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okujou_no_yurirei-san:1607

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比奈と並んで、朝ご飯の後片付けをしていた。

勉強会の次の日、日曜日の朝。

朝ご飯を食べたあと、阿野は家に帰っていった。なんだかふらふらで、こんなに消耗したの久しぶりなんて笑いながら。

ごめんね、ありがと。そう言って、私は阿野を見送って、そのあと。

こうして、朝ご飯の後片付け。久しぶりに、比奈にお手伝いをお願いして。

私が、食器を洗う。それを受け取った比奈が、布巾で拭いてくれる。

カチャカチャと、お皿同士が打ち合う音、蛇口から流れる水の音。

食器をしまうために、棚と往復する比奈の足音。

それを聞きながら、私は手を動かす。

比奈に告白されてからずっと、比奈がそばにいると落ち着かなくて、料理や後片付けの手伝いを断ってきた。

悩んだり迷ったりすることから逃げるために、料理や家事、勉強とかに没頭して。それができない時は、ただ、悩んで、迷って。

ずっと、答えを出せないでいた。返事ができないでいた。もう、そろそろ一ヶ月近くたつ。

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遠見結奈

(私、ずっと比奈を待たせてた……)

昨日の夜、阿野と話して。全部、話して、そして、阿野の話を聞いて。

ようやく、どうすればいいのか、わかった気がした。だから。

ずっと、阿野がアドバイスしてくれた通りに。

遠見結奈

(一つずつ、一つずつ……)

悩んでいたこと、迷っていたことを、取り除いてきた。

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遠見結奈

はい、これで最後。

狛野比奈

ん。

軽く振って水気を切ったお皿を、比奈に渡す。

比奈が、それを布巾で拭いて、そして、棚にしまう。

狛野比奈

ん、おしまい。

遠見結奈

はい、お疲れさま。ありがとね、比奈。

狛野比奈

んーん。

こうしてお手伝いをしてくれる比奈は、いつも通りに見える。でも、がんばってそういうふうにしているだけなのかも。どうなのかな?

私が悩んでいる間、答えを出せないでいる間、比奈はなにも言わずに、待っていてくれた。返事を急かすことは一度もなく、いつも通り、私に接していてくれた。

私の方が、落ち着くことができず、比奈から離れていただけだ。うん、ごめんね、比奈。

私、やっと……。

遠見結奈

ねぇ、比奈。

狛野比奈

ん、なに、結奈ねぇ。

遠見結奈

ずっと、待たせて、ごめんね?

狛野比奈

ん? ……あ……。

比奈も気付いてくれたみたい。うん、そう。

遠見結奈

私、やっと比奈に返事ができる。やっと、比奈に答えられるの。

狛野比奈

……え、えっと……。あの、結奈ねぇ……。んっと……。

比奈は、ちょっとだけ落ち着かない素振りをしたあと。

狛野比奈

ん。

まっすぐに、私を見た。うん、待ってる。

遠見結奈

比奈、私ね。

狛野比奈

ん。

遠見結奈

私、比奈のことが、好き。

どう言おうか、考えたけど。でも、他に思いつかなかった。

好き。それだけを、まず、伝えたかった。

狛野比奈

………………。

狛野比奈

……ゆ、結奈ねぇ……。えっと……。

遠見結奈

大好きよ、比奈。

狛野比奈

……結奈ねぇ!

