User Tools

Site Tools


okujou_no_yurirei-san:2013

Place translations on the >s

牧聖苗

ん?

なにか、音が聞こえた。なんだろう。なにか、そんなに重くない物が床に落ちた音?

もう何回来たかわからない、奥校舎。

秘密の場所探しは続行中。試験準備週間だろうとテスト中だろうとおかまいなし! そして、今日、やっとテストが終わった! もう、わたしを止めるものはない!

あ、もちろん、ちゃんとテスト勉強はした。

あんまり成績が悪いと、先輩にバカだと思われちゃうし、心配されて手伝いを断られるかもしれないし。

でも、なんとか時間を見つけて、わたしは校内を歩き回っていた。探し回っていた。

そして、秘密の場所がありそうとにらんだのが、この奥校舎だった。

ここは三年生しか使わないし、なにより古い。

元は校舎だったから部屋はいっぱいあるし、今もほとんど使ってなくて物置にしかなってない部屋もいっぱいある。あの、資料室とか。

そう、あの資料室。先輩との思い出の場所。

音がしたの、あっちかな? ちょうど、あの資料室があるあたり?

わたしは廊下を奥へと歩いていく。

牧聖苗

あ、また聞こえた。

ような気がする……。

なんだろう。こんなとこ、誰もいない、よね?そういう場所を探してるんだし。

牧聖苗

ここ、なのかな?

先輩に案内してもらった資料室。くっついたホコリをとってもらったところ。

そう、ここってホコリだらけだったっけ。いくら誰も来ない場所がいいからって、汚いのはやだなぁ。散らかってても落ち着かないし。

牧聖苗

でも、一応、見てみよっか……。

扉に手をかける。あんまり音を立てずに、開いた。

牧聖苗

誰も、いないよね?

窓がある部屋なのに、真ん中に置かれた棚に遮られて、光が入ってこないみたい。薄暗い。

確か、電灯はあったはず……。

ドアのそばにあるスイッチを見つけて押すと、明かりがついた。

それで、部屋の様子がわかる。もう、一目で、これは、ダメかな。

牧聖苗

そうだよね。物置だもんね……。

たくさんの荷物、棚、ダンボール。わたしがあの日、運んだのもまだある。

足の踏み場もないってほどじゃないけど……、ゆっくり落ち着けるとこでもないよね。座れるとこもないし。

牧聖苗

あーあ、ここもダメかぁ……。

ため息ついて、部屋を出ようとした時だった。また。

牧聖苗

え?

あの音が聞こえた。さっきよりはっきりと。部屋の奥の方から。

牧聖苗

な、なに……?

ちょっと怖い。お化け? そんなのがいるの、この学校。でも、古い学校だし、ここ古い校舎だし。

でも、今はなぜだか、好奇心が勝った。

床に置いてあるものを蹴飛ばさないように、あと、ホコリまみれの棚にも気をつけて、部屋の奥に進む。

牧聖苗

こっちの方?

窓があるはずの方、大きな棚がふさいでる。でも、よく見ると、その棚の脇に、人が通れるくらいの隙間があった。うわ、こんなとこ、入り口からじゃ見えない。

そして、その隙間の奥に。

牧聖苗

あ……!

ぽっかりとしたスペースがあった。なにも、物が置かれていない。

窓と棚の間。幅は1メートルちょっとくらいしかないけれど。奥行きは2メートルくらい?

入ってきた隙間を入り口とすれば、このスペースの奥の方はまたいろんな物が積んである。でも、そのいちばん手前に!

牧聖苗

これ、ソファ!?

二人がけのソファが立てかけてある! え、ソファ? ほんとに?

わたしはそのソファに駆け寄った。さすがにちょっとどころじゃないほど古いものだけど、まだ、使える。裏地が破れてるけど、ちゃんと置いたら見えないし。そして。

これ、ちょうどこのスペースに置ける!

嘘、嘘みたい。

ほとんど使われてない資料室の奥!

二人でゆっくり座れるソファ付き!

カーテン越しに光は入ってくるし、ちょっとホコリっぽくて汚いけど……。

これくらいなら、掃除すれば使える!

牧聖苗

見つけた!

ついに見つけた! わたしと先輩の二人だけになれる秘密の場所!

牧聖苗

えっと、まずはホウキと雑巾!

わたしは、その掃除道具を取りに行くために、走り出した。

牧聖苗

先輩、こっちです!

相原美紀

え、ええ……。

わたしは、先輩の手をひいて奥校舎の廊下を……、校内はダッシュ禁止なので早足で、歩いていた。

牧聖苗

こっちです!

相原美紀

あら、ここって物置の……。

牧聖苗

はい、あの時の資料室です!

相原美紀

え、ええ……、ここがどうしたの?

牧聖苗

えへへ……。

わたしは、資料室の扉を開ける。電気はつけない。いい天気だから、窓から入る光だけで充分のはず。

相原美紀

あ、牧ちゃん、また汚れちゃうわよ?

牧聖苗

あ、はい、ここもそのうち、ちゃんと掃除しますね。

相原美紀

え?

