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okujou_no_yurirei-san:1408

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耳元で、ケータイのアラームが鳴っている。もう起きなきゃいけない時間……。

半分寝ながら、枕元に置いてあるはずのケータイに手を伸ばす。あった。二度寝防止のためなのか、ちょっと手間のかかる停止手順でアラームを止める。

遠見結奈

んん……。

うん、だんだん目が覚めてきた……。

永谷恵

あ、起きた。結奈!

え? すぐそばで聞き覚えのある声。

永谷恵

寝ぼけてないで、目を覚ましてよ、結奈!

遠見結奈

……恵?

永谷恵

あ、起きた? 目、覚めてる? サチさん、結奈、起きたよ!

遠見結奈

え? え?

榎木サチ

おはよう、結奈さん。

ちょっと、どういうこと? どうして二人がここにいるの?

遠見結奈

サチさん、恵……?

永谷恵

そうよ。しゃっきりしなさい。

遠見結奈

なんでここに……。人が寝ているところまで入ってこないでよ……。

永谷恵

しょうがないでしょ、緊急事態なんだから!

遠見結奈

緊急事態?

うん、目はもう覚めているけど。でも、寝起きのところを見られるなんて。幽霊といってももう少し、デリカシーってものを持ってほしい。

榎木サチ

ええ。茉莉ちゃんと美夕ちゃんのことなんだけど。

遠見結奈

あの二人がどうかしたんですか?

永谷恵

それがね、昨日の夜からケンカを始めちゃってるのよ!

遠見結奈

ケンカ?

網島先輩と稲本先輩が? あの二人ってもうずっと付き合っているんでしょ? なんの心配もいらないって思っていたんだけど。

確かに、夏休み前にちょっと言い合いをしてるの、見たけど……。でも、それもいつものことだって、サチさん、言ってなかった?

榎木サチ

ええ……。昨日の夜遅く、二人で陸上部の部室で話をしていてね。そこから、ちょっといい雰囲気になったから期待して見ていたんだけど……。

またそういうところを見てるんだから……。ほんとにこの二人、そういうとこ遠慮がないみたい。

榎木サチ

やっぱり、途中で美夕ちゃんが怒っちゃって。それでケンカを始めちゃったのよ。

遠見結奈

そう……。でも、それっていつものことって言ってませんでした?

榎木サチ

いつもなら、どちらかがあやまったり、うやむやになったりして終わるんだけど……。

永谷恵

なんだか、途中から比奈ちゃんの取り合いになっちゃったのよ。

遠見結奈

え? 比奈? なんで比奈がそこで出てくるのよ。

永谷恵

二人とも、相手より比奈ちゃんの方がかわいいとか素直とか言い出して。それで、比奈ちゃんが恋人だったらよかったのにって。

榎木サチ

そうしたら、あなたなんかに比奈ちゃんは渡せないってことになって。

どういうこと? さっぱりわけがわからない。

榎木サチ

とにかく、比奈ちゃんは渡せない。比奈ちゃんを恋人にするのは自分だって言い出して、ゆずらなくなっちゃったの。

ほんとにわからない。なんで比奈が出てきたのかも。そして、なんで比奈を恋人にするって話になってるのかも。

榎木サチ

もしかしたら、大変なことになるかもしれないわね。

永谷恵

ええ。このまま、あの二人、別れたりしたらどうしよう。せっかく、素敵なエッチを見せてくれそうだったのに。

問題はそこじゃない気がするけど。とにかく、比奈が巻き込まれているなら、ちょっと放っておけない。

放っておけないけど、どうしたらいいんだろう。

永谷恵

あ、でも、ものは考えようかもしれませんよ、サチさん。

永谷恵

あの二人が別れても、どちらかが比奈ちゃんとくっつけば、変わらないじゃないですかぁ!

遠見結奈

ちょっと! そんなのダメに決まってるでしょ!

永谷恵

あら、なんで? わたしたち、女の子同士のエッチがもっと見たいんだもん。

永谷恵

それを見せてくれそうなカップルが減らなければ、結果オーライじゃない?

遠見結奈

全然オーライじゃない! とにかくダメ! 比奈をそんなことに巻き込まないで!

