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okujou_no_yurirei-san:1506

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学園祭二日目。

今日は秋分の日で休日。だから、学生の家族とか、一般の入場者も学校に入ってきてる。

よかった……。陽香のステージが今日じゃなくて、本当によかった……。

それはともかく……。

ついに、今日は比奈を巡った、網島先輩と稲本先輩のデート勝負がある。始まってしまう。

どうにかしてやめさせられないかって考えたけど、結局なにもできなかった。サチさんと恵も、成り行きにまかせるみたいだし。

もしかして、二人とも本当に、この際、比奈とどちらかがくっついてもいいって思ってたりしないかな。

そ、そんなの、絶対認められないけど……。

でも、邪魔することもできないし……。

遠見結奈

え、えっと、比奈。

狛野比奈

ん。

あとちょっとで、まずは稲本先輩の先攻でスタートする。

遠見結奈

いい? あんまり先輩にワガママ言っちゃダメよ?

狛野比奈

ん。

すでに、稲本先輩も網島先輩も、ちょっと離れた講堂の入り口のところでスタンバイしてる。

遠見結奈

おごってもらえるとか甘えちゃダメよ? 自分の分は、ちゃんと自分で払うのよ?

狛野比奈

ん。

そして、私は比奈を前に、こんなことを言っていて……。

遠見結奈

お小遣い、足りてる?

狛野比奈

ん、だいじょぶ。

遠見結奈

そ、そう……。

こんな、細かい注意してたりして……。なにしてるんだろう、私。

永谷恵

結奈、まるでお母さんみたい。

遠見結奈

うるさい。

そんなこと、自分でもわかってる。でも、なんかこういう心配でもしてないと、落ち着かなくて。

網島茉莉

結奈ちゃん、そんなに心配しなくていいよ?ちゃんとエスコートするからさ。

そう言われても。ああ、こっちの気持ちなんてわかってもらえないし。

稲本美夕

今日一日、お借りするだけだから。ちゃんと返してあげるわよ?

でも、どっちと付き合うか決めさせるんでしょ? だから心配してるのに。

遠見結奈

はぁ……。

狛野比奈

結奈ねぇ? どしたの、ため息ついて。

遠見結奈

ん、なんでもない。えっと、それじゃ行ってらっしゃい。

狛野比奈

ん、行ってきます。

そう言って、元気よく、比奈は先輩たちの方に走っていく。まったく……、こっちの気も知らないで……。

網島茉莉

おし、来たか、比奈。

狛野比奈

ん。

稲本美夕

準備いい?

狛野比奈

ん。

ああ、比奈が行っちゃう……。

狛野比奈

あ、結奈ねぇ!

と思ったら、大きな声で私を呼んできた。

狛野比奈

終わったら、一緒に帰ろ!

遠見結奈

え、ええ……。

それはいいんだけど、デートの始まる寸前に、その相手を前に、そんな大きな声で言わなくても。

そう言ってくれたことには、すごく、安心してるんだけど……。

稲本美夕

それじゃ、私からね。

狛野比奈

ん。よろしくお願いします。

稲本美夕

ええ、行きましょう。

そして、ついに、とうとう。

比奈と稲本先輩は、講堂の方に行ってしまう。あっという間に、休日に行われている学園祭の人混みの中に、消えてしまう。

榎木サチ

茉莉ちゃんも美夕ちゃんも、けっこう気合い入ってるのね。

遠見結奈

そ、そうですか?

榎木サチ

ええ、いつも通りに見えるけど。心の中はそれなりに。

遠見結奈

二人とも、そんなに比奈と付き合いたいって思ってるの……?

榎木サチ

ふふ、それはどうかしらね。

遠見結奈

え?

