっくり返してる月代ちゃんに、私も資料を探し出して渡したりしてた。

で、もう、外はすっかり真っ暗。下校時間なんてとっくに過ぎていた。

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園生月代

ああ、すっかり遅くなっちゃったわね。でも、剣峰さん、よかったの?

剣峰桐

あのさ、月代ちゃん。

園生月代

ん? なぁに?

剣峰桐

今、二人っきりだよ?

園生月代

え? あ、ああ、そうね。

剣峰桐

名前で呼んでくれないの?

園生月代

え、えっと……。ほら、仕事中だし……。

剣峰桐

今、終わったよ。

園生月代

う……、え、えっと、桐はよかったの? こんなに遅くなって。

剣峰桐

うん、問題なし。

園生月代

はぁ……。

剣峰桐

ため息つかないでよ、月代ちゃん。なんか、傷つくんだけど。

園生月代

ご、ごめんなさい。でも、桐、帰らなくてよかったの?

剣峰桐

いいよ、別に。泊まり込んでる人なら、他にもけっこういるし。

園生月代

まぁ、一応、許可はとってきてあげたけど……。

剣峰桐

夏合宿でも一緒だったでしょ。ここで泊まってこうよ、月代ちゃん。

園生月代

ええ、まぁ、そのつもりだけど……。

うわぁ、月代ちゃんとまた二人っきりでお泊まりかぁ。すごい幸せ……。

園生月代

お手伝い、ありがとうね、桐。

剣峰桐

ううん、気にしないでいいよ、月代ちゃん。

園生月代

準備はもうほとんど終わっちゃったから、明日はそんなに忙しくないはずよ。

剣峰桐

ほんと? あ、去年もそんなだったかな?

剣峰桐

それじゃ、明日は一緒に回ったりできそう?

園生月代

うーん……、見廻りとのついでとかにしちゃえば、大丈夫かな?

剣峰桐

やった! 学園祭デートだね、月代ちゃん!

園生月代

そうね。他の人がいる前では、ちゃんと先生って呼ばなきゃダメよ?

剣峰桐

はーい、努力します。

する気、ないけどね! うわぁ、学園祭デートかぁ。

剣峰桐

去年は、そんなことする余裕、全然なかったのにね。

園生月代

そうね。今年は、いろんな人に手伝ってもらったからね。私たちも、ちょっと要領よくなったのかな。

剣峰桐

月代ちゃん、大丈夫? 熱とか出てないよね?

園生月代

大丈夫です。そんなにいつも、熱出したりしてません。

剣峰桐

してるんだけどなぁ……。

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でも、うれしい、よかった。あー、すっごい充実した解放感。

去年の学園祭一日目なんて、徹夜する勢いで仕事してたし、月代ちゃん。私もあんまり手伝ってあげられなくて。

結局、月代ちゃん、二日目は熱出してほとんど、ここで寝てたし。それを考えたら、今年はほんと、余裕を持って二日目を迎えられそう。

夏休みの間、手伝ってくれた遠見ちゃんや有遊さんに感謝しなきゃ。二人とも、今日もいろいろ手伝ってくれたし。

あー、そう言えば有遊さん、陽香のステージ、見に行くって言ってたな。見に行けたのかな?私たち、ここで缶詰だったから、わかんないけど。

明日は、月代ちゃんといろいろ見て回れたらいいな。というか、見て回る。がっつり、月代ちゃんと学園祭デート、楽しんでやる。ふふふふふ……。

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剣峰桐

月代ちゃん!

園生月代

な、なぁに?

剣峰桐

明日を万全の体調で迎えるために、今日はちゃんとしっかり寝てね! 熱出したりしないでね?

園生月代

はいはい、わかってます。もう……、なんで年下の桐に心配されちゃうのかしら……。

剣峰桐

熱出したら、付きっきりで看病するからね。合宿の時みたいに。

園生月代

出したりしません。体調はばっちりです。

剣峰桐

じゃ、デートだね! うわ、私、どっちでもおいしい!

園生月代

もう……。変な言い方しないの。

あーもう、かわいいなぁ。

今日はもう、ほんとに仕事はないはず。さっき、『本日業務終了』って札を出したしね。

明日はほんと、熱出したりしないでほしいな。やっぱり、看病するのもいいけど、一緒に学園祭見て回る方が楽しそうだし。

園生月代

桐?