永谷恵

巻き込んでいるのはわたしじゃなくて、あの二人なんだけどぉ。

遠見結奈

そ、そうだけど……。

榎木サチ

とにかく、様子を見るしかないかしらね。もしかしたら、またいつもみたいに、茉莉ちゃんと美夕ちゃんも仲直りするかもしれないし。

遠見結奈

だといいんだけど……。

料理当番としての最後の仕事、朝ご飯も無事に作り終えて。

まぁ、朝ご飯の間中、網島先輩と稲本先輩の二人はお互い、一言も口を聞かないどころか、目もあわさないって感じで。

まわりにもケンカ中って雰囲気をまき散らしていた。

そのまま、合宿の解散式があったんだけど、そこでも二人、変わりなくて。陸上部のみんなも気付いているみたいだけど、誰もそこに踏み込んでいく人はいなかった。

まぁ、ケンカ中の三年生、しかも部長と副部長。理由を聞くのも仲裁に入るのも、勇気がいりそうだし。

とりあえず、解散式自体は何事もなく終わって、陸上部の夏合宿は解散。

私は、今日まで使わせてもらった厨房の後片付けと掃除、持ち込んだものの整理とか荷物まとめとかで、他のみんなよりちょっと合宿所を出るのが遅れた。

顧問の先生に挨拶して、ついでに園生先生たちにも声をかけて、ようやく私も夏合宿が終わったって気分になれた。後は家に帰るだけ。

正門で待っているはずの比奈のところに向かうと……。

網島茉莉

ねぇ、比奈。美夕なんかほっといてさ、あたしと打ち上げに行こうよ。他にもおいしいお店、知ってるからさ。もちろん、おごりだよ。

稲本美夕

比奈、茉莉についていくことないわよ。私と一緒に帰りましょ。新しいシューズ、一緒に見て回りましょ。

狛野比奈

んー……。

網島先輩と稲本先輩に挟まれて、困り顔の比奈が。

なんか、前にもこんな光景、見た気がするんだけど。ああ、夏休みに入る直前、同じようなことがあったっけ……。

網島茉莉

ちょっと美夕! あたしが比奈を誘うの、邪魔しないでくれるかなぁ。

稲本美夕

茉莉こそ、食べ物で比奈を誘惑するような真似、やめなさい。

先輩たち、口を聞かない状態から、ついに爆発したみたい。よりによって比奈の真上で。

狛野比奈

んー……。

頭越しに言い合う二人に、ほんと比奈、困ってる。

でも、これ、比奈に声をかけていいものかしら。助けてあげたいって気持ちはあるんだけど。

そう思っていたら、比奈の方が先に。

狛野比奈

……あ、結奈ねぇ!

私に、気付いた。

網島茉莉

あ……。

稲本美夕

結奈ちゃん……。

うわ、気まずい。先輩たちも同じように思ってるみたい。

狛野比奈

茉莉先輩、美夕先輩。

網島茉莉

あ、うん。

稲本美夕

な、なに、比奈。

狛野比奈

結奈ねぇ、来たから帰ります。

網島茉莉

え? ちょっと比奈?

稲本美夕

あの、私との話は?

狛野比奈

誘ってくれて、ありがとうございます。でも、結奈ねぇと家に帰ります。

狛野比奈

お疲れさまでした!

そのまま、ペコって二人に頭を下げて、比奈が私の方に走ってくる。

狛野比奈

結奈ねぇ、帰ろ!

遠見結奈

え、ええ……。でもいいの? 先輩たちのこと……。

狛野比奈

ん、平気。結奈ねぇと帰るから。

平気かしら。後から来た私が、先輩二人を差し置いて比奈を連れて帰るって。

まぁ、比奈が先輩たちのどちらでも、ついていかないでよかったって、ちょっとほっとしてるんだけど。

二人のケンカに巻き込まれるのは、どうしてもかわいそうだし。

遠見結奈

あ、あの……。網島先輩、稲本先輩、お疲れさまでした……。

網島茉莉

あ、う、うん。結奈ちゃんもお疲れさま。

稲本美夕

え、ええ。今日までありがとうね、結奈ちゃん。

遠見結奈

は、はい。それでは、失礼します……。

狛野比奈

先輩、さよなら。

網島茉莉

うん、じゃあね。

稲本美夕

また、来週ね。

比奈はぴたっと私に体を寄せて、そして手を握ってくる。

ほ、ほんとに困っていたのかな。こんな甘えた比奈、久しぶり。

久しぶりだからかな。手を握られて、ちょっとドキドキしてきた。

先輩たちに頭を下げて、ちょっと足早に校門を出る。

そして、先輩たちの帰り道とは逆の椿小路の方へ、そそくさと。できる限り、早く正門から離れたかったから。

後ろ、ちょっと怖くて振り向けない。サチさんと恵が見送ってくれてるはずだけど、その二人に挨拶もできない。

だって、網島先輩と稲本先輩がどうなっているか、見るのが怖いから。後ろから言い争いの声が聞こえてこないことを祈りながら。

ようやく、夏合宿を終えて、私は家に帰ることができた。

でもいったい、あの二人、どうなるんだろう……。

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okujou_no_yurirei-san/1408.txt · Last modified: 2018/05/22 17:15 (external edit)