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okujou_no_yurirei-san:2221

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一木羽美

ただいま~。

双野沙紗

お帰り。

一木羽美

ぅ……。

放送室に戻ってくるといきなり、沙紗の姿が目に入ってきて。とたんに、わたしの心臓の音が跳ね上がる。

ああもう、どうしてだろう。好きって言われてから、ずっと。

沙紗の姿を見るだけで。目があったり、ちょっと手や体がさわったりすると、そう。ドキっとする。ドキドキしてくる。

沙紗って、ほんとに美人だな。あの日からなおさら、そう思える。

背は高いし、スレンダーだし。顔もすごいきれい。黒くてまっすぐな髪も、すごい羨ましい。

沙紗は目つきの悪さを気にしてるみたいだけど、そんなことない。本気でにらまれるとちょっと怖いけど。

口は悪いけど、本気で「死ね」とか言ってるわけじゃない。あれって、口癖とか勢いだよね。ちゃんとわたしや音七には優しいところ見せてくれる。

わたしは、沙紗みたいになりたかったなって思う。背の高さや美人なとこ、なんでもはっきり言えるとこ、余計なことは言わないとことか。

やっぱり、沙紗から告白されて、わたしも好きかも、なんて答えちゃったからかな。

沙紗のこと、恋人なのかも、そうなんだって思うようになっちゃったからかな。

今まで、友達だと思ってたのに。今でも、そう思っているけど。それ以上に好きだって思っちゃったからかな。

今まで以上に、沙紗の好きなところが、はっきりと目に映る。そればっかり、気になってしまう。

双野沙紗

ん、どうした、羽美。

一木羽美

う、ううん、なんでもない。

慌てて、赤くなりそうになってた顔を、沙紗から見えないように、放送室の中を見回したりして。

一木羽美

……あれ?

気付いた。もう一人の、大切な友達の姿が見えないことに。

一木羽美

音七は?

双野沙紗

……あれ? いないな。

一木羽美

また……?

双野沙紗

さっきまではいたんだけど。あれ? いつ出ていったんだ?

わたしが、すぐ近くの職員室に、夏合宿参加の申請書をもらいに行ってたのなんて、ほんの数分なのに。

その間に、音七、どっかに行っちゃったの?

ここのところ、音七が黙って、わたしと沙紗を置いてどこかに行ってしまうことが多い。

ちょっと前から、そういうこともあるかなって思ってたけど、最近、特に。

最近……。沙紗がわたしに告白して、わたしがそれにOKっぽい返事をしちゃってから……?

一木羽美

ねぇ、沙紗。

双野沙紗

ん、なに?

一木羽美

わたしたち、最近、音七のこと少し、ほったらかしにしてないかな……?

双野沙紗

え? そんなことないと思うけど……。

沙紗はそうかもしれない。告白してくれる前も後も、そんなに変わってないかもしれない。

でも、わたしは……。

最近、沙紗のことが気になってる。気が付くと、沙紗のこと、見てばっかりいる。もうわかる、そんな自覚がある。

その分、音七から目が離れていたんじゃないかな。音七、そのことに気付いて、さびしい思いをしてるんじゃないかな……。

だから、こっそりいなくなったりしてるんじゃないかな……。

だって、音七、すごい頭がいいもん。いつも眠そうにしてるけど、ほんとはすごいまわりのこと、よく見てる。

音七って、本気を出せばきっと、もっと勉強もできるし、いろんなことに挑戦して、成功できると思う。本気っていうか、ちゃんと目を覚ましていれば。

だって、ミキサーとか機材の扱い、すごい上手だから。眠い眠いって言いながら、お昼の放送ではちゃんと仕事してくれるし。

眠いって言葉と態度で、すごい実力を隠している感じ。羨ましいくらい、なんでもできる子だから。

そんな音七だから、わたしと沙紗のこと、気付いていてもおかしくない。わたしの態度が変わってしまったことに。

一木羽美

どうしよう……。

双野沙紗

え、なにが?