剣峰桐

あ、なに、月代ちゃん。

園生月代

ほら、お楽しみのもの。持ってきてあげたわよ。

剣峰桐

へ? お楽しみ?

月代ちゃんと二人っきりタイム以外になにかあったっけ?

そんなこと考えてる私に、月代ちゃんが見せてくれたのは、30センチ四方の小さな箱だった。あ、これ、確か……。

園生月代

数理部展示の、解答ボックスよ。

剣峰桐

ああ……。

朝、月代ちゃんがドッキリで用意してくれた、ほんの小さな数理部のスペース。数字クイズみたいなのをいくつか書き込んだだけのちっちゃな展示。

それでも、部活動として学園祭に参加できた、素敵なドッキリだった。そこに、解答用紙入れとして置いておいた箱。

コピー用紙が入っていた箱に、ポストみたいな小さな穴を空けただけの、解答ボックス。忙しくて、すっかり忘れてた。様子を見に行くこともできなかったし。

剣峰桐

えっと、中、入ってるの?

園生月代

ええ。いっぱいってわけじゃないけどね。開けてみましょう。

剣峰桐

うん。

フタを取り外して、布団を敷いたために脇に寄せた机に、中味を空ける。

剣峰桐

うわ、けっこう入ってる……?

園生月代

ええ、そうね。20枚くらいはあるかしら。……はい。

そのうちの半分を、月代ちゃんが束ねて、渡してくれる。

剣峰桐

見ていいの?

園生月代

もちろんよ。数理部の展示だもの。別に採点しなくてもいいから、見てみましょ。

剣峰桐

うん……。

うわ、なんかすごいドキドキする。去年は結局、準備ができなくて展示ができなかったから。

こういうの、見るの、初めて。

剣峰桐

えっと……。

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展示のパネルに用意した問題はたったの三つ。

数独パズルと、ナンバークロスワードは、ここに置いてあった雑誌からそのまま載せちゃったもの。

あとの一つは、ギリギリになって考えた、論理クイズ。ちょっと複雑にした『嘘つきを捜せ』。

パネルの問題をそのままコピーした解答用紙に、鉛筆で答えが書き込まれてる。

正直、間違ってる人の方が多いけど……、でも、なんだろ、ちょっとうれしい。

数理部の展示を見て、考えて、答えを書いてくれた人がいたんだなぁ……。

「むずかしい、わかんねぇ」なんて書いてある人もいるけど。そんなんでも、うれしい。

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剣峰桐

全問正解者っているのかな……。

一枚一枚、解答用紙をめくりながら、そんなこと、つぶやいた時。

園生月代

……! き、桐! ね、ねぇ!

いきなり、月代ちゃんが私の肩をバンバン叩いてきた。

剣峰桐

な、なに、月代ちゃん。

園生月代

こ、これ! この解答用紙、見て!

剣峰桐

え? んっと……、ありゃ、全問不正解……。

園生月代

そうじゃなくて! ここ! 右下の隅っこ!

剣峰桐

え……?

月代ちゃんが指さしてくれたとこを見る。解答用紙の右の隅。時間がなくて適当なレイアウトの大きな余白。

剣峰桐

あ……。

そこに。書いてあった。小さな文字で。

「難しくてわかんなかったけど、すごくおもしろいです。部員募集ってしてますか?」

剣峰桐

え……。これ……。

園生月代

ね、ね!

名前、書いてない。書き込む欄なんて、作らなかったから。誰か、わかんない。でも……。

おもしろいって……。興味、持ってくれた人が……、いたんだ……。部員になりたいってくらい……。

剣峰桐

あ……。

園生月代

部員になりたいって! ね、書いてあるね!

剣峰桐

う、うん……。

ほんとに、書いてある。ちっちゃな字だけど。

剣峰桐

………………。

園生月代

どうしたの、桐。うれしくないの?

ぼーっとその字を見つめてる私の顔を、月代ちゃんがのぞき込んでくる。布団の上に座り込んでる私の隣に来て。

剣峰桐

……ううん。

園生月代

え……。

剣峰桐

……ぃ……。

私は、月代ちゃんを抱き締めてた。

園生月代

ちょ、ちょっと桐……?

