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okujou_no_yurirei-san:2412

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「え? ほんと? そんなとこにアイテムあったの?」

「ほんと、マジ。あれ、絶対見つからないようにしてあるよねー」

「それ、どこ情報?」

「ウィキ」

「おのれ裏切り者~。一周目はウィキ見ないって言ってたでしょぉ?」

そんな話し声が聞こえてくる。

まだ、2階の大座敷でおしゃべりしてる子がいるのかな? まぁ、まだ下校時間まであるから、悪いわけじゃないんだけど……。

でも、夏休み前テストも週明けにある。先生としては、ちゃんと勉強して臨んでほしい。ここは注意しておかないと。

園生月代

いつまでも残ってるのは誰?

大座敷への廊下を渡り、のぞき込む。そこには……。

剣峰桐

あ、月代ちゃん。

阿野藤

月代ちゃんだ~。

確か、もう6時を過ぎているはず。それでも、夏のお昼は長くて、この時間になってようやく、陽射しは夕日になって、大座敷に射し込んでいた。

秋よりも色が強いわけじゃないけど、それでも赤い夕日が、大座敷に入ってきていて……、そこに座っていた二人を、剣峰さんを同じ色に染め上げていた。

園生月代

あ……。

また、だ……。

また、なんだろう、どうしてだろう。剣峰さんの姿を、見た、瞬間……。

すごい、ドキッとした……。一瞬、見とれちゃうくらい、きれいに見えた……。

園生月代

………………。

阿野藤

どうしたの? 月代ちゃん。

剣峰桐

月代ちゃん? なに、ぼぉっとしてんの?

園生月代

え? あ、う、うん……。

ほんとに、ぼぉっとしてた。剣峰さんから目が離せなくなってることに、声をかけられるまで気が付かなかった。

どうして、だろう……。

園生月代

ふ、二人とも、時間、わかってる? もう6時過ぎてるのよ?

阿野藤

ええ!? あ、ほんとだぁ。

剣峰桐

うわ、ずいぶん長いこと、話してたんだ。

阿野藤

盛り上がってたからねぇ。

園生月代

二人とも、部活はないんでしょう? テスト前なんだから、部活のない学生は、なるべく早く下校するようにって言われているはずよ。

剣峰桐

しまった。部室で話してればよかった。

園生月代

ダメ。今日は数理部は部活ありません。

阿野藤

顧問の先生がそう言ってるんだから、ダメだよねぇ~。

剣峰桐

ちぇー。でも、そろそろ帰ろっか。

阿野藤

うん。さすがにちょっとおしゃべりしすぎたね~。

園生月代

帰ってちょっとでも勉強しなさい。一日だけでも、ちゃんとしたテストなんだから。

剣峰桐

は~い。でも、なんで夏休みの直前にテスト、わざわざやるのかなぁ。

阿野藤

楽しい夏休みの直前なのに、テンション下がっちゃうよねぇ。点数悪かったら補習もあるしねぇ。

園生月代

夏休みを前に、気を抜かないようにするためよ。採点する方だって大変なんだからね?

剣峰桐

先生もそんなにがんばんなくていいんだよ?月代ちゃん。

阿野藤

そうそう。月代ちゃん。

園生月代

もう、二人とも! ちゃんと先生って呼びなさい!

剣峰桐

はーい、月代ちゃん先生。

阿野藤

わかりましたぁ、月代ちゃん先生。

園生月代

もう……。

なめられてるとは思わないけど、ちょっと親しまれすぎちゃってるかなぁ。みんなのこういう態度、嫌いじゃないんだけど、もうちょっと、こう……。

もう少し、背も高くて大人っぽく育ってくれたら、こういうこともなかったのかなぁ。

園生月代

はいはい。二人とも、今日は帰りなさい。テスト勉強、がんばるのよ。

剣峰桐

はーい。じゃあね、月代ちゃん。

阿野藤

先生、さよなら~。

園生月代

はい。気をつけて帰るのよ。……二人とも。

はーいって返事とともに、二人がカバンを手にとって、大座敷から出て行く。

剣峰さんが、私の隣を通っていく瞬間、また、前みたいにぎゅっと抱きついてくるかなって思ったけど……。

剣峰桐

……またね、月代ちゃん。

そう言っただけ。それだけで、剣峰さんは出て行ってしまった。

園生月代

………………。

二人がいなくなった大座敷。私だけが残っていて。まだ、夕日が畳を赤く染め上げている。少しずつ、暗くなっていくけど。

園生月代

はぁ……。

ぺたんと私は、その場に座り込んだ。大座敷に置かれている机に突っ伏したら、ため息が出た。

園生月代

ちょっと、さびしいなんて思っちゃった……。

園生月代

勝手だな、私……。

剣峰さんにあんなこと、言ったのは私なのに。それなのに。

園生月代

……また……。

見とれてた、そう、表現するのがふさわしい。目を奪われてた。心を奪われてた?