牧聖苗

こっち、こっちから入ってきてください!

相原美紀

え、こっち……?

牧聖苗

どうぞ!

相原美紀

! ……あ……。

やった! びっくりしてくれた!

牧聖苗

さ、先輩、座ってください! けっこうフカフカなんですよ!

相原美紀

え、ええ……。

先輩が座る。その隣にわたしが座る。

このわたしと先輩、二人だけの秘密の場所に。ソファに、二人、並んで。

牧聖苗

どうです、先輩!

相原美紀

え、ええ……。びっくりした……。

牧聖苗

わたしが見つけたんです。

相原美紀

そうなの……。ここ、もっといろんなものがあったと思ってたんだけど……。

牧聖苗

そうですか? でも、ちょうどここだけ、ぽっかり空いてたんです。

相原美紀

それに、このソファ……。

牧聖苗

そこの奥に置いてあったんで、使わせてもらいました。

相原美紀

そうなの……。

まだちょっとホコリっぽいけど、仕方ない。

掃除もまだ完全じゃないから、もう少し、時間を見つけてやっておかなきゃ。

あと、ここまでの出入り口も、もうちょっと通りやすく、でもって、きれいに。でも、見つかりにくく。

牧聖苗

ね、ね、先輩、ここ、どうですか?

相原美紀

え、ど、どうって……。

牧聖苗

素敵なとこでしょう?

相原美紀

え、ええ……。

牧聖苗

ゆっくりできるでしょう?

相原美紀

ええ、そうね。とても落ち着ける場所ね。

牧聖苗

でしょう!

うれしい。

先輩も気に入ってくれたみたい。やっと見つけたこの場所が。わたしと先輩しか知らない場所が!

窓から差し込んでくる光がキラキラしていて、とてもきれい。あ、これホコリだ。でも今はいいや!

ここなら。

ここならゆっくりと、先輩とお話ができる。いつもよりもっといろんな話ができる、きっと!

牧聖苗

ね、先輩。

相原美紀

なぁに?

牧聖苗

あの、その、先輩、忙しいからいつもは無理でも、時々でもいいですから。

牧聖苗

ここに来て、ゆっくりしませんか? その、できればわたしと一緒に。

相原美紀

……牧ちゃん。

牧聖苗

わたし、もっと先輩といろんな話、したいんです。いつも、いっぱいお話してるけど、ここでなら……。

牧聖苗

ゆっくり、先輩とお話できると思うんです。

牧聖苗

あ、もちろん、先輩一人でも、ここに来ていいんですよ? その……。

牧聖苗

ちょっとゆっくりしたいなぁとか、疲れちゃったなぁとか、今日はちょっとがんばりすぎちゃったなぁとか、ここんとこ働き過ぎだなぁとか、そういう時に!

牧聖苗

わたし、そのために、ここ、見つけたんですから!

相原美紀

牧ちゃん……。

相原美紀

……ありがとう。

相原美紀

うれしいな、こんなとこに休憩所を見つけてくれるなんて。

相原美紀

牧ちゃんってすごいのね。

牧聖苗

そ、そんな! あ、あの、偶然なんです。偶然見つけたんです。ちょっと入ってみたら偶然!

牧聖苗

まだまだ掃除も足りないし、できれば、ここだけの明かりもほしいし、テーブルがあればお菓子も食べられると思うし、ホコリっぽいのはアロマでもあれば……。

相原美紀

ふふ、あんまり私物化しちゃだめよ。ここ、一応、資料室なんだから。

牧聖苗

うわ、そ、そうですね!

相原美紀

でも……。

相原美紀

そうね、時々は、ここでゆっくりしましょう。牧ちゃんと一緒に。

牧聖苗

あ……。

相原美紀

いろんなお話、しましょうね。

牧聖苗

はい!

よかった! 先輩が喜んでくれた! 一緒にここでゆっくりしてくれるって! お話しようって!

よかった、この場所が見つかってくれて、本当によかった。先輩がゆっくりできる場所ができてよかった!

相原美紀

ねぇ、牧ちゃん。

牧聖苗

はい!

先輩が座ってる。わたしのすぐ横に。一緒に並んで座ってる。

相原美紀

今日はもうちょっと時間、ある?

牧聖苗

ええ!

先輩とわたしの間は、少し空いていて。

でも、この隙間、もっと縮んだらいいな。もっとそばに、先輩のそばに座れるようになりたい。ちょっとずつ、縮んでいったらいいな。

相原美紀

それじゃ、もう少しゆっくりしていきましょう?

今日から、少しずつ。

牧聖苗

はい!

ここは、休憩所って名前になった。わたしと先輩、二人だけの秘密の場所で、ゆっくりとお話できる場所。

こんなとこが見つかるなんて、ほんとにこの学校ってすごい、楽しい!

やっぱり、この学校に入ってよかった! この学校も、先輩も、大好き!

grpo

grpo_ef

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

okujou_no_yurirei-san/2013.txt · Last modified: 2013/06/01 22:49 (external edit)