ちっちゃい月代ちゃんを。すっぽり、私の腕の中に入って、頭、そのまま胸のとこに抱え込める。その月代ちゃんを、ぎゅってして。

剣峰桐

うれしい……。

園生月代

桐……?

剣峰桐

どうしよぉ、月代ちゃん……。私、すっごいうれしいよぉ……。

園生月代

……うん。

ちょっとびっくりしていた月代ちゃんが、優しい声で、うなずいてくれた。

剣峰桐

あんなに……、間に合わせだったのに……。でも、一生懸命解いてくれたんだぁ……。

園生月代

うん、そうね……。

剣峰桐

おもしろいって思ってくれたんだぁ……。

園生月代

うん、よかったね。

剣峰桐

うん……。

あ、涙出てきそう。数理部で部活やってて、こんなにうれしいこと、初めてかも。

園生月代

学園祭が終わったら、部室のドアに、部員募集中って貼っておこうね。

剣峰桐

うん……。

園生月代

もしかしたら、それを見て、入部してくれるかもね。

剣峰桐

うん……。

園生月代

一年生かもしれないわね。桐、先輩になれるかもね。

剣峰桐

うん……。

月代ちゃんの言葉に、私はただ、うなずく。誰が来るなんてわからないけど、誰かが興味を持ってくれてるんだ。

剣峰桐

ねぇ、月代ちゃん……。

園生月代

なぁに?

剣峰桐

私、今まで部活、そんなにマジメにやってなかった。

考えてみれば、とんでもないこと言ってる、私。でも、月代ちゃんは。

園生月代

うん。

特に怒ったりしないで、優しく聞いてくれる。

剣峰桐

ただ、放課後、月代ちゃんと二人っきりで過ごせるからって、それだけで部活、続けてたんだ。

剣峰桐

この部活を、おもしろいなんて思ってくれる人がいるなんて、思わなかった。入部したいって人、いるなんて……。

園生月代

うん……。

剣峰桐

月代ちゃん……、ありがとぉ……。

剣峰桐

月代ちゃんが、展示、用意してくれなかったら、気付かなかった……。

剣峰桐

月代ちゃん……、私、けっこう部活好きだったんだぁ……。

園生月代

うん……。よかったね、桐。

剣峰桐

ふぇ……。ありがとぉ、月代ちゃん……。大好き……。

こんなに、ちっちゃいのに。かわいいのに。抱っこできるくらいちっちゃかわいいのに。

月代ちゃん、私よりもずっとしっかりしてて、大人なんだ。私の気付いてないこと、気付かせてくれる。

大事なこと、教えてくれる。先生、なんだ。そんな月代ちゃんが、私、大好きなんだ……。

園生月代

うん、私も桐が大好きよ。

園生月代

しっかりしてそうで、大人っぽい雰囲気なのに、すぐにふざけてきて、先生ってちゃんと呼んでくれないけど。

園生月代

一生懸命ないい子よ、桐は。大好きよ、桐。

剣峰桐

月代ちゃぁん……。

うわああああ、大好き、愛してる、月代ちゃん。

一度、ふられそうになったけど、あきらめなくてよかった。大好きだよ、月代ちゃん。

もっと、抱き締めたいくらい。

もっと。もっと?

剣峰桐

あ……。

園生月代

どうしたの?

あ、気付いちゃった……。

そうだ、私、月代ちゃんが大好きなんだ。愛してるんだ。月代ちゃんも、私のこと、好きだって言ってくれる。ちっちゃくて大人な、私の……。

恋人、だよね。

その恋人と、私、今、二人っきりなんだ。でもって、こうして、今、抱き合ってて……。

剣峰桐

つ、月代ちゃん……。

園生月代

うん、なぁに?

剣峰桐

え、えっと、あの……。その……。

園生月代

どうしたの?

剣峰桐

月代ちゃん、その、好き、大好き、愛してる。

園生月代

う、うん……。

剣峰桐

……キ、キスして、いい?

園生月代

……え? ええ!?

剣峰桐

して、いい? いいよね?

園生月代

ちょ、ちょっと待って、桐……! そ、そんな……。

剣峰桐

して、いい? ダメ、とまんない。大好きだから、すごい、キス、したい……。

園生月代

え、えっと、ダメ、ダメよ。ここ、学校でしょ?