ぽん、と飛びついてきた比奈を、受け止める。腕の中で、抱き留める。

小さなころから変わりなく、この腕の中におさまる比奈の体。今、それがとても、温かく、そして、心地よく、重い。

遠見結奈

ずっと、返事できなくて、ごめんね……。

狛野比奈

んーん……。

小さくかぶりを振る比奈。でも、ごめんね。ずっと待たせて、ごめんね。

最後に、私の心の底に残っていたものは。

悩みと迷い、一つずつ取り除いていって、いちばん底に残っていたものは。

「結奈ねぇが、好き」

比奈の、その言葉。

比奈のその言葉を聞いた時、私は目の前が真っ暗になったような気がして、それからなにも考えられなくなった。

その時は、驚きが大きすぎたから。

でも、その言葉は、私の心の中にあったものとつながっていった。比奈に対して、ドキドキしていた気持ち、比奈のことを思って、あせったり、心配したりした気持ち。

夏のころから始まった、心が落ち着かなくなる感じ。比奈のことを想うたび、比奈と会うたび、話をするたび。

揺れて騒いでいた私の中の気持ちと、つながっていった。溶けあっていった。そして。

心の底に、小さな結晶になって残った。

私は、それが、とてもきれいだったから。見てると怖くなるくらい、きれいだったから。

あれこれ思いついた悩みや迷いを重ねてしまったんだ。押し込めて、見えないようにしてしまったんだ。

そして、積み重ねたものだけを見て、迷って、悩んで、いたんだ。

比奈への答えは、比奈へのこの気持ちは、最初から。

告白された瞬間から、できていたのに。答えを迷う間も、ずっとここにあったのに。

遠見結奈

ずっと、迷ってたの。だから、気付くのが、遅くなっちゃった……。

狛野比奈

んーん、いい。

小さい時からの比奈の癖。私の胸に、顔を擦りつける。うれしい時の癖。

遠見結奈

待たせちゃったね。……不安にさせた?

狛野比奈

んーん。平気だった。結奈ねぇだったら、きっと、返事くれると思ってたから。

狛野比奈

だから、どんな返事でもよかった。待てたよ。

遠見結奈

どんな返事でも……?

狛野比奈

ん。断られても、よかった。ちゃんと、好きって言えたから。でも……。

狛野比奈

今、うれしい。

私の腰に回る比奈の腕に、小さな力が入ったのが、わかる。

狛野比奈

結奈ねぇ、大好き。

遠見結奈

うん、私もよ、比奈。

比奈は私より強い。

狛野比奈

迷ってたの? ごめんね?

遠見結奈

ううん。私が勝手に迷ってたの。悩んでたの。答えを、わからなくしてたの。

そして、私は比奈が思っているより強くない。

遠見結奈

でも、やっと、気付いたの。比奈に、告白された時から、答えは決まってたのに。

遠見結奈

比奈が、大好きだって。

でも、比奈を好きでいる限り、私はもっと強くなれる気がする。いろんなことを乗り越えていける気がする。

今、抱き締めている比奈を、離さなければ。

狛野比奈

結奈ねぇ。

比奈が、私の顔を見上げてくる。まっすぐに。その目に、私はとても憧れる。

この素直で強い、眼差しにこたえたい。あなたにふさわしい自分でいたい。自信を持って、比奈とこうしていられる自分でいたい。

目に映る、比奈の顔が、少しずつ大きくなっていく。

私と比奈の、顔が近づいていく。ゆっくりと。

狛野比奈

ん……。

遠見結奈

ん……。

重なる。唇に生まれた感触は、この初めてのキスは、きっと、一生の宝物。

ゆっくりと、唇を離して。

大切な、人を、見つめる。

こんなに、誰かを好きでいられるなんて思わなかった。こんなにあなたに好かれたいと思うなんて。

比奈が、好き。こんなに、自分の気持ちを素直に受け止められるなんて。

春までの私だったら、どうだっただろう。比奈に、告白されただろうか。それに、答えられただろうか。比奈を好きになれただろうか。好きだと気付けただろうか。

きっと、無理。どれかができずに、終わっていたにちがいない。こうして、比奈を抱き締めて、キスすることはできなかったにちがいない。

遠見結奈

ねぇ、比奈……。

狛野比奈

ん? なぁに?

そっか、私、ずいぶん、変わっていたんだ、いろいろと。どうして、そうなったか、それはわかってる。

遠見結奈

聞いてほしい、話があるんだけど……。

あの二人に、出会ったから。

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okujou_no_yurirei-san/1607.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)