榎木サチ

それにしても、比奈ちゃんってほんとに、年上の子に人気があるのね。

<01>年上の子に人気があるのね

<01>比奈、素直だから

<01>比奈、真面目だから

遠見結奈

比奈、素直だから。

遠見結奈

思ってること、ちゃんと伝えてくれるし。それに、相手のこともちゃんと思いやれる子だから。

遠見結奈

そういうのって、うれしいですよね。いい子なんです、比奈は。

榎木サチ

ええ、本当にそうね。かわいい妹みたいで。

榎木サチ

そういう比奈ちゃんみたいな子がきらいになれる人ってそんなにいないと、私も思うわ。

遠見結奈

ええ……。

遠見結奈

比奈、まじめだから……。

遠見結奈

こっちが言ったこと、ちゃんと聞いてくれるし。でも、納得いかないことはちゃんと伝えてくれるし。

遠見結奈

自分の好きなことにも、すごいまじめに向き合うんです。陸上とか、あと、食べることとか。

遠見結奈

だから、こっちとしても、いろいろしてあげたくなる。

榎木サチ

さすが結奈さんね、比奈ちゃんのこと、ちゃんと見てるのね。

榎木サチ

比奈ちゃんのそういうとこ、わかる人なら、比奈ちゃんをきらいになれないわね。

遠見結奈

ええ……。

だから、網島先輩と稲本先輩のこと、心配なんだけど……。

どうしよう、こっそり後をつけるわけにもいかないし。

榎木サチ

さて、私たちは美夕ちゃんと比奈ちゃんの様子、見てきましょうか。

永谷恵

はぁい!

遠見結奈

え、ええ!?

榎木サチ

だって、気になるもの。比奈ちゃんと二人が、それぞれどんなデートするのか。

永谷恵

ええ、そうですよね!

榎木サチ

まずは美夕ちゃんからよね。

永谷恵

早く行きましょ、サチさん!

ず、ずるい。幽霊だからってずるい!

永谷恵

結奈はどうする? ついてくる?

遠見結奈

ついていけるわけ、ないじゃない……。

永谷恵

あ、そう? じゃ、後で教えてあげるね?

遠見結奈

う……。

悔しい。すごい、気になる。教えてほしいけど……、でも、そんな盗み見の報告みたいなこと聞くなんて、比奈に悪い気もするし……。

榎木サチ

それじゃ、また後でね、結奈さん。

永谷恵

行ってきまぁす。バイバイ、結奈。

遠見結奈

あ……。

そうして、百合霊の二人も、人混みの中に消えていってしまって。

私だけ、後に取り残されてしまって。

さて、まずは比奈ちゃんと美夕さんのデートから。

結奈には悪いけど、どういうふうになるのか、けっこう楽しみ。

美夕さんと比奈ちゃん、二人の後を、サチさんとわたしでついて回る。昨日はグループ交際って感じだったけど、今日はダブルデートってとこかしら。

稲本美夕

さ、比奈。まずは出店の方から回ってみましょうか。

狛野比奈

ん。

稲本美夕

今日は、昨日は出てなかったアトラクションみたいなのもあるのよ。

稲本美夕

バスケ部のフリースローチャレンジとか、サッカー部のPK勝負とか。賞品とかもあるんだって。

狛野比奈

おぉ。

稲本美夕

楽しそうでしょ。去年も、茉莉、やってみたくてしょうがないみたいだったから。……あ。

稲本美夕

ひ、比奈も体動かすの好きでしょ? 回ってみましょうか。

狛野比奈

ん。

稲本美夕

お腹空いてきたころに、食べ物、出してるとこに行くわよ。

狛野比奈

ん。

ふーん、美夕さんって事前にデートの行き先、ちゃんと調べておくタイプみたい。

もしかしたら、結奈とちょっと似てるかも。事前の準備が大切とか考えてるタイプ。

榎木サチ

美夕さんってしっかり者なのね。

あ、サチさんも同じ感想みたい。

永谷恵

ですねぇ。でも、なんか隙がない感じ。だから、茉莉さん、欲求不満になっちゃうんですよ。

榎木サチ

そうかもしれないわね。

それでケンカしちゃうんだもん。美夕さん、自分が悪いって気付いてないのかな。

そのまま、比奈ちゃんと美夕さん、バスケ部のアトラクションのフリースローチャレンジに。

まぁ、ただのフリースローなんだけど。10回挑戦して、入った数で賞品が出るみたい。

へぇ、今日はこんなのがあるのね。一日目と二日目で、出てるものがちがうなんておもしろい。

昨日やってれば、結奈に頼んでわたしも挑戦したかったのに。たぶん、結奈、断るだろうけど。

比奈ちゃんが挑戦して、結果は、10回中、入ったのが5回。ちょうど半分。

でも、最後は3回連続で入れてたから、けっこうすごいのかも。

稲本美夕

なかなかやるじゃない、比奈。

狛野比奈

んー……。どもです。

稲本美夕

5回入って、3等なのね。けっこういい成績だったんじゃない?