剣峰桐

い、今、二人っきりだもん。恋人モードでいいでしょ?

園生月代

だ、ダメ! ダメだってば!

剣峰桐

どうしても……?

園生月代

う……。そ、その……、おでこ、だったら……。

剣峰桐

おでこじゃやだ! 口、唇! キスして、いい?

園生月代

……キス、だけよ?

ダメ、きっとそれだけじゃ止まらない。自信ある。私の腕の中から見上げてきて、キスだけなんて釘刺されても、きっと無理、止まんない。

そんな確信がある。私は首を横に振った。

剣峰桐

キスだけじゃ、やだ。

園生月代

ちょ、ちょっと桐!? キスだけじゃやだって……。

剣峰桐

やだ……。

園生月代

だ、ダメって、それ以上は……。

剣峰桐

やだよ、月代ちゃん……。

逃がしたくない。月代ちゃんも、このチャンスも。そう思って、腕の中の月代ちゃんをもうちょっと強く抱き締める。

園生月代

あ……。

胸に、月代ちゃんの顔、埋めるみたいに。ボリューム不足で埋まんないけど。

背中に回した腕に力、もうちょっと入れて。お腹のとこに月代ちゃんの胸がくっつくくらいに。

ぴったりと、抱き締める。隙間に、月代ちゃんのダメが入り込まないように。

園生月代

……桐……。ねぇ、ダメだってば……。

剣峰桐

ダメじゃないよ……。

園生月代

学校なのよ……。それに、私、先生なのに……。

剣峰桐

今、二人っきりだよ。私、月代ちゃんの恋人だよ……。

園生月代

でも……。

剣峰桐

もっと、ぎゅっとしたいよ……。

園生月代

桐……。

あったかい月代ちゃんの体。さっきまでちょっとだけ、私のこと、押し戻そうとしてた手が、胸に当たってる。ちょうど、おっぱいのとこ。

その手から、ふっと力が抜けた感じがして。

園生月代

もう……、そんなにすぐに、大人になろうとしなくたっていいのに……。

そんな小さな囁きが聞こえてきた。聞こえて、意味がわかって、ドキドキして腕の中の月代ちゃんを見ると、見上げてきた目と、合って。

その目が、困ったような感じでも、ちょっと笑っているように、見えて。

剣峰桐

やだ……。ちゃんと、月代ちゃんの恋人になるんだから……。

園生月代

こんなことしなくても、ちゃんと恋人よ。

剣峰桐

わかってるけど……。でも……。

園生月代

うん、私も、わかってる。……いいわよ、キスしても。

剣峰桐

う、うん……。

ど、どうしよう。このままちょっとだけ、腕を緩めて、下を向けばいいかな?

後は、月代ちゃんから近づいてきてもらって。そしたら、キス、できるよね?

剣峰桐

つ、月代ちゃん……。

園生月代

桐……。

目が、合ってる。月代ちゃんが見つめてきてる。あ、あとちょっと下を向いて……、キスしたら、そしたら……。

そ、そしたら……。そしたら……?

え、えっと、そっから先、は……?

剣峰桐

え? あ、う……。

園生月代

どうしたの? 桐。

剣峰桐

え、えっと……、キス、したら……、そしたら……。

お、押し倒す? このまま布団に? それで?それから? どうしたらいいの?

服、脱がせばいいのかな? 私が脱ぐの? 脱がせるの? え? それから? 裸になるよね、それから?

剣峰桐

そ、そしたら……。

想像がつかない、考えがまとまらない。あーもー、どうしていいかわかんない!

剣峰桐

ど、どうすれば、いいの……?

園生月代

……っ、ふふ……!

剣峰桐

ああああああ、ごめん、月代ちゃん、い、今、考えるから。待って、もうちょっと待って! え、えと、キスして、それから、服? ちがう、押し倒して……?

園生月代

……わかんないよね。

剣峰桐

だ、だいじょうぶ、大丈夫だから!

せっかくの大チャンスなのに! 月代ちゃんもオッケーしてくれたのに! このままパニクってたら、月代ちゃんが逃げちゃう!

