User Tools

Site Tools


okujou_no_yurirei-san:1603

Place translations on the >s

一週間以上たって、まだ。

私は、状況をなにも変えることができないでいた。つまり、ずっと悩んで、悩み続けていた。

答えを出せないまま、比奈を待たせ続けていた。

今日も、いつもと変わらず、朝ご飯を食べて、朝練に行った比奈。私のせいでぎこちない会話も変わらずで。

それでも、比奈はずっと、答えをせがまずに待っていてくれる。

遠見結奈

はぁ……。

授業が終わって、廊下に出た瞬間、ため息が出てしまった。

授業中もずっと、考えていたような気がする。できるだけ、授業に集中しようとしていたんだけど。

というより、集中していないと、ずっと考え込んでしまってる。ああ、今の授業もあまり内容を思い出せない。

一応、ノートはちゃんと取っておいたつもりだけど……。どうだろう、後で家で読み返した時に、また、意味不明なことになってないかな。

園生月代

遠見さん、ちょっといい?

どうすれば気分転換になるのかな。飲み物でも買いに行こうか、そんなことを考えていたら、園生先生に声をかけられた。

遠見結奈

あ、はい。なんですか?

園生月代

うん、ちょっと気になったんだけど……。さっきの授業、あまり集中できてなかったみたいだから。

遠見結奈

え……。

そ、そうだったかな。うん、さっきの授業、確かに古文だったよね。園生先生の授業だった。それは、どうにか思い出せる。

集中、できてなかったのかな、やっぱり。先生にもわかってしまうほど、考え込んでいたのかな。ぼーっとして見えたのかな。

遠見結奈

あ……、その、すみません……。

園生月代

あ、ううん、ちがうの。注意したいんじゃなくってね。

剣峰桐

あー、月代ちゃんだー!

園生月代

きゃっ!

あ、剣峰さん……。いつの間に、園生先生の背後に回り込んでいたんだろう。いきなり先生に抱きついて。

剣峰桐

あ、遠見ちゃんだ。どうしたの? 月代ちゃんがまた、授業でなんか間違えた?

園生月代

ま、間違えてません! またってどういうこと!? それより、はーなーしーて! それから先生ってちゃんと呼びなさい!

剣峰桐

はーい。でも、どしたの、遠見ちゃん。

遠見結奈

あ、その……、私が授業中、ぼーっとしてたから……。

剣峰桐

ぼーっとしてた? 遠見ちゃんが?

遠見結奈

それで、園生先生に……。

園生月代

あ、遠見さん? ほんとに、そのことを注意したかったわけじゃないの。ただね?

園生月代

元気なさそうな様子だったから。ちょっと心配で声をかけたのよ。

遠見結奈

あ、はい……。

園生先生がそう言うなら、ほんとに注意されるわけじゃないと、思う。そして、私、ほんとにぼーっとしてたんだなって。

剣峰桐

んー、確かに、遠見ちゃんってなんか、授業中にぼーっとしてる感じじゃなさそうだもんね。

剣峰桐

なんかほんと、元気なさそう。大丈夫? なんだったら相談に乗るよ、月代ちゃんが。

園生月代

もう、ほんとに離れなさい、剣峰さん!

園生月代

あ、でも、遠見さん。なにか心配事があるなら、なんでも相談してね?

遠見結奈

あ、はい……。

相談、かぁ……。

確かに、今、私が悩んでることを相談する相手として、園生先生ほどぴったりな人はいないかも。

先生で、大人だし、その、剣峰さんと付き合ってること、私は知ってる。

比奈が私を好きなこと、私がそれにどう答えていいかわからないこと、そういうところを、わかってもらえるかもしれない。

でも……。

園生月代

たいしたことじゃなくてもいいのよ。

grpo_bu0

まだ、剣峰さんに抱きつかれたまま、そう言ってくれる先生に、なぜだろう、私は打ち明ける決心はつかなくて。

今は剣峰さんがいるから? そうじゃない。ただ、今は相談する気になれなくて。

仲よさそうな、剣峰さんと園生先生。でも、二人がすぐにこんな恋人同士になれたわけじゃないこと、私は知ってる。

剣峰さんの告白を、園生先生は一度、よくある勘違いって言った。

それは、園生先生が悪いわけじゃないと思う。そういう考えもあるってこと。大人らしい態度だとも思ったりした。

でも、結局は、剣峰さんは自分の気持ちを勘違いだとは思わず、園生先生もそれを受け入れて。

今、こうして、恋人同士になっていて。

だったら、私は? 私の気持ちは?