狛野比奈

んー、どうだろ。

稲本美夕

賞品はなに? あら、リストバンド? バスケ部らしいわね。一等はなんだったのかしら。

狛野比奈

バッシュ、だって。でも、10回入らなきゃ、ダメだって。

稲本美夕

それは……、絶対にとらせたくないみたいね。10回連続なんて、プロだって難しいわよ。

稲本美夕

それに、私だったら……、9回連続で入ったところで、最後の1回はハーフラインから投げさせるわね。

狛野比奈

え。

稲本美夕

バッシュって高いでしょ? それくらいしないと、持っていかれたら大損だもの。

うん、美夕さんってけっこう意地悪いとこある。

永谷恵

もし、サチさんが挑戦できるんだったら、全部、入っちゃいますよね。

榎木サチ

え? どうかしら。

永谷恵

だって、サチさん、ポルターガイストできるもん。

榎木サチ

ああ、そうね。でも、私、ばすけっとぼぉるは、規則がよくわからなくて。

永谷恵

これは、ただ、投げるだけなんですけどね。

狛野比奈

美夕先輩は、やらないの?

稲本美夕

私は止めとくわ。スカートだもの。茉莉だったらかまわずにやるでしょうけどね。

稲本美夕

え、えっと、結奈さんはこういうの、得意なのかしら。

狛野比奈

結奈ねぇは、ダメ。

稲本美夕

あら、そうなの? けっこうなんでも、そつなくこなしそうなんだけど。

狛野比奈

結奈ねぇ、ボールがまっすぐ飛んでかない。

稲本美夕

ああ、ノーコンなのね。ちょっと意外だわ。料理得意だから、器用そうなのに。

狛野比奈

球技だけはできないって。

稲本美夕

そう。どうする? もう一回、挑戦してみる?

狛野比奈

んー……、いいです。

稲本美夕

そう? 参加料のことなら、別に心配しなくていいわよ?

狛野比奈

んー、そうじゃなくて、もっと練習しないと、これ以上、無理みたいだし。

稲本美夕

ふふ、やっぱりマジメね、比奈は。茉莉だったらきっと、ムキになって何回も挑戦しているわ。

稲本美夕

ほんと、もうちょっと考えて行動すればいいのに……。

榎木サチ

美夕ちゃん、気付いてるのかしらね。

永谷恵

え? なにをです?

榎木サチ

さっきから何回も、茉莉ちゃんの名前、出てきてるのよ。

永谷恵

あ、そう言えば。

ちょっとしたことで、茉莉さんのこと、思い出してるみたい。

あぁ、もう、比奈ちゃんとのデート中なのに、そんなに名前が出てきちゃうくらいなら、さっさと仲直りすればいいのに。

永谷恵

意地っ張りな人なのかなぁ。

榎木サチ

そうかしら。引っ込みがつかなくなってるのかもしれないわね。

永谷恵

めんどくさいなぁ、もう。

榎木サチ

ふふ、そうね。でも、美夕ちゃんにとっては、大事なことだったのよ、茉莉ちゃんとのケンカの原因は。

永谷恵

そうかもしれないですけどぉ。

その後、今度はサッカー部のPK勝負にまた、比奈ちゃんが挑戦して、今度もけっこういい感じの成績で。

他にも、いろんなアトラクションを美夕さんと比奈ちゃん、回っていった。

昨日とちがって、そんなちょっと大がかりなアトラクションが今日はいっぱい出てる。

ちょっとした遊園地というか、スポーツ広場っていうか。小さな子も今日は来てて、遊んでいってる。

grpo_bu0

そっか、これが学園祭なんだ。

わたし、中学の時は文化祭って名前だったけど、クラスの企画には参加できなかった。ずっと入院と退院、繰り返していたから。

文化祭の当日も、ばっちり、病気で欠席しちゃったし。

そして、この学校では、学園祭が来る前に、死んでしまって。

一度くらいは、部活やクラスのみんなと、参加してみたかったなって思ったこともある。毎年、学園祭の季節になると、そんなこと、思ってしまう。

幽霊になってから、毎年、学園祭にはこんなふうに、サチさんと見て回ってる。

楽しそうにしてるみんなを。

でも、今年はちょっとちがうかな。昨日、結奈たちと一緒に、ほんとに学園祭に参加したって気持ちだった。

出店を回って、いろんなものを食べて。結奈はうるさかったけど、それ以外はとても楽しかった。

サチさんと二人で見て回った去年までと、なにがちがうんだろう。

結奈がいるってだけで、そんなに変わるのかな。ちょっとそう考えるとムカつくけど。

でも、見ているだけより、ずっとおもしろかったのは確か。食べて、遊んで。

今も、比奈ちゃんと美夕さんの様子を見ながら、サチさんと話しながら、わたし、学園祭を楽しんでる。

サチさんと二人っきりでいるのは楽しい、うれしい。でも。

学園祭って、やっぱり、みんなで楽しむものなのかな。それを知ることができたのが、ちょっとうれしかった。

稲本美夕

さ、ちょっと早いけど、お昼にしましょうか、比奈。

狛野比奈

ん。

稲本美夕

今日はね、バーベキューの屋台、出てるのよ?