園生月代

落ち着いて、桐。

う、うん、落ち着け、私。全然、落ち着けない私の耳に、月代ちゃんの次の言葉が入ってきた。

園生月代

今日は、私が教えてあげるから。

剣峰桐

ふぁ、あ、月代ちゃん……。

園生月代

痛かったりしたら、すぐに言ってね……?

剣峰桐

う、うん……。

こ、こんなの、全然想像してなかった……。

月代ちゃんとキスはした。いっぱいした。三回目から舌が入ってきて、すっごいびっくりした。

その後、月代ちゃんが私のTシャツを脱がせて、ジャージも脱がせてくれて、私も月代ちゃんの服、脱がせてあげて。

そう、そこまではよかった。でもって、二人とも裸になって敷き布団に倒れ込んで。ここまでは、なんとか想像がついてた流れだったけど。

私が月代ちゃんに押し倒されたのは、まったく予想してなかった。

園生月代

あのね……。

園生月代

無理に、いろいろしようとか考えなくていいからね。

そう言った月代ちゃんが、私に覆い被さってきたんだもの。え? なにこれ。私が攻められる方なの!?

剣峰桐

あ、あの、月代ちゃん……。

園生月代

なぁに?

剣峰桐

その、月代ちゃんが、するの……?

園生月代

え……? あ、う、うん……。その……、桐、まだこういうこと、わかんないと思うから……。

わかんないけどー! でも、ちっちゃくてかわいい月代ちゃんに、でっかい私が責められるの? 逆じゃない? 倒錯してない?

そんなの、考えてなかったー!

と、心の中でわめいても、わからないものは仕方なくて。

私は、月代ちゃんに身を預けるしかなくて。

園生月代

ちゅ……、ん、んん……。

剣峰桐

ん、んんっ、ふぁ、あっ……!

今もこうして、おっぱいにキスされてる。もう、月代ちゃんの唇がさわってるとこから、ゾワゾワしたものが駆け上がってきてて、声、抑えられない。

園生月代

ん、ちゅ……。桐……、気持ち悪く、ないよね?

剣峰桐

う、うん……。ひゃぅ! あ、やっ、やっ……!

あああああ、乳首、キスされてる。さわられてる! あ、頭ん中、かきまわされる!

剣峰桐

あっ、あぅ、ふぁぁっ!

園生月代

ん、ふぁ……。ちょっと……、強かった……?

剣峰桐

う、うん……。す、すごい……。い、息、詰まりそうだった……。

園生月代

ごめんね、もうちょっと優しくするね?

剣峰桐

あ、あぅ……。

な、なんでこんなことになってるの? 私、すっかり月代ちゃんに翻弄されちゃってる。

さわられたり、キスされたりするたびに、ゾクゾクして、ビリビリして。気持ちよくされちゃってる。

剣峰桐

ね、ねぇ、月代ちゃん……。

園生月代

ん……、なぁに?

剣峰桐

月代ちゃんってさぁ、その……、経験済みなの?

園生月代

え? なにが?

剣峰桐

えっと、その、セックス。

園生月代

え、えええええ!?

あ、真っ赤になった。今日初めて、月代ちゃんの真っ赤な顔、見れた。

園生月代

な、なんでそんなこと聞くの!?

剣峰桐

だ、だって……、すっごく慣れてるみたいなんだもん。さわり方とか、キスの仕方とか、それっぽいし。

園生月代

な、な、ないです! ありません!

剣峰桐

……じゃ、処女?

園生月代

……そ、そうよ……。悪い?

剣峰桐

ううん、悪くない。

なんか、すごいほっとする。独占欲なのかな、これって。うわ、独占欲ってこんなに幸せなもの!?

剣峰桐

でも、すごい気持ちいいよ。なんでこんなにうまいの?

園生月代

う、うまいかどうかなんて、わかんないわよ、自分じゃ……。

剣峰桐

さわり方とか、キスの仕方とか、ちゃんと知ってるみたいだし。

園生月代

そ、それは……。その、桐よりも大人なんだもん。い、いろいろ知ってることが多いの……。

剣峰桐

AVとか、見たことあるの?

園生月代

お、女の友達と……、一緒に見たこと、ある……。

剣峰桐

無修正だった?

園生月代

こ、こらぁ! なんてこと聞くのよ!

剣峰桐

一人Hしたこと、ある?