そんな音七を、わたし、沙紗の告白にうれしくなって、放っておくなんて。大事な友達なのに。

一木羽美

ねぇ、沙紗! わたしたち、もっと音七のこと、大切にしなきゃ!

双野沙紗

え、ええ? あ、いや、音七は確かに大切っていうか……。

一木羽美

だよね! 大切な友達だよね!

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そう、友達は大切。とても大事なもの。

ちいさいころに一度だけ、わたしは家の都合で引っ越しをしたことがある。

仲のよかった子と離れるのはさびしかったけど、わたしはそれより、引っ越しすることに浮かれていて、あまり友達と別れるということを深く考えていなかった。

その後、一度だけ、元いた町に戻った時。わたしは、仲のよかった子が、すっかり別の友達を作っていて、わたしのこと、ほとんど忘れていたことにすごいショックを受けた。

泣き出して、すぐに今の家に帰るって言い出したくらい。

それ以来、わたしは絶対に友達は大切にしようって思ってる。一生ものの友達を作りたいって思ってた。

だから、中学で沙紗と音七に会った時、絶対にこの二人とは友達になれると思って、そういう運命を感じて、声をかけて。

そして、友達になった。この学校にも一緒に進学した。これからも、ずっと一緒にいたい。友達でいたい。

沙紗とは、その、恋人というか、付き合うことになっちゃったけど……、それでも、音七を一人にさせていいわけない。

だって、音七は友達なんだから! 大事な友達なんだから!

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一木羽美

沙紗と付き合うことになったって、音七をひとりぼっちにしちゃダメだよね! さびしくさせちゃダメだよね!

双野沙紗

え? あ、うん……。

一木羽美

だよね! うん、わたし、もっと音七のこと大事にする! 絶対にさびしがらせたりしないんだから! 沙紗も協力してよね!

双野沙紗

う、うん……。

一木羽美

とりあえず、音七と一緒にいよう! 音七、どこにいるのかな?

双野沙紗

さ、さぁ……?

一木羽美

よし、放送で呼び出そう! 沙紗、機材、動かしてくれる?

双野沙紗

え、放送!?

一木羽美

うん! 早く! わたし、アナウンス出すからさ!

もう、少しもじっとしていられない! わたしは、アナウンスブースに向かう。沙紗が、一応使えるミキサー卓についてくれる。

マイクの前に座ると、ミキサー卓の沙紗に手を振って急かす。よし、オンエアのランプ点いた。沙紗からキューが出る。ちょっと呼吸を整えてから。

一木羽美

お呼び出しいたします。

頭の中の例文通りに、呼び出し放送を読み上げていく。

一木羽美

二年B組の三山音七さん、二年B組の三山音七さん、今すぐ放送室までお越しください。

一木羽美

繰り返します。二年B組の三山音七さん、二年B組の三山音七さん。今すぐ放送室までお越しください。

よし。今日は噛まなかった!

ランプが消えているのを確認して、ブースを出る。

一木羽美

沙紗! 音七を捜しに行くよ!

双野沙紗

ええ!? 今、呼び出しかけただろ? あたしたちがここを出てどうすんのさ!

一木羽美

音七が大人しく出頭してくるわけないでしょ!わたしたちが見つけてあげなきゃ!

双野沙紗

出頭ってさぁ……。

大人しく待ってるわけいかないの! 今すぐ、音七を見つけなきゃ!

わたしは廊下へのドアへと急いで……、足下が不注意になっていて、ミキサー卓の椅子に引っかかった。

一木羽美

うわわっ!?

双野沙紗

あ、ほら、危ない!

転びそうになったわたしの腕を、沙紗がつかんで支えてくれた。

双野沙紗

落ち着けってば。

一木羽美

う、うん……。

沙紗が、わたしの腕をしっかりとつかんでる。それだけで、なんだか、目眩を起こしそう。すごい、ドキドキして、クラクラする。

わたしの体を引き起こしてくれる沙紗を、すごくかっこいいって思ってしまう。

わたしがこんなこと思ってるうちにも、音七がさびしい思い、してるっていうのに……。

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okujou_no_yurirei-san/2221.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)