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okujou_no_yurirei-san:2411

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園生月代

よいしょっと。

口に出してしまってから、なにか、おばさんくさかったかなーって思った。

でも仕方ないじゃない、持っていくものが多いんだもの。それに、まわりの先生もみんな、椅子から立ち上がるときに言うから、移っちゃったかな。

こういうのって伝染しちゃうんだよね。うちの学校、年配の方が多いから。

おかげでここに来てからずっと、新米扱いされている。もう三年目なのに。かわいがってもらってるって受け取ったらいいのかなぁ。

私のあとから入ってきた先生も、みんな私より年上だから、仕方ないのかもしれないけど。

手に持ったプリントが、重いのもあるけど、持ちにくい。午後に授業のある二クラス分、同時に持っていくのは失敗だったかも。

でも、もう職員室に戻っている時間、なさそうだし。ああ、3階まで行くの、ちょっと大変……。

「あ、ちょ、ちょっと待って」

あ、この声……。

ちょうど、階段を上ろうとした時だった。聞き覚えのある、ううん、いつも聞いている声。たぶん、学校でいちばん。

園生月代

あ……。

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やっぱり。階段の下から見上げれば、そこには剣峰さんが。

階段の踊り場の窓から降り注ぐ陽射しを浴びて。もう、夏だから、陽光は強いはずなのに、踊り場の窓がそれをやわらげているのか、光はキラキラと剣峰さんに。

その姿に、私は思わず声をかけることもできず、ただ、剣峰さんを見つめていた。

遠見結奈

じゃ、私、行くね。あとはよろしく。

剣峰桐

う、うん……。

あ……、隣にいたのは、たぶん、遠見さん?行っちゃったけど。剣峰さんばっかりを見ていて気付かなかった。……どうしたんだろう、私。

まだ、言葉が出ない。

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園生月代

………………。

剣峰桐

あ、えっと、月代ちゃん?

園生月代

……あ、うん。

いけない。ほんとに、ぼーっとしてた。踊り場に立つ剣峰さんは、まるでポスターの中のモデルさんみたいに輝いて見えて。

背が高くて、体はスリムで、顔つきも大人びていて。そんな剣峰さんが、光の射す踊り場に立っている姿は、とても……。

きれいで、かっこよくて。

どうしても、見とれてしまう。

剣峰桐

そ、そのプリント、持つの手伝おっか?

園生月代

え……? あ、ううん……、そんなに重くないから……。

剣峰桐

でも、持ちにくそうだし。

園生月代

……う、うん……。それじゃ、お願いできる?

剣峰桐

うん。

うなずいて、私のところまで階段を下りてくる剣峰さん。その姿も、ファッションショーみたいな感じ。窓からの光がライトみたいで。

剣峰桐

よっと。

園生月代

………………。

剣峰桐

……月代ちゃん? 行かないの? 授業、始まっちゃうよ?

園生月代

え? あ、う、うん。

ど、どうしたんだろう、私。ほんとにぼーっとしてる。

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慌てて階段を上って、剣峰さんの隣に並ぶ。それだけなのに、ちょっと息があがって。少し、胸がドキドキして。

剣峰桐

これ、D組の?

園生月代

え、ええ。だから、C組の前まででいいわよ。

剣峰桐

うん、わかった。

園生月代

……試験勉強はちゃんとしてる?

階段を上り終えて、廊下を歩きながら。光のキラキラはもう消えたけど、まだ、ドキドキが続いている。こんな普通の会話をするのもちょっと息苦しいくらい。

剣峰桐

うん。二年になって、古文と社会科がなくなって、すっごく楽になった。

園生月代

もう、古文の先生の前でそんな悲しいこと言わないでほしいな。

剣峰桐

だって、文系の科目ってほんとにわかんないんだもん。

園生月代

剣峰さんは理系が得意だから、そう言うの、わかるけど……。

剣峰桐

月代ちゃんが数学の先生だったらよかったのに。

園生月代

無理言わないで。私、数学とかほんとに苦手だったのよね。

剣峰桐

私が教えてあげようか、月代ちゃん。

園生月代

いいです。もう、学生に勉強教わるなんて……。

剣峰桐

……だよね。月代ちゃん、先生だもんね。

園生月代

………………。

すっと。剣峰さんが少しだけ、見えない距離を置いたような感じ。前までだったら、ここで抱きついてきてもおかしくなかったのに。

あの日から、剣峰さんは、私に抱きついてきたりしなくなった。先生とはなかなか呼んでくれないけど。

剣峰さん、自分の気持ちを抑えているんだ。私に、好きと言ってくれた気持ちを。

剣峰桐

あ。もう、着いちゃった。

園生月代

ここまででいいわよ。ありがとう、助かったわ。

剣峰桐

どういたしまして。はい、これ。あとちょっとだから転ばないでね?

園生月代

はいはい。そういう心配を目上の人に口に出してしちゃダメよ?

剣峰桐

はーい。じゃぁね、月代ちゃん。また放課後、部活でね。

園生月代

はい。午後の授業、がんばってね。

ちゃんと、私との距離を計ってくれる。私への態度を、抑えてくれる。

女の私に、告白までしたのに。その気持ちを抑えて、私に接してくれる。

私の言った通りに。その気持ちは、思春期によくある勘違いだって、伝えた私の言葉の通りに。

園生月代

はぁ……。

教室の中に入っていった剣峰さんを見送ってから、私は息をついた。ずっと続いていた呼吸の苦しさをやわらげたくて。

なんでだろう。なんで、あんなに剣峰さんがきれいに見えたんだろう。見とれるほどに。

私を好きと言ってくれた剣峰さん。私も、剣峰さんのことは、好き。恋愛感情とは言えないけれど。

教師と学生じゃなかったら、もっと仲良くなれたのかなって思えるくらい。

園生月代

(こんなの、勝手なことかしら……)

私が言ったのに。勘違いだって。時間がたてばそう気付くものだって。

剣峰さんは、その私の言葉の通り、自分の気持ちを抑えてくれている。そう言った私を、気遣ってくれてるのかな。困らせたらダメだって。

それなのに、私、今、剣峰さんに見とれてた。確かに、ドキドキしてた。剣峰さんが学生じゃなかったらなんて、思ってしまった。

ほんとに、勝手だな……。

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okujou_no_yurirei-san/2411.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)