園生月代

お、教えない……。

あ、あるんだ……。お、大人なんだ、やっぱり。知ってることが、ちがいすぎる……。

園生月代

あ、あのね、桐。

剣峰桐

う、うん。

園生月代

別に、無理してこういうこと、憶えなくていいんだからね?

剣峰桐

う……。

でも、それじゃ。私はいつまでたっても、月代ちゃんに追いつけないかもしれないじゃない? 月代ちゃんに気持ちよくなってもらえないじゃない?

園生月代

ゆっくりで、いいんだよ?

剣峰桐

う、うん……。

そう言って、私の髪を指で梳いてくれる。そんな仕草も、いつもの月代ちゃんだと思えないくらい色っぽくて、でも、自然で。

そっと髪の中、指が通っていっただけなのに、また、私はふわふわした気分になって。

ぼんやりした知識しかない私とちがって、月代ちゃんは確かに、知ってることがあるんだなって、思って。

悔しい? ううん、すごい、うらやましい。

園生月代

桐……。ん、ちゅ……。

剣峰桐

んっ、つ、月代ちゃぁん……!

首筋に、キスされた。強く吸われてるわけじゃないのに、そこがジンジンする。

剣峰桐

あっ、んっ、ひぁぁ……!

また指で、おっぱいさわられてる。さっきより、ちょっと強いかなってくらいに。

園生月代

ん……、桐……、ん、ちゅ……、んん……。

剣峰桐

あぅ、あ、あぁっ……! ん、ひぅ……、ふぅ、あ、はぁ……。

体の中、じんじんと熱くなってく。月代ちゃんにさわられるたび、どんどん。

息苦しくなって身をよじっても、月代ちゃんの手が、離れてくれない。離れてほしくない、けど。

剣峰桐

あぅぅ……、つ、月代ちゃぁん……。

頭と体、熱くなって、息苦しいよ。

園生月代

桐……。

剣峰桐

あぅ、つ、月代ちゃぁん……。

園生月代

……今日は、ちょっとさわるだけに、しとこうね?

剣峰桐

え? あぅ、な、なにが……?

園生月代

ここ……。

剣峰桐

ひゃぅ……!

あ、あ、脚の間! 脚の間に! つ、月代ちゃんのゆ、ゆ、指が!

剣峰桐

つ、月代ちゃん、そ、そこ……。そこ、は……!

園生月代

うん……、ちょっとさわるだけ、ね……?

剣峰桐

あ、はぅ、あ、はっ……、ひぅ……、ふ、ふぁ……。

や、やだ。やじゃないけど、やだ! そ、そんなとこ。今、きっと……。

剣峰桐

つ、月代ちゃん……! だ、だめ、今、私、そこ……! す、すごいことに……!

園生月代

だいじょうぶだよ……、桐。ちょっと熱くなって、少し、濡れてるだけ。

剣峰桐

で、でも、でもぉ……。

や、やっぱ濡れてる!? そ、そんなの、月代ちゃんにバレたくない。

園生月代

気にしなくていいのよ……。桐、苦しいでしょ……?

剣峰桐

う、うん……。で、でも……。あっ、んんっ……!

園生月代

だから、ね……。ちょっとさわってあげる。そしたら、楽になれるから……、ね……?

剣峰桐

う、うん……。んんっ!

でも、それって、それって……。楽になるって、ことは……。

ああ、考えがまとまらない。月代ちゃんの指が、私のあそこ、さわってる。入ってこないけど、外側、いっぱい!

園生月代

ん、ちゅ……。桐……、かわいい、桐……。

剣峰桐

や、やぁ……、あ、はぅぅ……!

それだけじゃない。また、キスされてる。おっぱいもさわられてる。背中とか、お腹とか。そして、言葉が耳から頭、かき回して。

月代ちゃんで、いっぱいになっちゃってる。溺れちゃう、もがいてももがいても、ダメ……。

園生月代

桐……。

剣峰桐

つ、月代ちゃん……。あ……、ふぅ……、や……、はぁ……。

園生月代

がまん、しなくていいよ……。ね……?

剣峰桐

う、うん……! が、がまん、なんて……! で、でき、ない……!