狛野比奈

おぉ!

美夕さんって、比奈ちゃんの好みまで調査済みなんだ。お肉って聞いて、比奈ちゃんの目の色が変わってる。

うわ、バーベキューってけっこう本格的なのね。鉄串に、すっごい大きなお肉と、タマネギとかピーマンとか刺して、炭で焼いてる。

いいなぁ、あれ、食べたかった。あとで結奈に頼んでみようかな。

稲本美夕

比奈、何串食べる?

狛野比奈

さ、三本!

稲本美夕

えーと、牛と鶏とマトン、羊ね、あるけど。

狛野比奈

一種類ずつ、全部!

稲本美夕

はいはい、相変わらずすごい食欲ね。いいわ、お腹いっぱい食べなさい。

稲本美夕

そうすれば、茉莉との時、あまり食べないですむでしょうしね。

美夕さんにいいようにコントロールされてるよ、比奈ちゃん。そして、美夕さん、けっこうずるい。

美夕さんの分とあわせて、5本のバーベキューを受け取って、二人はちょっと講堂から離れてお食事タイムみたい。

時間的には、これ、食べ終わったら、茉莉さんと交代かな。

うーん、どうなんだろう。

永谷恵

ちょっと美夕さん、有利な気がする……。

榎木サチ

そうね、しっかり比奈ちゃんを楽しませてるみたいね。計画通りって感じで。

永谷恵

茉莉さん、不利ですよねぇ。比奈ちゃんが楽しみそうなの、みんな回っちゃったみたいで。

榎木サチ

そうね。でも、茉莉ちゃんはどうするかしら。比奈ちゃんのこと、どうやって楽しませるのかしらね。

うーん、わたしはどっちかというと、茉莉さんを応援してるんだけど。美夕さんより、茉莉さんの方が好感持てるし。

茉莉さん、がんばってほしいなぁ……。

美夕さんは、比奈ちゃんとちょっと早めのお昼を食べたところで、時間終了。

12時ちょうどに、講堂の入り口の前に二人で戻ってきて、そこで待っていた茉莉さんと交代した。

これから、午後は、今度は茉莉さんの番。

比奈ちゃん、すでにいっぱい、ばぁべきゅうを食べてるし、どうなるかしら。

茉莉さん、どうやって美夕さんの綿密なでぇとを超えていくのかしらね。

恵は、茉莉さんの不利を予想していたけど……、楽しみだわ。こういうのってワクワクする。

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網島茉莉

そんじゃ、行こっか、比奈!

狛野比奈

ん。

そう言って、比奈ちゃんの肩、自然に抱いて歩き出すところが、茉莉ちゃんのすごいところかしら。

網島茉莉

さぁて、なにやってるのかな。とにかく、どんどん見て回ろっか。

狛野比奈

ん。

網島茉莉

おもしろそうなもの、片っ端からやってみよ!

狛野比奈

ん。

網島茉莉

比奈も、おもしろそうなものあったら、どんどん言いなよ。

狛野比奈

ん。

網島茉莉

返事が小さい!

狛野比奈

ん、はい!

網島茉莉

よし、行こ!

永谷恵

うわぁ、茉莉さん、全然、計画立ててないみたい……。

榎木サチ

ええ、美夕さんとは正反対ね。

永谷恵

比奈ちゃんがおもしろいって思いそうなの、美夕さんが午前中に回っちゃってるのに……。

榎木サチ

ええ、そうだけど……、茉莉ちゃんは、そんなこと、最初からおかまいなしなんじゃないかしら。

網島茉莉

お、比奈! レスリング部の腕相撲だって!行くよ!

狛野比奈

ん、おぅ!

網島茉莉

二人で、五人は勝ち抜きするからね、気合い入れてこ!

狛野比奈

おぅ!