比奈のことは、好き。この気持ちは? 剣峰さんみたいなまっすぐな気持ちなのかな? それとも。もしかして、勘違いなのかも?

そして……、比奈が言ってくれた言葉は?比奈の私への気持ちは? もしかして、比奈はただ、ずっとそばにいた私に対して、勘違いしているのかも?

私の気持ちも、比奈の気持ちも、勘違いじゃないって誰が証明してくれるんだろう。園生先生だったら、そう言ってくれるの?

わからない……。もし、私が、前の剣峰さんと同じ相談を今、したら。

園生先生はなんて答えるんだろう。

……怖い。相談して、園生先生から聞かされる言葉が、怖い。

勘違いじゃないよって言ってくれるかもしれない。それは、怖い。

勘違いかもしれないって言ってくれるかもしれない。それも、怖い。

どうしよう……。

わからない上に、怖いって思うなんて。

grpo_bu1

grpo_bu1

grpo_bu0

遠見結奈

す、すみません、ごめんなさい……。

園生月代

あ、遠見さん?

頭を下げて、私は廊下を足早に、二人から遠ざかって、とりあえず、そこから離れた。

ああ、やっぱりダメみたい。

サチさん、この作戦、失敗みたいですよ?

口の中に広がる、ちょっと懐かしい味を確かめながら、わたしはそう思った。

お昼休みの屋上。いつものベンチに、結奈を挟んで、わたしとサチさん、三人並んで座っている。

お盆のあの時みたいに、両脇から結奈にぴったりとくっついて。そうして、結奈と感覚をちょっと一緒にして。

うん、甘い。でも、ちょっと変な感じ。

この、噛んだ瞬間にサクっとする感じ。これがなんか違和感。でも、その後のふわっとした感じはわたしの記憶通りで。

味は……、こんなにフルーティな感じだったっけ? もっとシンプルに甘かったような気がしたけど。

榎木サチ

うん、おいしいわ。

サチさんが喜んでるからいいけど、今食べてるこれ、メロンパン。

ちょっとわたしの記憶とちがうのよね……。

永谷恵

このメロンパン、なんでこんな、表面がサクサクしてるの? んー、カリカリ? なんか変じゃない?

遠見結奈

え? 変じゃないと思うけど……。

永谷恵

そう?

遠見結奈

ええ。サクサクしてるのは、ビスケット生地よ。

永谷恵

ビスケット……、そうなんだ。最近のメロンパンってそういうものなのね。

遠見結奈

いや、昔からそうだけど……。

永谷恵

ええ!? だって、わたしが食べたことあるのは、もっと全部がふわふわだったわよ?

遠見結奈

そうなの? さすがに、生まれる前のことはわからないんだけど。

永谷恵

ちょっと、なにその言い方!

ほんと、むかつくわね、結奈って! 元気がないくせに、口だけは生意気なんだから!

遠見結奈

文句があるなら、食べないわよ?

榎木サチ

あ、そんな! 結奈さん、私、もっと食べたい!

grpo_bu0

……サチさん、目的、忘れてない?

