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okujou_no_yurirei-san:2201

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放課後。いつもの放送室。いつもの三人。

あたしがいて、羽美がいて、音七がいる。そう、いつもの放課後。

一木羽美

ねぇ、やっぱこれ行こうよ、絶対おもしろいって。

双野沙紗

だから、別に行ってもいいって言ってるだろ。

一木羽美

じゃぁ、あとは音七だ。ねぇ、音七、一緒に行こうよ~。

三山音七

ん~……。

一木羽美

あーもう、また寝てる! こら、起きなよ、音七! 話聞いて!

懲りもせず、羽美は音七を起こしにかかる。もうほっとけばいいのに。

いつも騒がしくあたしたちを引っ張り回す羽美、いつでも眠そうで、実際、しょっちゅう寝てる音七、そして、冷めたフリをしてそれを受け流してるあたし。

ずっと三人、一緒だった。この学校に入る前から、そして、この学校でも。

始まりは中学の時。たまたま三人、同じクラスになった。それまでは、顔も名前もお互い知らなかった。

話しかけられるまで、羽美のことなんか知らなかった。それが、始業式が終わって、新学年最初のホームルームが終わって、突然。

羽美が話しかけてきた。すでに一段階目の人格形成が終わっていたあたしは、ずいぶん、剣呑な態度をとったと思う。

でも、羽美はそんなこと気にもせず、なんの説明もなしに、あたしを音七の席まで引っ張っていった。

ああ、確か、音七はこの時、すでに居眠り魔だったような。机に突っ伏して寝ていた気がする。

そして、いきなりこう言った。なんの前置きもなしに。

「ねぇねぇ、名前が一、二、三ってすごいよね! もうこれって運命だよね! あたしたち、今日から友達になろう!」

はぁ、なんだこいつ、バカか。そう思った。

一、二、三って、それだけかよ。それに、あたしの苗字は双野だから、二じゃないだろ。

バカらしくなって、さっさと帰ろうとしたあたしの手を、羽美がつかむ。なんだよ、こいつってにらんでやったら、目があった。

なんかもう、すっごいキラキラした、自分の言ったこと、少しも間違ってないって目をしていた。

直感的に、ああ、ダメだ、これはつきまとわれる、追い払ってもムダだって思った。そして、それは当たってた。

以来、あたしたちは、ずっと一緒にいる。多分、友達をやっている。羽美を中心に、いつも三人で。

一木羽美

ねぇ、沙紗。

うわ。

腕をつつかれて振り返れば、目の前に羽美の顔があった。近い、近いって!

双野沙紗

な、なに。

一木羽美

これこれ、このジュース、ちょっとあげるから飲んでみなよ。

双野沙紗

はぁ?

目の前に差し出されたのは、キャップの開いたペットボトル。羽美が両手でわざわざラベルを隠している。

ああ、「オススメ」の方なんだな。こうやって薦めてくるってことは。

双野沙紗

羽美、また変なの買ってきたんだろ。

一木羽美

ペプシの新作だから、間違いなし! ねね、飲んでみて、ものっそいおいしくないから。

双野沙紗

なんでいつもそんなの買ってくるんだよ、そして、なんであたしに飲ませたがるんだよ。

一木羽美

だって、おもしろいじゃん、こういうの。やっぱ、こういうのは友達同士で味合わないと。

出たよ、まただよ。ほんとに、羽美は好きなんだな、こういうイベントと、友達って言葉が。

ちょっとしたことを、ほんと楽しそうにあたしや音七に押し付けてくるんだから。こっちの都合、おかまいなしに。

一木羽美

ほらほら、飲んでみてってば。

……もう。ほんと、羽美っておかまいなしだな。

あのさ、わかってんの? それ、飲みかけだから、あんたがすでに口を付けてるんだよ?

友達だからって、そういうの人に薦めてくる?

……友達同士なら、別に、いいのか。

双野沙紗

はいはい、わかったってば。

あたしはペットボトルを受け取って、開いている飲み口を唇につける。

もうすでに、ちょっと湿っているのがわかる。そして……、すごい、ドキドキする。

それをごまかすように、あたしはペットボトルをあおった。

双野沙紗

………………。

炭酸が舌で弾ける。甘い。そして、口の中に広がるフレーバー。なんだこれ。ちょっと苦い?

一木羽美

どうどう?

双野沙紗

なんか、変な苦みがするんだけど。

一木羽美

へへへ、今日発売の新商品、ペプシごーや!

双野沙紗

……ホント、最低。

あたしは、羽美にペットボトルを突き返す。誰だ、こんなフレーバー考えたの、バカか、死ね。

一木羽美

やっぱマズペプシは友達みんなで飲まなきゃね。

一木羽美

よーし、次は音七だ! 音七ぁ! ねぇねぇ、寝てないでこれ、飲んでみてよ!