狛野比奈

茉莉先輩、あれ!

網島茉莉

ん、なに? ブラバン? えっと、チューバ抱えリレー?

狛野比奈

チューバっておっきいラッパ? 抱えてトラック、1周するんだって。

網島茉莉

なにそれ! うわぁ、これって陸上部のあたしたちに対する挑戦じゃない?

網島茉莉

よし、行こ、比奈! 絶対、記録塗り替えるからね!

狛野比奈

ん、おぉ!

網島茉莉

1位になるまで、止めないよ!

狛野比奈

おぉ!

網島茉莉

あ、見て見て、比奈! 綿飴!

狛野比奈

昨日、食べたよ。

網島茉莉

そう? でも、これ、割り箸1本300円だって。

狛野比奈

んー、高くない?

網島茉莉

でも、自分で作るんだって。割り箸1本で取り放題!

狛野比奈

んん?

網島茉莉

はい、これ、比奈の分ね。どっちが大きなの作れるか、競争!

狛野比奈

おぉ!?

網島茉莉

んじゃ、次はバッティングセンター! 運動部相手には、本気で投げてくれるってさ。さ、行け、比奈!

狛野比奈

ん! んぉ!? すご、はやっ!

網島茉莉

まぁ、本気出されると当たんないよね。んじゃ、次はあたしがやるかな。よし、来い!

網島茉莉

お腹空いた! 特大お好み焼き食べに行こう!

狛野比奈

おぉ!

永谷恵

すごい……、あきれるほど、手当たり次第って感じ……。

榎木サチ

ええ、そうね。ちょっとびっくり。

永谷恵

比奈ちゃんもよく付き合うなぁ。あ、今度はクイズやってる。

榎木サチ

あら、数理部って桐ちゃんのところかしら。

永谷恵

そうみたい。二人して、頭抱えてますね。

榎木サチ

あまり、こういうクイズ、得意じゃないのかしら。私たちもやってみる? 恵。

永谷恵

えーっと、恵もあんまり、得意じゃないんですけどぉ。

榎木サチ

私も、数学はあまり得意じゃなかったけど、せっかくだしやってみましょう?

永谷恵

はぁい……。あ、あれ? 茉莉さんたち、行っちゃいましたよ?

榎木サチ

あら、あきらめちゃったのかしら。

永谷恵

あ、次はまた、食べ物買ってる……。茉莉さん、ほんと、計画性ないなぁ……。

榎木サチ

でも、比奈ちゃんも、茉莉ちゃんの雰囲気に乗せられてるみたいよ?

まるで、飛び回るみたいに。

茉莉ちゃんと比奈ちゃんは、あちこちの出し物や出店、展示を見ては、それに挑戦していく。

それは確かに、美夕ちゃんとはちがった、学園祭の楽しみ方に、私は思える。

grpo_bu0

それにしても。

今年の学園祭はなんて、華やかなのかしら。

私の生きていたころは、学園祭と言っても、ささやかなものだった。

講堂の中での、少ない公演。出店もなく、展示の数も多くはなかった。もちろん、私が積極的に参加することもなく。

それは、時代の差もあるのだろう。私の生きていた時代は、少し、暗い世相だったから。

幽霊になってから、恵に会うまでの50年は、ただ、この学園を屋上からながめているだけだった。

学園祭が来ても、それを屋上から見ているだけ。講堂に近寄ることもなく。

恵と出会ってからは、一緒に見て回ったりするようになった。

ゆっくりと講堂のまわりを回って、展示をながめたり。一日中、講堂の公演を見ていたり。

そうしながら、少しずつ、私も学園祭の楽しみを知っていった。

そして、今年。

結奈さんと一緒に、恵と一緒に、こうして見て回る学園祭、それを楽しむ子たちの姿、それはなんて、色鮮やかなんだろう。

昨日も、今日も、本当に楽しい学園祭。今まで見てきた子たちが、本当に楽しそうに参加している、二日だけのお祭り。

この二日間が、素敵な思い出になるといいわね。結奈さんにとって、比奈ちゃんにとって、みんなにとって。

そして、私と恵にとっても。

網島茉莉

えーっと、比奈、次はどこに行こっか。

狛野比奈

先輩、もう、持てない。

網島茉莉

あ、あれ?

