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okujou_no_yurirei-san:2401

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「桐ってさぁ、ほんとかわいーもの、好きだよね?」

え、なに、いきなり。

なんで、そんな超当たり前のこと聞いてくんの?

「目がないって感じだよねー」

わざわざ確認すること?

「ちょっとヤバいよねー、桐のは」

そんなことないよ? だって、かわいいは正義なんだよ? 絶対の正義なんだよ? 普遍の真理なんだよ?

「特に、そのーちゃんにヤバいよねー」

剣峰桐

うん! あれ、マジでヤバいよね、月代ちゃん!

たまらず私は会話に入り込んだ。だって、月代ちゃんのことだよ!?

「うわ、マジ、食いついてきた」

「野獣が目覚めた!」

だってスルーできるわけないじゃん!

剣峰桐

ガルルルルル! いや、マジでかわいいじゃん、月代ちゃん。あんなミニマムなのにプリティでキュートなのに、せんせーなんだよ!?

剣峰桐

あれにときめかないってこと、あり得る!? あんなにお子様っぽいのに、しっかりせんせーしてるんだよ!? 「せんせーの言うこと、聞きなさい」とか言っちゃうんだよ!?

「わかったわかったってば!」

「ヤバイ、ヤバイって桐!」

剣峰桐

ヤバくない! 私は正常だ!

「はいはい、みんなそう言うよー」

「もう、これって愛としか言いようがないよねー」

剣峰桐

だって、愛さずにいられる!? あんなにかわいいんだよ!?

「はいはい、いいよもう、そのーちゃん嫁にもらっちゃいなよ」

剣峰桐

え!? 嫁!?

「そうそう、せんせー、かわいーけど、桐からとろうなんて思わないからさぁ」

剣峰桐

う? い?

「そのーちゃん、先生だから、きっと桐くらい養ってくれるよ」

剣峰桐

え? あ、おう……。

「うわ、嫁にもらっておいて養ってもらうの? それってさぁ……」

剣峰桐

い……、あぅ……。

「ヒモじゃんねぇー!」

剣峰桐

おぅ……。

「やったじゃん、桐、旦那冥利に尽きるってもんじゃん!」

「もー、あとはコクってさらっちゃうだけだねー!」

「あはははは、いっちゃえいっちゃえ~!」

剣峰桐

う、うぅ……、えぅ……。

「あれ? どうしたの、桐。どこ行くの?」

剣峰桐

あ、う……、うん……、ちょっと、トイレ……。

「あ、そう。いってらっしゃ~い」

剣峰桐

ど、どういうこと……?

トイレの個室に入り、蓋を下げたままの便座の上に座り込んで、私は頭を抱えた。

私、剣峰桐(つるぎみね・きり)。小さいころから、かわいいものが大好きだった。

お人形や、ぬいぐるみ、隣の家の三つ下の女の子とか、年下の従姉妹とか。とにかくかわいくてしょうがなくて、親からストップがかかるくらい、徹底的にかわいがった。

この年になるくらいまで大きくなっても、あまりそれは変わってない。

私が、平均の女子よりちょっと背が高いのもあるかもしれない。自分より小さい子がかわいくて仕方ない。

なんていうか、愛でたい。撫でくりまわしたい。きれいな服、かわいい服を着せてあげたい、おめかししてあげたい。

そして、それを抱きしめたい。そういう衝動をいつも抱えていた。

うん、わかってる。ちょっと行き過ぎかもしれないとは、自分でも思ってる。

でも、かわいいんだよ、仕方ないじゃん!

そんな私が、城女に、この学校に入学して出会ったのが、園生月代(そのう・つくよ)先生、月代ちゃんだった。

一目見て、心を奪われた。うっわーすっごいかわいい!

私の肩よりちょっと上くらいしかないのに、先生! 教材とか持つと、アンバランスに荷物が大きくて、それを一生懸命運んでる姿! プリティ!

黒板の上の方に手が届かなくて、板書、ぽっかりとスペースが空くんだよ! キュート!

見た瞬間に、私のこれまでの人生での、『かわいいナンバーワン』に輝いたよ! やったね、月代ちゃん!

一年の時は、古文を教えてくれた。残念ながら、私の頭は理系の方、向いていて、あんまりいい点数とれなかったけど、質問に行くとすごい熱心に教えてくれた。

数理部に入ったのだって、そこの顧問が月代ちゃんだったから。理系の頭に生まれてよかった。神様、ありがとう!

しかも、部員は私一人。放課後の部活動の時間はいつも独り占め! もし、どこかの神様が、「私からのプレゼントだよ」って言ったら、入信する! 絶対に!

子供みたいに元気いっぱい……、そうに見えて、ちょっとムリをすると、熱出してフラフラになるの! もう、どこまで子供なの! でも大人!

あれで、当時24才! 現在25才! 誰よ、こんな素晴らしいもの、この世に生み出したのは! お義母さん、あなたですか!

剣峰桐

お、お義母さん……。

「嫁にもらっちゃいなよ」 友達の言葉、思い出す。

剣峰桐

いや、いやいや。

ふざけたふりして抱きついた時とか、ぽにょってやわらかいの! なのに、おっぱいはそれなりにあって!