三山音七

やだよぅ、マズいのなんか、飲みたくない~。

ほんと、やりたい放題。羽美って。なんでこう、友達だからって、他人の中にズケズケ入ってくるかな。

あたしみたいなの相手にも。

grpo_bu1

自分の見た目が、ちょっと近づきがたいのはわかってる。小さいころから長く伸ばしている髪で、幼稚園ではお化けとか幽霊とかからかわれた。

目つきもノーメイクできついし、今じゃわざとそうしてるし。

中学の時には、しっかり中二病にもかかった。

自分ノート半分くらいに、自分で考えた占いの方法をびっしりまとめて体系化したりもした。お手製のタロットカードまで作ってみせた。

おかげで、友達なんかいなくてもいい、孤高なのがかっこいいんだとか思っていて、人を避けていた時もあった。

そんなふうにしてたから。わざわざ用もないのに話しかけてくる人なんて、いなかった。

羽美を、のぞいては。

羽美。もう病気なんじゃないかと思うほど、友情とか友達とか押してくる。すごい好奇心が強くて、イベントや新商品が大好き。当たっても外れても楽しめるお得なタイプ。

思い立ったらよく考えずに行動するし、そのおかげですごい落ち着きなく見える。

でも、裏表がないから、うれしくても怒ってても、こっちにぶつけてくる。

人付き合いもうまくて、誰とでも仲良くなれるし、初対面の人にも物怖じしない。そんなの友達になった時からわかってる。

そして、妙に頑固で。きっと、こいつの友達友達ってのも、そうなんだろうな。

あたしにないものをたくさん持っている。羨ましくはないけど、まぶしくみえる。

うるさい、そして、普通にウザい。でも、あたしにできた友達だった。

だったのになぁ。

三人で同じ九ツ星女子を選んで、合格して、入学した。その時までは羽美はただの友達だった。大切な。

でも、入学式の日、待ち合わせの場所に現れた羽美の制服姿を見た時、なぜか、あたしの胸がときめいた。

いつものように話しかけてきたのに、なぜかうまく返事ができなかった。

気のせいだと思った。よくわからなかった。でも、その時覚えた気持ちは、いつまでも残った。消えなかった。

そして、どんどん大きくなっていった。はっきりとしてきた。

羽美のことが好きなんだ、間違いようもなく。

そうはっきりと自覚してしまったのは、入学式から一年たった、ついこないだのこと。

久しぶりに、頭を抱えて叫びたくなった。封印しておいた自分ノートを見つけてしまった時みたいに。

それ以来。

あたしはいつも、天国と地獄の間を行き来している。

羽美が話しかけてくるたび、抱きついてくるたび、笑ってくれるたび。

うれしくて仕方なくて舞い上がり。

それを顔に出さないように、いつものようにそっけなく、邪険に扱って。

それを後悔して沈み込む。

さっきみたいに、飲みかけのペットボトル差し出されて、これ、間接キスだろなんて思うような毎日。

これ、いつまで続くんだろう。

三山音七

ふぁ……、ちょっとトイレ~。

いつものように部活を始めて、三人で担当しているお昼の番組の反省会と、来週の準備。

いつものように、羽美が仕切って、あたしと音七とで適当に混ぜ返して、それで、ちゃんと仕事を進めて。

適当にキリがよくなったところで、ふらふらと音七が立ち上がった。

あー、この流れって。

一木羽美

トイレ!? わたしも行くよ! ほら、沙紗も行こ!

ほら……。

双野沙紗

えー? あたしは別に……。

一木羽美

いいのいいの、トイレはみんなで一緒に行くものなの! だってわたしたち、友達じゃーん!

なんで羽美は、こんなに一緒にトイレ行くの、好きなんだろう。羽美の中に、友達ってそういうものだって決まりでもあるのかな。あるんだろうな。

三山音七

えー、ついてくるの~?

双野沙紗

もう、いい加減、それやめなよ……。

あたしも音七も、さすがにこれには閉口してるんだけど。

一木羽美

いいから行こ行こ! ほら、しゅっぱーつ!

双野沙紗

テンション高いトイレだな、もう……。

ほら、やっぱり。

あたしの前を、羽美が音七の手をひきながら歩いている。

別に、羽美が音七と手をつないでいるからって、それに嫉妬したりはしない。だって、音七はあたしの友達だから。

でも、その手がつかんでいるのが、あたしの手だったらって思うことはある。だって、あたしは羽美が好きだから。

好きだって。そう羽美に伝えたらどうなるんだろう。

羽美があたしのこと、嫌ってるとは思わない。でも、恋人になってほしいなんて好きを受け入れてくれるだろうか。

普通、そんなこと、ない。あたしの気持ちはおかしい。女同士なのに、羽美が好きだなんて。こんなに好きだなんて。

いくら羽美でもヒくよな、これ。それに音七だって。

二人にヒかれたら……、わかってる、あたしたちの友情はお終いになる。

そしたら……、羽美は悲しがるかな。音七はどうだろう。少なくとも、三人でこうして一緒にはいられなくなる。

そんなの、ダメだ。だから、言えない。

羽美は好き。でも、音七も大事な友達だ。あたしたちは羽美を中心に友達でいられる。

その羽美との今の関係を壊すことなんて、できない。今のままで、いい。

でも……。

一木羽美

ほら、沙紗~、遅れてるよ、早くおいでよ!

好きなんだ、羽美。好きって、言いたいんだ。

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okujou_no_yurirei-san/2201.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)