あら、あまりにも無計画に回りすぎたからかしら。

いつの間にか、茉莉ちゃんも比奈ちゃんも、両手にいろんな荷物を持っている。

買ってきた食べ物や、参加したアトラクションの賞品、展示で配られていた冊子とか。

網島茉莉

あー、それじゃ、ちょっと休憩しようか。

狛野比奈

ん。

網島茉莉

しかし、ちょっと勝率が悪かったなぁ。うーん、もうちょっといけると思ったんだけど。

狛野比奈

んー……。ごめんなさい。

網島茉莉

あー、比奈が悪いんじゃないってば。

網島茉莉

まぁ、美夕がいたら、ちがったかもな。美夕ってさ、すごいコツ、つかむのうまいんだよね。

網島茉莉

ちょっとやったら、すぐ、必勝法とか考えついちゃうんだよ。で、それをまた、わかりやすく教えてくれるんだよね。

網島茉莉

ほら、部活の練習のメニューとかも、美夕が考えたの、多いでしょ。そういうの考えるの、好きなんだってさ。

網島茉莉

……ま、今はいないんだし、そんなこと言ってもしょうがないか。

狛野比奈

ん。

網島茉莉

うん、ちょっとあっちで休憩しよ。おやつもいっぱい買ってあるしね。

狛野比奈

ん。おなか空いた。

網島茉莉

あはは、お昼いっぱい食べてると思ったんだけど、やっぱ比奈はハラペコちゃんだな。

網島茉莉

あ、でも、もうこんな時間なんだ。けっこう遊んでたんだなぁ。

網島茉莉

それじゃ、一休みして、デート終わりってことにしようか。

狛野比奈

ん。

それは、ちょうどいい頃合いだったのかも。まるで、二人とも遊び疲れたみたい。

両手に戦利品と言うのかしらね、いっぱい遊んだ結果を持って、講堂から離れる。

もうすぐ、二人のデートはお終いだったかしら。ほんとにいい頃合い。

永谷恵

茉莉さん、最後まで比奈ちゃんを引っ張り回してただけじゃない……。

永谷恵

うーん、これじゃ、美夕さんのデートの方が、スマートだったんじゃないかなぁ。

恵はちょっと、茉莉さんのデートの仕方に不満のようだけど。

榎木サチ

そうかしら。でも、比奈ちゃん、午後もいっぱい楽しんでいたみたいに見えるわ。

永谷恵

そうですかねぇ。

榎木サチ

ええ。茉莉さんらしい、やり方だったと思うわ。

永谷恵

うーん……。

もうすぐ、この勝負も終わり。

そして、比奈ちゃんが、茉莉ちゃんと美夕ちゃんのどちらかを選ぶことになる。

さて、比奈ちゃんは、どっちの方が楽しいと思えたのかしらね。

稲本美夕

お帰りなさい、比奈。

狛野比奈

ん、戻りました。

稲本美夕

あら、比奈、口元にソース、ついてるわよ。

狛野比奈

ん? あ、急いで食べてたから。時間、なくなりそうで。

講堂から少し離れたベンチで、茉莉ちゃんと比奈ちゃんは一休みしてたのだけど。

そこでいろいろと話をしているうちに、3時が近づいてきてしまって。

それに気付いてから、二人とも、すごい勢いで、残っていたものをお腹の中に片付けていったものだから、比奈ちゃんの口のまわりが少し汚れていたみたい。

稲本美夕

ちょっと待って。あ……。

狛野比奈

ん……、これでよし。

美夕さんがハンカチを出そうとしたんだけど、それより速く、比奈ちゃんがジャージの袖で、口元を拭ってしまった。

稲本美夕

ちょっと行儀悪いわよ。まったく、茉莉、あなたどういう時間配分したのよ。食べるの急かすなんて。

網島茉莉

急かしたつもりないんだけどさ。時間になりそうだったから、つい、比奈と食べるの競争みたいになっちゃって。

稲本美夕

ほんと、いい加減なんだから……。

今日の勝負の最後の舞台は、ここ、講堂から少し離れた校庭、二の丸庭。

茉莉ちゃんと美夕ちゃん、二人が、比奈ちゃんに向き直る。

網島茉莉

さて、比奈。それじゃ、判定してもらおっか。

稲本美夕

ええ、聞かせてくれる? 私と茉莉、どっちのデートの方が楽しかったか。

狛野比奈

んー……。

比奈ちゃん、二人の顔を交互に見て、考え込んでいるみたい。

でも、比奈ちゃんはどちらと答えるのかしら。それは、私も興味がある。

比奈ちゃんを楽しませるために、計画をしっかり立ててきた美夕さん?