心配してた、陽香さんと愛来さんも注意だけですんだし、他のみんなもなんの問題もなし。

新しいカップルも特に見つからなくて、実は結奈を今日、こうやって屋上に呼ぶ理由ってなかったんだけど。

なのに、今、こうして三人でメロンパン食べてるのは、とにかく結奈のため。

サチさんがこうして、結奈の向こう側にぴったりくっついてるのも、全部、結奈のせい。

結奈がいつまでたっても、比奈ちゃんに返事をするどころか、もうどんどん見ていられない状況になっていくのを、サチさんが心配したから。

だからこうして、ちょっとでも気分転換になったらいいなってこうしてるのに。

結奈ってば、ぼーっとしてたかと思うと、わたしにはしっかり、文句とか言ってくるんだから。

メロンパンはサチさんのリクエスト。サチさん、メロンパンを食べたことなかったから。結奈にお願いして、購買で買ってきてもらってこうして食べているんだけど。

やっぱり、結奈、ちょっと話が途切れると、すぐ、ぼーっとして。

サチさん、やっぱりこの作戦、失敗じゃないかな。

「ガンバレ結奈さん大作戦」。サチさんのつけた名前はいいと思うんだけど。

grpo_bu0

grpo_bu0

遠見結奈

あの、もうこれ以上は食べないですからね?さすがにメロンパン3個とか、無理。

榎木サチ

ええ、今食べてるので最後でいいから。ね、もう一口。

一個食べ終えたところで、もう一個ってサチさんがお願いしたんだけど。うん、サチさん、ほんとにメロンパンが目的になってるみたい。

そんなサチさんも、かわいくて素敵なんだけど。

榎木サチ

うん、ほんと、おいしい。甘いとこがサクサクカリカリしてて、パンはふわっとしてるのね。

榎木サチ

メロンって、こんな味だったのねぇ。

永谷恵

え!?

遠見結奈

え……?

榎木サチ

え? 私、なにか変なこと、言ったかしら?

永谷恵

えっと、あの、サチさん……。

どうしよう、サチさんに真実を告げるべきかな。メロンパンには、メロンは入ってないって。でも、言わなきゃダメだよね?

永谷恵

メロンパンって、メロンが入ってるんじゃないんですけど……。

榎木サチ

ええ!? そうなの?

永谷恵

はい……。

榎木サチ

じゃあ、これってメロンの味じゃないのね……。

永谷恵

え、ええ……。

うわぁ、サチさん、すっごい落ち込んでる、がっくりしてる。

榎木サチ

でも……、それじゃ、なんでこれ、メロンパンって言うのかしら……。

永谷恵

え? あれ? なんでだろう。

ずっとそういう名前のパンだと思ってたけど、どうしてなんだろう。

遠見結奈

えっと、それは、表面のビスケットにヒビが入った見た目が、マスクメロンの皮に似てるから。

榎木サチ

まぁ、そうなの。

永谷恵

そうだったんだぁ。

うわぁ、今までずっと知らなかった。

遠見結奈

……はぁ。

ため息つかないでよ! わたしたちをバカにしたわけじゃないってことはわかってるんだけど! またなんか考え込んで出てきたってわかってるんだけど!

な、なによ、せっかく元気づけてあげようと思ってるのに、なんでわたしたちがバカにされたみたいに感じなくちゃならないわけ!?

遠見結奈

ごちそうさまでした。

榎木サチ

あ、はい、ごちそうさま。ありがとう、結奈さん。

永谷恵

ごちそうさまでした……。

なんだか、すごい納得いかない!

わたしがこんなに腹を立てているのに、結奈ったら、さっさと立ち上がって。

遠見結奈

ごめんなさい、私、もう戻ります。

なんて言うし!

榎木サチ

え、ええ。ほんとにありがとう、結奈さん。

遠見結奈

いえ……。それじゃ。

サチさんの気遣いも作戦もムダにして! なに、とっとと教室に戻ろうとしてるのよ! ついていって、呪うわよ!

榎木サチ

あ、結奈さん!?

遠見結奈

……!

……あ、開けたドアに、足ぶつけた。けっこう痛そう。

でも、そのまま、出て行くんだ。あーもう、ほんとに!

しっかりしなさいよ、結奈! あんたがそんなだから、わたしたちも相談できないんじゃない!

榎木サチ

結奈さん、大丈夫かしら……。

いいえ、サチさん、全然、大丈夫じゃないですよぉ。

ここはわたしが、一つ、ガツーンって言ってやらなきゃ……。

grpo

grpo_ef

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

grpo_bu2

grpo_bu1

grpo_bu0

okujou_no_yurirei-san/1603.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)