こないだと、同じ、今日も。ここでこうやって座って、話していた剣峰さんに、私……。

園生月代

見とれてた、よね……。

夕焼けに染まる部屋の中にいた、剣峰さんが、すごい、きれいに見えた。教え子なのに、学生なのに、そんなふうに見られなかった。

剣峰さんが、とてもきれいで素敵な女の子に、見えた……。

その姿を見た時に覚えたもの、表現するなら、もう、胸の高鳴りとしか。なんで……?

園生月代

はぁ……。

また、ため息をつく。さっきまで彼女がいた場所、机に突っ伏して。

そして、思い出す。さっきみたいな気持ちを覚えた、あの時のことを。

それは、まだ、私が学生だったころ。今の剣峰さんとちょうど同じころ。

学校でいちばん、仲のよかった友達から、私は告白された。

園生月代

あれは、びっくりしちゃったなぁ……。

ほんとに寝耳に水で。彼女が自分を好きだったなんてこと、気付かなかったし、女の子同士で好きになるなんてことも、考えたことなくって。

私のことが好きだと伝えてくれた友達に、付き合ってくれるって聞かれて。

園生月代

なにも考えられなかったなぁ……。

その場で返事なんてできるわけなくって。

なんとか、返事を待ってもらうことにして。家に帰る間中、そして帰ってからもずっと、なんて返事をすればいいのかを考えた。

考えて、考えて……、全然、わからなくて……。

園生月代

明日、返事をするって言ったのに、寝込んじゃったんだよね……。

そう、熱を出してしまった。でも、熱に浮かされながらも、考えて。

私は、彼女のこと、どう思っていたんだろうって。もちろん、恋人にしたいとかそんなこと、考えてなかった。

いちばん、仲良しだったのは確か。でも、それで私は、彼女の恋人になれるんだろうかって。

そういうふうに、好きって思えるのかって。

熱が引かなかった三日三晩、考えた。ずっとそんなこと考えてたから、熱が下がらなかったのかもしれない。

そして、やっと、熱が引いて、学校に行って。やっと、自分の中で答えも決めて。

彼女のことを、好きなのかもしれない。好きなんだと思う。だから、OKしようと思って、いたんだけど。

園生月代

勘違い、か……。

そう。私が返事をする前に、彼女はそう言ってきた。「こないだのあれ、忘れて? なんか、勘違いみたいだったから」って。

園生月代

あれは……、ショックだったなぁ……。

彼女、笑ってた。もちろん、冗談で私に告白したわけじゃないと思う。でも、彼女にとっては、その勘違いって笑ってすませることだったんだ。

それを、私は三日、寝込むくらい、まじめに考えてて……。

彼女の言葉を聞いた瞬間、私はまた、熱が出てきたような目眩に襲われた。実際、また熱を出して、学校を休むことになったし。

そして……。

園生月代

それ以来、わからなくなっちゃったんだ……。

園生月代

誰かを好きになるって、こと……。

彼女を責める気は少しもない。今でもいい友達でいるし。大学を出て、すぐに結婚しちゃったけど、時々、連絡は取るし。

ただ……。

彼女とのことが、私に、恋愛ってことをわからなくさせたのは、きっと、確か。

園生月代

はぁ……。

恋愛として、誰かを好きになるって、どういうことなんだろう……。どういうふうに好きになったら、それは恋愛なんだろう……。

さっき……、剣峰さんの姿を見た時に感じた、気持ち……。

あれって、いったい、なんだろう……。もしかしたら、あれが……。

誰かを好きになるってこと、なのかな……。

園生月代

だとしても……、ダメだよ、そんなの……。

園生月代

剣峰さんは学生で、私は先生なんだし……。

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okujou_no_yurirei-san/2412.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)