それとも、自分も楽しみながら、とにかくいろいろたくさん遊んだ茉莉さん?

そして、比奈ちゃんはどっちの先輩を選ぶのかしら。茉莉ちゃんと美夕ちゃん、どっちと付き合うことになるのかしら。

そして、茉莉ちゃんと美夕ちゃんも。

比奈ちゃんの答え、ちゃんと受け止められるのかしら、ね。

狛野比奈

んー……。

稲本美夕

さ、比奈。

網島茉莉

どっち?

狛野比奈

んー……。

狛野比奈

……あ。

じっと二人を見ていた比奈ちゃんの視線が、ふっと逸れて。

狛野比奈

ちょっと、先輩たち、待っててください。

稲本美夕

え?

あら……。比奈ちゃん、二人に待っててと言って、いきなり走り出す。

比奈ちゃんが向かうその先は、星館校舎の方、その玄関ホール。そこから。

ちょうど、結奈さんが出てきたところだった。

狛野比奈

結奈ねぇ!

玄関ホールを出たところで、向こうから比奈が走ってきた。

狛野比奈

帰るとこ?

遠見結奈

え、ええ……。

まだ、学園祭が終わるまで、少し時間があるけど。

展示や出店は、あと一時間くらいだろうか。そのあとは、片付けと後夜祭があったはず。

でも、出展に参加していない学生は、ほんとは午前中で帰ってもいいことになっている。私とかがそう。

狛野比奈

一緒に帰ろ。

遠見結奈

ええ、いいけど……。

比奈はさっきまで、網島先輩とデートだったはず。もう、終わったっていうのは、さっき、恵が教えに来てくれたんだけど。

先輩たちとのデート勝負が終わったら、一緒に帰ろうって、比奈、言ってた。

だから、ここか正門、どっちかで待っていようと思ってたんだけど……。

狛野比奈

ちょっと、待っててくれる?

遠見結奈

ええ、いいわ。

よく見れば、比奈、カバンは持ってない。教室に行って取ってくるのかなって思ったけど。

狛野比奈

これから、ちょっと先輩たちと話、してくる。

狛野比奈

どっちがいいか、聞かせてほしいんだって。

遠見結奈

……そ、そう。

そういうことだって、知ってたけど。今日の、稲本先輩、網島先輩との、それぞれのデートは。

比奈に、どっちが好かれているか、どちらと付き合うのか、決めるもの。

狛野比奈

グラウンドで待っててもらってるから、ちょっと、行ってくる。

遠見結奈

あ、比奈。

狛野比奈

ん? なに?

遠見結奈

あ、その……。

校庭の方に行きかけた比奈を、思わず止めてしまった。

遠見結奈

その、どっちにするか、決まったの……?

そして、聞いてしまった。聞いてどうするんだろう。比奈が、二人のうち、どちらを選ぶかなんて。

狛野比奈

………………。

狛野比奈

ん、だいたい。

遠見結奈

……そう……。

決まってるんだ……。なんだろう、体の力が抜けるような感じ。動けなくなるような。

狛野比奈

正門のとこで、待ってて。すぐ、行くから。

遠見結奈

う、うん……。

そう言って。比奈は行ってしまった。校庭の方に。私は、一歩も動けなくて。

榎木サチ

それじゃ、私たちも行きましょうか。

永谷恵

うわ、楽しみ~。

うわ、ふ、二人とも、いつの間に私のそばにいたの? そして、なに? 二人とも、また、比奈のあとをついていくの?

遠見結奈

……ちょっと!? 立ち聞きする気?

永谷恵

当たり前でしょ?

榎木サチ

茉莉ちゃんも美夕ちゃんも、お手伝いしてる子たちだもの。

遠見結奈

そ、そうだけど……。

永谷恵

結奈は聞きたくないの? 比奈ちゃんがどっちを選ぶのか。

遠見結奈

え……?

それは……、聞きたい、けど……、……聞きたくない。なんでだろう……。

榎木サチ

私たちが聞いてきてあげるわ。もっとも……、あとで比奈ちゃんが教えてくれるかしら。

遠見結奈

そ、それは……。

やだな……。

どうしてだろう。付き合うってことは、比奈はどちらかの恋人になるから? それは、女の子同士だから?

比奈が誰かの恋人になる。それは……、比奈が、他の人たちと同じように……、その、同じようなこと、するから……? え、比奈が……?