剣峰桐

お、おっぱい……。

剣峰桐

だ、だから、ちがうちがうちがう。

ちがうんだってば!

私は、脳内の月代ちゃんメモリーを再生する。

体育祭での月代ちゃんのジャージ姿、職員仮装レースでのブルマ姿。誰だ、あんなの月代ちゃんに着せたのは! 私を殺す気か!

始業式、終業式での、スーツ姿、そして、卒業式での、レアものの袴姿。

いつものブラウスとスカート姿は言うに及ばず、あの、ウサギのアップリケが入ったトート、クマさんキャップのペン。

かわいい!

剣峰桐

そう、かわいいんだ! 月代ちゃんはかわいいんだ! 月代ちゃんはかわいいんだ! 月代ちゃんはすっごいかわいいんだ!

剣峰桐

はぁ、はぁ……。

お、落ち着け、私。わかったよね? もう、はっきりとわかってるよね? 月代ちゃんはかわいいんだよね?

私のストライクど真ん中でかわいいんだよね?それだけだよね?

剣峰桐

それだけ……、だよね……?

剣峰桐

だと、思ったんだけど……。

でも、この気持ちはなんなんだろう。

うん、月代ちゃんはかわいい、それは間違いない。

そして、私のかわいいは、本当に、かわいいもの、かわいい人への、純粋な、そう、きれいな感情のはずなのに。

剣峰桐

なのに、なんで……。

剣峰桐

私……、友達にあんなこと言われた時……。

剣峰桐

あんなに、うれしかったんだろう。胸、ときめいちゃったんだろう……。

嫁にもらっちゃえって言われて、うれしいと思うと同時に、心底、そうしたいと思った。

月代ちゃんといつまでも一緒に暮らせることって考えて、とんでもなく胸がときめいた。

わかってる、月代ちゃんだって妖精さんじゃないんだから、いつまでもあんなにかわいいままのはずがない。

30過ぎたら、小皺も出てくるし、お肌のハリもなくなってくる。お尻だってちょっと垂れてくるし、そのうち、お婆ちゃんになるのに。

剣峰桐

それでも、そんな月代ちゃんと一緒にいれたらどんなに幸せかって考えちゃった……。

剣峰桐

ねぇ、これってなに……?

自問自答。でも、答えはわかってる。明確に。

剣峰桐

私、かわいい月代ちゃんじゃなくて、月代ちゃん自体が好きだって、こと……?

どんなに深呼吸して考え直しても、その結論にしかたどり着かない。

剣峰桐

じゃあ、これって……。

剣峰桐

同性愛って、こと……?

剣峰桐

待って! 待って待って! もう一度、やり直し!

剣峰桐

A.剣峰桐は女である。B.月代ちゃんはかわいい女の先生である。C.剣峰桐はかわいいものが好きである。D.剣峰桐はかわいくなくなっても月代ちゃんが好きである……。

剣峰桐

ええと、DからCは成立しなくなって、そうすると、Bは月代ちゃん=女の先生になって、AとBは定理で、これをDに代入すると……。

剣峰桐

剣峰桐=女であって、月代ちゃん=女の先生が好きである。証明終わり……。

剣峰桐

……なんか、間違ってる……。でも、合ってる……。

剣峰桐

え、これって、まさか……。

剣峰桐

私、同性愛者だったんだ……。

どうしよう……。なんてこと……。私、私……。

かわいいものが好きなのは自分でもわかってる、認めてる。そして、かわいい女の子が特に好きなのも。

でも、でも、まさか。かわいい月代ちゃんのことが、こんなにも好きだなんて。いつものノリをはるかに超越して好きだなんて。

そのことを自分で証明できてしまうなんて。

剣峰桐

うわぁ……、私、これからどんな顔して、月代ちゃんに会えばいいのよ……。

はてしなくどんよりとした気持ちが、胸の中をうずまいてる。月代ちゃんより1センチ小さくて、1サイズ、カップが小さい胸に……。

剣峰桐

あああ、なんでこんな時にまで、月代ちゃんのおっぱいのこと考えてるのよ、私!

もっかい頭を抱える。その頭上から、午後の授業の予鈴が鳴り響く。

剣峰桐

教室、戻らなきゃ……。

よかった……、二年生になってから、理系のクラスに入って。古文の授業はないから、月代ちゃんと授業で会うことはない。

ふらふらとトイレから廊下に出た時。

園生月代

あ、剣峰さん。

剣峰桐

ひぃ!? 月代ちゃん!?

園生月代

もうすぐ授業よ。早く教室に戻らなきゃダメよ。

園生月代

あら……? どうしたの、剣峰さん、ちょっと顔色、悪くない?

剣峰桐

うわああああああああああああっ! はい、はい、はいいいいいっ!

園生月代

あっ、剣峰さん!? 廊下は走っちゃ……。

私は、月代ちゃんの顔を見ることもできず、自分の教室へ逃げ帰った。

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okujou_no_yurirei-san/2401.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)