剣峰桐

ひぅ……、……ぁ……、あ……、あぁ……! ふぁぁぁ…………。

目を、つぶっているのに。

だから、真っ暗になるはず、なのに。

まぶたの裏、まっしろ。ううん、まっしろなのは、頭の中。体の中の熱くてじんじんしてたものが、ゆっくりと体中に広がっていく。

溺れそうになってもがいていた気分が嘘みたい。体がふわふわ浮いているみたい。

連想したのは、熱気球。熱い風船に乗っかった体が、宙に浮き上がって、そして。

温かいお湯の中に、ゆっくりとひたるみたいに。体が、とけちゃったみたいに。

剣峰桐

……ぁ……、はぁ……、ふぁぁ……。

自分の口からゆっくりと出ていく息の熱さが、わかる。その口元に。

園生月代

桐……。

剣峰桐

ぁ……。

月代ちゃんの唇、重なってきた。

園生月代

ん……。

剣峰桐

ん、んん……。

ほんとに、そのキスが、気持ちよかった。

園生月代

……落ち着いた?

剣峰桐

う、うん……。

ようやく、まわりの様子がわかるようになった。月代ちゃんは、掛け布団を肩から羽織って、体を起こして、私を見てる。

すごい、気持ちよかった。こんなの、初めて。すごい、今の、なにって感じ……。なんであんな感じになれたのか、さっぱりわからない……。

……私、月代ちゃんにすごいことされちゃったんだってことだけ、わかるけど……。

剣峰桐

月代ちゃん……。

園生月代

なぁに、桐……。

でも、今のって……。

剣峰桐

私だけ、気持ちよくなっちゃったんだよね……?

園生月代

え? あ、あぁ……。

剣峰桐

月代ちゃん、気持ちよくなってない、よね……?

園生月代

ん……、まぁ、えっと……。

剣峰桐

私、自分だけ……。

園生月代

気にしなくていいの。

そう言って、月代ちゃん、私の頭、なでてくれた。あやしてるつもり、なのかなぁ……。

園生月代

気持ちよかったわよ、ちゃんと。

剣峰桐

え、でも……。

私みたいに、なってないよね?

園生月代

だって、桐のこと、いっぱいさわれたんだもん。いっぱいキスして、いっぱい声、聞けたから。

剣峰桐

う……。や、やだ、それ……、すごい、恥ずかしいよ……。

園生月代

だから、ちゃんと気持ちよかったの。

剣峰桐

そ、そう……。

園生月代

無理しなくていいって言ったでしょ。これからいろいろ覚えていけばいいのよ。

剣峰桐

はぁい……。

ちょっと悔しいけど、素直にうなずくしかない。だって、私、なにも知らなかったんだし。なにも、できなかったんだし。

月代ちゃんの方が、確かに私より、いろんなこと、知っていたんだし。

剣峰桐

月代ちゃん……。

園生月代

ん? なぁに?

剣峰桐

やっぱり、月代ちゃんって、私よりずっと、大人だったんだねぇ……。

園生月代

え? た、確かにそうだけど……。そんな、うんと年上みたいに言わないでよ……。そんなには年、離れてないんだから……。

素直にそう言ったんだけど。でも、言い方が悪かったかな。ショック受けて月代ちゃん、ちょっと涙目だ。

かわいいなぁ。

ちっちゃくってかわいい、大好きな人。

いつか、月代ちゃんみたいな大人に、なれるかな、私……。

剣峰桐

ふぁ……。

あ、なんか、急に眠くなってきた……。

園生月代

あ、桐? ちゃんと着替えてから寝ましょ? 裸のまま寝ちゃダメよ?

剣峰桐

ん、うん……。

園生月代

こんな恰好、誰かに見つかったら大変なことになるでしょ?

剣峰桐

うん……、そうだね、月代ちゃん……。

服、着なきゃ……。腕、ちょっとまだ、重い感じ。それでも、脱いだTシャツとジャージを探す。

剣峰桐

月代ちゃん、抱っこして、寝ていい?

園生月代

そ、それは……、ダメ。

剣峰桐

じゃ、手をつないで、寝よ?

