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okujou_no_yurirei-san:2003

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牧聖苗

はぁ……。

あの日、相原先輩と出会ってから、二回目の月曜日。先輩のことを捜し回るようになってから、二週間くらい。

牧聖苗

(つ、ついに……)

その放課後。

牧聖苗

(書いてきちゃった……)

わたしは、カバンを抱えたまま、自分の机の上に突っ伏していた。

牧聖苗

はぁ……。

カバンの中には、昨日、夜遅くまでかかってようやく書き上げた手紙が入っている。

牧聖苗

(お礼をちゃんとしたかったから書き始めたはずだったのに……)

そう、そのはずだった。学校の中で会って、声をかけてお礼を言うのが、なぜかとても難しかったから。

だから、せめて、感謝の気持ちを伝えるために、手紙を書こう、そう思ってたはずなのに。

牧聖苗

(なんで……)

牧聖苗

(なんで、今度、会ってください、お話したいことがあります、なんて書いてるの、わたし!)

書いた、確かにそう書いた。そう書いた手紙が今、カバンの中に入っている。

牧聖苗

(こ、これじゃまるで……)

牧聖苗

(ラブレターじゃない!)

なんでこんな手紙になっちゃったんだろう。先日はありがとうございました、で書き始めたはずなのに。

いつの間にか、どんどん、先輩の素敵なところを並べていって……。

そして、あの日から先輩に声をかけようとしてもできなかったなんて書いていて。

最後には、気持ちを伝えたいので、会ってくださいなんて……。

牧聖苗

(これって……)

牧聖苗

(わたし、先輩のことが好きみたいってとられちゃうよ……)

……いや、それはいいんだ。わたし、先輩のことが好きみたいだし。

でも、それって憧れとかそういうのだよね。そういう好きだよね?

それとも、わたし……。

この手紙を書いていた時みたいに、ほんとに先輩のことが好きになっちゃったのかな……。

牧聖苗

(うう、わかんない……)

狛野比奈

牧さん、あたし、部活、行くね。ばいばい。

牧聖苗

ひゃい!?

不意に話しかけられて、思わず勢いよく頭を跳ね上げてしまった。

声のした方を見れば、隣の席の狛野さんが目を丸くしてわたしを見ていた。

狛野比奈

ごめん、寝てた? 起こした?

牧聖苗

あ、ううん、起きてた。え、ええと、部活、がんばってね。

狛野比奈

ん。

狛野さん。入学式の次の日から、ずっとジャージ姿の人。確かにこの学校、服装はそんなにうるさくないし、学校指定のジャージだから私服ってわけでもないし。

だから、先生も特に注意しないけど……。陸上部だからいいのかな。そういうことで、ちょっと目立つ人。

席が隣だから、こうして帰る時とかには声をかけたりかけてくれたりするんだけど。

牧聖苗

(あ、いや、とにかく、今はこの手紙だ……)

どうしよう。もう書いちゃったんだし、とにかく先輩に読んでもらわなきゃ。

もう、書いてあることがどうだろうと関係ない。書いたんだから、先輩に読んでもらいたい。

読んでどう思われても、いい。とにかく、読んでもらいたい。

牧聖苗

(でも、どうやって渡そう……)

直接は無理。きっと、緊張して渡せない。

ここは、伝統にのっとって、下駄箱に? ううん、ダメ。この学校の下駄箱にはフタがないもの。手紙なんか置いたら、すぐに他の人にもわかっちゃう。

じゃあ、どうしよう……?

考えて考えた結論は。

相原先輩の教室に行って、先輩のいないうちにこっそり、先輩の席に行ってカバンか机の中に手紙を入れるということだった。

牧聖苗

(奥校舎って……、緊張するな……)

奥校舎には教室は三年生のしかない。だから、廊下を歩く人も当然、三年生ばかり。

こないだ入学したばかりの一年生には、ちょっとハードル高いよね、これ。

牧聖苗

(でも……!)

勇気を振り絞って、わたしは相原先輩のクラスの教室へむかった。先輩の席も確認してある。前からも、窓側からも4番目。

牧聖苗

(ちょうど教室の真ん中あたりってのも、難易度高いよね……)

そっと、教室の中をのぞいてみる。

牧聖苗

(あ、人がいる……)

中には、四人くらいの三年生が、ちょうど先輩の机のすぐそばで、なにか話をしている。

牧聖苗

(ええ、なんで人がいるの……)

まぁ、いても不思議はないんだけど。なんか、楽しそうにおしゃべりしてる。あ、お菓子、広げてる……。

牧聖苗

(もしかして、すぐには帰ってくれないのかな……)

とりあえず、待ってみることにしてみたけど……。

やっぱり、三年生の人たちは、おしゃべりを続けていて、すぐには帰ってくれそうになかった。

牧聖苗

(どうしよう……)

さすがに、誰かいる教室の中に入っていって、先輩の机に手紙を置いてくるわけにもいかない。

こうして待っているうちに、先輩が戻ってきたらどうしよう。

直接、この手紙を渡せるくらいなら苦労はない。それができないから、こうしてここまで来ているのに。

牧聖苗

(今日は、あきらめた方がいいかな……)

ちょっとタイミングが悪かったかな。そう思って、わたしは先輩の教室の前を離れた。

牧聖苗

(あ、明日。明日こそ、手紙を置いてこよう)

そう、決心して。

しかし、その決心は次の日も空振りしてしまった。

次の日も、その次の日も。

相原先輩の教室には、いつも誰かが残っている。一日目と同じ人だったり、ちがう人だったり。

おしゃべりをしていたり、着替えをしていたり、勉強をしていたり。

一度は、先輩自身が、なにか仕事みたいなことをしていて、慌てて回れ右して逃げ出した。

牧聖苗

(うう……、なんで誰もいない日がないの!?)

残っている人を恨みたくはないけど、文句は言いたい。用がないのに、教室に残っていないでよって。

こうして。

渡せない手紙を抱えたまま、ゴールデンウィークに突入し、わたしはもやもやとしたものを抱えたまま、連休を過ごすことになった。

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okujou_no_yurirei-san/2003.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)