わからない。どうしたらいいのよ、そんなこと。

榎木サチ

それじゃ、また、あとでね?

永谷恵

正門のとこで待っててね、教えてあげるから。

そう言って、二人も行ってしまった。正門で?待ってるけど。それは、比奈と約束したんだし。でも。

どんな顔して待っていればいいんだろう……。

永谷恵

お待たせ、結奈~。

どれくらい時間、たったのかな。ケータイを見る。まだ、30分もたってない。すごく長い時間、待っていた気がしたけど。

でも、戻ってきたのは、恵とサチさんだけだった。

遠見結奈

お、おかえり。えっと、その……。

榎木サチ

比奈ちゃんだったら、カバンを取ってくるみたいよ?

永谷恵

教室に行ったわ。

遠見結奈

そ、そう……。

それじゃ、もうすぐしたら、ここに来るのかな。

遠見結奈

ね、ねぇ。

どうしよう、すごい、鼓動が速い。

永谷恵

なに?

遠見結奈

あ、あの、比奈、なんて答えたの?

息が、苦しい。口の中、カラカラ。声がうまく出てるかどうか、わからない。それでも、聞きたい。

遠見結奈

その、網島先輩と稲本先輩、どっちを選んだのかな……。

この二人は、比奈の答えを聞いていたはず。比奈はどっちを選んだんだろう。つまり、どっちと付き合うことにしたのかな。

網島先輩と稲本先輩、どっちの恋人になるんだろう……。

永谷恵

……知りたい?

榎木サチ

……聞きたい?

遠見結奈

あ、当たり前でしょ! す、すごい、気になるじゃない……。

永谷恵

どうして? どっちでもいいじゃない。

榎木サチ

比奈ちゃんがどちらと付き合うかって、結奈さんに関係あるのかしら?

遠見結奈

な、なに、その言い方。それは、そうだけど。比奈が誰と付き合おうと、私には、関係……、ない、けど……。

そんな意地悪な言い方、しなくても。聞きたくないって思ってたけど、やっぱり気になる。だって、比奈のことだから。

永谷恵

教えてあげなーい。

遠見結奈

ちょっと! なんで!?

榎木サチ

比奈ちゃんから、直接、聞いた方がいいと思うわ。……ほら、来たわ。

そのサチさんの言葉通り、玄関ホールの方から、比奈が走ってくる。

比奈に直接聞いた方がいい? え、でも、そんな。嘘、ちょっと待って。あっという間に、比奈がすぐ、近くに。全然、心の準備、できてないのに。

狛野比奈

結奈ねぇ、お待たせ。

遠見結奈

う、うん。

狛野比奈

待たせて、ごめん。

遠見結奈

う、うん。

どうしよう、なんて聞けばいいんだろう。どっちが比奈の恋人になったの? どっちを選んだの? そんな質問、できるわけがない。

だって……、比奈が誰かの恋人になったとか、そんな……、答え、聞きたくない……。

狛野比奈

……あのね、結奈ねぇ。

比奈は、いつもと変わりない、みたい。ううん、少し、息を、切らせてる?

遠見結奈

う、うん。……なに?

狛野比奈

先輩たちと、話、してきた。

いつもと同じ? まっすぐに、私の目を見て。

遠見結奈

そ、そう。

狛野比奈

ちゃんと、答え、してきたよ。

ほんの少し、うれしそう……? どうして……?

その答えてきたこと、それが、うれしいことだったの……?

遠見結奈

……そ、そう、なんだ……。

どうしよう、ほんとに、聞きたくない。すぐにでも、ここから走って逃げたい。

比奈の口から、網島先輩でも、稲本先輩でも、どちらでもいい、誰かが好きだなんてこと……。

聞きたくない。

狛野比奈

あのね、結奈ねぇ。あたし。

遠見結奈

っ……。

息が、止まりそう。

狛野比奈

わかったんだ。

逃げ出したい。なのに、足が動かない。聞きたくない。でも、比奈の言葉が頭の中に響く。

狛野比奈

あたし、ね。

はっきりと、響く。

狛野比奈

結奈ねぇのことが、好き。恋人になるなら、結奈ねぇが、いい。

伝わってくる。聞き間違えようのない、比奈の声。

狛野比奈

結奈ねぇが、好き。

遠見結奈

(……でも、なんですって? なんて言ったの、比奈)

遠見結奈

(……なにも、考えられなかった)

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okujou_no_yurirei-san/1506.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)