園生月代

……うん。

あ、ダメだ……。ほんとにもうすぐ、眠っちゃいそう。

園生月代

おやすみ、桐。

うん、おやすみ、月代ちゃん……。

大好き、愛してる。

明日は一緒に、学園祭、見て回ろうね……。

剣峰桐

ん……。

ゆっくりと、意識が戻ってくる感じ。すっごい、深いとこから上がってくる感じ。熟睡してたのかなって。

でも、上がってくる途中はなんだか、すごいフワフワで。いい夢見てたって感じ。

どんな夢だっけ。そう、月代ちゃん。月代ちゃんと一緒に、あんなことしてこんなことして、というか、されまくって、そのまま寝ちゃったって夢。

剣峰桐

ふぁ……。

あくびと一緒に、目を開ける。

園生月代

………………。

ああ、目の前で月代ちゃん、寝てる。よかった……。やっぱり、昨日のアレは……。

剣峰桐

(夢じゃなかったんだ!)

そうだよ、夢だなんてとんでもない! 私、昨日の夜、月代ちゃんとあんなこと、こんなこと、したんだった!

正確には、されたんだった! キスして、キスされて、押し倒されて、さわられて……。

剣峰桐

(うわ、うわ、うわわわわ!)

目の前の月代ちゃんの寝顔を見て、それが夢じゃなかったことを思い出す。

慌てて、起き上がる。時間、時間! えっと、まだ、大丈夫。まだ、7時前、だけど。

でも、早い人はもう、学校に来てる時間だよね。寝坊したってわけじゃないけど、そろそろ起きなきゃ!

服は一応着てるけど、こんな手を握ったまま、同じ布団で寝てるなんてとこ、見られたら!

剣峰桐

つ、月代ちゃん……。

声をかけて月代ちゃんを起こさなきゃって思ったんだけど……。

思ったよりはっきりと声は出なくて。肩でも揺すろうかと思ったけど……。

剣峰桐

う……。

さわろうとした瞬間、昨日のこと、思い出しちゃって。今は服、ちゃんと着てるのに、裸の月代ちゃん、思い出してしまう!

ど、どうしよう。さ、さわっていいのかな?なんて言って起こしたらいいの? ど、どんな顔したらいいの?

あああああ、さわれない。声も出ない。顔が決まらない!

ど、どうしたら……!

園生月代

ん……。

あ! 月代ちゃん!?

園生月代

んん……。ふぁ……。あ、桐……。

あ、ああ……、月代ちゃん、目が覚めちゃった……。なんだか、ちょっと惜しい気分。もうちょっと寝顔を見ていたかったとか、起こしてあげたかったとか。

そんな後悔がちょっと頭をよぎったんだけど。

園生月代

おはよ、桐……。

目をこする仕草もかわいい月代ちゃん。ああ、そのかわいさに私の頭の中の後悔も吹っ飛ぶ感じ。

剣峰桐

お、おはよ、月代ちゃん……。

園生月代

うん、おはよ……。

ゆっくりと体を起こした月代ちゃんが、そのまま、私の顔に、顔を近づけてきて……。

剣峰桐

!?

軽く、唇を重ねてきた……。な、なん……、だと……。

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園生月代

今日もがんばろうね。

おはようの、キス、だと……。

剣峰桐

う、うん……。

そ、そんな必殺技を隠し持っていたのか、この人は!

ね、眠気なんか一気に吹き飛んだ! テンション、上がりすぎて吹っ飛んだ! 頭はオーバーヒートして、目、見開いてる、私。

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園生月代

さ、朝ご飯、なにか買いに行こう。

剣峰桐

は、はい……。

ああもう、昨日の夜といい、今といい。

本当に私、月代ちゃんには全然、かなわない。そんなこと、思い知らされた気分。

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園生月代

今日は、暇ができたら、学園祭、一緒に見て回ろうね?

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剣峰桐

う、うん!

でも、いっぱい元気も出た!

今日も一日、一緒にがんばろうね、月代ちゃん。仕事して、学園祭、見て回って。

今日もいっぱい、がんばろうね。私もがんばる。月代ちゃんのこと、いっぱい手伝う。

それは、これからも、ずっと。私、ちょっとずつだけど、がんばって大人になる。

今はまだ、ちょっと子供だけどさ、でも、そのうち、月代ちゃんにお似合いでふさわしい大人になる。

それまでは、私の先生でいてね。もちろん、ずっと、恋人でもいてね。

ね、月代ちゃん!

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okujou_no_yurirei-san/2431.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)